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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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1.  ウォーカー(1987) 《ネタバレ》 
伝記映画と見せかけつつ、自国の利益のためであれば他国の主権を平気で侵害している80年代当時のアメリカを批判した作品。オリバー・ストーン監督の『サルバドル/遥かなる日々』と同一のテーマを扱った作品ではあるものの、『サルバドル』が強力なドラマ性によって時代に囚われない価値を有していることと比較すると、本作は今見ると古臭さを感じさせられました。 主人公・ウィリアム・ウォーカーは代表的なフィリバスターであり、作品は彼が私設の兵を用いて勝手にソノラ共和国を作った後に国軍により鎮圧される場面から始まります。独特の真っ赤な血糊やスローモーションの使い方がサム・ペキンパーっぽいなぁと思っていたのですが、後から調べてみるとアレックス・コックスはペキンパーの大ファンということでした。 その後、本国で裁判にかけられるも無罪となり、また彼の履歴に注目した富豪から、運河が通ると噂されているニカラグアの政権を取ってこいとの話を受けるウォーカー。彼を引き留めていた聾唖の婚約者もコレラで亡くなり、ウォーカーは再び中米に戻ることを決意します。この通り、序盤の段階でまぁいろいろ起こるわけですが、ここまでドラマ性ゼロ。監督は話を前に進めることのみに専念しており、ウォーカーの心情に触れようという気はビタ一文ないわけです。ソノラ共和国の挫折からウォーカーはどうやって立ち直ったのか、また婚約者の言葉を彼はどう消化していたのか、そもそも彼はなぜ他国への軍事介入をライフワークとしているのかなど気になる点は多いのですが、そこにまったく触れてくれないのでドラマに入り込めませんでした。 中盤以降もウォーカーの心情にはほぼ触れられず総合的には失敗した映画だと思うのですが、他方で司祭のような黒服を着て、銃撃戦の最中でも気にせず大通りのド真ん中をズンズン歩いていくウォーカーの、自殺願望があるんだか神の使いか何かだと勘違いしてんだかよく分からない姿などは妙に印象に残りました。どちらにしてもウォーカーはイっちゃってる人ではあるのですが、これにエド・ハリスが実によくはまっています。常にまっすぐ前を向いてはいるものの、どこに焦点を合わせているのかはよく分からない視線の動かし方や、ほとんど中身のないことを自信タップリに話す様など、信念を持ったキ〇ガイ演技がなかなか堂に入っているのです。 傀儡政権がどうも言うことを聞かなくなったということでこれを処刑して自ら大統領に就任したり、部下の反対にも耳を貸さずに奴隷制を復活させたりと問題行動が目立つようになったことから、ウォーカーは最終的にアメリカ政府からも富豪からも切られるのですが、ウォーカーの人となりは冒頭から何ひとつ変わってはおらず、問題が大きくなるまではこんな異常者を重宝していたアメリカの政府や財界こそがおかしかったのではないかという結論で映画は締めくくられます。時代劇でありながらリムジンやヘリを登場させる場面には、これが現在のアメリカの物語であることを示すための演出意図があったとのことですが、これらの演出がどうにもあざとすぎるように感じました。また、制作時点から30年以上経った今となると、これらのメッセージも古臭く感じられました。
[DVD(字幕)] 5点(2018-05-08 19:02:51)
2.  沈黙 ーサイレンスー(2016) 《ネタバレ》 
原作未読。 人を救いたくて信仰を守っているのに、その信仰を捨てなければ信徒を殺すと脅された宣教師のジレンマ。なかなか面白くなりそうなお話なのですが、「神よ!なぜ沈黙なさるのです」的な発言を何度も何度も繰り返すアンドリュー・ガーフィールドの姿を眺めるのに160分という上映時間は長すぎました。また、最後の最後で神が主人公に語り掛けてくる場面にも感動がなく、さらには神と主人公の間で出された結論が一体何だったのかもよく分かりませんでした。 他方、本作の面白かった点は、信仰を理解しない人たちの意見もちゃんと反映されていることであり、宗教映画でこのような体裁をとっているものはかつてなかったと思います。キリシタンを取り締る役人達は「まぁどうでもいいから、さっさと踏み絵を踏んでよ」という姿勢なのです。取り締りの先頭に立っている筑後守(イッセー尾形が素晴らしい演技)すらキリスト教の価値観そのものを否定しておらず、キリスト教に乗っかって入ってきた西欧諸国の悪影響こそが問題であったとの発言をします。 また、キリシタン弾圧に屈したフェレイラ神父による比較文化論にも興味深いものがありました。日本人は一神教の価値観を持っていないから、俺らがどうこう言ったって変わらないよと言うのです。さらには、隠れキリシタン達ですら我々と同じ感覚で神を捉えておらず、日本式に曲解した形での理解になっていると。そんな社会で犠牲者を出してまで信仰を守る意味はないから、さっさと折れなさい。そして日本社会が望む形で貢献してあげなさいと言うのです。こちらの主張も面白いと感じました。 宗教映画としてはまったくピンときませんでしたが、文化を描いた映画としてはなかなかよくできています。もっと上映時間が短く、かつ、もっと鋭利な描写があれば、面白い映画になっただろうと思います。
[映画館(字幕)] 6点(2017-01-21 16:23:05)(良:1票)
3.  ボーダーライン(2015) 《ネタバレ》 
ハリウッドが本格的に製作した麻薬戦争映画は『トラフィック』以来となりますが、見掛け倒しで何だかボヤっとしていたソダーバーグとは違い、本作では”凶暴なメキシコ麻薬カルテルvs戦争慣れした米国防総省”という燃えるカードが準備されています。最高でした。 この戦いの激しさは想像を絶するものであり、例えばFBIの中ではかなりの敏腕だった主人公ケイトが国防総省の特殊部隊では完全にできない奴扱いで、「まぁ邪魔しない程度にやってよ」なんて言われているわけです。いろいろ見聞きする中でケイトなりに怒りを感じたりもするものの、ジョシュ・ブローリン隊長からは「はいはい」と軽くあしらわれる始末。FBIが国内で相手している犯罪者達とメキシコの麻薬カルテルではまったくレベルが違うのです。 そんな麻薬カルテルに対する米側のカウンター兵器として登場するのがベニチオ・デルトロ演じるアレハンドロ。元はコロンビアの検事だったものの、家族を惨殺された恨みから殺し屋に転向したという情け無用の殺人マシーンです。暗殺者を意味する原題は彼を指したものだと考えられますが、検事という畑違いの経歴を持つアレハンドロが、米国防総省からも一目置かれるほどの暗殺者に変貌を遂げた過程ではとんでもない訓練に耐えたのだろうということが想像され、こちらでも燃えました。 本作は多くを語る映画ではないのですが、登場人物達の過去には一体何があって今に至っているのかという含みが多く持たされているためにドラマ性が高いレベルで維持されています。ロジャー・ディーキンスによる美しい撮影とも相まって、あらすじ以上に格式の高い作品に見えています。こちらもお見事でした。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2016-10-25 15:25:07)(良:1票)
4.  チャッピー
登場した時にはロクでもないチンピラだと思ったカップルが、チャッピーと共同生活を送ることで親らしくなっていきます。この辺りは『ツォツィ』を思い出したのですが、南アフリカではこういう話がウケるんでしょうか。チンピラカップルを演じたのは南アフリカで人気のヒップホップグループ「ダイ・アントワード」の二人であり、それぞれ実名で出演しています。 まずチャッピーをかわいがるのはヨーランディで、「チャッピーちゃん」と言って彼に愛情を注ぎ、絵本を読んでモラルを教え、彼の精神的な支柱となります。他方、ニンジャはチャッピーをスラムに連れて行き、強くなければ生きていけないということを教えます。舞台がヨハネスブルグだから「銃の撃ち方を覚えろ」とか「車を盗んで来い」って話になるんですが、これが日本であれば、「頑張って勉強して良い大学に入れ」と同じようなことなのでしょう。ニンジャはニンジャなりの処世術をチャッピーに教えているのです。 本作は貧困の映画でもあります。チャッピーへの教育、特にニンジャによる教育はメチャクチャなのですが、ニンジャが生まれ育った環境では犯罪者として一流になることこそが生き残る術だったのです。だから、本質的には悪人ではない彼が犯罪者をやっているし、彼はチャッピーにもその生き方を教えて、犯罪者が再生産されていくわけです。ただ犯罪者を捕まえるだけではなく、犯罪をしなくても生きていける社会を作ることこそが、犯罪をなくすためには重要なのです。 監督の手腕は相変わらず絶好調。SFキャラの擬人化や、生命と機械の境界が取り払われていく様の演出は見事なもので、『エイリアン5』への抜擢も当然のことと思います。クライマックスの戦闘のテンションの高さも素晴らしく、ドラマ性と娯楽性が高いレベルで融合した良作だと思います。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2015-09-25 18:42:55)
5.  エル・トポ
監督自身が「娯楽を意識して作っていない」と言っている通り、個人の感性に合うかどうかのレベルの作品なので、点数をつけるのはとても難しいです。私はつまらないと感じたし、中盤辺りから映画に対する関心も失われてひどく退屈したものの、その一方で、物語にも映像表現にもめちゃくちゃにエッジが立っていて、「つまらない」で切って捨てていい作品ではないとも感じました。なので、中間の点数をつけときます。。。 本作がカルト映画として40年を超える寿命を得ているのは、作品の質だけでなく、容易に鑑賞することができないという稀少性にもあったのではないかと思います(プロデューサーと監督との間の確執によって、リリース困難な状態が数十年も続いた)。仮に、本作が容易に鑑賞可能な状況にあった場合に、ここまで熱狂的に支持されたかどうかは疑問です。 
[DVD(字幕)] 5点(2014-06-05 00:04:58)
6.  モーターサイクル・ダイアリーズ
軽さと重厚さを両立した人物描写や、美しい景色を切り取った撮影など、あらゆる点でレベルが高く、ウォルター・サレスの実力が如何なく発揮されています。少なくとも前半部分は最高のロードムービーとして仕上がっているのですが、問題は後半部分。銀山で共産党員の夫婦に出会って以降は、プロデューサーを務めたロバート・レッドフォードの目的意識が込められすぎたのか、はたまたチェ・ゲバラという伝説的な人物に引っ張られすぎたのか、道徳的・模範的すぎてつまらない映画になってしまいます。主人公達はことごとく正しいことばかりをやって、何の意外性もないのです。善悪そこそこで微妙なバランスを保つことが人間性の本質であり、その様を描くことがドラマの醍醐味だと思うのですが、本作の製作者達は、そうは考えていなかったようです。
[DVD(吹替)] 5点(2014-05-18 10:21:47)
7.  バベル
一応は劇場公開時にも鑑賞したものの、記憶喪失にでもなったのかと思うほど内容を覚えていなかったので、再度の鑑賞となりました。作品賞を含むオスカー大量ノミネートにカンヌ映画祭監督賞受賞と、完成時には恐ろしく評価の高かった本作ですが、果たして本当に優れた映画なのだろうかという点には大きな疑問符が付きます。タイトルが示す通り、本作は人類のコミュニケーション不全を壮大なスケールで描いた作品なのですが、劇中起こるトラブルはどれもバカな奴がバカなことをしでかした結果のものであって、「人間の悲しい性」みたいなものは感じさせられませんでした。そもそもの問題として、感情移入可能な登場人物が一人もいないというのは、ドラマとして失格でしょう。出て来るのは、感情の振れ幅の激しいヒステリックな人間か、恐ろしいほど考えの足りないバカのどちらか。観ていて疲れましたよ。。。 また、4つのエピソードを交錯させるという構成も、さほど効果をあげていないように感じました。この手の映画は、バラバラに進行していたエピソードがクライマックスに向けて収斂していき、最終的にひとつの結論を導き出すという構成をとることが常套手段なのですが、一方で本作は最後まで各エピソードが独立したままなので結論部分が弱くなり、そのために肩透かしを食らったような気分にさせられました。。。 さらに、ひとつひとつの場面が妙に長いことも、観客のテンションを下げる原因となっています。一目見れば分かることを数十秒かけて見せる。こういうムダな時間の積み重ねにより全体が非常に間延びしてしまい、せっかくの美しい撮影も、観客にフラストレーションを抱かせる原因にしかなっていません。
[ブルーレイ(字幕)] 3点(2013-09-29 02:56:25)
8.  狼たちの報酬
韓国系アメリカ人であるジェフ・リー監督のデビュー作。新人監督がこれだけの豪華キャストを得られたという事実が示す通り、実に魅力的な企画です。4つのエピソードが緩やかに連結されることで一つの映画を形成するという『パルプ・フィクション』と同様のスタイルをとっているのですが、そのループのさせ方がなかなかお見事。同様の映画は少なからず存在しているものの、ここまで綺麗にまとめられた例は数える程しかありません。また、ファンタジーとクライムサスペンスを繊細なバランス感覚で組み合わせたことにより、独特の味わいを持つ作品となっています。映画全体の要となるブレンダン・フレイザー演じる”プレジャー”の設定などは実に良く出来ていて、予知能力という彼の才能は傍から見ると実に羨ましく、その能力を使えば楽しく生きられるだろうと思うのですが、彼はまったく幸せではありません。物事をはじめる前から結果が見えてしまうために一切の野心や目標を持つことが出来ず、諦めきって生きているのです。一風変わった設定ではありますが、確かに理にはかなっています。。。 以上、基本的には魅力的な作品なのですが、登場人物達があまりに頭の悪い行動をとってしまうために「そりゃないだろ」というツッコミが先に来てしまい、ドラマに感情移入することができませんでした。5万ドルという返済可能な金額の借金を返済するために銀行強盗を決意するフォレスト・ウィテカー、手袋もせず毒蛇に触り、案の定噛まれて死にかけるジュリー・デルピー、明らかに異常な血相でトリスタに駆け寄り、案の定ボディガードに取り押さえられてしまうケビン・ベーコン、金づるであるトリスタを無茶に扱い、案の定逃げられてしまうアンディ・ガルシア、どいつもこいつもバカです。なぜ、もっと賢く振る舞えないのかとイライラしてしまいました。。。 最後に、『狼たちの報酬』という、本筋とまるで関係のない邦題は一体誰がつけたのでしょうか?内容を示していないどころか、まったく違うジャンルを連想させてしまう最悪の邦題です。
[DVD(字幕)] 6点(2013-01-09 00:46:11)
9.  リチャード・ニクソン暗殺を企てた男 《ネタバレ》 
実話を基にした中年版『タクシードライバー』とも言える本作ですが、この映画は主人公と観客との間の距離の取り方が抜群に優れています。ある程度の共感の接点は設けるものの、主人公の内面を全面的に支持するようなことはせず、最後には突き放してしまうという、かなり客観的な構成としています。『タクシードライバー』はジョン・ヒンクリーという現実の犯罪者を生み出すに至りましたが、本作を観て主人公サミュエル・ビックのようになりたいと考える者は現れないでしょう。善良な小市民がちょっとした頑固さや愚かさから精神を病み、最終的には大勢に迷惑をかけた挙句に射殺されるという物語を見れば、ほとんどの観客は日常の大切さを思い知るはずです。。。 ショーン・ペンは貫録の演技力を披露。弱肉強食のショービズ界の頂点に長年君臨し、暴行での逮捕歴も持つペンが、本来の自分とは正反対の小市民に見事になりきっています。ナオミ・ワッツやドン・チードルら脇を固める俳優たちも高いパフォーマンスを披露しているのですが、中でも素晴らしいのが主人公の上司を演じたジャック・トンプソン。自信家で嫌味な性格ではあるが、その一方で面倒見がよく、常に良い上司であろうと努めている男という、善悪両面を兼ね備えた人物を丁寧に作り上げています。こういうタイプの上司は現実社会にもよくいるだけに、彼の存在によって物語に大変なリアリティが与えられています。
[DVD(吹替)] 7点(2012-10-02 21:08:57)
10.  マスク・オブ・ゾロ 《ネタバレ》 
ヒーローものと言えば、荒唐無稽な大作路線か理詰めで堅苦しいリアル路線かの二極分化の傾向がある中で、本作はヒーローものとしてのロマンを存分に味わわせつつも論理的に破綻していない物語となっており、脚本の良さが光っています。さらに、ヒーローの理念は伝承されていくという発想は面白いし、ゾロを二人としたことで初代ゾロの復讐劇と二代目ゾロの成長物語を同時に味わえるというおいしい構成となっています。テッド・エリオットとテリー・ロッシオのコンビはハリウッドトップの脚本家に成長しましたが、90年代当時から優れた脚本を書いていたようです。また、マーティン・キャンベルによる演出も悪くありません。テレビ出身の職人監督であるキャンベルは、良い脚本に巡り合えば優秀な作品を作り、悪い脚本に当たるととんでもない駄作を撮る人なのですが、今回は脚本の良さを活かした良い映画を撮っています。アレハンドロがパーティーに潜入して以降、物語はまんま007になるのですが(恐らくスピルバーグの趣味でしょう)、本家007の監督だけあってこのパートのまとめ方は慣れたもの。男らしさとユーモアのバランスも絶妙で、当初監督候補にあがっていたロバート・ロドリゲスよりも適任だったと思います。。。と、本作の水準の高さは認めるものの、一部に気になる点がありました。まず、上映時間が長すぎるために、中盤はかなり中だるみしています。もうちょっとスリムな構成にすべきでした。さらにアンソニー・ホプキンスの演技力・存在感が出演者中突出しているために、彼が出ていない場面が猛烈に退屈する原因となっています。悪役側にも一人くらいは文鎮のような強力な役者を配置すべきだったと思います。さらに、ラストバトルの構成も良くありません。ラヴ隊長とアレハンドロの対決がクライマックスとなるのですが、両者は中盤にて一度剣を交えており、その時はラヴ隊長とラファエロの二人に対してアレハンドロ一人という変則マッチでした。そしてこの変則マッチでアレハンドロは互角の勝負をしていたため、一対一となるとラヴ隊長よりもアレハンドロの方が上であることが明らかなのです。これでは、ラストのバトルにおいてどちらが勝つかという緊張感が生まれません。両者が戦うのはラストのみにすべきだったし、ラヴ隊長は相当な剣の使い手であることを示すエピソードがひとつくらいは欲しかったと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2010-09-24 22:42:23)(良:2票)
11.  リベンジ(1990) 《ネタバレ》 
ここまでやってしまうかと腰を抜かすほどのバイオレンスでした。公開当時は酷評され、興行的にも惨敗したようなのですが、そりゃこんな凄惨な物語を見せられれば観客も批評家も驚いたでしょう。清潔感のあるイメージだったコスナーが半殺しのリンチを受け、アメリカ一の美人女優と言われていたストーが麻薬漬けにされて売春宿に売られ、最終的にエイズで死ぬという何の救いもない物語ですからね。スピルバーグやスコット兄が派手なバイオレンスをやらかすようになった現在ならともかく、スターの出演する大作は安全なものだった当時において、本作は過激すぎたと思います。そんなわけで早すぎたバイオレンス大作なのですが、映画の質は悪くありません。主要キャストは全員文句なしの熱演を見せているし、スコットの演出も的確です。特に良いのがロマンス部分の演出で、「よりにもよって友達の奥さんに手を出したんだから、痛い目を見て当然でしょ」と思われると身も蓋もなくなってしまうこの物語において、コクランとミレアの心境の変化を丁寧に描くことで、許されざる愛を観客にも受け入れられる形としています。この二人に絡むメンデスの見せ方もうまく、気さくで人好きのする性格でありながら、何気ない会話の中で怖いことをポロっと言う辺りにはゾっとさせられます。彼の底知れぬ恐ろしさが不倫のスリルを高めており、目立ったバイオレンスのない前半の時点で、すでにピリピリとした空気が漂っています。さらに、本作は悲劇の恋であると同時に男と男の物語でもあるのですが、その面でもかなりの見ごたえです。「これは掟なのだ、理屈ではない」というメンデスのセリフに象徴されるように、片や親友であっても男としてのケジメをつけさせねばならない男、片や愛する女を救い出さんと命を張る男、両者の意地がぶつかり合う硬派なドラマには完全に飲まれました。このままでは愛する妻と親友に手をかけねばならない、その前に手を引いてくれないかと願うような気持ちでいるメンデスの苦悶の表情と、恐らく自分は殺されるハメになるだろうが、それでもミレアへの思いは断ち切れないというコクランの毅然とした表情が対比される「リベンジ」前日のやりとりは、マイケル・マンもかくやという名シーンでした。残念だったのは後半が駆け足だったことで、かなりの場面がカットされている様子でした。いつかディレクターズ版が出てくれることを祈ります。
[DVD(字幕)] 8点(2010-09-23 20:35:17)(良:1票)
12.  コラテラル・ダメージ
バットマンの悪役だの、オカルトだの、SFだの様々なジャンルに手を出し、ことごとく失敗していた90年代後半のシュワ。そのシュワがついにテロリストとの戦いに戻ってきた!さらに、9・11による上映延期!(「上映延期」「上映禁止」などと聞くと、なぜか凄いものだと思ってしまうのです)監督は、アクションスターの魅力を引き出せる男、アンドリュー・デイビス!これはとんでもないアクション大作がくると期待したものです。しかしフタを開けると壮絶にショボかった!!目立った見せ場はヘリ部隊がゲリラ軍の村を破壊しまくる場面のみで、他のアクションはほとんど印象に残らないレベル。今回のシュワは銃を一発も撃たず、消防士としてのスキルを活かし爆発物でテロリストと戦いますが、これは政界進出を考えていたシュワのイメージアップ戦略の賜物。本作の製作開始前にはコロンバイン事件が世を騒がせており、映画における銃器の扱いも問題視されていました。そんな中で、政界進出を考える俺が銃を乱射するわけにはいかない。そこで、アクション大作であるにも関わらず主人公が銃を一発も撃たないという珍妙な現象が起こったのですが、よく考えてみれば爆発物を武器にする方が危ないでしょ。ラストなどは、ほぼ袋のネズミ状態となった二人の敵を殺すために、テロリストが起こした以上の爆破を引き起こすという倒錯ぶり。こうしたシュワ氏の価値観に清き一票を投じたカリフォルニアの人々の品性には、実に素晴らしいものがあると思います。。。公開時に本作を見た時、私は悲しくなりました。子供の頃から大好きで、ハリウッドの先頭に立っていた男シュワちゃんが、もう時代に合わなくなっていることを実感したからです。昔は気にならなかったシュワの大根役者ぶりが、本作では気になって気になって仕方ありませんでした。家族を亡くして悲しみに暮れるシュワ氏の下手クソぶりなどは、見ている私が恥ずかしくなったほど。また、消防士でありながらCIAですら見つけられなかったゲリラの本拠地をあっさり突き止めてしまうシュワ。昔であれば、少々強引な展開であっても「シュワちゃんだからいいんだ」という妙な説得力があったものの、本作ではこの強引さ、都合の良さは通用しませんでした。アクション映画におけるシュワ氏の神通力も消えてしまった瞬間を目の当たりにした気がしました。
[DVD(吹替)] 4点(2010-07-06 16:14:51)
13.  マイ・ボディガード(2004)
主人公が動き出す時には誘拐事件は終わっており、復讐のために闘うという変わった着眼点の作品ですが、圧倒的な殺人スキルでやりすぎなくらい暴れ回る主人公の姿には爽快感すら感じました。敵は子供の命を飯の種にし、権力を傘に法の追及を逃れるという汚い連中。こんな奴らは殺して当然、苦しみを味わわせて当然。「この事件に関わったやつ、甘い汁を吸ったやつは全員殺す」というデンゼルの処刑人宣言には燃えましたとも。この手の映画にありがちな「殺しはダメだ」などという薄甘い良識は一切なく、法で裁けない極悪人は殺すしかないという実に正直なバイオレンスとなっています。普段は人畜無害なアクション大作を撮りつつ、たまに「リベンジ」や「トゥルーロマンス」のようなウルトラバイオレンスを作ってしまうトニー・スコットの、ブラックな面がドバっと出ています。ただ血生臭いだけでなく、悪者の体内に仕込んだ爆弾のカウントダウンが画面に表示されるなど、「北斗の拳」かというような悪趣味な映像テクニック満載で飽きさせません。デンゼルの怒りに合わせてテロップの文字が変わるなど、映像でイメージを伝えることに長けたMTV出身ならではの強みも発揮。「ナチュラル・ボーン・キラーズ」でオリバー・ストーンがやろうとしていたバイオレンスと映像ギミックの融合を、スコットはより器用にやってのけています。またスコットのようなベテランが監督したことにより、直情的な話ながら丁寧に作るべき部分はきちんと作り込まれています。「心に傷を負ったボディガードと、それを癒す少女の触れ合い」というベタベタな前半部分を、安易な仕上がりにしていないのは見事なものです。俳優の動かし方もうまく、ダコタ・ファニングは出演作中最高の演技を見せており、またクリストファー・ウォーケン、ミッキー・ロークの使い方も完璧です。上映時間から予想していた長さもさほど感じず、バイオレンス映画としてはかなり上質な部類の作品だと思います。
[DVD(字幕)] 8点(2009-07-18 14:06:57)
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