141. 赤ひげ
《ネタバレ》 初見。赤ひげが仕切る小石川養生所を舞台にした新米医師保本登の成長物語。弱き者には慈悲深く強き者からは金を巻き上げる三船敏郎の重厚さに対する加山雄三は清々しくて凛々しくて引けをとらない存在に驚く。赤ひげが語るところの「病気の陰には恐ろしい不幸が隠れている」が、各エピソードによって示される。狂女の帯使い、蒔絵師の娘の絞り出すような一言一句、佐八とおなかが再会した時の風鈴の音、床を磨くおとよ、また盗みをしてしまった乞食にしときゃよかったと謝る長次。言葉通りの恐ろしさとやるせなさでとにかく息苦しい。そんな中にあって賄の4人が見せる人情が殊更胸に沁み、この世も捨てたものではないと思わされる。井戸に向かって長次の名を叫ぶおとよの回復した姿は保本にとって医者の務めを果たしたと言えるのでしょう。赤ひげが枯れ木を折るように手足をへし折る立ち回りシーンがマイナス0.1。製作に携わった全員の渾身の思いが感じられる傑出した作品。感服しました。 [DVD(邦画)] 9点(2016-05-31 01:52:50)(良:1票) |
142. アルゴ
《ネタバレ》 実話ベースという事で、珍作戦なれど007やMIPとは違う現実味があった。飛行機がイラン領空を出るまでヒリヒリする緊張感に包まれ、結末にホッとするものの、彼ら6名が残されている同僚の事を案ずるシーンが一度たりともなかったのが減点。 [DVD(字幕)] 7点(2016-05-02 19:55:14) |
143. 有りがたうさん
テレビのドキュメンタリー番組のようなロードムービー。悲哀と疲弊に満ちた人々の世相を、これ程までに温かく明るく描き切られている事に感嘆。単なる能天気ではない、酸いも甘いも噛み分けた有りがたうさんが発する「ありがと~」の響き共々余韻の深さが凄い。清水監督は溝口・小津・山中監督が「天才」と呼んだらしいが、納得させられる不思議な味わいを持つ作品。 [インターネット(字幕)] 9点(2016-01-17 02:10:52) |
144. アッシャー家の末裔
冒頭、皆がアッシャー家に恐れ戦いている様子に膨らんだ期待は裏切られた。生身の妻より絵の妻に執着する狂ったロデリック。恐怖や無常感など皆無で、その思わせぶりな表情に、志村けんのバカ殿が思い浮かび笑いがこみあげてくる始末。映像と物語が一体となってこその恐怖である事を実感。呆れ返るだけの作品だった。 [DVD(字幕)] 1点(2014-10-28 23:26:39) |
145. 暗殺の詩/知りすぎた男どもは、抹殺せよ
《ネタバレ》 目当てはトランティニャンでしたが、フィリップ・ノワレの前に霞んでしまいました。頑なにデビットを守ろうとし、妻を寝取られても許す姿は私の理解を超えるものでした。彼だけは助かって欲しいとの願いが砕かれる覚悟の面持にやり切れない思いが募ります。冷静に考えると粗の目立つストーリーですが、何とも言えぬ物悲しさに冷静さが奪われる作品でした。 [DVD(字幕)] 7点(2014-10-13 00:12:32) |
146. 愛の風景
《ネタバレ》 学生同士の惚れた腫れたのくっついたり離れたりにイライラが募る前段。結婚してからの二人に気分が鎮まり最後まで鑑賞。夫婦はこの先もくっついたり離れたりするのだろうと想像させられるラストに、長々とこんな風景を観た疲れが噴き出しました。嫁に手を上げたり、ペトルスを殴り続ける直情径行さにこんなのが牧師かと呆れ果てました。 [DVD(字幕)] 4点(2014-01-04 16:29:16) |
147. 新しい人生のはじめかた
《ネタバレ》 「諦めながら生きる方が楽なの」後悔を重ね歳を重ねてきた者にとっては身につまされる台詞です。現実離れが甚だしい展開ながら一歩を踏み出す結末に力づけられます。肩の力が抜けた名優同士の用心深い触れ合いは、なだらかさに心安らぐ一方で二人なればこその起伏が感じられなかった物足りなさがありました。 [DVD(字幕)] 6点(2013-11-04 17:18:00) |
148. 相棒 -劇場版- 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン
上質なテレビシリーズのファンである私にとってガックリな出来栄えです。突っ込みどころ満載の展開に失笑し、エキセントリックに過ぎる右京さんが痛々しく見るに堪えない姿でした。ただ舞台を大きくするだけの映画化は浅はかです。 [地上波(邦画)] 2点(2013-04-01 01:29:58) |
149. アンストッパブル(2010)
《ネタバレ》 アリの一穴から大惨事へと。多くの命が失われるであろう惨状が想像出来る列車の凶暴さがひしひしと伝わってきました。めでたいラストですが、見ていてこっぱずかしくなりました。 [DVD(字幕)] 7点(2012-12-24 03:26:24) |
150. アンナ・カレニナ(1935)
自分の心に正直であるためなら世間の倫理から外れるのも厭わないと結ばれた二人。重荷を背負うのも代償を払うのも厭わない覚悟がアンナにあったのか疑わしく、ヴロンスキーに至っては覚悟の「か」の字もない青臭い口だけ男でした(この男は何歳の設定だったのか?)アンナの末路に、憐れさを覚える一方で、ラストのヴロンスキーの薄っぺらい台詞を聞くにつけ、選ぶ相手を間違えた自業自得さを感じました。 [DVD(字幕)] 5点(2012-06-02 16:02:32) |
151. アフリカの女王
全編殆ど二人芝居の冒険物語。向こう見ずで頑固ながらもふと気弱な一面を見せるロージー、彼女に呆れつつも知識と知恵と腕力でもって彼女を守るチャーリー。共に垢抜けないものの、その心模様が実に見応えがあり、男らしさ、女らしさを示してくれる姿に最後まで釘付け状態でした。敵方が貧弱なのが玉に瑕ですが、ラストは爽快感がありました。 [DVD(字幕)] 7点(2012-05-07 00:46:43) |
152. 歩いても 歩いても
子供時分に沢山観たテレビドラマの様でした。子供が成人した身となった今、共感したり考えさせられたりすることが多々ありました。ただ、あまりにも起伏のない展開に映画にした意義に疑問を感じました。 [DVD(邦画)] 4点(2012-04-30 18:51:57)(良:1票) |
153. 愛の嵐
ゲットーでのルチアの胸中は諦めだと思っていましたが、再会からの展開を見ているとそれ以外に何かあったのか考えさせられました。しかし、これみよがしな「退廃」が前面に押し出されており、何なのかは判らずじまい。マックスはただのアブノーマルな男にしか見えず。陰鬱な画面の中での二人が辿る結末に監督の独り善がりを感じました。 [DVD(字幕)] 4点(2012-01-05 02:54:06) |
154. 赤い砂漠
病人の独り言をメリハリもなく延々と綴っているだけで退屈で苦痛でした。色がついていようがいまいが私にはカンケイのない事でした。 [DVD(字幕)] 1点(2011-12-28 00:02:32) |
155. 暗黒街の弾痕(1937)
更生する事の厳しさが描かれる多くの作品の中にあって、監督が表す寒気がする無情さは一味違います。観る者の同情や非難をはねつけるが如き彼女の最期の台詞が泣かせます。彼女が主役のドラマに見えました。 [DVD(字幕)] 6点(2010-10-02 21:49:00) |
156. あげまん
当時、男性陣の揃いも揃った身勝手さに、憤然としたものです。今はそれに加えて、都合のいい女で悦に入るナヨコにも共感出来ません。男女問わず、上がるも下がるも自分自身。「それ」にすがるさもしさが何ともはや。着眼点が陳腐な上に観察眼も見るべきものがない伊丹監督にしては凡庸な作品です。 [映画館(邦画)] 5点(2010-03-01 18:59:58) |
157. あるいは裏切りという名の犬
不実に対しては天罰が下る事、筋を通して意地を張り通す事が生半可な思いでは出来ない事を見せ付けられます。同じ慟哭するのであれば、諦めた後の後悔の念でないものでありたいと思います。 [DVD(字幕)] 9点(2010-02-20 22:16:05) |
158. アパートの鍵貸します
安物の人物が織り成す安物の事の成り行き。しかし、ジャック・レモンが演ずる、譲れない一線は何があっても譲らないバドの姿勢と、台詞の一言一句、仕草の一つ一つ全てに心血を注ぎ込む監督の姿勢が本作の輝きを永遠のものとしているのでしょう。 [ビデオ(字幕)] 8点(2009-12-08 17:05:18) |
159. 網走番外地(1965)
《ネタバレ》 初見。期待外れ。唐突な脱走で興が一気に醒め、そこからラストまでの冗長さにウンザリとなり、ラストにガッカリさせられました。健さんのオフクロを思う描写がくど過ぎて鼻につき、南原宏治(爬虫類のようなねっとりとした演技は見事)までが口にするに至っては安っぽさに白け返ります。わずかな出番でありながら役者としての格の違いを見せ付けた嵐寛寿郎との絡みをメインとし、彼との別れをラストとした作品であれば名品に仕上がった気がします。 [DVD(邦画)] 4点(2009-12-01 17:58:14) |
160. 愛の狩人
某作品の「女は子宮でモノを考える」のお説が思い浮かぶ、脳味噌が海綿体から出来ている野郎二人の安物の欲情をひたすら見せられる。アホクサ。 [ビデオ(字幕)] 0点(2009-10-30 14:08:38) |