4.《ネタバレ》 被害者の紳士靴が紐を結んだままロッカーにあり、
運動靴には誰かに結ばれたとわかる結び目。
これが被害者が何者かにより運動着に着替えさせられた動かぬ証拠であり、犯人しか知りえない秘密。
何故なら被害者はたった一人でオフィスに遅くまで残っていたのだから。
一方で犯人のアリバイ工作。
犯行後自宅に戻った犯人は、被害者の録音テープを使って自宅の別の電話にかけ、電話に出た秘書にその時点で被害者は生きているとみせかける。だかここで犯人は決定的なミスをおかす。「運動着に着かえてトレーニングしているそうだ」などと、客に余計な一言を加える。
捜査により、被害者が何者かによって運動着に着替えさせられた事実が判明した時点で、犯人が明らかになる。鮮やかで爽快感のあるエンディング。
犯人は墓穴を掘ったわけだが、被害者も墓穴を掘っているようにみえる。
まだ不正経理の調査が終わってないのに犯人に内容をぶちまけ、罵詈雑言を浴びせ、集団告訴すると脅している。そして今日から会社にたった一人残って調査を続けるとも。これじゃあ殺してくれと頼んでいるようなもの。普段には電話の会話を録音させている用心さはどこへいったのやら。
それにそんな調査は専門家にまかせればよいのに。後悔先に立たずである。
性急な行動が死につながった典型的な例。
原題「an exercise in fatality」は「死のエクササイズ」。これは「exercise in futility」(無益な行い、徒労)の語呂合わせだろうか。「無益な行い」は被害者にあてはまりそうだ。
ミステリーとしてはシンプル、1ボディ(死体)、2トリック。大部分は刑事のコミックショー。