2.《ネタバレ》 チャールズ・ブロンソンが絶頂期にテレンス・ヤング監督と組んで主演したサスペンス・アクション 「夜の訪問者」
この映画「夜の訪問者」は、チャールズ・ブロンソンがフランスに渡り、ルネ・クレマン監督と組んで大ヒットさせた「雨の訪問者」、次いでイタリアで主演した「狼の挽歌」の後に、「007シリーズ」のテレンス・ヤング監督と組んで主演したサスペンス・アクション。
その後、テレンス・ヤング監督とは、三船敏郎、アラン・ドロンという世紀の顔合わせを果たした「レッド・サン」でも組んでいます。
この映画の原作は、SF作家として有名なリチャード・マシスンのスリラー小説「COLD SWEAT(冷や汗)」の映画化作品で、南フランスの港町で釣り船の船主をしているジョー(チャールズ・ブロンソン)は、7年前に結婚した妻ファビエンヌ(リヴ・ウルマン)と娘のミシェールと平和に暮らしています。
彼は観光客相手に沖釣用の船を出すのが商売で、ある夜、突然、ひとりの男が現われ、ジョー一家に不吉な黒い影を投げかけます。
この男は、実はジョーがかつて加わった脱獄事件に関係があり、その一味が麻薬を運ぶために、ジョーの船が必要だと言って来ます。
一味のボスのロス(ジェームズ・メイソン)は、先手をとってジョーの妻と娘を人質にしますが、ジョーは家族の危機に苦悩しながらも、彼らと敢然と戦い、妻子を守るという、いかにもタフガイ、ブロンソンにぴったりのはまり役を好演しています。
娯楽映画の職人監督テレンス・ヤングは、「暗くなるまで待って」で盲目のオードリー・ヘップバーンを危機に追い込むサスペンス映画の傑作を撮っていましたが、この映画では、昔の仲間に人質として奪われた妻と娘を、悪戦苦闘しながら救い出すヒーローを、ブロンソンの個性をうまく活かして、スリルとサスペンスのツボを押さえた、うまい演出を見せていると思います。
ブロンソンのトレードマークの"口ひげ"、黒いTシャツに青いズボン、白いスポーツ・シューズというラフなスタイルと、身軽な体のこなしなど、まさにブロンソンの魅力がいっぱい詰まっています。
ブロンソンが最も脂が乗りきって、快調にスター街道を突っ走っていた頃の作品だけに精彩があり、生き生きとしたアクション演技を見せていたと思います。
そして、この映画で特筆すべきなのが、ブロンソンの妻役として、世界的な芸術監督のイングマール・ベルイマン監督の映画の常連で、数々の演技賞に輝く、「叫びとささやき」「秋のソナタ」などの演技派の名女優リヴ・ウルマンが出演している事です。
リヴ・ウルマンが彼女のフィルモグラフィーの中で、このようなアクション映画に出演するのは、非常に珍しく、そういう意味でも、この映画はリヴ・ウルマンの熱烈なファンとしては、実に貴重な作品と言えます。
また、悪役として出演している、イギリスの名優で、かつて007ジェームズ・ボンドシリーズの原作者イアン・フレミングが、ジェームズ・ボンドを演じる俳優として強力に推薦したという、ジェームズ・メイソンが、憎々しい悪役を渋く演じていて、彼が登場して来るだけで、画面が引き締まってくるから不思議です。