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341.  にっぽん泥棒物語 《ネタバレ》 
山本薩夫監督が実際に起きた冤罪事件をもとにフィクションとして手がけた社会派喜劇。三國連太郎扮する主人公 林田儀助の泥棒時代のエピソードがかなりコミカルに描かれていて思った以上に喜劇要素が強く、どこかすっとぼけた味わいがあり、山本監督の社会派監督としてだけではない一面が感じられた。でもやはり、この主人公が列車転覆事件が起きる直前に線路を歩いていて怪しい9人の男とすれ違ったあたりからが山本監督の本領発揮といえる社会派ドラマになる。この事件で捕まった人たちの冤罪を証明するように周りから言われても、今は泥棒稼業を辞め、結婚して子供もできて、泥棒だった過去を隠して平穏な生活を手に入れている身では家族のことを思うととてもできないという林田の心の葛藤が胸を打つ。そんな林田が証言を決意するシーンはとても感動してしまった。ここまででもじゅうぶんドラマとして見ごたえあるのだが、ラストの証言シーンもみどころで、ここはもう三國連太郎の独演会といってよく、皮肉めいたことを次々と言うのだが、それが物凄く笑える。中でも「警察は自分よりも嘘をつく。嘘つきは泥棒の始まりというが。」というセリフ。元泥棒である主人公が言うからこその皮肉がこめられていて、笑えると同時にこのセリフにはそれ以上の底知れぬ凄さを感じた。喜劇映画のなかに冤罪という重いテーマを入れてしまうといつの間にかシリアスになりすぎ、喜劇的な部分がおなざりになってしまうのではと心配だった面もあったが、この証言シーンのおかげで最後まで喜劇映画であることを忘れない映画になっているのがいい。林田と腐れ縁の刑事を演じる伊藤雄之助のネチネチとした演技もやはり印象に残るし、妻を演じる佐久間良子や、冤罪被害者の一人を演じる鈴木瑞穂も良かった。でもこの映画はやはりなんといっても主演の三國連太郎に尽きる映画で、出演作の中ではあまり知られていないようではあるが、間違いなく本作も代表作の一本だろう。三國連太郎の喜劇といえば「釣りバカ日誌」シリーズをどうしても思い浮かべてしまいがちだが、やはりそれだけではないということを本作を見ると感じることができる。
[DVD(邦画)] 8点(2014-04-17 17:50:24)(良:1票)
342.  十二人の怒れる男(1957)
最初から最後まで裁判所の一室での陪審員たちの討論を描いているので内容的にはものすごく地味なのにだんだん白熱していく討論に目が離せなくなり、引き込まれていった。シドニー・ルメット監督のデビュー作らしいが、今まで見たこの監督の映画(といってもこれを含めて3本くらいしか見てないが。)の中ではいちばん面白い映画だと思う。白黒映画なのも効果が出ていて良かった。ラストシーンも印象的。
[ビデオ(字幕)] 9点(2007-01-04 19:33:43)(良:1票)
343.  彼奴(きゃつ)を逃すな
鈴木英夫監督の映画を初めて見たのだけど、殺人事件の犯人を目撃したことにより、捜査に協力を求める警察と、いつ自分を殺しにくるかもしれない犯人の両方に追い詰められた主人公の心理がとてもよく描かれていたサスペンス映画の隠れた傑作だと思う。クライマックスである犯人とのやりとりも緊迫感が非常に見ごたえがあり、とても面白かった。ところで主要な俳優陣を見ると「七人の侍」に出演していた人が多く出ているのに気づく。主役の七人の侍のメンバーだった志村喬、宮口精二、木村功の三人が刑事、犯人、目撃者という立場で共演しているのが面白い。木村功の奥さん役が津島恵子というのも「七人の侍」での勝四郎と志乃を思い出して思わずニヤリとくるうれしいキャスティングだ。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2006-02-01 03:35:58)(良:1票)
344.  天使にラブ・ソングを2 《ネタバレ》 
シリーズ第2作。1作目を見てから一週間ほどで本作を見たが、実はちゃんと見るのがこれが初めてだということに見ている途中で気がついた。それはともかく、前作とは逆に修道院側がデロリスに助けを求める冒頭からまあ続編だとそういう展開になるわなという感じなのだが、前作と違ってデロリスの母校である高校を舞台にしたことで、前作と少し毛色の違う映画になった印象でストーリー自体はまあ悪くないと思うし、史上初めて続編映画の監督をアフリカ系アメリカ人が手がけた意味で歴史的な映画でもあるらしく、そのためか立場や差別などにも重くならない程度にふれているなどちょっとした社会的側面も出ていて、そのあたりは興味深く見ることができた。しかし、前作に比べると別にシスターでなくても、デロリスでなくても成立するような感じが否めないし、素行の悪い生徒たちがデロリスによって変わっていくという本作要の部分もドラマとしてあっさりしすぎているように感じてしまってかなりの物足りなさが残るし、生徒の一人であるリタ(ローリン・ヒル)の音楽活動に反対している母親が最後に彼女を認めるという展開も見ていて容易に予想がつき、安心して見られる反面、予定調和な感じも強かった。さっきも書いたようにストーリー自体は決して悪くはなく、単品として見た場合はそこそこだと思うものの、やはりシリーズものの2作目として見てしまうと前作ほどの面白みは感じないという典型的な続編の感想になってしまうのは仕方のないところか。でも、成功したいなら周りをよく見てという言葉は胸に残るし、主要登場人物たちがバックで歌うエンドロールも良かった。(このエンドロール、たぶん民放のテレビ放送ではカットされる部分なんだろうなあ。なんか惜しい。)
[DVD(字幕)] 6点(2020-12-17 23:57:54)(良:1票)
345.  乾いた花 《ネタバレ》 
池部良が初めてヤクザ役を演じ、彼が東映任侠映画の常連になるきっかけともなった篠田正浩監督の映画。時代的には東映任侠映画がこれから全盛を迎えようかという時期の映画だが、クールでどこか日本映画ばなれした雰囲気やフィルムノワール的なカッコ良さがあり、どんよりとした白黒の映像も効果的で、独特の味わいを残す作風など完全に東映任侠映画とは一線を画した映画になっているが、そこがむしろ新鮮だったし、繰り返される賭場のシーンは東映作品よりも緊張感があり、見ごたえがじゅうぶん。主演の池部良のヤクザ役を見るのは二度目だったが、やはりカッコよく、青春映画などで見せる爽やかな演技とはまた違った魅力があり、この映画をきっかけに東映から「昭和残侠伝」のオファーがあったのもうなずける話。ヒロインの加賀まりこもこの頃は小悪魔的な可愛さがあり、「月曜日のユカ」でもそうなのだが、白黒だとそれがいっそう映える。一言のセリフもない薬物中毒の男 葉を演じる藤木孝の不気味さも印象的。東野英治郎と宮口精二演じる二人の親分がレストランでスープを飲んでいるシーンのユーモアはどことなく伊丹十三監督の「タンポポ」を先取りしたかのように見えなくもなかった。篠田監督の作品は苦手なものも多いが、本作はけっこう楽しめた映画だったように思う。それに、岩下志麻の出ない篠田作品を見たのは初めてだったのだが、それも新鮮に感じた。
[DVD(邦画)] 7点(2014-05-29 17:24:24)(良:1票)
346.  同胞
山田洋次監督の「家族」、「故郷」に続く三部作の最終作ともいわれている作品。前の二本では一つの家族が新天地を目指して旅立っていく物語だったが、本作では趣を変え、田舎の青年団が統一劇場の公演を成功させるまでを描いたドキュメンタリータッチの作品となっている。最初は淡々とした展開にやや退屈に感じていたが、いつの間にか引き込まれ、公演開催のために奮闘する若者たちの情熱が徐々にこちらに伝わってきて、彼らに感情移入せずにはいられなくなり、見終わってとても感動した。山田監督らしい暖かい視線がどの人物にも注がれていて、見ていて優しい気持ちになれる。それにやはり、こういう映画こそ山田監督の映画の醍醐味だと改めて思うことの出来る映画で、下にも書かれている方がいらっしゃるが本当にこの時期の山田監督の映画は外れの方が少なく、いちばん監督として脂の乗った時期で、これも傑作だと思う。出演している役者たちもみんなよく、特に会長を演じる寺尾聡が素晴らしい。そしてこの映画の主題歌としてもクレジットされている劇中劇ミュージカルのテーマ曲「ふるさと」もかなりの名曲だと思う。 
[DVD(邦画)] 8点(2009-01-13 23:56:10)(良:1票)
347.  風の中の子供 《ネタバレ》 
清水宏監督の映画を見るのはこれが初めてだが、子供の描き方が小津安二郎監督以上にイキイキとしていて、主役の子供二人を見ているだけで楽しいし、それでいながら戦前である当時の状況もかいま見えて面白かった。清水監督はロケ撮影を多用する監督として知られているみたいだけど、なるほど、この映画でも三平が預けられるおじ夫婦の住んでいる田舎の情景がロケならではの効果をあげていて、見ていて懐かしい気持ちになれたし癒される。腕白な子供の描写もうまく、木に登ったり、たらいで川を下っていくシーンなどはいかにも子供らしい子供というのがよく出ている。離ればなれになった二人の心理描写もよく出来ており、ひとりかくれんぼをしている善太にいないはずの三平の「まあだだよ。もういいかい。」と声が聞こえてくるシーンはもうそれだけで善太のさびしさが伝わってくる。それにおじ夫婦の家に預けられることになった三平が泣き出してしまったり、預けられたその日に木に登って家の方角を見たりする切ない。ターザンのものまねや、オリンピックの話題など時代性も盛り込まれているが、ここまで古い映画だと古臭いと思う以前に当時はこんなのが流行っていたのかと興味をひかれる。父親が警察に連行されて、二人が離ればなれになってからはちょっとつらい展開ではあるのだが、二人がずっと明るくて元気なので安心して見ていられるし、笑えるシーンも多い。最後、疑いが晴れて無事に帰宅した父親を走り回りながら呼び続けるシーンは本当に秀逸で、ここでも清水監督の子供の感情を引き出す演出のうまさを感じた。見る前はよくないという評判も聞いていた映画だったので、少し不安な面もあったのだけど、見てよかったと思えたし、小津監督の「生れてはみたけれど」や「お早よう」のような子供が主役の映画の佳作だと思う。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2011-09-24 19:49:49)(良:1票)
348.  ピノキオ(1940)
ものすごく久しぶりに見たのだが、人間がロバになるシーンが怖かった。もちろんこの映画小さい時に何回も見たのだが、自分が当時このシーンを見てどう思ったのかが気になる。でもやっぱり、ディズニーアニメはウォルトがかかわってた頃のほうが成長した今見ても面白い映画が多いような気がする。
[ビデオ(吹替)] 9点(2005-03-14 17:31:13)(良:1票)
349.  毎日かあさん 《ネタバレ》 
先週見た「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」と同じ話を妻の視点から描いた作品。「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」では仮名になっていた夫婦の名前が実名になっていたり、それを元夫婦である小泉今日子と永瀬正敏が演じる(よく二人ともこの役での共演を快諾したなあ。)というリアリティーを感じさせるつくり。はじまってしばらくはほのぼのとしたファミリー向け映画の様相だが、アルコール依存症の夫・鴨志田が登場してからはやはりディープな展開。アニメ版は見たことないのだが、こんなアルコール依存症ネタを題材にしているとは思えないのでたぶんアニメとはだいぶ違うのではないだろうか。この映画のほうがアニメより原作に忠実なのは西原作品にまったく触れたことがない自分でもなんとなく分かるのだが、子どもも見る時間帯に放送のアニメの実写版としてはネタが暗すぎるように思う。しかし、純粋に一本の映画としてはよく出来ており、親子の川釣りのシーンや雛祭りのシーンなどは映画的である。それでも感動とまではいかないのだが、エンドロールは良かった。小泉今日子の母親役というのを初めてみたが、いい母親という感じはあまりしなかった。永瀬正敏も役柄上仕方がないのかもしれないが、いい父親という感じはあまりしない。祖母役の正司照枝は「カーネーション」の祖母役そのままのイメージ。「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」よりは見やすいが、「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」のほうが自分としては好みかもしれない。
[DVD(邦画)] 6点(2012-06-14 23:15:25)(良:1票)
350.  武士の献立 《ネタバレ》 
「武士の一分」、「武士の家計簿」に続く松竹「武士の〇〇」シリーズ第3作。(勝手に命名。)「武士の家計簿」と同じく加賀藩が舞台で、「そろばん侍」に対して「包丁侍」を描くというところは「武士の家計簿」の二番煎じかと思うものの、分かりやすくまとまった映画になっていて思ったより良かった。脚本に山田洋次監督が関わらない朝原雄三監督の映画としては初めての映画になり、朝原監督の手がけた「釣りバカ日誌」シリーズがあまり面白くない作品が多かった(最後の二本は未見。)ために期待してなかった面もあったのだが、演出も丁寧でとくに文句はない。ただ、加賀騒動が起こってからの後半の展開はよく分からない部分やもう少し掘り下げたほうがよかったのではと思う部分も多かったのは残念。それでもあくまでホームドラマとしての体裁を崩さずに、主人公夫婦の人生を描いていて、ラストシーンも晴れ晴れとしているので個人的にはあまり気にならない。あえて気になることを言えばエンドロールに流れる主題歌が本作のような人情時代劇にはあまりにも現代的すぎてまったく合っておらず、ものすごく浮いているのはなんとかしてほしかった。ところで、こういう料理を題材にした作品で鹿賀丈史を見ると「料理の鉄人」を思い出してしまう。
[DVD(邦画)] 6点(2016-02-24 18:14:33)(良:1票)
351.  男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋 《ネタバレ》 
いしだあゆみがマドンナだからか、いつもより暗い雰囲気。でも、シリーズの中ではけっこう好きだ。寅さんとかがりのデートについて行った満男が旅館でかがりと二人で話をしているシーンで、満男が「母さん。」と言い出さないかちょっとヒヤッとした。 (言うわけないんだけどね。)
[地上波(邦画)] 7点(2005-03-08 01:41:38)(笑:1票)
352.  告白(2010) 《ネタバレ》 
公開当時ものすごく話題になっていた映画だが、今回初めて見た。中島哲也監督らしい作品に仕上がっているが、これまでの中島監督の映画の特徴であったカラフルな色彩はなく、全体的にわたって暗めの冷たい感じのする映像であり、それが本作の雰囲気によくマッチしている。受け持つクラスの教え子二人に幼い娘を殺された女性教師・森口(松たか子)の復讐劇を描いているが、冒頭30分に及ぶ森口の衝撃の告白から目が離せなくなるし、そのあとの学級委員長(橋本愛)や、犯人とされた少年B(藤原薫)の母親(木村佳乃)など様々な登場人物たちの告白を通してストーリーを紡いでいく構成が見事で、最後まで飽きずに見れたし、素直に面白い映画だと思う。登場人物たちはほとんどが闇を抱え、みんなどこか狂気がかっているのが怖く、はっきり言って感情移入できるような登場人物もいないが、それが本作の陰湿さとインパクトにつながっているのだろう。内気でおとなしい少年Bに対して、主犯格の少年A(西井幸人)は、自分勝手で分別がなく、いかにもこういうのが「誰でも良かった殺人」に走るんだなという雰囲気なのが対照的で印象に残る。彼の「世間に注目されたいから殺人を犯す」という動機はリアルだが、やっぱり理解はできないし、このクソガキがと思えてしまう。(まあ、それが狙いなんだろうけど。それに「嫌われ松子の一生」を見ていれば中島監督がこのような映画を作っても不思議ではないと思える。)クライマックスで森口が彼に「誰でもいいなら親を殺しなさい。」みたいなことを言うのは重すぎる言葉だ。森口によって少年Aが復讐を遂げられるラストは妙な爽快感もあるが、「セブン」のラストと似たところがあって後味はあまりよくない気がする。しかし、いちばん最後に森口が少年Aに向かって教師らしいことを言った後の「なーんてね。」という一言がとても強烈で、この一言は見ている人にいろいろ解釈ができるようにされていて、考える余地を見ている人に与えて終わったのはよかった。久しぶりに見た中島監督の映画だったのだが、やはり完成度が高く、あらためて中島監督の力量の高さを感じられ、間違いなく見ごたえのある映画になっている。ただ、犯罪を犯しても13歳までは少年法で守られると劇中で森口が語っているが、本作はR15指定作品であるものの、もし少年法で罰せられない13歳以下が本作を見てしまい、罰せられないならと事件を起こしてしまったらと思うと恐ろしい。この点がひっかかり、つけられる点数はどんなに高くても7点が限界。
[DVD(邦画)] 7点(2016-08-11 17:51:35)(良:1票)
353.  武士の家計簿 《ネタバレ》 
原作となった新書をもとに物語を構築しているらしいが、ただエピソードの羅列に終始している感じで、とりあえず新書から物語をおこし、それを型にはめるのに精いっぱいだったのだろうなあ。そのエピソードの数々も、そろばん侍と呼ばれる主人公(堺雅人)の活躍を描くのではないので、この主人公がそろばんバカ、そろばん侍と呼ばれるほどのすごさは感じられないし、一家の倹約生活もさらりと流して終わってしまい、後半の父と息子の確執を描く親子のドラマにシフトするという至って普通の展開。企画の着眼点は面白いのだから、型通りではなく、もっと設定を膨らましたほうがよかっただろうにと思えてしまう。息子の祝いの席で出される膳に乗った鯛の絵のシーン(予告編等で使われている。)が印象に残り、その絵を持って祝いの出席者たちが縁側を歩くシーンは確かにイキイキとしているが、この一連のシーンがこの映画の中で森田芳光監督らしさがいちばん出ていると思う。主演の堺雅人と仲間由紀恵はまずまず好演しているが、最後の方で晩年を迎えた主人公夫婦を息子が訪ねてくるシーンで、堺雅人が見事に老け役をこなしているのに対して仲間由紀恵の老け役はかなり違和感があった。でも、とくにあたり障りのない人情時代劇として見ればまあまあそれなりか。
[DVD(邦画)] 5点(2012-01-12 14:09:54)(良:1票)
354.  ゴジラ(1954)
ゴジラ映画は小学生時代にハマッていて、ほとんどの映画を見ていたが、この1作目だけは白黒(2作目もだけど。)ということで見てなくてずっと後になってから見たのだが、怪獣映画というよりは普通の映画として非常に完成度が高く、脚本もよく出来ている。昭和29年という時代性もあり、映画には戦争未亡人が出てきたり、ゴジラが去った後の被害者が運ばれる病院が野戦病院さながらの雰囲気でリアルであり、長崎の原爆から命拾いしたというセリフもあり、当時はまだ戦争が人々に暗いかげを落としていたことが想像できる。この映画は大人の方にこそ是非見ていただきたい怪獣映画の傑作である。
[CS・衛星(邦画)] 10点(2005-03-03 12:26:04)(良:1票)
355.  ごろつき(1968) 《ネタバレ》 
高倉健とまだ東映に入って間もない頃の菅原文太が共演するマキノ雅弘監督の任侠映画。任侠映画には違いないのだが、前半は任侠映画というよりはキックボクシングを題材にした青春スポーツ映画のようになっていて、いつもの東映任侠映画とは毛色が違うが、それがかなり新鮮だったし、こういうのもいいなと思う。菅原文太はこの頃まだ東映では売出し中の頃なので、チョイ役なんだろうなと見る前は思っていたが、高倉健と一緒に田舎から上京する友人役で、完全にもう一人の主人公という立ち位置で描かれていて、これが本作最大のみどころではないだろうか。中でも、高倉健が流しの歌手として菅原文太のギターで「網走番外地」と「昭和残侠伝」の主題歌を歌うシーンは珍しく、今となっては貴重すぎる映像で、もちろん、マキノ監督の東映任侠映画ファンに対するサービス心のようなものも感じられる。ヒロインとなるボクシングジムのトレーナー(大木実)の妹を演じる吉村実子、決して美人というわけではない、どちらかと言えばバタ臭い感じのする女優だが、ボクシングジムという男臭いところにいる女性としては美人女優よりもこういう感じの女優が演じているほうがしっくりくるかもしれない。脇役たちが光っているのもマキノ監督らしいところだが、とくに主人公ふたりを何かと気に掛ける男を演じた石山健二郎が良い。当時のキックボクシングのスター選手だった沢村忠も出演しているなどしているのは当時のキックボクシングの人気をうかがい知れる。任侠映画なので仕方がないが、個人的にはヤクザを絡めずにボクシングの話だけで終わっていても良かった気はする。でも、久しぶりに見たマキノ監督の映画で、見ていて単純に楽しめたし、今年何本か見た高倉健と菅原文太の共演作の中ではいちばん気に入った映画だった。
[DVD(邦画)] 8点(2015-12-10 00:45:25)(良:1票)
356.  東京流れ者
普通に演出していればありがちなアクション映画になっていそうなストーリーなのに、鈴木清順監督の個性的な演出が今見ても(むしろ今のほうが)斬新に感じられる傑作になっていてすごく面白かった。木村威夫の美術(とくに室内セット)もこういう映画に似合わず色彩豊かで美しく印象的。主演の渡哲也が何度も劇中でうたう主題歌が耳に残り、見終わったら口ずさんでいた。それにしても清順監督は「わけのわからない映画を作る監督」と言われていた通り、これといい「けんかえれじい」といい、ほかの日活の監督(日活映画あまりみないんだけど・・・。)にはないような作風を持った監督なんだなあ。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2007-11-05 18:15:16)(良:1票)
357.  トラック野郎 男一匹桃次郎 《ネタバレ》 
シリーズ第6作。「トラック野郎」シリーズはベテランもマドンナに起用されることが多い「男はつらいよ」シリーズに対してマドンナ役には当時の若手女優が起用されるのが常だが、今回のマドンナ役は前年にテレビドラマでデビューしたばかりで、これが映画デビュー作の夏目雅子というのがずいぶん思い切っている感じがする。しかし、出来としてはそろそろ息切れが始まったのか、今まで見た4本(5作目まだ見てない。)と比べると、面白いことは面白いんだが、普通の喜劇映画になってしまってる印象でちょっと物足りないし、夏目雅子は役名も雅子でいかにも売り出し中の新人という感じで初々しいのだが、先に「瀬戸内少年野球団」や「魚影の群れ」を見てるせいか、本作での演技はセリフが棒読みで硬く、かなりぎこちなく思えてしまうのは仕方がないか。鈴木則文監督が脚本を担当していた「緋牡丹博徒」シリーズでコメディリリーフの熊虎をレギュラーで演じていた若山富三郎がライバルのトラック野郎(通称子連れ狼というのがこのシリーズらしいなあ。)を演じているのはなにか感慨深いが、あまり生かし切れていないのが残念。フグを食べて毒にあたった桃さんが毒を抜くために首だけ出して地面に埋まってるところは「北陸代理戦争」のパロディっぽく感じてしまったのだが、以前に見た「座頭市」のテレビシリーズでも同じようなシーンがあったので、実際にある迷信かなにかなんだろうなあ。いつものようにチョイ役は印象に残る人が多く、中でも堺正章や左とん平が出ているのはマドンナが夏目雅子ということもあってこれに西田敏行と岸部シローがいれば「西遊記」じゃないかと昔たまに再放送を見ていたことを懐かしく思い出した。それにしても夏目雅子、出演している映画を見るたびにもし、病気で若くして亡くならずに今でも元気ならどんな女優になっていただろうと思うし、「男はつらいよ」シリーズのマドンナ役で見たかった女優のひとりでもあるのだが、ひょっとしたらそれも実現していたかも知れないと思う。寅さんでの夏目雅子、本当に本当に見たかった。
[DVD(邦画)] 6点(2018-07-28 18:31:57)(良:1票)
358.  借りぐらしのアリエッティ 《ネタバレ》 
小人の目線から見た人間の世界がリアルに描写されていて、そこはけっこう良かったが、話としては小さくまとまりすぎている感じで、ドラマとしての大きな盛り上がりや深みがなく、劇場アニメというよりはテレビアニメの1エピソードのような印象が強い作品。一応、小人を捕まえることに執着する家政婦が悪役として描かれているが、そのエピソードもはっきり言ってムリヤリ話を盛り上げようとしているようにしか見えないし、終わり方もこれで終わりかよというくらい唐突で、見終わってほとんど何も心に残らない。元々ジブリ作品って昔からそんなに好きというほどでもないので、期待もあまりしないのだが、新人監督育成のための企画とはいえあまりにやっつけ仕事感がする。最近のジブリ作品を見るのはぼくとしては「ルパン三世」のテレビスペシャルと同じくらい惰性に近いものがあるのだが、こうなると作り手の側も惰性で作ってるんじゃないのという気さえする。結局、ジブリは宮崎駿監督のブランド力でもっている、今まで薄々感じていたことだが、今回は特にそういうことを考えてしまった。ジブリは元々宮崎監督と高畑勲監督が映画を作るために設立されたスタジオなので、鈴木敏夫プロデューサーは後進の育成にあまり本気でないのかもしれないが、このままだといずれジブリの将来は危ないと思う。そう考えると劇中の「君たちは滅びゆく種族なんだ。」という翔(神木隆之介)のセリフがジブリ自身の将来を暗示しているように感じられてしまう。
[地上波(邦画)] 5点(2011-12-18 03:17:15)(良:1票)
359.  オリエント急行殺人事件(1974)
アガサ・クリスティのポワロシリーズの中でもとくに有名な一篇を映画化したシドニー・ルメット監督によるオールスター大作。最近も日本で三谷幸喜脚本によるスペシャルドラマが放送されていたが、それをきっかけに再見。雪で立ち往生した列車が舞台ということもあってか、何やら舞台劇を見ているような進行で、あまり派手さはない映画だが、あまり退屈せずにそこそこ楽しめた。しかし、アルバート・フィニー演じるポワロにあまり魅力がなく、なんかただの胡散臭いおっさんにしか見えないし、脚本的にもせっかくドラマとして盛り上がりそうな話なのに、筋を追うのに精いっぱいでドラマ性が薄く、登場人物たちにもさして感情移入できなかったのが残念だった。ただ、容疑者たちがみんな怪しく、誰が犯人かと思わせておいてのあの真相は意外性があり、うまいと思う。(でも、脚本というより原作の力が大きいような気もする。)日本語吹き替え版で見たのだが、吹き替えで出演している納谷六朗や大塚周夫が最近亡くなってしまったのが惜しい。ルメット監督と言えば「十二人の怒れる男」が思い浮かぶが、本作も「12」という数字がキーワードになっているのはたぶん偶然だろうけど、「十二人の怒れる男」を見た後になって本作を見ると、それだけではないのではとつい勘ぐってしまう。(2015年2月11日更新)
[DVD(吹替)] 6点(2005-08-22 22:47:36)(良:1票)
360.  ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない
「電車男」(原作、映画、ドラマ共に未見だが。)と同じようにネット掲示板から派生した書籍の映画化らしい。たぶん、この映画で描かれている会社を「ブラック会社」というのはちょっと違うような気がするし、主人公(小池徹平)の同僚たちもコミカルに描かれておりどこかリアリティーに欠ける部分があるように思うのだが、元ニートの主人公(小池徹平)が成長していくサクセスストーリーとしてそこそこ面白く出来ており、また主人公に優しく接する藤田(田辺誠一)の過去なども放置せずにちゃんと描いているところも良かったと思う。でも、もうちょっと深みがほしかった気もして、例えば主人公の屈折感をもう少し掘り下げてもよかったのではないか。小池徹平は初めて出演作品を見たのだが、けっこうハマリ役で、この主人公が見ていて親しみがわいてくるような好印象なのもその影響だろう。リーダー役の品川は、ガンダムマニアのKYな同僚とともにうざったく、なかなかハマッいるが、この人は「ガリレオ」の弓削刑事を演じていたときもちょっとうざく感じていたので、元々こういうキャラで売っている芸人(そうなのかはよく知らないが。)で、ひょっとしたら役作りせず、素のまま演じているのだろうなあと思ってしまった。なんだか褒め言葉になってないなあ。この映画に関しての全体的な感想は見る前は全く期待していなかったし、実際不満もあるが、そんなに悪くない映画だったと思う。
[DVD(邦画)] 5点(2011-05-15 15:03:36)(良:1票)

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