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1.  ガントレット 《ネタバレ》 
武器使用の際は適材適所なモノを選び行いましょう、という教則DVDの悪い事例の項目を見せられているような作品でした。  ストーリーパートがかなり単純で広がりがない為に無尽蔵とも言える銃弾を使った銃撃シーンもその迫力が作品自体にまで大きな効果を与えていた印象はなく、話から乖離してしまい悪い意味でそこだけ目立ってしまったように感じました。 映像的に見ると展開は中々激しいのですが、脚本的な展開力の弱さと主役の2人を始めとする登場人物にキャラクターの魅力や深さが無い為にそれらに足を引っ張られ凡作になってしまったように思います。 パトカーをジャックされた警官に色々と喋らせたりはしていますが、やはりそれもそこ迄の効果は得られてはいないように感じてしまいます。  バスの中でのショックリーとマリーの会話と沈黙が比較的良かったようにも取れますが、厳しい事を言ってしまえば演出が透けて見えてしまっているとも言えてしまえます。  黒幕2人の処理の仕方や主役の2人が助かり去ってゆく姿などは大味の西部劇のようでそこ迄に至る経緯を考えるとそれはそれで納得できる流れなのですが、個人的にはラストにショックリーがあの場で死んでマリーが泣きながら彼に覆い被さる脇を箱から出てきた赤いバラが風で散らばっている画を俯瞰ロングで抑えて欲しかったです。 作品通りのラストならばヌルいようですがジョゼフソンの命も助かっている事を望んでしまいます。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2015-10-19 13:54:41)
2.  カプリコン・1 《ネタバレ》 
設定、音楽、車の暴走とドッグファイトが素晴らしかったのですが全体的に見ると少々雑とも言える造りになっていたと思います。 特に設定について言えばかなり面白い着目点なので見終わった時には残念な気持ちになってしまいました。 面白い設定で前半が良く後半になるにつれ話の展開に無理を感じてしまうのは、質の良くない最近の邦画を連想してしまいます。  また、音楽の良さがギャップとなって作品の稚拙さを逆に際立たせてしまっていた印象でした。 しかし、ドッグファイトやブレーキの効かない車のシーンはカメラワークで誤魔化す事なく素材の迫力に圧倒されてかなり興奮させて貰いました。 特に追跡シーンにも使われていた2台のヘリコプターはそれ自体が意思を持ったような連動した生物的な動きと操縦者の声も顔も出さない無機質な不気味さが相俟って恐怖を煽る演出として効果的だったと思います。 しかし私が見たかったのはやはり陰謀がどの様に暴かれていくかを緊張感を持って最後まで楽しみたかったので返す返す残念に感じてしまいます。  また、他の方のレビューを読むとラストも賛否両論有るようですが私的にはあと10分欲しかったので、スローになってクレジットが出てきた時には「あれれ……そーなんだ…」って感じでした。 まぁその後のお決まりの展開としては、ソ連の人達に嘲笑と罵倒されてキレたアメリカ大統領が核ミサイルの発射ボタンを押して地球が大変なことになるんだろうけど…。 続編カプリコン2(ザ・デイ・アフター)だったかな?違うかな?
[CS・衛星(字幕)] 5点(2015-09-01 00:04:31)
3.  学校Ⅱ 《ネタバレ》 
前作は田中邦衛さんが本作では吉岡秀隆さんが素晴らしい演技を見せてくれました。 「北の国から」の親子、恐るべしです。 がっかりするような演技をする役者さんが1人もいなかった為に作品に集中出来ましたし、映画としてその事が如何に大事かを改めて感じさせて貰いました。  竜先生が「与えるとか教えるとかではなく、自分達の仕事は子供達から学んだ事を返してやる事だ」いう趣旨の台詞を言っています。 一見すると謙虚で子供達の目線に立った言葉のように感じますが子供達に責任を負わせながら生産性のない内容の台詞になっているように感じました。 現実的には学校教育は理屈だけで何とかなるものではない事は理解しているつもりですが、持論を書かせて貰えればこれとは全く逆で「教える事によって子供達から何かを返して貰う」事が教師の仕事だと思います。 何かとは教えた事を覚えて(理解して)貰う事は勿論、学ぶ事への知識欲だったり、物事への探究心だったり、単純に教えて貰った事への感謝や嬉しさだったりと、それらの中でどれでもいいと思います。 ギブアンドテイクの最初のギブを教師からではなく子供達から求めていてはそれこそ高い給料を貰って楽をする行為だと思いますし、子供達の何倍もの歳や経験を重ねて来た人間が教える気概を放棄してしまったらそこは養護学校ではなく養護施設になってしまうと思います。 あくまで子供達から学ぶ事は教育現場での付加価値であり、それを教育理念としてしまうと教師達の教える事に対しての責任放棄にも見えてしまいます。 養護学校と一般的な学校とではやはり違いは有るのでしょうが、竜先生の彼等を特別扱いするなという言葉を受けるとそこにも落とし所は無いように思います。  批判的な事を書かせて貰いましたが本作には自分でもびっくりするくらい泣かされたのも事実です。 正直に言えば納得出来なかったのは上記した理屈ぐらいであとは堪能させて貰いました。  はじめの方で竜先生の財布を自分の机の上に置かれただけで潔癖症の女の子が滅茶苦茶嫌がっていたのに、卒業式の日の教室で彼女が竜先生に普通にリボン徽章を付けてあげている所などは山田監督のシレッとしたさり気ない演出の上手さを感じてしまいます。  音楽が全体的に感傷的になり過ぎずに情景をしっかりと支えている質の良い楽曲が多かった印象でしたし、スタッフロールの後ろで流れていた曲などはオカリナの包み込むような温もりのある音色が作品のイメージに非常に合っていたと思います。  また、高志や佑矢の笑顔が殆ど校外での出来事でしたので、校長の「学校の出来る事はしれてるんだよ」という台詞が何気に印象的でした。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-07-13 00:33:22)(良:1票)
4.  学校 《ネタバレ》 
山田監督の単語タイトルシリーズとも言えるもので、それらの作品はテーマに対してかなりストレートな内容になっています。 台詞や脚本も殆ど捻ったりせずにベタとも取れる言い回しや展開になっています。 その為に演じる役者さんの技量が低いと見ている側が恥ずかしくなってしまいます。 オムニバスのような各生徒達の回想シーンを絡ませた前半部で所々集中出来なかったのはそのような理由だと思います。 特に萩原さんの演技には困ってしまいました。 ミュージシャンが本業である大江千里さんのお医者さん役の方が安心して見ていられたのは何とも皮肉な事です。  後半のイノさんのエピソードになるとグッと作品に引き込まれます。 田中邦衛さんはやはり尋常では有りません。 本作での田中さんは何処という事ではなく全てのシーンで際立っていたと思います。 役柄にハマっていたという事も有りますが、作品を壊さずに自分を余すことなく主張できる数少ない役者さんだと思います。 少し大袈裟な所作と、大きく息を吸ってから口を窄めて喋る台詞とで独特のリズムを作って見せる演技は彼の風貌と相俟って唯一無二ですが、不思議と周りと協調できてしまいます。 単に自分の演技の事だけを考えて全面に出しているのではなく周りを見ながら微妙な所でバランスを取っているのだと思います。  オモニの焼肉屋での黒井先生とイノさんのやり取りはやるせない程切なくなってしまいました。 社会の中の大人として相手に常識的対応を求める黒井先生と、人として男としての感情を相手にぶつけるイノさん、それぞれの立場からすれば双方共それ程間違っていないと思います。 同情や哀れみを示しながら「同じ人間として」と言う無神経とも取れる黒井先生にイノさんが怒ってしまいますが彼の乱暴な行動によってイノさんがお店からつまみ出されてしまいます。 教養の有る者が教養の無い行動を取った者を無慈悲に社会から排除しているようにも映ります。 社会は教養の有る者によって作られていますし秩序を保つには当然の振る舞いですが、お店を出されるイノさんが黒井先生に言った最後の言葉は生きる事に不器用な者達の心の叫びにも聞こえました。  作中では幸福を理解する為に勉強すると言っていますが、勉強をする為の学校で逆に不幸になってしまう生徒がいる現状ではこの様な例外的な夜間中学校や他の受け皿の存在意義は大きいのではないかと感じました。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2015-07-10 20:20:39)
5.  母べえ 《ネタバレ》 
佳代の本音は何処にあったのでしょうか。 滋との面会時でも小菅の非礼に対して逆に照美に謝るように強要します。 拘置所にいる滋へ手紙を書く時も娘達へは本当の事を書けと言いますが、自分の気持を言葉にすると途中で感極まってしまいます。 彼女にとって思想統制等はそれ程重要ではなかったと思いますが、愛する滋の自尊心を守る為ならば彼の恩師や父親をも敵に回します。 滋に一番戻って来て貰いたいのは佳代の筈ですが自分の気持を抑えて、あくまでも滋を立てます。 彼等が激昂した後にそれぞれの奥さんの言動を見ていると佳代の気持ちを理解出来ていたのはやはり女性なのだという事も分かります。 彼女自身、学校や隣組では嘘しか言えずに仙吉の前でしか本当の事は言えないと言っていますが、そんな仙吉も初子の為に奈良に帰って貰う事になります。 母として妻として自分を犠牲にして我慢に我慢を重ねる佳代は痛々しくさえ映ります。 そんな彼女の最後の言葉である「あの世でなんか会いたくない、生きてる父べえに会いたい」という言葉こそが彼女の本音だったと思います。 そしてその言葉を聞いた照美が号泣する姿を見ると、作中省略されている戦後から現在までの長い間も佳代は本音を言う事なく我慢して想いを秘めていた事が想像できます。 その後にエンドロールで流れるものは内容から推測すると滋の死後に届いた彼の手紙だと思います。 献身的に家族や自分を支えてくれている佳代への感謝と、自分と彼女を苦しい境遇に追い込んだ憤りを検閲に引っかからない程度(微妙な表現もありましたが…)に暈して書かれながら僅かですが生きる希望も感じられる内容にもなっています。 そんな滋の仄かな願いが理不尽な死によって掻き消された事を受けてもう一度佳代の最後の言葉を考えると非常に重いものとなって心に残ります。  作品全体を通してみると佳代のキャスティングは吉永さんが適役だったと思いますが山崎との無法松的な恋の話を絡めるとかなり無理が有るように感じてしまいます。 作中での彼等の年齢差は恐らく10~15歳位の設定が妥当ではないかと想像すると吉永さんは雰囲気や演技でなんとかなるという範疇を軽く超えていると思います。 彼女を起用するのならば久子に山崎の気持ちを語らせずに彼の想いをわざと有耶無耶に表して見ている側に委ねたほうが良かったと思いますし、その場合は山崎と久子の関係を兄妹の様に仲良く描いてあげればすっきりと纏まると思います。 本作通りの脚本にするのならばやはり佳代を他のもう少し若い女優さんでキャスティングした方が山崎の出征を知った時のシークエンスは映えると思いますし、別れを告げた山崎を追っていく吉永さんの姿は前述したのとは別の意味で痛々しく見えてしまいました。 個人的には吉永さんの佳代が良かったので前者の様な内容にして貰いたかったです。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2015-07-04 13:47:09)
6.  家族(1970) 《ネタバレ》 
2年後に制作される『故郷』のプロトタイプ的な作品で、『故郷』に比べるとカメラワークや編集は若干雑な印象が有ります。 ドキュメントタッチで描かれているという事もあり、内容や演出等に統一性が余り感じられず、特に前半の西日本では万博でのチンケのシーン等、作品のトーンや内容からズレている箇所があり見難くなってしまっていました。 それでも富士山を過ぎた辺りからは見せ方や内容に纏まりが出始めて見易くなります。 しかし、作品のテーマである家族とそれを構成している個々の命の在り方についての描写は余り錬られている印象はなく、早苗や源三の死は少々強引且つ安直な表現である気がしますし、仔牛の誕生や民子の妊娠も取って付けた感じがします。 家族の生死に焦点を合わせるより、家族の繋がりをもっと丁寧に描いて貰いたかったです。  そんな中でも山田監督らしい叙情的に優れたシーンも有ります。 青函連絡船の中での精一の家族に対する怒りの態度は、処理しきれない彼が抱えた苦悩の裏返しであり、一人甲板に出て泣く姿は一家の主として切なく映ります。 そして源三の死の直後、民子に「俺はアホやった」と泣きながら弱音を吐く精一には男であるが故の悲しさを感じますし、そんな精一に寄り添い慰める民子の姿は印象的です。  前述した様に演出や話の内容がテーマに対して散漫になってしまってますが、俳優陣のレベルの高い演技によって作品自体はしっかりと纏まってみえます。 特に笠智衆さんの源三は、本当は気弱であろう精一や民子の理解者となる懐の深さを感じさせる役どころを朴訥とした演技で見事に演じきっています。 ビールを飲み「うまい」と言った時の表情や、隆と遊んでいる姿やお饅頭の説教等、彼の演技というか笠智衆さん自身を見ているだけで心地良い時間を過ごせます。 倍賞千恵子さんや井川比佐志さんの演技を柳の様に受け流しながら、決して主張はしませんが独特の個性と存在感を感じさせて作品の要となっています。 また、倍賞千恵子さんの誠実で安定した演技は既に完成されています。 日本で一番華のない天才女優だと言っても過言ではないと思います。  俳優さん達の演技は特筆すべき作品ですが、内容的には何も起こらない『故郷』は胸に染み入る様なドラマを感じるのに対して、色々な事が起こる本作からはそこ迄印象に残るものは感じられませんでした。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2015-06-13 02:02:29)
7.  カラスの親指 《ネタバレ》 
「出来過ぎてる…。」主人公の台詞の通りコンゲームやサスペンスとして鑑賞すれば、成り立たないほど出来過ぎていますし稚拙なところも多々あったと思います。  しかし、カラスのお父さんがカラスの娘達やカラスの仲間の過去の傷を精算し、その過去に縛られて日陰の中にいる現状から脱却させ、まっとうな未来を彼等に送って貰いたい為に仕組んだ筋書きを、神様が余命いくばくもなく過去の過ちを改心した彼に奇跡として叶えてあげたと見れば(あまあまだが…)、コメディ-タッチのヒューマンホームドラマとして大いに楽しめました。  もし隙のない計画で小狡く詐欺を成功させていたら、カラス達への好意はかなり低くなっていたと思います。詐欺の様なコンゲームとヒューマンドラマを相反するテーマと考えると、前者を稚拙でかなり都合の良い展開にして表現する事で、最後まで主人公達への感情移入もしやすくなったと思います。  入川と河合姉妹が親子だと分かってから物語を振り返ると、みんなで一つ屋根の下で家族のように過ごした日々、チンピラ事務所でまひろが咄嗟に機転を利かせた嘘をホテルで「だってテツさんは父親くらいの歳だから…」などは何とも切なくなってしまいます。  また、最後に人の信用を食い物にする詐欺は最低の行為だ、武沢とは詐欺をしていなかったなどの設定も安っぽいですが、それらを入川に言わせた事で物語としては納得いくものになったと思います。  阿部寛さんの演技力は本当に安定していて上手でしたが、その他のメインの役者さんは場がしらける程に下手ではないにせよ、皆一様に上手くは無いように感じました。  村上ショージさんの抑揚のない台詞回しや、ぎこちない所作は「アジがある」、「へたうま」等のレベルでもないと思いましたが、あの役を彼が演じる事によって作品の価値や物語の説得力が数段上がったと私は思います。お笑い芸人の彼の大ファンであることを差し引いても、彼自身が持っている物事に対する誠実さの様なものが、この映画自体の大きなプラスのウエイトになっていたと思います。  逆の意味で言うと出てきてすぐに「あっ、この人は絶対にいい人ではない!」と思わせるユースケ・サンタマリアさんの彼自身が絶対に持っているであろう不誠実さも分かり易すくて良かったです(ごめんなさい)。  「カラス」ではなく「親指」をテーマにして見ると色々許せてしまう映画でした。 
[CS・衛星(邦画)] 7点(2015-04-08 16:38:16)(良:2票)
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