1.《ネタバレ》 冒頭、なぜかYシャツの男が砂漠を追われている。逆光のシルエットでインサートされる追跡陣、そして大地形の中を逃走する男を遠景で捉えるショット。ここだけで何かただごとでない予感が湧いてくるが、本編に入ると一転して「これってウエスタンじゃなかったっけ?」と思うような都市型変形ラブロマンスが展開される。さっきのは何かの幻影だったんだろうか、と思っていると、ラストでしっかりそこに着地する見事さ。●人物造形としては、何よりもカルメンに尽きる。こいつがナチュラルな天性のウソツキだということは序盤で明示されるのだが、あの大きなくりくり瞳でのぞき込まれると、主人公同様、「もしかして本当はいい人なのでは・・・」とつい期待してしまう。そしてあとはいつしか、翻弄され、振り回され、必然のラストに至るのである。全体を知ってから最初の出会いのシーンを見ると、その背後にある人間関係としての黒さというか禍々しさに、何ともいえない気分になる。●途中、物語を侵略せんばかりの勢いで現れるガルシアも、いい存在感を放っています。