6.《ネタバレ》 「新聞に出ると思うか?」
というラストでの台詞に、ドキリとさせられましたね。
この手の映画は、主人公が新聞社に真実を告げる事によって、無事にハッピーエンドを迎えるもの……という固定観念のあった頃に観たもので、その台詞に秘められた恐ろしさには、本当に背筋が凍る思いがしました。
主人公が真実を告発する前に殺されてしまうアメリカン・ニューシネマな結末よりも、更に恐怖や無力感、やるせなさを感じさせる結末ではないでしょうか。
冒頭の事務所襲撃シーンでの、日常が瞬く間に破壊されてしまうシークエンスも迫力がありましたし、マックス・フォン・シドー演じる殺し屋と向き合う事となる、終盤の緊迫感も良かったですね。
ただ、映画の中盤に関しては、CIAのワシントン本部の描写が非常にチープであった点や、ヒロインであるフェイ・ダナウェイとのロマンスに、今一つノリきれなかった点などが響いてしまい、少々退屈に感じてしまったのも事実です。
勿論彼女は美人さんだし、こんな状況下においてもベッドシーンに突入してしまう男の気持ちも、分からないではないのですが
「えっ? これって仲間を殺された復讐の為に行動する、ストイックな主人公の話じゃなかったの?」
と、どうしても戸惑ってしまいましたね。
こういった展開を迎えた以上、彼女も殺されてしまうのじゃないかな、と思っていたら、そんな事も無く、ロマンティックな会話と共に別れる事となり、ホッとさせられる一方で、どこか物足りないような気持ちにもさせられました。
観客がマスコミの力を信じられるかどうかによって、ハッピーエンドともバッドエンドとも解釈する事が出来そうな結末ともども、色々と判断が分かれそうな要素が多いのですよね。
どんな映画にだって当てはまるでしょうが、この品は特に「これを名作と感じるも、駄作と感じるも受け手次第」という側面が強いというか。
自分がプラスに思った上述の部分だって「後味が悪い」「殺し屋と撃ち合いもせずに会話だけで別れるだなんて拍子抜け」と受け取る人もいるでしょうからね。
そういった諸々も含めて、面白い映画だと思います。