1.《ネタバレ》 1976年から1983年にわたり、アルゼンチンで発足した軍事独裁政権による国民への熾烈な弾圧が行われ、数万人もの犠牲者が出た。
政権が倒れたあと、当時の首謀者を裁くべく、正義を以て戦う検事と若き法律家を描いた実録法廷ドラマ。
堅苦しい映画ではあるが、小難しい内容にはなっておらず、知らない人にも分かりやすいエンタメ作品に仕上がっていた。
法廷シーンに移行してからはずっと引き込まれ、暴力描写に満ちた回想シーンを一切用いらなくても、
証言が雄弁に真実を語る力強さに圧倒され、脅迫されても何事もなく振る舞う家族のタフさに驚かされる。
検事とタッグを組む副検事が政権を握っていた軍を全否定しないように、
人間という矛盾した存在ながらも、人の尊厳を保つこと、いかなる組織でも罪は罪であることを認識させることの重要さを説く。
民主主義と社会正義を強く訴える検事の最終論告も実際の映像を交えながら力強い光を放つ。
ここで終わってくれたら完璧だったんだけどね、その後の展開が蛇足になってしまった感がある。
とは言え、再現VTRに墜ちておらず、映画としてはなかなかの良作。
ゴールデングローブ賞で受けたのも、言語を超えた普遍的なメッセージ性と時折挟み込まれるコミカルさによる敷居の低さかな。