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皮マンさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 225
性別 男性
自己紹介 当方のレビューは全て独断と偏向に満ちております。
「公平・公正なレビュー」などというつもりは金輪際毛頭まったくありませんので、どうぞご安心ください 。

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1.  女中ッ子 《ネタバレ》 
東京人のよそよそしさがそれなりに表現されているのに対し、それと好対照であるべきリラックスした秋田人のノリが表現されていないことに驚く。おそらく監督は田舎というものを何も理解せずに作っているのだろう。まるで書き割りのような地域性のない秋田。初の実家の面々は硬い台詞と演技で全く心の繋がりが感じられない。既によそ者と化した初が吹かす東京風のせいか?とでも考えたくなるような白々しさ。なまはげもまるで観光用のそれだし、子供たちの反応の薄さも不自然だ。これでは勝美が秋田まで行った意味が無い。実際あの経験を通して彼が成長したようには思えないので意図的なものなのだろうか。 しかし左幸子の動きのキレの良さには快感がある。時代が時代ならカンフーもののヒロインになっていたのではないだろうか。
[インターネット(邦画)] 4点(2022-06-12 13:56:09)
2.  丑三つの村
舞台となる村に家が4件しか無いように見える貧しい空間表現。田舎の闇夜の漆黒は全くと言っていいほど表現されておらず、光源がどこにあるのか不明のLED的な白い光が村を覆う。追い詰められた者の狂気がぜーんぜん伝わってこないペラペラな主役の演技。ファミコンのBGMのような頓狂この上ない音楽。これらから演出の安さは開始5分で分かるので、重厚さを求めなければ特に不自由は感じない。この作品に期待するのはエロ描写の真剣度だけだから、文学性や気取った所が全くない演出はむしろ好感が持てる。しかし肝心の裸は、総じて乳さえ出しておけばいいだろうという安直さが感じられ残念。結局ボカシが入るのなら騎乗位は女性を後ろから撮って欲しいものだ。尻派としては下半身のボリュームを感じたいのだ。女優さんの性反応もそれぞれ頑張っているとはいえ想像の範囲内。五月みどりの濡れ場は初見だったが、意外に凄みのない商売女的な反応。まあ彼女はそんなものかもしれないと妙に納得。コメットさんが脱いだらさぞ珍奇だろうと期待したがそれは無かった。映画冒頭ずうとるび新井が、温泉場の土産物の卑猥な写真を純真な古尾谷に見せるエピソードがある。ささいな小道具とはいえ、なかなか扇情的な写真で監督の見識を感じた。これをちゃんとアップで映したのも爽やかだが、エロさという点ではそこが頂点だったのは寂しい。できれば春川ますみのような本物のスケベを起用して、シビれるようなエロさを感じさせて欲しかった。
[インターネット(邦画)] 4点(2021-01-25 21:27:31)
3.  忍ぶ川 《ネタバレ》 
これは珍品。単純な恋愛物、それもハッピーエンドのラブストーリーなのだが、作品全体を覆い尽くす不穏なムードはレベッカあたりの心理サスペンスのようだ。精神的に壊れた小姑のいる旧家に嫁ぐ栗原。普通ならどえらい事が起きるはずのプロットなのに、小姑はよくいるアスペというくらいのもので結局何も起こらない。では見所はどこか。まず画面構成が素晴らしい。日常風景の中の幾何学的オブジェ(階段や橋のトラスや障子の桟など)を上手く画面に活かすその美意識に感服した。そしてそれらの素晴らしい背景画にはめ込まれ、テクスチャマッピングみたいな異様な顔の加藤剛と、これまた人間離れしたハイパーブリッ子演技の栗原小巻。このプラスチッキーな二人のラブラブな様を見ているだけで、人様の悪夢の中に迷い込んだような居心地の悪さと不条理感を味わえる。主役なので当たり前とはいえ、両人ともこの世のものとは思えない浮きっぷりで、画面からせり出すような顔の圧迫感が凄い。物語はそんなカップルがラストは初夜の貫通式を無事迎えられてめでたしめでたしという脳天気な話で、恐ろしげなムードは一体何だったの?と肩すかしを食らわせられる。これが却って意外性があって良いのだから映画って不思議だ。但し残念なことにクライマックスの濡れ場があまりいただけない。栗原が浴衣を脱ぐプロセスで、裸のバックショットを狙える場面があるのに手慣れたストリッパーのようにサッと隠してしまい、尻とか一切見えない。乳首がチラチラ見えるのは結構なのだが、終始布団に入っていて体全体のボリューム(特に下半身)が分かるカットがひとつも無い。愛撫に対する反応もごく控えめでまるで不感症のように見える。ウブな女ということを表現したのだと思われる硬い演技の結果、全く欲情をそそられない。これでは加藤剛も内心あてがはずれたのではないか。清楚系女子は性行為中狂気を感じるくらい豹変してこそ、その清純さが価値を持つのだ!
[地上波(邦画)] 7点(2017-11-23 15:49:17)
4.  シン・ゴジラ
まるで実写によるリミテッド・アニメ。写真で作った絵コンテを静止画のままで見ているようだ。ドラマも俳優の演技も不在の本作はどう考えてもプロの作ったそれじゃない。なんでも映画の文法に沿ってりゃいいというものではないし、常識からの逸脱はアートの必須条件だ。しかしこの映画の逸脱は、創造的行為というより庵野氏の力(物語を作る能力及び俳優やスタッフとのコミュニケーション能力)の無さから導かれた様式、と感じられてしまうのがなんとも情けない。残念ながら氏の引き出しの少なさは致命的で、結果「ぺらぺら早口台詞シーン」と「ゴジラゆったり前進シーン」の2パターンの画面しかない退屈極まりない仕上がりになっている。何故か自衛隊の撃った弾が全弾ゴジラに命中し、全くと言っていいほど市街地には着弾しないのは不自然でとっても気持ち悪い。私には狂人が作ったように見えるこの作品を、アウトサイダー・アートとしてならともかく、まるでまともな映画のように語っている評論家諸氏は、業界内の同調圧力に流されているとしか思えない。これが世界レベルでは無視されるのは当然至極だ。
[ブルーレイ(邦画)] 0点(2017-05-05 10:38:21)
5.  カルメン故郷に帰る
初の国産カラー映画だそうだが、それ以上に驚きのトリップムービー(但しバッド・トリップ)だ。なにしろタイトルバックからして尋常じゃない。地獄の底から響いてくるような、デビューした頃のあがた森魚みたいな、聴いてると死にたくなる短調の陰々滅々とした童謡。その背景に映し出されるのは脳天気風な筆致の田舎風景のイラスト。画と音楽とが完全に乖離していて制作者の意図が全く理解出来ない。そしてこの異様な乖離は映画全編を貫いているのだからびっくりだ。どうやら真面目で陰気な田舎の人間と軽薄で脳天気な都会人の対比の面白さを狙ったように思えるが、二者のコントラストがあまりに強すぎて二つの世界観を脳内で融合させることは難しい。しかしそれは仕事に対するいいかげんな姿勢の結果というわけではなく、絵的には初のカラー作品という企画意図にばっちりはまった良い画が続出する。まず非常に見応えのあるパノラマ的大自然が美しい。ぼろい建物やトロッコみたいな列車や馬や牛などの動物が昔のカラーで見ると意外なほど活き活きしていて楽しい。もちろんぴちぴちした肢体を見せつける二人のおなごもたいへん眼に美味しい。そんなこんなで感じるバイタリティを、全ての浮かれた気分を、ありえないくらいダウナーなテーマ曲が徹底的にぶち壊す。これが悪い夢を見るような不快さで私のようなトリップムービー好きには堪えられないご馳走だ。おそらくそんな前衛を意図したわけではないだろうから、この違和感は「なんのかんの」さんが仰るように時代の価値観が違うせいなのだろう。戦後の退廃的な世相を皮肉る意図もあったのだろうか。確かに続編の「カルメン純情す」からは監督の「戦後」に対しての苛立ちが感じられる。いずれこんな鬱陶しい曲が違和感なく感じられる辛気くさい世の中など私はまっぴらごめんだが。
[DVD(邦画)] 9点(2017-01-23 15:00:07)
6.  疑惑(1982) 《ネタバレ》 
本作には大勢の役者がカメオ出演する。その顔ぶれと結果を見ると野村監督は佇まいがその役に見える役者をキャスティングしさえすれば、あとはろくに演技指導しなくていいとお考えのように思える。役者の力量の差が思い切り顕わになって、演技レベルがバラバラになってしまっている。総じてベテラン勢がさすがの演技を見せていて、特にみごとな松村達雄・丹波哲郎・山田五十鈴あたりは自分にあわせて適当に台詞をアレンジしていると思われる。若手では鹿賀丈史が特にはまり役で芝居も上手い。千葉県知事の人もボロの出ないチョイ役のせいもあってかなかなかいい。残念なのはまず岩下志麻。得体の知れない人物造形に説得力を持たせるだけの深みはなく、記号的演技に終始している。そして主役の桃井が柄本明や新田昌玄と並ぶ下手の筆頭格なのはまずい。ギャーと叫ぶ大仰な演技からタバコに火を付ける小さな演技まで、よくこれでオーケーが出たなというカットが続出する。彼女の芝居を支持している方々には申し訳ないが、台詞回しに手一杯で身体の使い方に意識を向けることが出来ないように見える。自然な演技が難しい雑な脚本なので全て桃井のせいにするのは酷かもしれないし、そもそも素はあんなヒステリックな人じゃないんだろう。演技指導は黒澤明みたいに厳しければいいってものではないが、主役級のまずい芝居を見ると投げやりな監督の責任はやはり大きいと言わざるを得ない。そして本作には演技指導の問題とは別にシナリオ上の大穴がある。桃井は事故の時のダンナの様子を知っているわけだから、本筋であるダンナの無理心中の線を初めから訴えるのが当然だろう。彼女は六法全書まで持ち出して無実を勝ち取ろうとしているくらいなのだから。岩下が桃井にそこらへんを聞き取る描写がないのもあまりにも不自然だ。時に屋上屋を重ねるもっさりした展開といい美学の無いカメラワークといい火曜ワイド劇場かなんかのテレビドラマみたいな安い造作。よって飯でも食いながら横目で見るのにふさわしい作品と考える。
[DVD(邦画)] 1点(2017-01-02 12:18:14)
7.  乱れる 《ネタバレ》 
惜しい。実に惜しい。互いに引かれあいながら女の異常な潔癖症のために、なかなかぐさっ!といかない二人。「あたしだって女よ」なんて重大な告白した高峰秀子と温泉旅館の部屋に二人っきりになった時点でもう加山雄三は勝利を摑んだも同然だったのに!密着を期待しつつも狂人クラスの古い貞操観念が邪魔をして心の準備が充分できていない高峰が反射的に放った「堪忍して」の一言に、これまた反射的にむくれちゃったのが加山の敗因だ。あそこはあんなにすぐふて腐れちゃっちゃあいけない。眠狂四郎みたいな気分になって「一度味をしめたそなたの肌が男を求めていることはそなたがいちばんよく知っておろう」と余裕を持って切り返すべきところであった。そこまで達観できなければ植木等みたいに「お呼び出ない」とか言って誤魔化してちょっと間をおけばいい。そうするとスタンダール先生が「恋愛論」で仰るように彼女の中でエッチな妄想がどんどんふくれあがることだって大いに期待できる♥ とりあえず風呂に入って(これ重要)、とりあえず飯を食って酒でも飲んで、とりあえずふとんに入る。その間浴衣をはだけるとかしてちょいちょいそっち方面に意識を行かせるようにすれば、性交成功の確率は3000倍くらい上がったのに。ああいう無理して性欲を堰き止めてるっぽい女はセルフ寸止め状態だから、ひとたび一線を越えるとありえないくらいにひーひー「乱れる」ことも期待できたのに。和風旅館の小道具、浴衣の紐や座椅子や梁なんかもうま〜く使えばいいのに♥♥♥ ちなみにブチッと唐突に終わるタランティーノみたいなエンディングは文句なく素晴らしい!
[DVD(邦画)] 7点(2016-12-31 11:32:01)
8.  生きものの記録
独りよがりが過ぎて狂人の域まで至っている黒澤監督が、同じく独りよがりが過ぎて狂人の域まで至っている男を主人公に描く純粋独りよがり映画。監督の内面をそのまま実体化したような不快なじじいが主役。そして、凶暴なようなそうでもないような彼を近親者が恐れているようなそうでもないような、心理的につじつまのあわないシーンが連続してあきれる。そんなご都合主義の演出は歌舞伎の型で出来ているようなシュールさで、無理矢理な老け役の三船敏郎の力みすぎの熱演と、コントみたいなメークの水戸黄門の登場と相俟って観ているこちらも発狂しそうだ。また大上段に構えすぎる問題意識の表明は、黒澤さんがはずす時の「観客おきざり」というある意味王道ともいうべきパターン。本作はタイトルからしてそうとう恥ずかしいその手の代表作かと。こんな自己満の塊みたいな作品のために、町工場のセットを周辺も含めてまるごと作るのだから、当時の映画産業の持つパワーに思わず感心してしまう。家庭裁判所の廊下のセットは当時新しく出来た体育館みたいなスタジオを斜めに使った長大なものらしいが、画面を圧縮して密度を高める黒澤理論に沿って望遠で撮っているせいで奥行き感はなく、その効果はほぼ感じられない。大塚駅のセットもそれを作る必然性を感じる画は無い。いったい何やってんだ? 我が儘いっぱいの大人子供が作ったような極めて奇怪な作品なので、貴重なその珍奇さをもって10点でも100点でもいいのだが、どう好意的にみてもドラマ的なチープさは否めないうえに、心底恥ずかしい気持ちにさせられたので0点。
[DVD(邦画)] 0点(2016-12-29 16:40:57)
9.  怪談(1964)
どういうわけかこちらでの評では「耳なし芳一の話」の人気が低いが私は断然「芳一」を支持する。「黒髪」は話が単純すぎ。「雪女」は(本作の舞台装置は「型」だと理解したうえであっても)息が白くならないのが致命的でどうにもノれない。「茶碗の中」は珍しいリドルストーリーとして悪くないがあくまでオマケ的な扱い。そこへいくと「耳なし芳一の話」は元々の話の抜群の面白さに加え、海岸ロケ・屏風絵・セットの海・寺・屋敷・文字だらけの芳一の姿と、おいしいビジュアル満載だ。平家の武家屋敷でのシンメトリーを強調したキューブリックを思わせる構図も高い効果をあげている。さらに劇中で案じられる琵琶の演奏は、邦楽に見識がない私のような者にも充分その良さがわかる素晴らしいものだ。
[映画館(邦画)] 8点(2016-12-13 15:33:44)(良:1票)
10.  FAKE 《ネタバレ》 
今までの報道や経過から想像していた佐村河内像を出ない。序盤監督が彼に「私を信じていますか」なんて問いかけ「信じています」と言わせるといった気味の悪いやりとりなんかあって驚く。目に映るものの嘘・まがまがしさがテーマの作品なので全てが意図的なものと思われるが、佐村河内氏の発言は嘘も真実も中途半端に含んでおり、信じる信じないなんてことを大真面目に問うてもあまり意味が無いように感じる。彼は筋金入りの演技性人格と思われるので虚と実がぐちゃぐちゃに混ざり合っているのだろう。演技性人格という点では監督も相当なものだが。表面上二人が低次元でかみ合っているせいかその展開に意外性はほとんどない。中盤民放テレビマンが登場して信じられないくらい嘘くさい振る舞いを見せてくれ、その卑しさに圧倒される。「あなたをおもちゃにしない」などとテキトーなことを言っているくせに、誠意があるように見せるため意志の力で目が泳がないようにしているのが見え見えで、このシーンが一番興味深かった。仕事とはいえ気の毒なことだ。相対的に佐村河内氏の方がまともな人に感じられてしまうこのシークエンスが、映画の意図を最も端的に表現した部分だろう。彼は豆乳が異常に好きだということが明らかになる不思議なエピソードも実に怪しい。あの底知れない人風のキャラは奥さんと一緒に作り上げたものではないか。というか「人形使い」ではないが、奥さんの方が本体で佐村河内氏は彼女の期待に添うように演じているだけなのではとさえ感じさせる。彼女がいなければ佐村河内氏は別のキャラで新たな人生を演じる可能性が高いと思った。試写会で「絶対に口外しないで」とアナウンスされたラストはそんなに驚くほどのものではない。これもまがまがしさ演出の一端だったのだろう。総じて今村昌平のメタドキュメンタリー「人間蒸発」の系譜という印象。
[映画館(邦画)] 7点(2016-11-30 22:09:01)(良:1票)
11.  選挙 《ネタバレ》 
いくらなんでもここまで脂ぎった不快な人達が不快な行動をし続けるのを2時間見るのは正直言って辛い。おまけに連中の喜ぶ結果も不快で不快で一瞬たりとも救いがない。それこそが現実というのは間違いないが、長年生きてきて嫌というほど思い知っていることなので今更確認させられる意味もない。監督の提唱する観察映画は素材が全てなんだね。爽やかな人しか登場しない同監督の傑作「精神」を観てこの不快感を中和することにしよう。
[DVD(邦画)] 0点(2016-08-23 08:45:49)
12.  人間蒸発 《ネタバレ》 
当人にとっては事実の証言であってもカメラが入っていることを認識している以上、話すことには必ず演技の要素が入ってしまう。そしてこの映画には到底演技とは見えない自然なものから極端にわざとらしいもの、更に単なる素人の棒読みまで、色んなレベルの演技がごたまぜになっている。ヒロインとレポーターの露口が不自然な演技者の代表格。ドキュメンタリーの取材者と被取材者でありながら監督の命を受けて異様な恋愛ごっこを演じてみせる。謎なのがヒロインの姉。その話しっぷりはどうみても自然で嘘をついているように見えない。しかし彼女の証言が虚偽であることを匂わせる証言者が複数出てきて、ラストはそのうちの一人と姉が対決するという構成になっている。この証言者というのがまた思い込み系の人に見えてどうも信用できない。そして姉に証言の内容を否定されることでその思い込みがますます深くなっていくように見える。観客にはどこに真相があるのか・どういうつもりの作品なのか全くわからなくて腑に落ちない気分が最後まで続く。途中何度かイタコの口寄せが挟まるが、イタコはどんなに真に迫って見えてもその発言は嘘にきまっている。正真正銘の嘘つきという点に於いて、他のどちらともつかない出演者よりむしろ信頼できる。イタコがこの混乱した映画の中ではほっとするような息抜き的存在になっているのだ!…ラストの対決の舞台が浅草橋の路地というのは私のような昭和マニアには堪らない。いかにもATG的な実験作品なのに、やってることが下世話なワイドショーなので決して気取ったお芸術風にならず最後までバカっぽいテイストで実にすがすがしい。唐突に解散になるラストはまるでモンティパイソンのホーリーグレイルだ。
[DVD(字幕)] 10点(2016-05-25 08:28:48)
13.  大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン
子供が出てこないというだけで大人の鑑賞に耐えるという評価をされる傾向にある本作だがホントにそうか? バルゴンはトカゲなのに水に溶けるんだぞ。そんでもって熱帯産なのに舌の先っぽから冷凍ガスを吐くんだぞ。そこはカメがジェットで空を飛ぶ世の中だからまあいいか!と目をつむるとしても得体の知れない土人女の提案を自衛隊はウラも取らずにどんどん採用するんだぞ。それって「ギャオーって鳴くからギャオスっていうんだ」ていうガキの言い分が通っちゃう皆さん大嫌いな例の世界観と同じじゃん!いいかげんあほらしくないすか? でも主役をはじめとして(あなたや私のような)しょうもない人しか出てこないっていうのはまことにリアルで良いですね♥このどす黒い雰囲気はアダルトと言えるのかも。あとテーマ曲のAパートは不気味に粘っこくて心に残る。
[映画館(邦画)] 3点(2016-05-24 14:44:06)(笑:1票)
14.  競輪上人行状記
競輪にはまり、どこまでも堕ちてゆく男の生き方を容赦なく下世話に、それでいてどこかユーモラスに描いた大傑作。中学教師である小沢昭一の転落っぷりもすごいが、南田洋子の役どころが犬殺しでマゾの未亡人!葬式仏教に対しての批判をストレートに描いているのも素晴らしい。原作者寺内大吉が坊主だということを思うとその底知れぬ無常観に感動を禁じ得ない。小沢昭一のライフワークだった放浪芸への愛着がラストに劇的な形で活かされていて深みのある物語を更に別次元に引き上げている。地方競馬にロケした本作のエンディングは今まで観た幾多の映画の中でベスト中のベストだ。
[映画館(邦画)] 10点(2014-11-16 11:18:04)
15.  セックス・チェック 第二の性 《ネタバレ》 
女だと思っていた選手をオリンピック出場のために「男になれ」といって育てたコーチが、彼女がふたなりだということが分かり、今度は「女にする」といってやりまくり、女にしすぎて失敗する。そんな冗談みたいな噺がシリアスなドラマとして存在するのだ。長年センス・オブ・ワンダーという言葉はもっぱらSF作品に使うものと思っていた。しかしこの作品から受ける衝撃はまさにセンス・オブ・ワンダーとしか言いようがないタイプのものだ。「女になる」という言葉の意味が一瞬よく分からなくなる快感。原作者も監督もアタマがおかしいのではないかと賞賛したい。緒形拳のキレっぷりが恐いくらいなのにも心底驚いた。動物のような安田道代と、マネキンのような小川真由美もすごい。寺内大吉原作の映画2作品は「競輪上人行上記」といいこれといいハズレがない。他にももっと観たいのだが残念なことに現在観られるのは二つしかないらしい。
[DVD(邦画)] 8点(2014-11-11 21:58:40)
16.  桐島、部活やめるってよ
クラスのイケている連中とイケてない連中が平行して対称的に描かれる。そのメリハリの効いたキャスティングと芝居の付け方が素晴らしく、演技を観ているだけでも面白い。加えて不在の桐島についてどのような落とし前をつけるのか気になって最後まで興味が持続する。音楽はあまり使用されておらずほぼ現実音のみなのに、クライマックスではそれが劇的な効果を上げるように設計されている。不意打ち的に涙腺を緩ませるその使い方はちょっとあざとさを感じるものの許容範囲内だ。「エレファント」の先鋭的な手法を下敷きにしながら分かり易いテーマとドラマチックな展開を持つ本作は、娯楽性と文学性を高次元で合体した良作だ。
[DVD(邦画)] 8点(2014-01-04 16:05:49)
17.  千と千尋の神隠し
今時少女売春を賞賛した驚くべき作品。子供の売春どこが悪い!という危ない主張の込められた映画を日本中のよい子たちに見せたのだから宮崎監督は本当に逝っちゃっている。誤解しないでほしいが、けなしているのではない。古き良き、おおらかな日本の性風俗に対しての深い共感が胸を打つ。私には幼女趣味はないが、多くの人が “当たり前” と疑わない現在の性道徳に対し、くさびを打ち込もうとする宮崎氏のその勇気ある姿勢には尊敬の念を禁じ得ない。 但し普通の映画作品として特に面白いわけではない
[DVD(邦画)] 10点(2013-04-10 13:17:36)(笑:1票)
18.  大魔神怒る 《ネタバレ》 
1作目と似たようなプロット。そこに水だの発破だのなんとか絵的な変化をつけようという努力がみえるのはいい。藤村志保の熱演も光る。しかし見終わって得られるカタルシスは1作目に比べ大幅に減少している。追いかけっこの繰り返しという平板なドラマパートも痛いが、最大の問題は最も気分が高揚するはずの水面割のシーンに、劇中の目撃者がいないこと。あそこは劇中の人物と観客が驚きを共有することによって初めて真の興奮が得られるのではないか。欲を言えば、悪役どもが恐れおののきつつ圧倒的な水量の水に呑まれる〜それを驚愕の眼差しで見届ける主人公ご一行、といった演出があったら、とてつもない名シーンになったのではないか。そこらへんのツメの甘さがなんとも残念でならない。さらに魔神が一仕事終えて勝手にアクションを停止してしまうのもいただけない。1作目の最大の美点は魔神が荒ぶる神であり、善悪という人間の都合を超えた存在だったところだ。悪を倒すという目的を持って行動してしまうアラカツマは正義の味方、良い奴であって到底“魔”神とはいえない。そのせいで乙女の涙の価値、ならびに物語の深みが半減してしまっている。 本当に惜しい。
[映画館(邦画)] 4点(2013-03-06 19:05:46)(良:2票)
19.  座頭市地獄旅 《ネタバレ》 
市のライバル成田三樹夫氏がえらくカッコイイ!プライドのありかが将棋と剣の勝負のみに集中しきっている浪人。剣豪が日銭を稼ぐのに自分を打たせる大道芸なんかしているのがいい。そのことが彼のニヒルな人間性をさらっと表現していて上手い。物語り的にも市との脳内将棋バトルが要所要所に挟まれていて、二人の関係の深まり具合を示す良いアクセントになっている。仲良く遊んでいたのに結局対決することになる動機が判然としないが、成田氏の佇まいと行動を見るとくだくだした理屈は不要と感じてしまう。そういう狂犬のような人同士なのだな、と。三度目の対局で、徐々に将棋を指すテンポが上がっていき、一気に斬り合いになだれ込むくだりのカタルシスが気持ちいい!このクライマックスは同年発表の博打映画の傑作「シンシナティ・キッド」とそっくりなテンポと目のアップだが影響をうけているのだろうか。それにしても三隅監督は行間で語るのが本当に上手い。
[映画館(邦画)] 8点(2011-11-04 09:16:23)
20.  続・座頭市物語
1作めと続けて観た。さすがに同年に作られただけあって物語も登場人物も驚くほど前作と繋がっている。なのに受ける印象がぜんぜん違う。ださい。前作にあった映像の風格、ライバルの格好良さ、各登場人物の深み、殺陣までのタメ、対決のカタルシス、市の背中に漂う悲しみ等々がみごとに抜け落ちてぺらぺらのスーパーマン譚に堕している。若山のキャラもなんだかぼやけていて、いったい何をしたいんだかよく分からない(女を取った取られたの遺恨でいいのか?)。「あギャー!」と騒いで唐突に終わるラストはまるでタランティーノの「デスプルーフ」のバカエンディングみたいでおもわず笑ってしまった。
[映画館(邦画)] 3点(2011-11-02 21:03:58)
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