Menu
 > レビュワー
 > イニシャルK さんの口コミ一覧。2ページ目
イニシャルKさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1491
性別
ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/22718/

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順12345
投稿日付順12345
変更日付順12345
>> カレンダー表示
>> 通常表示
21.  IAM A HERO アイアムアヒーロー 《ネタバレ》 
邦画のホラーものというと基本的に霊を題材にしたものというイメージが強く、まして本作のようなゾンビを題材にしたものは邦画ではちょっと無理があるのではと思っていたが、本作はその邦画ではなじみにくいゾンビという題材を扱いながらもかなり完成度の高いものになっていて、途中飽きることなく最後まで退屈することなく面白く見ることができた。とにかく開始20分過ぎたあたりの主人公 鈴木英雄(大泉洋)の恋人であるてっこ(片瀬那奈)がゾンビ化して英雄を襲いはじめるシーンからかなり気合いの入った怖さで目が離せなくなった。この手の大作系邦画にありがちな安っぽさやハリウッドかぶれのような感じも無く、ゾキュン発生の経緯や、よけいなドラマを一切排除した脚本も潔い。とくにゾキュン発生の経緯が一切描かれないことによって、見ていて登場人物たちと同じ目線になることができるし、またリアリティーも感じることができる。(街がパニック状態になってテレビが報道特番に切り替わる中、一局だけアニメを放送しているところが細かくて笑える。このシーンを見ていて「クレヨンしんちゃん 爆発!温泉わくわく大決戦」を思い出した。)確かに後半アウトレットモールが舞台になってからは少し失速した感があるが、それもそれほど気にはならなかった。趣味でクレー射撃用のライフルを所持している英雄がこんな状態になっても銃刀法違反をずっと気にしているというのが思わずそこかよと突っ込みたくなるのだが、本作はこの英雄(えいゆう)と書いてひでおと読む冴えない主人公がいかに本当にヒーローとして覚醒するかも見どころで、それを最後まで溜めているので、クライマックスの英雄とゾキュンの戦いが半端なくカタルシスのあるものになっているのが最高だった。ラストシーンで藪・小田つぐみ(長澤まさみ)から名前を尋ねられた英雄がそれまでと違い、「ただの英雄です」と答えるのは彼の成長とこれからゾキュンから彼女たちを守って行くという決意が感じられてすごく印象に残る。原作漫画未完の頃に作られているので終わり方としてはやや中途半端な感じがするのだが、個人的にはこの終わり方で良かったと思う。もしも続編が作られたら見たいと思うのだが、ちょっと出来が怖い気も。
[DVD(邦画)] 7点(2018-07-21 18:56:23)(良:1票)
22.  安城家の舞踏会 《ネタバレ》 
階級の消滅によって没落した華族 安城家の最後の一夜を描いた吉村公三郎監督の映画。実際に新憲法が公布され、華族制度が廃止された年の映画で、当時としてはかなりタイムリーな内容。それを今見るのはいくらなんでもいかにも古い映画に感じてしまうのではと見る前は思っていたのだが、実際に見てみると歴史の1ページを垣間見ているような感じで、最後まで興味深く退屈することなく見ることができた。今までの立場がなくなることへの安城家の人々のそれぞれの思いも繊細に描かれていて群像劇としても見ごたえのあるものになっているが、中でも父 忠彦(滝沢修)や長女 昭子(逢初夢子)が動揺しきっている中、一人物おじせずにしっかりしている次女 敦子(原節子)と達観しきったような長男 正彦(森雅之)。この二人がとくに印象的で、この二人の存在がこの映画を引っ張っている。話がほぼ安城家の敷地内のみで展開し、出演者も舞台出身者が多く、全体的に舞台劇臭さもあるのだが、吉村監督の演出は冒頭から冴えていて、いかにも映画的で、このおかげで冒頭から引き込まれた。信じていた新川が実は自分の肩書だけを信用していたと知り、落胆する忠彦など、人間関係の気薄さや、人間の弱さなどもしっかりと描かれているのもよかった。戦後2年ほどのころの映画なのだが、どこかヨーロッパあたりのおしゃれな外国映画のような雰囲気が漂っているのも新鮮でちょっと驚く部分でもあるのだが、華族という世界のエレガントさを表現するにはこの日本映画離れしたような雰囲気が最適で、これが見事に成功している。舞踏会を背景に描かれるそれぞれの人間模様も見どころなのだが、やはり舞踏会が終わった後のラストシーンの忠彦と敦子のダンス。舞踏会でのドロドロした人間模様が描かれたあとのこの二人のダンスシーンはそれまでの人間模様のドロドロさがウソのような一切の汚れもない美しさがなんとも印象に残る名シーンで、ここに作り手である吉村監督や脚本を担当した新藤兼人監督のメッセージが集約されているような気がする。カーテンから差し込む朝日はこれから始まる安城家の人々の新しい人生の希望の光なのだ。(このときカーテンがダンスをするように風に舞っているのがなんともニクイ。)最初に書いたように見る前は不安のほうが大きかったのだが、じゅうぶんに面白かったし、見終わったあとの余韻もたまらなく、本当に見てよかった。ところで、原節子はこの映画の2年後に同じ新藤兼人脚本の「お嬢さん乾杯」(木下恵介監督)でも主人公の没落華族の令嬢を演じているが、それもなかなか興味深い。小津作品や成瀬作品で市井の人を演じていてもハマる人なのだが、こういうお嬢様役もやっぱり良いなあ。
[DVD(邦画)] 7点(2018-04-08 00:30:03)
23.  網走番外地 大雪原の対決 《ネタバレ》 
シリーズ第7作。沖縄が舞台だった前作の反動からか今回はこのシリーズらしく雪の北海道が舞台。それも前半の大半が刑務所を舞台にしている。そこでのエピソードがけっこうしっかりと描かれていて、登場する囚人たち(田中邦衛、由利徹などシリーズおなじみの面々。)もそれぞれ個性的で、ここだけでも面白い。後半の出所した真一(高倉健)の行動理由も刑務所の中で起こった集団脱走事件の濡れ衣を着せられて死んでしまった刑務所仲間の汚名を晴らすためという前半の刑務所でのエピソードを活かした構成になっていてかなり原点回帰を意識した作風になっている。このおかげで見てて久しぶりにこのシリーズに刑務所映画らしさを感じることができた。今回の悪役の親玉(上田吉二郎)が鬼寅(嵐寛寿郎)の名を騙って悪事を働いているというのもシリーズものでは定番の偽物登場編で、見ていて楽しいし、真一の指摘からそれが露見し、その場にいた本物がニセ鬼寅を吊るし上げるという展開もこの手のパターンだと定番で、そこにやっぱりカタルシスを感じずにはいられない。(鬼寅にこんなカタルシスを感じるのはたぶん初めて。)クライマックスの対決シーンも真一の目的はあくまで脱走の真の首謀者である白熊(内田良平)にあるというのもブレがなく、徹底していて、この親分には直接手を下さないというのも、異例だとは思うがあまり気になることはなかった。でも、敵役は白熊だけでも良かったような気もしないでもない。
[DVD(邦画)] 7点(2018-01-27 17:22:47)
24.  アシュラ(2012) 《ネタバレ》 
東映アニメーションが原点回帰を掲げて製作した作品で、社会的に物議を醸し、発禁本となった漫画が原作となっている。こう書くと話題性だけの映画かと思ってしまいそうなのだが、まったくそうではなくきちんとしたメッセージ性のある社会派映画になっていてとても見ごたえがあった。けだもの同然の主人公 アシュラが生きるために人を食う描写はかなりリアルなのだが、同時にアシュラの悲しさもうまく表現されていて、ここに手抜きがないからこそ本作の重いテーマがぐいぐいとこちらに伝わってきて、東映アニメーションといえば子供向けの企画ものアニメというイメージを覆すにじゅうぶん。切ないシーンも多いが、アシュラが初めて心を許した存在である若狭の恋人を傷つけたことで彼女から遠ざけられるシーンは思わずアシュラに感情移入して見ていた。若狭たちに飢餓がきてアシュラと立場が逆になるという展開もうまく、普通の人間であってもひとたび極限状態に陥ればアシュラと同じようなけだものになるという人間の本質をリアルに描いている。アシュラが馬の肉だから食べてと差し出した肉を人肉と疑い、食べようとしない若狭に対してアシュラが必死に説得するシーンは胸が痛くなるほどの切なさで、このシーンが本作の中でいちばん重く感じた。アシュラの声を担当する野沢雅子はまさに名演技で、どうしても自分の世代だと悟空のイメージが強いのだが、あらためて名優の一人だと思うし、また本作は彼女の晩年の代表作になると言っていいほどだ。75分と短い(ところどころ端折られている感があったのでもう少し長くても良かった気はするのだが。)映画だが、見る価値はじゅうぶんにある映画だと感じた。
[DVD(邦画)] 7点(2017-08-04 00:06:11)
25.  暗黒街大通り 《ネタバレ》 
井上梅次監督の東映暗黒街シリーズ最後の作品で、これまでの2作で主演していた鶴田浩二が出演しておらず、高倉健、梅宮辰夫、待田京介の三人が演じる三兄弟を主人公にヤクザの息子に生まれた彼らの考え方に徐々に亀裂が生じていく様子を描いている。最初は仲の良かった兄弟が考え方の違いによってやがて対立し、破滅していくという悲劇的なドラマが丁寧に描かれていてとても見ごたえがあり、待田京介演じる次男が父の敵(安部徹)の娘(中原早苗)と恋愛関係になるという「ロミオとジュリエット」的要素もあってシリーズ3本の中ではドラマとしていちばん面白かったと思う。ただ、長男役の高倉健はほかの二人と比べると若干地味な印象で少し浮いて見えるのはちょっと残念だったかも。それよりも今回は悪役陣が豪華で、前2作にも出演していた安部徹に加え、金子信雄に菅貫太郎まで出ていて、主演の三人がこれに霞んでしまいそうな雰囲気がすごかった。とくに金子信雄のこういうずる賢い悪役はやはりすごくハマっていて見ていて楽しい。冒頭、男が射殺されるシーンから始まるのだが、それが誰なのかいちばん最後になって明かされるのも映画としてはありがちといえばありがちなのだが、やはりうまい構成で印象に残る。
[DVD(邦画)] 7点(2017-07-15 22:06:44)
26.  暗黒街最後の日 《ネタバレ》 
東映のヤクザ映画というと明治や大正が舞台で着流しにドスというのを思い浮かべるが、本作はまだ任侠路線が確立する前の映画で、製作当時の現代が舞台で、鶴田浩二演じる主人公ら登場人物たちがスーツにピストルといういで立ちなのが新鮮だし、悪役である安部徹を殺すのが主人公ではないというのも意外に感じる。この後、鶴田浩二とともに任侠映画を引っ張っていく高倉健が二番クレジットで出演しているが、話の中心は鶴田浩二と三國連太郎であり、後年の高倉健と鶴田浩二が共演する任侠映画を見慣れていると少し物足りない気がしないでもないのだが、鶴田浩二と三國連太郎という珍しいこの二人の共演がなかなか見ものだった。高倉健はまだ本格的に売れる前で、思いっきり若手のぺーぺーという感じ(「宮本武蔵」シリーズで佐々木小次郎を演じるよりも前。)なのだが、それもまた新鮮に感じた。井上梅次監督の初の東映作品だそうだが、アクション映画としてもけっこううまい作りになっているのは、さすが日活からフリーになった監督という気がする。クライマックスの入り乱れての銃撃戦はジョン・ウー監督がリメイクしてもおかしくないような壮絶さで、かなり見ごたえがあり、印象にも残る。このシーンに1点プラスの7点。虚しさの残るラストシーンも良かった。
[DVD(邦画)] 7点(2017-06-29 23:31:08)
27.  アヒルと鴨のコインロッカー 《ネタバレ》 
中村義洋監督が初めて伊坂幸太郎の原作を映画化した作品。どんでん返しというのはクライマックスになって出てくるものというイメージが強いのだが、始まって一時間ほどして出てきてそこから改めてトレースしていくのがうまく、「ポテチ」でもそうだったのだが、本作も二度見たくなるような映画でよく出来ている。ゆるい感じだった前半に対して河崎(瑛太)が真実を告白してからの後半がシリアスで悲劇的なので、若干戸惑う部分もあるものの、そこからが面白く、引き込まれた。ボブ・ディランの「風に吹かれて」がストーリーのカギとなる曲として使われているが、この物語によくマッチしていて良く、見てからは曲を聴くたびに本作を思い出しそう。仏教徒のはずのブータン人が神云々のところや、短期間で日本語がぺらぺらになっているところなど、確かに突っ込みどころはあるが、見ている間はそれをまったく気にさせない勢いがあるのも、中村監督の伊坂幸太郎原作映画らしいところ。印象に残ったシーンといえば、やはりラストの椎名(濱田岳)とドルジが駅で交わすやりとり。東京の実家に帰ることになった椎名に「また帰ってくるよな。」と声をかけるドルジ。これまで語られたドルジの過去を思うと、また一人ぼっちになりたくないという彼の気持ちがひしひしと伝わってきて切ない。この二人がその後どうなるのかは描かれていないが、椎名は必ずドルジのところに帰ってくる気がした。重苦しいまま終わるのではなく、爽やかな後味と余韻を残した終わり方も好きだ。出演者に目をやると、ミステリアスな男を演じる瑛太が最初はかっこつけただけの印象だったのが、メインになる後半になると徐々に印象が変わっていくあたりはうまいし、ただのイケメン俳優というだけではない魅力に気づかされた気がした。そのほか、松田龍平も大塚寧々もいい味を出していたし、ヒロイン・琴美を演じる関めぐみも良かった。そして、濱田岳。中村監督の伊坂映画には必ず出演しているが、4本すべて見てどの映画の雰囲気にもよく合っていたと思う。やはり素朴な感じがして良い。
[DVD(邦画)] 7点(2017-06-10 20:30:54)(良:1票)
28.  愛犬とごちそう 《ネタバレ》 
飼い犬と一緒にジャンクフードばかり食べている男に健康志向の彼女が出来て・・・というストーリーを男の飼い犬の視点から描いている。セリフがほとんどないが、躍動感があり、アニメであることをフルに生かした作風。また犬の視点で描いていながら恋人同士である男女の空気感がこちらに伝わってくるようで、この二人のドラマとしての流れをじゅうぶんに感じることができるのが見事で、物語としてもしっかりとしたものになっている。とくにあにやんさんも書かれているが、ラストでの数年間の時間の流れを二人の仲直りから一気に見せきるのをああいうふうに演出したのは見事だった。冒頭から男が飼い犬にジャンクフードを与える描写が繰り返されるが、汚らしく描写されていて、深く考えれば動物虐待や飽食社会への批判をこめていると思えなくもないが、本作の言いたいことはもっと単純で、自分と違う他者を受け入れることの大切さなのだと思う。主人公である犬がとても可愛らしいのだが、飼っていた犬(15歳)を先月亡くしたばかりなので余計にそう思うのかもしれない。ちなみにもちろんうちの犬にはジャンクフードはやっていない。
[地上波(字幕)] 7点(2016-03-29 23:51:22)
29.  ある殺し屋の鍵 《ネタバレ》 
雷蔵が凄腕の殺し屋を演じる「ある殺し屋」の第2作。前作を見たのが12年ほど前なので少し不安もあったのだが、前作とは設定が違うためかすんなりと入っていけたし、今回もなかなか面白い。でも、前作は脚本を担当した増村保造監督が監督も手掛けているのではと錯覚するような独特の雰囲気があったのに対し、本作はあくまで娯楽作に終始している感じでそこが残念といえば残念。ただ、表向きは踊りの師匠という今回の雷蔵の役柄ははまっていて、前作の料理屋の主人役よりははるかにこちらのほうが良いと思う。今回の主人公は報酬に執着しているところがあり、ラストは金を手にして去っていくのかと思っていたが、そうはならないという捻った終わり方なのは意表をついている。また、そうなっても何事もなかったかのように静かに去っていく雷蔵がストイックでカッコいい。このシリーズは前作と本作2本で終わりというのが惜しい気もするが、のちに作られる同じようなコンセプトの「必殺」シリーズなどはこのシリーズの影響を多大に受けているのだろうなと感じることができる。
[DVD(邦画)] 7点(2015-04-11 18:21:30)
30.  あの手この手(1952) 《ネタバレ》 
まだ東宝に在籍していた市川崑監督が大映に出向いて手がけた作品で、事実上、市川監督の大映での第1作となる。夫婦が突然家出してきた姪に振り回されるさまを描いているが、森雅之と久我美子ということでのちに川島雄三監督が東宝で手がけた「女であること」を思い出すが、印象としては小津安二郎監督の「淑女は何を忘れたか」に近いコメディタッチの映画で、それには及ばないものの、気軽に楽しむことができた。なんといってもアコちゃんのキャラクターが強烈かつコミカルで、それでいて可愛らしく、とても魅力的で、演じる久我美子はいつもは少しきつめのイメージのある女優なのだが、それをまったく感じさせておらず、こんな娘なら自分が振り回されてもいいかと思えるほどだ。彼女の恐妻家のおじを演じる森雅之もどこか茶目っ気があり、とくに妻を呼ぶときの「奥さん、奥さん」というセリフが可愛らしく、それがまた笑える部分でもあり、こんな芝居も違和感なく演じてしまうところに名優らしさが感じられる。久我美子のヒット作である「また逢う日まで」のパロディーシーンはまだ本家の作品を見ていないながら楽しく、このシーンには市川監督の余裕さも感じられた。ところで、森雅之はのちに出演した市川作品である「こころ」や「おとうと」でも作家の役だったが、父親が有島武郎であることからキャスティングされたのかなと想像してみたりできて面白い。
[DVD(邦画)] 7点(2014-10-23 18:28:03)(良:1票)
31.  あした来る人
川島雄三監督の映画、かなり久しぶりに見る気がする。あまり期待はしていなかったのだが、三橋達也、月丘夢路、新珠三千代、山村聡のドロドロとした複雑な人間関係がリアルに描かれていてなかなか見ごたえがあって面白かった。こういうドロドロとした話だと暗く重い雰囲気になりがちなのだが、「洲崎パラダイス 赤信号」がそうであったように見ていてそこまで暗い映画だなという印象がないのはやはり川島監督らしいし、「洲崎パラダイス 赤信号」の主演コンビである新珠三千代と三橋達也が本作でも共演してるのは嬉しい。三橋達也は本作でもダメ男役なのだが、やはりこの俳優は誠実な役柄よりもこういう煮え切らないだらしないダメ男のほうが圧倒的にはまっていると思うし、そういう男に妻(月丘夢路)がいることを分かっていながら不倫に走ってしまう女を演じる新珠三千代もまたはまり役で、やっぱり川島監督の映画でのこのコンビは最高だと思う。しかしやはり川島監督の映画としては「洲崎パラダイス 赤信号」のほうが出来としては上のように感じる。冒頭の回想シーンから現在に戻るときのつなぎ方が面白い。三國連太郎扮するカジカの研究に没頭する男はどちらかといえば傍観者的立場に描かれているが、彼がいることによってこのドロドロとした物語を比較的冷静に見られるという側面もあると思う。
[DVD(邦画)] 7点(2014-03-29 01:52:07)
32.  暗黒街の対決 《ネタバレ》 
西部劇のような街並みや鶴田浩二が営むバーの雰囲気は思いっきり岡本喜八監督の趣味性が出ているし、殺し屋たちが店でうたうシーンのユーモアや、ミッキー・カーチスのキャラの面白さなど「暗黒街の顔役」と比べれば喜八監督らしさがよく出た映画になっていて本作のほうが楽しかった。ストーリー的にはやや物足りない部分もあるのだが、三船演じる主人公の刑事の設定が翌年の黒澤明監督の「用心棒」を思わせる部分があるのが興味深いし、稲垣浩監督の「宮本武蔵」三部作で共演していた三船と鶴田浩二の現代劇での共演も見どころ。ただ、「暗黒街の顔役」でも思ったことなのだが、元ヤクザの男を演じる鶴田浩二の演技はやはり東映の任侠映画に出ているときとかぶって見え、多少気になる部分があるし、「宮本武蔵」と同じように三船と鶴田浩二の現代劇での「対決」を少し期待したが、そこはやや肩透かし気味でちょっと残念。敵対する二つのヤクザの親分役を、喜八監督が助監督をやっていたマキノ雅弘監督の「次郎長三国志」シリーズでお馴染みの田崎潤と河津清三郎が演じているのはなんだか嬉しいし、面白い。この二つのヤクザの描き分けがすごく分かりやすくて明快だった。喜八監督の映画の中では傑作とは言い難い映画だが、最初に書いたように「暗黒街の顔役」より楽しめたので、少し甘いかもしれないが7点。
[DVD(邦画)] 7点(2014-03-06 13:19:06)
33.  あゝ声なき友 《ネタバレ》 
所属していた部隊でただ一人生き残った男が、復員後、亡き戦友たちが書いた最後の手紙をその親族に渡すために全国を渡り歩く姿を描いた今井正監督の反戦映画。今井監督の「喜劇 にっぽんのお婆ちゃん」に脇役で出演していた渥美清が企画の段階からかかわり、主演した作品で、この頃、「男はつらいよ」シリーズで人気を得ていた彼の寅さんだけではなく俳優としてもっといろんな役を演じてみたいという意欲が感じられる作品となっていて、コメディータッチのシーンは一切なく、非常にシリアスな展開だが、今井監督らしいメッセージ性の強い力作で、映画としては佳作といっていい出来。しかし、春川ますみや財津一郎、松村達雄など「男はつらいよ」シリーズでも何度か見かける面々が何人か出ている(倍賞千恵子も出てるし。)こともあってか、渥美清のシリアスな演技に妙な違和感を感じてしまうのも事実。確かに今井監督はこういうテーマの映画にはうってつけの監督で、さっきも書いたように見ごたえのある力作に仕上げているし、これも繰り返しになるかもしれないが、寅さんのイメージを打破したかった渥美清の意欲も分かる。だがもし、今井監督でなく、野村芳太郎監督や山田洋次監督など渥美清と付き合いの深い監督がこの映画の監督だったら、この映画の印象はまったく違うものになっていたかもしれないし、なによりも渥美清という俳優の持ち味がもっと発揮される映画になったかもしれない。見終わってついそんなことを考えてしまった。
[DVD(邦画)] 7点(2013-03-14 14:00:31)(良:1票)
34.  あゝひめゆりの塔
のちに戦争映画の大作を何本か手がけることになる舛田利雄監督によるひめゆり学徒隊をテーマにした反戦映画。主演が吉永小百合と浜田光夫というのが不安ではあったが、「日本海大海戦 海ゆかば」のような中途半端な恋愛要素はなく、ひたすら悲劇的な末路を辿る少女たちの運命が丹念に描かれていて思ったよりはずいぶんいい映画だった。何回かリメイクされている「ひめゆりの塔」とは直接は無関係な映画だが、それでもこういう映画は見終わって何か考えさせられるものがある。白黒作品というのもリアリティーがあってそれのおかげで生々しさもより伝わりやすいものとなっている。でも冒頭の現代のシーンは最初よりもラストに持ってきた方が効果的だったと思うし、吉永小百合は熱演しているが、やはり少し演技力は微妙ではある。しかし、全体を通して神山征二郎監督の「ひめゆりの塔」(唯一自分が見たことのあるひめゆり学徒隊を扱った映画。)と比べると重みが全く違う作品になっている。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2012-05-01 12:04:52)
35.  あにいもうと(1953) 《ネタバレ》 
成瀬巳喜男監督による文芸作品。タイトル通り兄と妹を描いた物語なのだが、これがけっこうドロドロとしている。それでもこの映画に出てくる兄妹はどこか他人事ではない気がしてしまうのも事実で、兄(森雅之)が妹(京マチ子)を妊娠させた男(船越英二)に暴力を振るうシーンはこの兄の妹に対する素直な思いが伝わってきて感動したし、もしぼくが同じ立場なら相手の男に対して同じことをするのではないかとつい思ってしまった。だから、そのことを巡って起きる終盤の二人の凄まじいケンカのシーンは、兄と妹、双方の気持ちが理解できるような気がする。しかし、ラストのもんがさん(久我美子)に兄に対する思いを打ち明けるシーンがこのドロドロとした兄妹愛を描いた映画のラストとしては実に後味がよく、このシーンがあるからこんなドロドロとした映画を見終わったあとでもさわやかな印象が残り、成瀬監督の余韻の残し方のうまさを感じる。大映作品であるためか京マチ子や船越英二が成瀬作品に出演していているのが珍しいし、ほかの成瀬作品と比べてストレートに感情を表現するシーンが多く、終盤のケンカのシーンの凄まじさもあり、映画としてはなんだか同じく成瀬監督の「あらくれ」に近い印象。兄を演じる森雅之が少しミスキャストのような気がするのが惜しいところだが、それでも成瀬監督らしい人間の描写が素晴らしく、じゅうぶんに佳作といえる映画だと思う。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2011-12-24 14:44:51)(良:1票)
36.  アウトレイジ(2010)
「全員悪人」と謳われているとおり本当に全員がワルで、またそれぞれが個性的に描かれていて面白かった。出演者がたけし以外は全員、北野武監督の映画に出演するのは初めてというのも異色。登場人物が次々殺されていく映画をというところから企画が始まったらしく、とくに後半は殺人のオンパレードで、普通なら目を背けたくなるようなシーンの連続なのになぜか安心して見ていられるから不思議。ヤクザを演じる俳優陣は國村準、石橋蓮司といった強面はもちろん、あまりこういう役をやる印象のない加瀬亮や三浦友和といった面々まで好演している。とくに三浦友和がなかなかいい。逆に山王会会長を演じた北村総一朗は確かにうまいけれども「踊る大捜査線」でのとぼけた署長役の印象が強すぎて(ほとんどあの役しか見たことがないのもあるが。)どんなに凄んでも笑えてしまう。たけしの最近の監督作を見るのは「座頭市」以来だったが、全体的に「座頭市」と同じく娯楽に徹している感じで見やすくなっているが、つい最近「その男、凶暴につき」や「3-4X10月」を見たばかりなので、それらと比べるとセリフの量が増えて見せ場が派手になり、初期の映画にあったどこか冷徹な雰囲気もあまり感じられなくなっているのは少々残念。「座頭市」や本作のような娯楽に徹した作風も面白いし、嫌いではないが、個人的には初期の監督作品のような独特の静けさの中に狂気を感じさせる映画のほうが映画監督としてのたけしらしさを感じられて好きだな。
[DVD(邦画)] 7点(2011-06-23 13:33:20)(良:3票)
37.  網走番外地(1965) 《ネタバレ》 
高倉健が一躍大スターとなるきっかけとなった作品で、このあと「昭和残侠伝」とともにシリーズ化された一作目。東映時代の高倉健の主演映画を見るのがまだ3本目なのだが、ストイックで寡黙なキャラをこの頃から演じている・・・と思ったら高倉健がほかの囚人たちと一緒に陽気に裸踊りをするシーンは自分の高倉健に対するイメージを覆すもので、今見るとかなり新鮮に感じられる。前半がとくに面白く、雪道に捨てられたタバコの吸殻を拾ってうまそうに吸うシーンが妙にリアルだし、アラカン演じる老人服役囚と高倉健演じる橘との絡みも印象的だ。しかし、後半はなんちゃって「手錠のままの脱獄」になってしまい、終わり際も南原宏治が母親の名前を口にするのがやや唐突に感じてしまったのがちょっと残念だったかな。出演者の中ではやはりアラカンが存在感があり、日本映画草創期の俳優らしい威厳を感じさせていて印象的だった。彼が八人殺しの鬼寅だとほかの囚人に明かすシーンは見ていてなんだか笑えるが、同時にそのシーンがこの映画におけるアラカン最大の見せ場だと思う。そうそう、石井輝男監督の映画を見たのはこれが初めてだったのだが、カルト映画の監督と聞いていたからあんがいオーソドックスなつくりに逆にちょっとビックリ。(最初に書いた高倉健が陽気に裸踊りするシーンはこの監督ならではのことなのか?)まあ最初からいきなりカルトな映画を見るよりはこのほうが入っていきやすいかもしれない。
[DVD(邦画)] 7点(2011-06-08 23:27:53)
38.  天城越え(1978)<TVM> 《ネタバレ》 
のちに松竹で映画化もされた松本清張の原作をNHKがドラマ化した作品。映画も傑作だったが、このドラマ版もなかなか面白かった。演出はNHKのディレクターだった頃の和田勉なのだが、登場人物の心理描写や、風景描写がかなりしっかりとしていて臨場感たっぷりで見ごたえがあり、テレビで見せるタレントとしてのコミカルな雰囲気からは想像もつかないような素晴らしい仕事ぶりに感服。役者陣も寡黙な佐藤慶、少年を演じた子役時代の鶴見辰吾(この翌年が「3年B組金八先生」で、その次の年が「翔んだカップル」か。)、この二人のバランス感覚も絶妙で、とくに鶴見辰吾は、嫉妬が殺意に変わる少年という難役を好演していてとても印象深い。映画で大塚ハナを演じた田中裕子が素晴らしかっただけに本作の大谷直子の大塚ハナはどうなのかと思っていたが、さすがに田中裕子ほどのインパクトは感じなかったものの、それでも大谷直子もなかなか良いと思う。ラストで事件を目撃する遍路の役で松本清張自身が出ているのがちょっと驚き。ほかにもいくつかの作品でのカメオ出演があるようだ。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2010-04-06 14:35:14)
39.  悪名一番勝負
「悪名」シリーズ第15作。このシリーズは5年ほど前に1作目と2作目を見ただけだったが、その状態でいきなり事実上最後の回である本作を見た。このシリーズに馴染みがあると田宮二郎が出ていないのは違和感を感じるかも知れないが、まだこのシリーズを見るのは3本目ということもあってか、そこは全く気にならずに楽しめた。勝新演じる朝吉のドスの利いた河内弁や豪快なキャラクターはとても魅力的で、座頭市とはまた違った良さがある。それに本作はマキノ雅弘監督が手がけた作品ということもあってか、勝新以外の脇役たちも実にイキイキとしていて、それぞれの登場人物がみんな魅力的に描かれていてその面でも非常に面白かった。マキノ監督の映画ってまだあんまり見てはいないのだが、この頃には東映で任侠映画をたくさん手がけていたみたいで、大映の本作もその頃の任侠映画ブームに乗ってマキノ監督を起用してるんだと思うのだが、東宝の「次郎長三国志」シリーズのようなお祭り的な雰囲気のある作品に仕上がっていたのが嬉しい。「次郎長三国志」といえば本作に津川雅彦がドモリのヤクザ役で出演しているが、重傷を負ったのと引き換えにドモリが治るあたり森の石松を思わせていて、これもマキノ監督の石松への愛着を感じさせていてなんだか嬉しかったなあ。
[DVD(邦画)] 7点(2009-12-24 14:39:18)
40.  青葉繁れる
テレビドラマにもなった井上ひさしの原作を岡本喜八監督が映画化した青春映画。丹波義隆をはじめとする三人が実に田舎臭い演技で本当に田舎の学生のように見え、それに東京からやってきた草刈正雄を加えた四人組が主人公なのだが、これが四人とも実にいいキャラをしていて、やりとりを見ているだけで楽しい。喜八監督の映画としては特に傑作といえる出来ではないが、それでも喜八監督らしい明るい映画になっていてそれでいて少し切ない展開もあり、全体的に見てもとても面白かった。「ロミオとジュリエット」の稽古のシーンで太った中年の女性の先生が「おー、ロミオ!あなたはなぜロミオなの」と有名なジュリエットのセリフをいうシーンには思わず爆笑してしまった。「二女校のマドンナ」ことひろ子を演じる秋吉久美子もかわいくて魅力的だ。そしてなんといっても校長を演じるハナ肇が素晴らしい。最近自分の中でクレージーキャッツの映画でのイメージが強くなりつつあったが、やっぱり一人の役者として見てもとてもいい俳優だと思う。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2008-11-24 18:08:29)
000.00%
190.60%
230.20%
3463.09%
4493.29%
531921.40%
634423.07%
734723.27%
828018.78%
9563.76%
10382.55%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS