1.原作を斬新に現代的にアレンジしながらも、肝心のストーリーは決して損なわれずに、見事に映画化されていたと思います。サンディ・パウエルの衣装、エドゥアルド・セラの美しい撮影も見事です。ヘレナ・ボナム=カーターの出演作品のなかでもベストの1つ。「眺めのいい部屋」「ハワーズ・エンド」の情熱的なヒロインも良かったけれど、この映画での彼女は、とても繊細にケイトを演じていたし、一種の女の怖さみたいなもの、微妙な心理表現も的確になされていたと思うのです。モード叔母の抑圧的な支配、階級社会に縛られた彼女の複雑な立場。それらから開放されること、自由への跳躍を、題名の「鳩の翼」は意味しているのだと思います。イギリスでは鳩は「無垢・自由の象徴」だそうです。ミリー役のアリソン・エリオットの天使のような大らかさ、その微笑みも忘れがたい一作でした。