6.《ネタバレ》 10代の少年、少女にはたらく集団心理の威力と恐ろしさ。
今作では、事件の因果関係の基礎となるはずの動機の描写が足りない気がします。ブリー(いじめっ子)のボビーが周囲の人間、とりわけマーティに対してどれだけの過酷な暴力行為を繰り返してきたのか、その説明・描写が足りない気がするのです。
つまりは、ボビーの悪行のエピソードが少ないうえに中途半端すぎるのではないかと。これではボビーは理不尽な暴君というよりかは、ただの嫌なやつにしか見えません。
リサやマーティーを演じている役者さんが、その演技力でどれだけ憤りを表現しようとしても、これでは限界があるように感じます。
もし劇中で紹介されたようなエピソードしかないのであれば、『殺すほどのことか?』とも思えるし。
そうではなく、意図的に事実をはっきり伝えていないのであれば、実話ベースの作品としては問題があると思います。
フィクションであれば問題はないのですが、観る人が被害者、もしくは加害者のどちらかに偏った見方をしてしまいかねない、そのような情報操作、もしくは心理的な誘導をするノンフィクション作品は危険だと思います。
ただ映画作品としての面白さは間違いなく高い水準にあると断言できます。
観賞中はいらいらしながらもずっと物語にひきこまれていましたから。そういった意味では文句なしの映像作品です。