6.《ネタバレ》 香港警察の刑事課の監視班に配属になった女警官“子豚”の成長物語。ほとんどが監視・尾行という地味な捜査ながら、きびきびとした場面切替と演出で緊張感を盛り上げており、その手腕は賞賛に値する。主である宝石強盗団の話に、子供誘拐が絡むあたりの脚本は絶妙である。早い時期で誘拐犯を登場させているのは、気が利いている。何度か登場する「小話」も効果的に使われている。緊張ばかりでは疲れるので、その緩和に人情を持ってくるところは脚本の機微であるが、その見せ方に工夫が無く、新鮮味に欠ける。緊張感が弛緩なく持続するため見ている間は飽きないのだが、冷静になって振り返ると、気になる場面がいくつかある。
強盗団の首領のチャンがひと仕事を終えて高跳びしようとする時に、18年間刑務所にいた親分が出所してくる。ひと波乱あると思ったが、何もなかった。肩透かしである。
警察は、チャンの携帯電話と強盗団の手下の携帯電話番号はどうやって知ったのだろうか。
“子豚”がチャンを発見するのが「偶然」なのが興を削ぐ。合理的で科学的な捜査を魅せる映画なのだから、チャン発見は、捜査に裏打ちされた結果であることが自然であり、望ましい。
“子豚”の尾行に気づいたチャンが、“子豚”の席に行き、どうして尾行するのかと詰問するが、これはあり得ないだろう。会話の内容が警察に筒抜けになっているのは容易に想像できるわけで、一刻も早く逃走すべき場面だ。
“子豚”と上司“犬頭”の人情物語が映画の良い味付けになっているが、“犬頭”がチャンに刺されてからの“子豚”の行動が不可解である。人を呼び、救急車を呼んでもらい、素早く緊急止血だけして、すぐにチャンを追えばよいのに、動揺が強く、右往左往している。その前の警察官刺殺事件の轍を踏む失態だ。ここでは“子豚”の成長した姿を見せて、チャンの確保につなげばよい場面だ。
チャンの死に方があまりにもあっけない。ボートで逃走しようとして吊り鈎に首を引っ掻けるという事故死。もう少し華麗な最後にしないと帳尻が合わない。
警察の尾行の方法だが、途中で眼鏡をかけたり、帽子を被ったり、リバースの服を裏返したり等の工夫が全く見られなかった。それくらいの用意はしておくべきではないだろうか。