1.「天国は待ってくれる」のジーン・ティアニー、今度は夫に先立たれた未亡人、ミセス・ミューアとして登場。幽霊として登場するレックス・ハリスンと心を通わせるさまを描いた作品であります。幽霊ものはてっとり早く話をおもしろくしやすいだけに、作り手の力量が逆に問われるものです。その意味で、マンキーウィッツさんは、けっしてストーリィに頼ることなく控えめに、(西洋の話だけど)柳のようにしなやかに描きラストシーンにつなげていった、といえましょうか。もっとおもしろく脚色することもできたのでしょうが、未亡人としてのミューア、1児の母であるミューア、1人の女性であるミューア、そんな彼女の心を描くのに、シチュエーション的なコメディは不要である、としたのでしょうかな。チャールズ・ラング・Jrのカメラは、ここでも縦に深度ある構図でまとめているのが特徴的です。「天国は待ってくれる」を見ていると、ラストシーンはより味わい深いものになるのですが、そういった偶発的に連関する副次的な楽しみを味わえるのも映画の楽しみの一つでありますね~。