3.時間を気にすることなく映画に引き込まれました。そういった意味では意外と良い映画だったなという印象です。パッケージのオドレイ・トトゥが割と奇跡の一枚になっていて、本編では年齢(当時33歳)を隠しきれていませんでした。むしろもう少し年を取っている印象も・・ しかしながら、年齢不詳気味のシャネル本人とリンクするくらいにソックリで素晴らしい雰囲気を醸し出していましたので、そういった意味ではあっぱれでした。
物語としてはシャネルになる前の青春時代がメインで、全体的に情緒的でゆったり流れます。しかし実際のところは単純に「若い」+「女」を武器とした、割とありがちな娼婦ネタ(恋愛とは言い難い)でした。男性社会を意識しているのか、くわえタバコなど要所要所下品な描写もあって彼女の育ちが垣間見えなくもないです。
戦争はほとんど描かれませんが、アールデコ時代のヨーロッパの空気感は感じ取れる作りで周りの人達は優雅でオシャレ。貴族階級やそれに準じた人たちの世界ってこんな感じなんだろうなあ、という雰囲気はありました。反対に幼少期や少女期の極貧部分は基本的に描かれていません。
とにかくオドレイ・トトゥの目力が凄くて、私があの目で見つめられたら0.5秒で目をそらしてしまうと思います。台詞は少ないのにやたらと情熱的に見える彼女の演技は本当に素晴らしく、また、この雰囲気も相まって明らかに変人にしか見えませんが、変人度数の高さも大成する人物の必須条件なんだなあと、妙に納得してしまいます。
シャネルが生涯独身だったことは有名な話ですので情事の結末は判っています。彼女は女を最大限に利用しただけなのか、それともあくまで純愛だったのか・・ これは本人の考え方一つなので他人が決めることではありません。そういった意味ではもしかすると物凄く深い映画だったのかもしれません。彼女の表情から色んな感情が見て取れるラストカットは意外と嫌いじゃなかった。