1.《ネタバレ》 原題の『アンダーワールドUSA』を『殺人地帯USA』とする邦題のつけ方、まるで新東宝ピクチャーみたいなセンスでいかにもB級ノワールっぽくていいですね。 チンピラ少年が組織の幹部に父親が殺されるところを目撃、その後順調に金庫破りを稼業とするワルに成長して刑務所にぶち込まれます。そこで父親殺しの犯人の一人と再会し、この男の病死間際に残りの三人の名前を告白させます。この元チンピラ少年役がクリフ・ロバートソンです。まだ若き日の出演ですが、さすがこの7年後にはオスカー男優になる人だけあってB級ノワールにはもったいない様な迫力ある演技を見せてくれます。ロバートソンは出所後に組織の一員として潜り込み、組織の中ボス的な存在の父親殺しの下手人三人と大ボスに復讐を果たしてゆきます。サミュエル・フラーの演出はタイトかつスピィーディーな物語展開なので、まあ退屈はしませんね。まだFBIもその存在を公に認めていなかった頃なので、この組織は明らかにマフィアなんですけどそんな文言は一言も使われません。証言封じのために証人の子供を轢き殺したりする生々しいシーンもあったり(ヘイズ・コード時代にしては珍しいことです)、公開当時はそれなりにショッキングだったんじゃないでしょうか。そしてラスト・シーンは撃たれたロバートソンが夜の路地を徘徊して息絶えるんですけど、ここはゴダールの『勝手にしやがれ』とそっくりだという指摘も一部にはあるそうです。ご存知のように『気狂いピエロ』に出演させちゃうほどフラーをリスペクトしてますから、ゴダールが真似したということは十分あり得る話です。