1.《ネタバレ》 オウムの人たちはここで見る限りは、禁欲的で向上心から修行に励む誠実な善人にも見える。
その善人が史上まれに見る凶悪な犯罪で戦慄させたカルト集団の信徒だという事実。
一連の犯行が明らかにされていっても、それはグルへの信仰心が問われる試練としか受け止めていない信者に鳥肌が立つ。
そこに、理不尽にも命を絶たれた被害者たちへの懺悔や贖罪の情は見られない。
麻原が以前主張していたのと同じように、いまだに社会から弾圧され警察やマスコミの捏造で信仰の自由を侵されようとする被害者なのだろう。
会見で見せた麻原長女の不遜な態度には女暴君の臭いさえ感じて呆気にとられるほど。
教団に留まっている信徒に凶悪犯罪を犯した集団という自覚が全然感じられないことに呆れるし、根っこが変わらないならまた同じ凶行が起こっても不思議はないと空恐ろしくなる。
殺人をポアによる救済と正当化していなければ、あんな風に教団に留まれるはずがないとも思える。
オウムに関するマスコミの取材や警察のやり方にも問題はある。
特に警察のチンピラが因縁つけるがごとき逮捕劇はコントのよう。
警察官は傷めてもいない足を大げさに痛がってたし、倒された信者もいつまでも起き上がれないような怪我には見えず、双方被害者アピールで勝ちを競っているかのよう。
警察にも呆れたが、だからといって、被害者のことを考えるとオウム信者にはまったく同情できない。
そのことでオウムの罪が相殺されるわけでもない。
警察やマスコミの不当な一面をクローズアップして、それまでの捜査や報道が全て偏っていたとの印象操作にも感じる。
これまでのオウム関連の報道では知りえなかった教団内部に入り込んで取材している点では貴重なドキュメンタリー。
できるなら今度は視点を変えて、教団の犯行を全面自供し被害者を毎日悼んでいるという林郁夫を取材したドキュメンタリーが見たい。
どうやって麻原の強烈な呪縛から解き放たれたかを知りたい。