1. 會議は踊る
オペレッタはオペラから派生した歌劇で、演劇要素と軽快な音楽を増し、もっと庶民的にしたものらしいです。ミュージカルの源流ですが、定義的にはっきり区別するのは難しいそうなので、ミュージカルの一種として観て差し支えないと思います。本作を観た上での特徴を挙げますと(1)歌の数が4~5曲程度と少なめ(2)芝居から唐突に歌に入るような場面がなく、劇展開はミュージカルより自然(3)個人よりも集団がメイン。などでしょうか。2と3がハッキリしているのは、歌が宴上でほぼ限定されているからです。宴の音楽に合わせて、諸大臣の揺り椅子(空席)が揃って踊るように揺れ、ひとり進行役が議決を読み上げるシーンなどは、音楽と風刺(ウィーン会議はパーティばかりでちっとも進まなかった)の両面の楽しさがあります。しかし、史実の隙間に生まれた物語らしく、大胆な展開には欠けていますね。影武者騒動や宰相の画策などが膨らみきらず、起承転結の起承だけで終わってしまうような、尻切れトンボな印象が残りました。 5点(2004-12-19 18:39:23) |
2. シャンプー台のむこうに
死と、家族の和解という深刻な問題を、ユーモアでコーティングした素晴らしい作品です。フィル(アラン・リックマン)とシェリー(ナターシャ・リチャードソン)の和解が主題になっていて、ヘアカット選手権はむしろ脇道なのですが、クライマックスでしっかり本筋となる辺り、脚本が本当に上手い。死体へのカラーリングや、悪ノリしていく市長など、嫌味にならない笑いどころもたっぷり。久しぶりによい映画を観させて貰いました。10点はよほどのことがない限りつけないのですが、謹んで贈呈させて頂きます。 10点(2004-10-10 01:48:52)(笑:1票) |
3. D-TOX
雪山の奥に建つ警官更生施設、という舞台は面白いのですけれど、それが生きていません。マロイがD-TOXに入るまでに映画の4分の1を使ってしまっているのが痛い(閉鎖空間劇である『ダイ・ハード』『シャイニング』『死霊のはらわた』などが、さっさと舞台へ移動していることを思い出して下さい)。これで時間が足りなくなってしまい、施設や人物をじっくり説明することはおろか、「誰が犯人なのだろう?」と観客に考えさせる余裕すらなくしてしまいました。落ち目とはいえ結構豪華な施設内の顔ぶれは、本来なら推理劇にうってつけの筈だったのですが・・・。映画全体の低調ぶりで、よけいに落ち目を強調することになってしまいました。D-TOX、警官のみならず、俳優の更生にも失敗したようです。 4点(2004-03-06 17:49:25)(笑:1票) |
4. 最後の人
あらすじで書きましたように、字幕がなくても設定や物語がよくわかる、非常に完成度の高い作品です。スラップスティック・コメディ(ドタバタ喜劇)ではないことを考えると、これは驚異的なことだと言えましょう。しかし本作で使われている視覚演出は、現在でも当たり前のように見ることが出来るものばかりで、今この映画を改めて観る価値自体は薄くなっている気がします。本作の先見性、歴史的貢献度は疑いようがありませんけれども、そういう面での評価は他の方におまかせして、敢えてこの点数です。ところで、オープニングの音楽は名曲だと思うんですけれど、CDにはなっていないのでしょうか。 5点(2004-03-06 17:16:46) |
5. バイオハザード(2001)
もともとゲームの『バイオハザード1』は、洋館が舞台であり、テンポはゆったりとしていて、古典的な怖さを持っていました。映画は逆です。現代企業の地下施設で、スピードとアクションを中心にしたストーリー。ノリ的には2以降に近いでしょうか。主役のミラ・ジョヴォヴィッチが存在感を発揮していて、なかなか楽しめる作品になっています。それが佳作の域を出ないのは、勿体ぶった前半に問題があるからでは。アリス(ミラ)は記憶を一時的に失った工作員で、彼女の館にいた男も同じ。監督はインタビューで「誰が敵で誰が味方か判らなくした」と語っています。その試みは一定の成果を見せていて、序盤に張られた伏線が明らかになる場面では、ミステリ的な爽快感が味わえます。ただし、そういう灰色の演出のせいで、観客が主人公へ感情移入するのが遅れ、すんなりストーリーに入り込めなくなっているのです。前半のアリスは、工作員にただついて来ているだけであり、どんなことを感じ、考えてるのか判然としません。ミラの神秘性がマイナスに作用してしまってます。彼女のモノローグを取り入れるなど、内面を書く工夫をしていたら、とっつきやすかったでしょうし、評価ももう少し上だったでしょう。 6点(2004-02-08 17:14:04)(良:3票) |