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鉄腕麗人さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2598
性別 男性
ホームページ https://tkl21.com
年齢 43歳
メールアドレス tkl1121@gj8.so-net.ne.jp
自己紹介 「自分が好きな映画が、良い映画」だと思います。
映画の評価はあくまで主観的なもので、それ以上でもそれ以下でもないと思います。

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21.  川の底からこんにちは
映画は、いきなりヒロインが腸内洗浄を行われるシーンから始まる。 少々横柄な女医の問いかけに対して、若干焦点が定まらない黒い瞳で「ふぁい」と返事をするその表現を観た瞬間に、このアイドル上がりの若い女優が、この数年で一気に日本映画界を席巻する存在に成っている理由が理解できた気がした。  この映画の全編を通して発揮されている「満島ひかり」という女優の抜群の存在感には、儚さと美しさ、そしてあらゆる“重さ”に耐える強い人間味が備わっていて、まるで韓国女優のような骨太さを感じた。 ああ、日本にもこういう女優が生まれたんだという新しい光みたいなものを明確に感じたと言っていい。 火を見るよりも明らかだが、このヘンテコリンな映画は、満島ひかりというトピックス的な存在があって初めて成立している。  ヒロインはあらゆる苦境に対していつも「しょうがない」と無表情で言って割り切る。 自分自身のことを鑑みて、“中の下”の女だから“中の下”の人生しか歩めないと、悲しいまでに達観してしまっているのだ。 周りの人間も揃いも揃って馬鹿ばかりだけれど、自分自身が馬鹿なんだから、それも「しょうがない」。  そうやって常に脱力感に溢れ、流れのままに人生を沈み込んでいくヒロインが、ついに川の底まで辿り着き、あたかも川底からすくい上げられる“しじみ”の如く、川面に顔を出す。 そうまさに「川の底からこんにちは」なのだ。  その様は決して劇的なことなどではなく、何の根拠もないただの“開き直り”ではあるけれど、今までただただ受け身としての「しょうがない」だった彼女が、“頑張る”と決めたのだから「しょうがない」とささやかな変化を見せる姿は、不思議な程に勇ましく、高揚感に溢れる。  人生は自分の望む通りにはならない。そんなことずっと前から知っている。 でも、ただ負けてばかりはいられない。だから、頑張るしかしょーがない。 人生など、それでいいのだ。と、ヒロイン同様、安い発泡酒を飲みながら思えた。
[DVD(邦画)] 8点(2012-04-03 13:57:48)(良:2票)
22.  完全なる報復 《ネタバレ》 
燃えたぎる「復讐心」を描いた映画は多々あるけれど、この映画ほどその行為に“歯止め”がないストーリー展開は見たことがない。 本来「善人」であるはずの復讐者の領域を完全に越えてしまっているので、感情移入出来るレベルではなく、正直主人公の人物描写に拒否感を覚える人も多いだろうと思う。  ただ僕は、そういう一線を越えてしまっている部分こそ、この映画の素晴らしいオリジナリティーだと思った。 「司法制度の脆さ」という明確なテーマ性を土台に敷き、妻娘を失った男の問答無用に残虐な復讐行為を、強烈なショッキング性と娯楽性に富んだサスペンスで彩った秀作だと思う。  もはや「完全」すぎて何でもありになってくる復讐行為の数々は、時に非現実的で強引とも思えなくはないが、資産力のあるエンジニアというそもそものキャラクター設定と、演じるジェラード・バトラーの有無を言わせない熱たぎる存在感によって、諸々の難癖を蹴散らし、まかり通している。  競演するジェイミー・フォックスも、自身の価値観の中で揺れ動く敏腕検事を好演していた。  良い意味でも悪い意味でも思い切りの良い映画なので、好き嫌いははっきりと分かれるのかもしれないが、描きたい映画世界を、真正面から堂々と映し出していることが、もっとも評価すべきことだと思う。  自身の罪を受け入れ、ナパームの業火に包まれる復讐者の最期の様が印象的だった。 そして、ジェラード・バトラーは今もっとも炎を背負う様が似合う俳優だということを思い知った。
[DVD(字幕)] 8点(2011-08-14 23:18:29)(笑:1票) (良:1票)
23.  家族ゲーム
この映画を観て、「家族」という関係性において、その在り方に正解も不正解もきっとないのだろうということを思った。  「家族ゲーム」という映画タイトルの中で描き出される一つの家族。次男の高校受験を目前にして、家族皆が盲目的な”理想”を掲げて、混沌としている。  その混沌とした家族風景が、不幸かというと、決してそんなことはない。  食卓に横並びになって、互いに顔を合わせることのない会話をしながら、淡々と食事をする風景は、この家族の姿を如実に表しているのだが、その味気ない風景にさえ、この家族の切れることない繋がりを感じる。 それは、どんなに窮屈で、居心地が悪くても、それでも互いに寄り添って食事を続けるしかない、という家族そのものの「宿命」とも言えるものかもしれない。  たぶんそれは、実際とても幸福なことなのだろう。 この映画は、混乱する家族像を描きながら、それでも見え隠れする繋がりの強さと、繋がりが強いからこそ生じる“滑稽さ”を、抜群のユーモアセンスで表現した作品なのだと思う。  やはり何と言っても、松田優作が素晴らしい。 コミュニケーションが苦手な家族の中に家庭教師として突如現れ、その関係性を好き勝手にかき混ぜる飄々とした姿は、彼ならではの「表現」だった。ラスト、半ば意味不明に“キレる”様も、松田優作という表現者の真骨頂だったのではないかと思う。  おそらく、見れば見る程に、味わいが変わり、深まる映画だと思う。
[DVD(邦画)] 8点(2010-03-13 15:27:28)(良:1票)
24.  かもめ食堂
くたびれた日々の中の週末、長い秋の夜、とても良い映画を観ることができた。  ほんとうの“やさしさ”とか“やすらぎ”というものは、潔いつよさの上に存在するものだと思った。 フィンランドという国に、そこでさりげなく構える小さな食堂に、そしてこの映画の主人公にそういうことを感じた。 自分が在る場所と存在を見極め、認めるからこそ、有意義でゆったりとした時間が流れるのだと思う。  そのゆったりとした時間が流れる日々の中で、交わされる言葉、たわいもない出来事、少し変わった人々、差し出されるコーヒー、並ぶテーブルと椅子、シナモンロール、食器、おにぎり……そのすべてがいとおしく感じる。  何が起こるというわけではない。食べる姿が大好きな日本人女性が、遠い北欧のフィンランドで小さな和食の食堂を開き、そこに人が集まってくる様子を描き連ねているだけである。 でも、そこに映し出される「幸福感」は、とても大きい。 そういう空気が流れるところでは、もはや言葉が通じないだとか、文化が違うなんてことは、あまり関係なくて、その共有すべき空気の中で、ただただ自然に存在できるのだと思う。  主人公の店主を演じる小林聡美がさすがにスバラシイ。強い潔さと深いやさしさに溢れたその存在感は、舞台となる“かもめ食堂”そのままであり、この映画そのものと言っていい。 特にラストカットのワンフレーズなど、中々あれほど自然に表現できるものではない。  ふと思う。 遠い遠いフィンランドという国へ行きたい。 ヘルシンキという街へ行きたい。 かもめ食堂へ行きたい。
[DVD(邦画)] 8点(2006-10-15 02:53:22)
25.  ガス人間第一号
正直なところ、この映画の場合、僕はタイトルのインパクトだけでほとんど圧倒されている。“ガス人間第一号”って、まさしくそのまんまなんだけれど、なんて潔くてオシャレな表題なんだろうと。そして、そのタイトルから滲み出る“B級科学映画”という雰囲気をさらりとかわして、繰り広げられる哀しい男の哀しい運命の物語に、予想に反した感慨深さが残る。若かりし故・三橋達也の男臭さ、美しい八千草薫の憂いに魅了されることも間違いない。 ところで、こういう映画がもし同じ時代にハリウッドで作られていたとしたら、間違いなく現在においてリメイクされているだろう。それをしない(むしろ出来ない)日本映画界は、やはり当時に比べて、特に娯楽映画の部分での進歩が無いというよりも後退が著しいのだと思う。
[DVD(字幕)] 8点(2005-05-07 03:01:32)(良:2票)
26.  風が吹くとき
ある日立ち寄った本屋でこの映画の原作絵本を見つけ立ち読んだ。すると、幼い頃この映画を観た時のとてつもない恐怖がありありと浮かび上がってきた。観たとき私は6歳とかそれくらいだったと思うが、あまりの怖さにその夜布団の中でひとり震えていたのを思い出す。これほどまでに哀しく、怖い戦争映画は他にない。見なければならない。この物語を世界中の人が知らなければならない。
[地上波(吹替)] 8点(2004-02-10 12:05:56)
27.  カンパニー・マン
「CUBE」の監督の新作ということでどうも評価が低かったようだけど、非常に良質なサスペンスに溢れた秀作だと思う。前作で垣間見れた圧倒的な映像センスは流石の非凡さで引き込まれる。抜群の映像世界にともなって展開されるストーリーも緊迫感とスピード感に溢れた見事なものだった。
[映画館(字幕)] 8点(2004-01-30 14:25:25)
28.  カタクリ家の幸福
これほどまでに常軌を逸した映画を作れる映画監督は、三池崇史をおいて他にいない。とにかくその秀逸なまでの破綻ぶりが見事としか言いようがない。狂ったようなストーリー展開、狂ったような環境、狂ったようなカタクリ家の面々にただ爆笑あるのみ。
8点(2004-01-09 13:48:32)
29.  カッコーの巣の上で
ストーリー的な評価は価値観の違いによって左右すると思うが、ジャック・ニコルソンの演技は凄かったと思う。彼の俳優としての根底の素晴らしさを見た気がする。ラストシーンには安易に感動できない問題の根深さが感じられ、映画として非常に味わい深い作品であることは間違いない。
8点(2003-11-30 14:13:35)
30.  ガメラ3 邪神<イリス>覚醒
突き抜けた特撮精神。そして、エゴイスティックなストーリーテリング。  初見時は、とても満足度が低かった記憶があるのだが、再鑑賞してこの作品のエネルギーに圧倒された。
[インターネット(邦画)] 8点(2003-11-18 14:40:01)
31.  仮面の男(1998/ランドール・ウォレス監督)
レオナルド・ディカプリオのスター映画として公開時は宣伝されていたが、今作はディカプリオ演じる2人の王をめぐる四銃士の物語で、演じた4人の名優たちの演技が絶品だった。文芸的かつ娯楽性に優れた仕上がりは、とても見応えのあるものだったと思う。脇役に徹したディカプリオも映画に華を添える意味で、効果的だった。
8点(2003-11-12 12:06:19)
32.  河童(1994)
映画とテレビドラマの最も大きな違いは、世界観の創造であると思う。言い換えれば、映画はそれぞれ独自の世界観がなければ価値がないということだ。そういう意味で、この映画には確固たる世界観がある。秀逸な世界観は時にリアルを排除してもいいと思う。石井竜也が創りだしたファンタジックな叙情感が味わえるこの映画はそれだけで、傑作になり得るものなのだ。
[ビデオ(邦画)] 8点(2003-09-29 13:19:15)
33.  崖っぷちの男
「え?え?何するの?何するのーッ!?」てな感じの主人公のクライマックスでの“アクション”で、この映画のリアリティーラインは確定される。 そのライン設定は想定外ではあったが、それならそれで楽しい映画だったと言えよう。  同時期に公開された「ザ・レッジ -12時の死刑台-」という映画があり、その映画も一人の男がビルの縁に立つということから端を発するサスペンスだった。 着想は極めて類似しているが、描き出されたテイストは大いに異なっており、比較してみると結構ユニークだ。  「ザ・レッジ」は、色香に溢れた人妻役のリブ・タイラーを巡る色情濃サスペンスで、これはこれで想定外な映画世界に見応えがあった。 そして今作はというと、これまた想定外の“ケイパーもの”。繰広げられる強奪計画はフレッシュで充分な娯楽性を備えていたと思う。  勿論、手放しには褒められない粗はある。 ルパン三世ばりの綿密な強奪計画を、一介の刑事だった男が考えたというのはちょっと無理がある。  ただそこで冒頭に記したリアリティーラインが効いてくる。 こういうリアリティの映画であれば、少々無理目な強奪計画もまかり通るというもの。 強奪計画の実行犯を請け負う主人公の弟とその彼女のキャラクターも良く、それぞれが受け持つコメディ要素とセクシー要素は、この映画の娯楽性において意外な程に重要なものになり得ている。  底の浅い悪役にキャスティングされているエド・ハリスは勿体なかったが、全体的にはバランスの良いお手軽なエンターテイメントだと思う。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2014-09-21 23:57:50)(良:1票)
34.  ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
主人公が古臭いウォークマンを取り出し70年代のヒット曲を目一杯流しつつ、荒廃した惑星を探検する。このオープニングシーンが先ずアガる。 ただ一方で、自分自身がもっと70年代のヒットチャートに造詣が深い趣向や世代であれば、もっと幸福な「体感」としてこの映画は記憶されるだろうなと、少し残念にも思えた。 娯楽映画として全く申し分はないのだけれど、生じた高揚感がスペシャルなものにならなかったのは、そういう世代差的な要因は大いにあるように思える。  「アベンジャーズ」と世界観を共有するマーベルコミックの新シリーズだが、主要キャラクターにおいて、スター俳優の「出演」はほぼ無い。 ただ登場するキャラクターは総じて魅力的で、決して番外編的なストーリーラインではないと感じた。 キレッキレのブラッドリー・クーパーのアライグマぶりに燃え、セリフが”2パターン”しかないヴィン・ディーゼルの大木野郎ぶりに泣けた。  “腰フリ作戦”で宇宙を救うという「愛嬌」は、この新ヒーローたちに相応しい愛すべき英雄像であり、ふざけてはいるけれど素直に胸熱だった。  ただし、善玉も悪玉もキャラクターが総じて魅力的な分、彼らのバックグランドや互いの関係性の描写が少々物足りなかったことは否めない。 実際、意識的に描き残しているキャラクター描写もあったと思うので、今回の物足りなさについては次作に期待したい。  そして、彼らが今後「アベンジャーズ」にどう絡んでくるのかも、期待大だ。
[映画館(字幕)] 7点(2014-09-14 09:14:17)(良:1票)
35.  かぐや姫の物語
今まで観たことがないアニメーション表現、そして、それに伴う今まで感じ得たことのないエモーションを感じられる、日本の、いや世界のアニメーション映画史に残る作品であることは、間違いない。 線と色、そして空白からなるアニメーションの「真髄」を導き出し、そのまま象ったかのように構築された類い稀な映画であろう。  何の迷いも無く、「賞賛」に値する。 しかし、「じゃあ、面白かったか?」と問われると、素直に首を縦に振ることは出来なかった。 映画とは、奥深く、難しいものだと、つくづく思う。  もちろん、他のジブリ映画の例に漏れず、この映画もこの先何度も繰り返し観ることだろう。 そして、他の多くの作品と同じように、観返す度に新しい発見をし、評価が深まるに違いない。 しかしながら、映画鑑賞という行為の価値は、初見時に集約され、殆どの作品はそれに決するということもまた事実。 であるならば、この“初見”で真っ先に頂いた感情を誤摩化すわけにもいかず、「物足りない」と言わざるを得ない。  期待し、想像を膨らませていたイメージよりも、ずっと普通の「竹取物語」だった。 「かぐや姫の物語」と堂々と銘打っているわけだから、描かれるものが「竹取物語」で悪いはずもなく、製作者の真っ当な意向に難癖を付けることは、甚だお門違いだとは思う。 ただ、個人的な期待感は、これまで見たことが無い“かぐや姫”の物語、そして知り得なかった「竹取物語」の真相のようなものに対して突っ走ってしまっていたのだと思う。  だから、あまりに真っ当な「竹取物語」を目の当たりにして、落胆に近い感情を持ってしまったのだと思う。   言うまでもないことだが、高畑勲という日本のアニメーション界の大巨星が渾身のエネルギーで生み出した世界観は、もちろん素晴らし過ぎる。 描写の一つ一つに息を呑み、感動したことは確かなことだ。老若男女問わず日本中の人が観て、愛されてほしい作品だとも思う。  ただし、一個人の勝手に違った方向に膨らみ過ぎた期待にほんの少し沿わなかったという、ただそれだけのことだ。 
[映画館(邦画)] 7点(2013-11-28 17:10:37)
36.  鍵泥棒のメソッド
「メッソド(method)」の意味は、方法・やり方、順序・筋道、規則正しさ・几帳面。 そして、役に没頭しその人格になりきる演技プランのことをメソッド演技という。  それらすべての意味合いを織り交ぜたストーリーテリングが、やはり面白かったと思う。 「運命じゃない人」「アフタースクール」と、傑出した娯楽作品を立て続けに生み出してきている内田けんじ監督ならではの世界観で、そのエンターテイメント性は安定している。 また、“そういうお話”を描くにあたり、堺雅人化×香川照之という今や日本の映画界を席巻するこの二人のキャスティングは、あまりにも間違いがなく、そりゃあ面白く仕上がらないわけがないという感じだった。  特に昨今の香川照之の相変わらずの好調ぶりは、凄まじいとすら思える。 記憶を無くした完璧主義の殺し屋が、突如自称役者の駄目男の人生に放り込まれ、持ち前の几帳面さで役者道を邁進しつつ、ラブコメに突入する様を映画の世界観にフィットした存在感で見事に演じてみせている。 今はや彼のスケジュールに沿って国内作品の製作スケジュールは確定しているという噂も、納得せざるを得ない。  堺雅人演じる主人公の言動が多少コント的過ぎる部分もあったが、一方で広末涼子演じるヒロインには新たな魅力が引き出せており、トータル的に見て、正しい娯楽だったことは間違いない。 今の日本にはそういう真っ当な娯楽を描き出せる人は想像以上に少ないと思う。 オーバーアクトが基本路線の映画に仕上がっているので、この主要キャストでそのまま舞台作品に置き換えても、素晴らしい作品となるだろうとも思えた。  ただし一方で、もう少し毒っ気があっても良かったかなとも思う。 コメディなので、この顛末自体はまったく問題はないのだけれど、ライトさが全面に出ているので、クライマックスの顛末における緊迫感は欠けていたように思える。 クライマックスのやり取りは、実際のところ生死を左右するものの筈なので、もう少し緩急を付けて締めるところは締めてくれると、より作品のライトさが良い意味で際立ったと思う。  ともかく、この監督は次回作も充分に期待出来る。
[ブルーレイ(邦画)] 7点(2013-05-27 23:51:17)
37.  外事警察 その男に騙されるな
仕事として「嘘」をつくプロフェッショナルがいるのならば、それは「真実」を生み出すことが出来る人間のことなのだろう、とこの映画を観て思った。  「公安の魔物」と称される渡部篤郎演じる主人公の生業は、まさに「嘘」を操り「真実」を作り出すことである。それはもちろん「捏造」と言えるが、それが本当の意味でまかり通ったなら、その時点で「嘘」は「真実」に転じる。 このポリティカルサスペンスのエンターテイメントの醍醐味は、「嘘」と「真実」が表裏一体に存在する社会の真相そのものだと思う。  まずテレビドラマシリーズの評になるが、「公安」しかも国際案件を担う「外事警察」という存在を、これほどメインに描いたドラマはこれまでなかったので、その題材自体が新鮮であったことは言うまでもない。 実際に描かれるドラマの世界観において、どこまでのリアリティがあるのかは一般人には判別が付けきれないが、安直な娯楽性に走らず、たとえ“地味さ”が先行しても「現実感」を優先したドラマづくりはNHKならではで、クオリティーの高さを保っていたと思う。  そして満を持しての映画化。キャラクター設定や基本的展開の説明省略等、テレビシリーズを礎にして成立している映画作品であることは否めない部分があるにはあるが、そういう部分をさっ引いても、充分な質の高さと、これまでの国内のサスペンス映画にはない新しい緊張感を備えた作品に仕上がっていると思えた。  今作はキャスティングが素晴らしい。 渡部篤郎をはじめとするメインキャストはもちろん、今回の映画作品においても田中泯や真木よう子の起用とその配役は抜群だったと思う。両者とも大河ドラマ「龍馬伝」の主要キャストであり、NHKの息のかかったキャスティングであることは明らかではあるが、そう言う部分の“間違いなさ”も流石だと思う。  ストーリーとしてはやや様々な要素を詰め込み過ぎている印象もあり、そのせいで主要キャラクター同士のドラマ性が希薄に映ってしまう感もあるにはあるが、ポリティカルサスペンスの娯楽性という部分では充分なクオリティーを示していると思う。  ラスト、立て続けに映し出される「真実」と「嘘」の関係性などは、テレビシリーズを観ている者として薄々感づいてしまう部分ではあるけれど、それでもニヤリとしてしまうし、陰に隠れて見えない主人公の表情で締めるラストカットは思わず唸ってしまった。
[映画館(邦画)] 7点(2012-06-17 17:07:13)
38.  カンフー・パンダ
この映画は言うなれば、“パンダカンフー”版「スター・ウォーズ」である。 ストーリー、キャラクター性、あらゆる面でかのスペースオペラの世界観が色濃く反映されている。 スター・ウォーズファンのカンフー映画ファンならば、文句なしに楽しめる映画だろう。  何の取り柄もないカンフーマニアのデブパンダが、運命だか偶然だかで“伝説の戦士”に選ばれ、強敵を倒す。という、ありふれたプロットに想像通りにストレートなお話が展開される。 実際、ストーリーに“ひねり”など必要としない映画であることは間違いなく、アニメーション表現ならではの面白さとキャラクターの魅力だけで、「完成」している映画だと思う。  とは言うものの、いくつかの難点はあった。 一つは、主人公の成長の仕方が唐突過ぎるように思えたこと。 何も取り柄もないと思われていた主人公の唯一見出された資質が“食い意地”で、それを最大限に生かして潜在能力を引き出すという修行方法は、この映画世界に相応しいユニークさだと思った。けれど、そもそもその潜在能力が備わっている理由が明確にならないので、やはりあまりに都合良く思えた。  そしてその主人公が、圧倒的に凶暴に描かれる強敵に打ち勝つという様にも説得力が足りなかった。 何故デブでのろまなパンダが戦士に選ばれ、何故強敵を倒すことが出来るのか。そういう基本的な部分の理由付けが曖昧すぎたように思う。  生い立ちも含めた描かれなかった主人公のキャラクター設定は、続編への布石のつもりなのかもしれないけれど、この作品を単体で観た限りでは“軽薄”という印象を拭えない。  ただ、この映画は垣間見えるいくつかの粗を追求するべきものではなく、ユニークなキャラクターたちの愉快で痛快な言動そのものに面白味を見出すべき作品だろう。 そういう意味では、アニメ映画としても、カンフー映画としても、楽しみがいのある優れた娯楽映画であることは間違いない。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2012-01-20 13:15:12)(良:1票)
39.  借りぐらしのアリエッティ
“アニメ”とは、「体験」だと思う。  かつて自分が幼い頃から観続けた「ナウシカ」や「ラピュタ」や「トトロ」がそうであったように、ことジブリアニメにおいては、「体験」という言葉が最もしっくりくるように思う。  ある時は風に舞い、ある時は天空を駆け巡り、ある時は日本の原風景の中で息づいた。 そういった圧倒的な創造性の中で与えられた数々の「体験」こそが、宮崎駿というクリエイターと、“ジブリ”というアニメブランドの絶対的な価値だった。  そして、この「借りぐらしのアリエッティ」は、その「価値」をしっかりと継承している。  小人の世界を描いたストーリーの規模はとても小さく、前述のかつての名作のような深みは決してない。 しかし、観る者は、小人たちの世界と彼らの「五感」を紛れもなく「体験」出来る。  迫ってくる猫の大きさとスピード感、虫たちが躍動する音、滴る雫の重みと質感、テーブルと床までの息を呑む高さ、そして“樹木希林”の恐ろしさ……。  そういった感覚こそが、ストーリーを超えたこの作品の価値だろう。  加えてアリエッティという新たなヒロインが、ジブリ作品の伝統的なヒロイン精神を受け継いでいることも嬉しい。 ナウシカやシータ、サツキやキキのように、前を向き続ける芯の強さと女性としての輝きに溢れたキャラクター像は、ジブリの新たな原点回帰であり、これから先の指針のようにも思えた。  子供の多い映画館で観ていて、こういうアニメ映画が37歳の新たな才能によって生み出されたことに、嬉しさと同時に安堵感を覚えた。
[映画館(邦画)] 7点(2010-07-17 11:57:10)(良:4票)
40.  彼が二度愛したS
サスペンス映画が好きである。 鑑賞者の思惑を大いに覆すストーリーに惹かれるものだ。  が、今作の場合は、ストーリーに驚くべき起伏があるわけではない。 もちろん、ただ平坦なだけではサスペンス映画として成立しないので、程よい緊張感と“二転”くらいのエスプリは持ち合わせている。  ただこの映画の面白さは、そういうストーリー展開にあるわけではなく、映画を構築する他の要素の質の高さによるところが多いと思う。 最近は、とにかくストーリーに「衝撃」を押し出そうとする作品が多いだけに、今作のようなサスペンス映画は少し珍しい。  では何が良いのか?  ユアン・マクレガー、ヒュー・ジャックマン、ミシェル・ウィリアムズら出演者たちのキャラクターに即したビジュアルの美しさ。 高級ホテルに高級スーツなどから発せられる洗練されているからこそ、同時に醸し出されるある種の“禍々しさ”。  そういった主人公の感情と、ストーリーを彩るラグジュアリーが、映画を魅惑的に仕上げているのだと思う。  「驚き」には欠けるが、たまにはこういうオールディーさを感じるようなサスペンス映画も悪くない。
[映画館(字幕)] 7点(2008-11-19 14:12:49)(良:2票)
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