160.《ネタバレ》 「生きるべきか死ぬべきか」や「我輩はカモである」に続く反ナチスコメディの大傑作。
警官だろうが突撃隊だろうがヒトラーだろうが、煙に巻いて徹底的に笑い飛ばす。
オマケに当時タブーだったユダヤ人に対する描写も余裕でタブー破り。
コレはエルンスト・ルビッチの「生きるべきか死ぬべきか」でもユダヤ人の悲劇を笑いかつ哀しみをふんだんに込めて描写していたっけか。
「公債」で嫌々やったプロパガンダだが、この作品はそういうものを一切感じさせずヒトラーをDisってDisりまくり。
物語は第一次世界大戦とナチスの政策を極限までパロディにした話。
冒頭の第一次大戦の戦場は「担え銃」を思い出す光景。あの作品は塹壕が主な舞台だったが、コッチは砲塔。砲台に振り回され、不発弾までグルグル回って兵士を翻弄する。
偶然助けた兵士と飛行機で脱出、逆さまになり水が落ちる場面をまるで水が天に吸われていくように映す。
チャップリンはいつも通りおどけて見せるが、時折見せる怒りの表情、さらっと流される死人の続出などブラック・ジョークも抜群。
「モダン・タイムス」でも共演したポーレット・ゴダードはいつ見ても可愛い。
それにしても随分好色なヒトラーだこと。
女好きはどう考えてもチャップリンの性癖な気が(ry
「サニーサイド」における床屋シーンのNGフィルムはこの作品で見事に“復活”。よりパワーアップし洗練された圧巻の場面。
ブラームスの「ハンガリー舞曲」の“演奏”!曲に合わせて高速で髪をカットしたり髭を剃っていく名人芸。
破裂されてまで拒まれる地球征服、床でいきなり滑ったり、手をかけそこねたりする場面は故意なのか事故なのか測りかねん。
不意打ちすぎて鼻水出たわ(笑)
絵や彫刻を創る側も対象がせわしなく動くのでイライラがピークに。
ムッソリーニとの食物ぶちまけケンカも死ぬかと思った(笑いすぎて)。
だがラストの演説は凄い。「ヒンケル」と「チャーリー」の演説!
入れ替わってしまうのは「替玉」以来だろうか。
最初の演説との違いはまるで「ボレロ」。積み重なった言葉の集約が「演説」にこめられている。
人間にアーリア人も白人もユダヤも黒人もいない・・・なんて「理屈」が一番伝えたいことじゃない。
ただ愛する女性、愛しい人へのメッセージ・・・「ハンナ」。
「ハンナ」は今作のヒロインの名前でもあるし、チャップリンの母親への手紙でもある。