12.《ネタバレ》 生徒たちの背後から、淡々と彼らの日常を追うことで、「誰もがこの事件の主役になり得る危険性を内包している」とか、「傍観者の罪」とでも言いたいのか。
そういう捉え方も分かるけど、こうした凶悪事件の特殊性を相対化しているようにも見えてしまう。思想的メッセージを押し付けることなく見る者に解釈を任せるのも良いが、無責任な撮り方とも言える。「少年犯罪の考察」に一石を投じたいなら、今回の「事件の背景」をきちんと作中で説明しなくては意味が無いだろう。もし情報の無い人が見れば「最近の少年犯罪は不可解だな~」で終わってしまうからだ。
結局、どんな異常な事件にも原因となる「背景」はあるし、人を犯罪に駆り立てる要素はひとつやふたつではなく、多くの因子が有機的に関連しているものだ。
今回の事件に関して言えば、アメリカでは平等とは名ばかりで、歴然とした階級・学歴差別が存在していて、その本音と建て前のギャップに少年たちが強烈なストレスを感じていたという背景がメインにあると思われる。
「ここで落ちこぼれたら先が無い」と思い込んで、投げやりになってしまうような閉塞感と絶望感。仮に落ちこぼれなくても、先が知れている無味乾燥な将来への諦観と無気力感。また、差別意識から来るいじめ、銃が簡単に手に入る社会の構造など、考えるべき問題は山ほどある。それは日本の現状にも言える事だが、少し冷静に分析すれば、「原因」自体にはそれほどの異常性も特殊性も無いのが分かるはず。
案外、一番の問題は、こういう事件が起きると、すぐに狼狽して「真の犯人探し」を始めて、やれ「暴力的なゲームが悪い」だの、「ホラー映画が悪い」だのと狼狽している洞察力や想像力の無い大人の存在こそが、いつまでも現代社会の閉塞状況が改善されない最大の要因かも知れない。
社会問題を考えるきっかけとするには適度な「教材」ではあるので、点数は真ん中の5点ということで。