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1.  曲馬団のサリー
ホークス『ハタリ!』の遥かな先駆けともなる小象のアクション。 迫力の白煙と放水の中で繰り広げられる列車と自動車の痛快アクション。 加えてキャロル・デンプスターが身体を張って懸命に走る、飛ぶ、よじ登るの クライマックスの大アクション。 そして随所に散りばめられたユーモラスなギャグに、華やかなダンスシーン。  その盛りだくさんのエンタテインメント精神も感動的だが、 それ以上にこの原初的アメリカ映画が胸を打つのは、 その快活なヒロインがふと垣間見せる、人を恋う孤独の表情だ。  南部のカーニヴァルにやってきたデンプスターが街中を一人で歩く。 誰のものとも知れぬ「母を悼む」墓石に彼女は一輪の花を手向ける姿が愛しい。 育ての親W・C・フィールズを慕い、幾度も抱き合い、全身で情愛を示す。 招かれた祖父母の家で、それと知らずに祖母と見つめ合い、触れ合うショットが美しい。  人を恋う、その普遍的・根源的なエモーションとアクションとの一体化が 強く心を引きつけてやまない。  ラスト、一人去りゆくW・C・フィールズに必死にしがみつくデンプスターの 見目はばからぬ懸命な身振りには涙、涙だ。 
[DVD(字幕なし「原語」)] 10点(2014-02-13 00:42:32)
2.  恐怖分子
夕景の街中にあるガスタンク。十字の格子が浮かび上がる部屋。木々のざわめき。 半透明なレースカーテンの白の揺れ。風にはためく、壁に貼られたモノクロ写真。  何気ない風景のようでいて、その佇まいだけで不穏な気配を濃密に湛える画面の 息遣いがことごとく心をざわつかせる。  そして人物の表情が見えるか見えないかの半逆光の加減が絶妙で、 その無表情と陰影はキャラクターの心理を読み取らせない。  ゆえに本作は、物語的にも画面展開的にも全く予断を許さない。  それだけに、突発的な暴力が炸裂する刹那のインパクトは見る者を戦慄させ、 静かに流れ出す『煙が目に沁みる』のレコード音の情感に 訳も分からないまま心を動かされてしまう。  80年代の空気をすくい取りながら、まるで古さを感じさせない。 
[ビデオ(字幕)] 10点(2012-10-05 23:52:51)
3.  君と別れて
サイレントだが、割れる酒瓶・波打つ岩場・空き缶蹴りといった音を意識させるショットに溢れている。  蓄音機からの音楽に合わせて乱痴気騒ぎをしている部屋と、別室での静かな乱闘のカットバックも効果的に決まっている。  若い二人の乗る列車の揺れはゆるやかなリズムを感じさせ、波間に被さる字幕の音感は、昂ぶる情緒を一段とかきたてる。 それから、前半に登場する橋や、照菊(水久保澄子)の故郷である港町の坂の情景がそれぞれ素晴らしい。  絶妙の高低感を醸すカメラアングルで捉えられた段々の斜面。 その坂道の途中ですれ違う人々(ヨーヨーに夢中になる大人、ままごと遊びに興じる子供たち、子守りに勤しむ娘、花嫁など等)の点描も風俗描写に留まることなく画面を豊かに彩る。  そして要であるヒロインの健気な魅力。 橋の場面で見せる水久保澄子の振り向きと真っ直ぐな眼差しがひたすら美しい。  いつか『チョコレートガール』を見れることを祈る。
[CS・衛星(邦画)] 10点(2010-04-13 20:36:50)
4.  極北の怪異
ロバート・フラハティによる記録映画の魅力は、狭量な「民俗記録」でも「資料的価値」でもなく、ジャンルや手法や国境に囚われぬ自由な精神に基づく映画感覚といえる。一般的には記録映画としてもの珍しさを第一に要求するであろう映画会社に対し、フラハティはそれ以上に「人間と自然」の魅力の活写に大きな力点を置いていることが画面から明らかに伝わる。ローポジションが緊張感を煽るあざらし漁の撮影。酷寒の猛吹雪の迫力と寂寥を伝えるモンタージュ。一方でナヌーク一家がカメラに向ける大らかで人なつっこい表情やユーモラスな仕草が断然素晴らしい。カメラが全く警戒の対象とはなっていない。これは日本でいえば小川紳介(山形)、佐藤真(阿賀)等の傑作ドキュメンタリーに受け継がれていく、腰を据えた共同生活というアプローチあってこその魅力的な表情といえる。勿論それは単なる長期取材・長期撮影という手法のみで成し得るものではなく、一定期間はカメラを回さず肌で喜怒哀楽を共にすることによって獲得される対象との親和性や、映画的各瞬間を的確に捉える手腕と資質があってのものだ。
[DVD(字幕)] 10点(2009-01-10 18:38:59)
5.  キャロル(2015) 《ネタバレ》 
テマティスム的には、色の主題なり、視線劇の充実が語られるのだろう。 デジタル・シャープネスが指向される今時に、この軟調画面の肌理と艶だけとっても「映画」を見た満足感を与えてくれる。 雨滴の乱反射や、窓ガラスの曇り、紫煙などがさらに画面を滲ませて一層味わい深さを増している。  リビングから玄関ドアに向けたカメラポジションが、奥の空間でやり取りする人物をさらに壁ラインでフレーミングする。 屋外からの望遠による二つの窓と、その間を移動しているだろう人物の見えない動き。 それら人物の見え隠れ具合が、こちらの視線を空間の中に自然と引き込んでいく。 こうした絶妙の構図取りもまた素晴らしい。  数ある視線のドラマの中でも、とりわけ極上というべきラストのケイト・ブランシェットの視線と表情は何と形容すべきだろう。 これはもう一度観に行きたい。
[映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2016-02-14 20:37:29)
6.  きみはいい子 《ネタバレ》 
児童虐待を始めとする前半は観るほうも胸が詰まるが、撮る方・演じる方は尚更だろう。特に尾野真千子にとっては相当つらい芝居のはずだ。 虐待シーンの撮影(月永雄太)も子役に配慮しながらも、極力モンタージュに頼る事なく空間の単一性をできる限り持続させながらフレームと音を最大限に活用して痛ましいシーンを作り上げている。   尾野母娘の暮らすマンションの廊下、抑え気味の照明で統一された教室の内側から望む窓外、高良健吾がさすビニル傘。 前半の硬質気味の白を基調とした背景と、人物とのコントラストが印象深い。  不意にフレームインして尾野を抱きしめる池脇千鶴の動き。それまでの雨音が止んで、右手から日が差しこんでくるのが繊細な光の変化でわかる。 尾野の頬から涙が一滴したたり落ちると、太陽を映し込んだ校庭の水溜りに落ちた雨滴が水面に小さな輪を広げるショットに繋げる流れも憎い。 そこでの彼女の嗚咽、ラストの高良の呼吸など、生身の身体性へのこだわりも見える。  三者三様の抱き合うスキンシップがそれぞれ情感に満ちて素晴らしい。 高良が出した「家で抱きしめられてもらうこと」という宿題の感想を子供達が教室で語り合う、子供たちの表情が本当に素晴らしい。  そして、あのラストの暗転にも唸るしかない。
[映画館(邦画)] 9点(2015-09-27 20:25:40)
7.  銀河鉄道999
スタッフの熱意の伝わる、東映動画最盛期の傑作。  ●椋尾篁の黒を多用した精緻な背景美術の美しさとスケール感。ここでは劇場版を意識した大判の背景画が用いられ、実写でいうところの移動撮影やズーミング(市川的)で空間の広がりと奥行きを表現している。  ●金田伊功原画によるパースペクティブとデフォルメを活かしたダイナミックなアクションの素晴らしさ。 その大胆なパースもまた画面に深度を与えている。 彼の主に担当したクライマックスの惑星崩壊・炎上の圧倒的な描写はふんだんな透過光の効果と相俟って特に傑出した映画美となっている。 (繋いだ手の感動的ストップモーション。)  ●東映動画初期から実務経験を積んだりんたろうならではのアニメーションの醍醐味として、さらには映画の主題としての疾走へのこだわり。 主人公は全編、それこそラストカットまでひたすら走り続け、画面を躍動させる。  ●優れた映画の一条件といっても良いかもしれない、風の表現。 特に、別れの駅の場面に吹く風の見事さ。 二人の間を吹き抜ける静かな風の強弱を表現したアニメーション感覚が絶妙であり、 映画の情感を一段と高めている。  ●ヒロインへの紗のかけ方、ショックシーンの編集等もいかにも市川崑的だ。
[映画館(邦画)] 9点(2009-04-21 23:20:30)
8.  岸辺の旅 《ネタバレ》 
並みの演出家なら、過去のフラッシュバックをジャンジャン繰り出すのだろう。その類は一切やらないところはさすが。 小松宅のシーンで、浅野忠信が「怖い夢だった。」と過去形の語りを始めるとカメラがゆっくりと彼の顔に寄っていく。 ほとんど回想突入のパターンなのだが、カメラは彼の背後にあるドアの曇りガラスに映る影のほうに対象を移す。  あくまで現在進行形でドラマを語る。これもまた監督にとっては倫理感みたいなものなのだろう。  これ見よがしでない実演奏の提示、三人のレイアウト、ショットの持続と照明が見事に決まったピアノシーンが美しい。  そして風があり、滝があり、カーテンの揺れがあり、森の霧がある。  直近の侯孝賢と比較してしまうのは酷だろうけれど、あの山を立ち登る濃霧を見せられた後でこの申し訳程度の霧はどうしても見劣りしてしまう。 『リアル』であれだけの霧をやっているのだから。  ドラマの性質ということもあろうが、カレンダーで年月を提示しつつも携帯電話を一切出さず、それでいて違和感をまるで感じさせないのも流石。 山麓のシークエンスでは、深津絵里はモンペ姿。ラジカセや時計印マッチや小学校のレトロ感がなんともいい味を出している。  そして監督がメロドラマと語るだけあって、ラストの浜辺で響く波音の演出が素晴らしい。
[映画館(邦画)] 8点(2015-10-03 22:35:11)
9.  キングスマン 《ネタバレ》 
タロン・エガートンが鏡に映る自分自身を見つめるシーンの反復。 当初の自虐と卑屈の入り混じった眼差しから、敵地に乗り込む直前の自信と尊厳に満ちた眼差しへ。 この視線のショットが細部ながらも彼の成長を物語って感動的だ。  クライマックスでは三段四段と状況を転がし、通路を駆け回りながらのガン・アクションでもアイデアを凝らした立ち回りと動きを披露する。 さらにはソフィア・ブテラとのアクロバティックな格闘もしっかりと見せ場にするあたり、サービス精神も抜かりない。 それらアクションシーンの露骨なコンピュータ処理もご愛嬌、ショット繋ぎのシャープなテンポによってケレン味十分に仕上がっている。  仲間は決して売らない、動物は殺さない、手癖の悪さに運動神経の良さ、そういう布石をあくまで主人公の行動レベルで 序盤から律儀に配置しておく語りも丁寧かつスマートだ。  時代はもはやグラス・タイプのウェアラブル端末。本作での携帯電話は大量破壊兵器となる。そのシニカルなアイデアも良し。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2015-09-11 21:30:43)
10.  恐怖のまわり道
スクリーンプロセスの多用などはいかにも予算の制約を感じさせつつ、 一方ではトム・ニールの電話シーンに交換手がそれを繋いでいくショットを律儀に 入れもする。 低予算映画ならば真っ先に削れそうなショットなのだが、この簡潔な長距離電話の描写が あってこそ、後の大陸横断ヒッチハイクの距離感が印象づけられることになる。 同時にその電話線もまた終盤に活きてくるわけで、巧い。  道中、最初の思わぬ悲劇。 黒い車体に降りかかる激しい土砂降りの雨が、それだけでその後に主人公が陥っていく 泥沼状況を予感させる。 助手席で眠っていたかと思われたアン・サヴェージが不意に目を開けて 運転席のトム・ニールを凝視する、それだけの動き、その無表情がなんとも恐ろしい。  レコード盤からドラムへと、円によってスムーズにフラッシュバックへとカットを 繋ぐなど、編集の工夫も随所で光る。  満載されたノワールの意匠と低予算ならではの美徳が、不思議な魅力を放っている。  
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2014-02-07 23:42:25)
11.  希望の国
警察官と揉み合いながら、封鎖を突破していく清水優と梶原ひかりのロングショットや、 村上淳と神楽坂恵の記念写真といった、ふとしたシーンの軽妙なユーモアがいい。  生真面目一辺倒の『生きものの記録』路線でないのが救いだ。  『ヒミズ』の貸ボート店のソファも良かったが、本作の縁側や花壇や牛舎なども、 身近な生活空間が魅力的で切実な舞台として映えている。  背景の花と手前で打ち込まれる杭を組み合わせたショットなど、 意味性が強く観念的すぎる箇所も多いが、 逆光を効果的に使った白バックのシンプルなショットが要所要所で印象強い。  花壇中央にそそり立つ立木を包む光。 夏八木勲への感謝を電話で伝える神楽坂恵を包む光など、 今作の園子温はかなり照明に意識的である。  あるいは、透明ビニルシートを背景に父親に電話する中村淳の横顔。 一面の雪の中で踊る夏八木勲と大谷直子の夫婦の楽しげな様。  いずれも白をバックとした画面が、人間の像を一層引き立てている。  
[映画館(邦画)] 8点(2012-12-02 22:50:02)
12.  桐島、部活やめるってよ
気になる相手、想いを寄せる相手、その周囲の人間に気づかれまいと気遣いながらも、 つい瞬間的に目を注いでしまう窃視の視線。 目を背けつつも、全神経を相手に集中させ、意識し続ける身体。  そうした、乱れる内心を見せまいとするナイーヴな表情や振る舞いや言い回しが キャラクターに初々しくリアルな感覚を与えている。  見る者と見られる者・話す者と聴く者の姿が視点の変化の中で 反復によって映し込まれていくことで、 その登場人物の視線やファインダー越しの映像に倣って 彼らの想いが強く鮮明に伝わる。その仕掛けが卓越だ。  またBGMをほぼ皆無とし、環境音を効果的にドラマに活かすことで さらにこの映画なりのリアリズムが追求されている。  校舎裏のシーン、大後寿々花の背後でざわめく木々の音や、 彼女の独奏する管楽器の音色や息吹が彼女の心情を浮かび上がらせて秀逸だ。 バスケットボールの弾むリズミカルな音と、バレーボール特訓のハードな音響の対比。 クライマックスを盛り上げる、現実音としての吹奏楽の演奏。 そしてラストに遠く響いてくる野球部員の掛け声と、音が良く活きている。  群像劇としては、焦点が浅くピント送りが多々あるのがやや安易か。 そこはパンフォーカスだろうと思うショットがいくつかあった。 
[映画館(邦画)] 8点(2012-08-20 00:32:14)
13.  ギフト(2000)
「隠された事実というのはサスペンスを引き起こさない。」だから「謎解きにはサスペンスなど全くない。」そして「(一種のパズル・ゲームに過ぎない)謎解きはある種の好奇心を強く誘発するが、そこにはエモーションが欠けている。」(ヒッチコック『映画術』)  本作における犯人探しミステリーもまた、ヒロインをめぐるドラマに情動を付与するための一手段に過ぎないのであり、確信的に登場人物を絞り真犯人を仄めかしている作品に「犯人が早々に判る」式の批判は、ナンセンスでしかない。  映画が主眼とするのは非本質的な謎解きなどではなく、ケイト・ブランシェットが担う「映画の感情」なのだから。  地味な普段着で息子達の部屋片付けをする母親像。パーティシーンで鏡を前にふと衣装を気にする女心。床のペンキに滑り、ずっこけるアクションの人間臭さ。キアヌ・リーブスの恫喝や、弁護士の陰湿な追及に対して怯えながらもそれに真直ぐに対峙する気丈さ。そして、ラストの車中の純真な涙。ナイーヴで不器用な中に芯の強さを湛えた表情と芝居が素晴らしい。  彼女とジョバンニ・リビシとが車中で見つめ合う切り返しの「間」と、続いて警察署前での視線を交わすショットは(謎解きが無くとも)その時点で二人がもう再会しないだろうことを確信させる。そこにはエモーションが充溢しているからだ。  物干しに揺れる白いシーツ。霧のかかる池。樫の木の合間に揺らぐ水中の死体など。(『狩人の夜』のよう) イメージショットの数々も美しい。 
[DVD(字幕)] 8点(2012-04-29 00:35:30)
14.  ギターを持った渡り鳥
雄大な山肌を背にした一本道を荷車が往くファーストショットから素晴らしすぎる。 灌木が疎らに散らばる平原。あたかも演出されたかのような雲の表情。それはいかにも北米西部の荒野の風情だ。函館方向と大沼方向を示す道標から、背後の山が北海道大沼の駒ケ岳とわかる。  続いて函館山から俯瞰した市街、その夜景、そして歓楽街の街路へと画面は移り、バーの店内ではアメリカ人らしき船員らが揉めている。そのバーの長いカウンターテーブルの美術がまた彼国風でいい。 そこへ至る一連の流れも鮮やかだ。  映画は港の倉庫街、連絡船乗り場、湾内の堤防、函館独特の坂道などを奥深いパースを用いながらシネスコ画面を目一杯使って的確にフレーミングしてみせる。  とりわけ、序盤で通りがかりの子供のために風船を買ってやる小林旭の、橋を使った縦構図のロングショットなどは絶品だ。  洋上の船の荒々しいローリングも素晴らしく、ロケーションの魅力が全編に亘って存分に詰まっている。 その揺れる船上で対決する小林旭と宍戸錠も相当なタフであり、殴り合い主体の擬斗シーンもカットを割ることなく、持続的なアクションを当人が見事にこなしている。  ビリヤード台を挟んだ二人の、因縁の対決の瞬発性。 主人公の過去を数ショットに留め、多くを語らない経済性。 シンプルな物語を効率よく語りながら、主題歌のメロディを明確に印象付けてしまう洗練された技能。  それらが、充実しながら無駄のない77分を創り出している。 
[DVD(邦画)] 8点(2012-02-26 21:51:53)
15.  キング・オブ・キングス(1927)
豪華絢爛の衣装と、宮殿をはじめとする壮大な美術セットが圧巻。 人間の群衆だけでなく、登場する動物群も猿、馬、豹、ロバ、山羊、牛、鳩と多彩な上、各種の特殊撮影も融合し、ワイドスクリーンのニコラス・レイ版と比べても遜色ない。  妖艶なマグダラのマリア(ジャクリーヌ・ローガン)に憑依している7つの悪霊を視覚化する多重露光の見事さや、イエス(H・B・ウォーナー)の死後にエルサレムを襲う天変地異のスペクタクル(暗雲と雷光、地割れと土埃)の迫力が素晴らしい。  イエス復活シーンで、天然色となる趣向も意表を衝く。カラーによる朝焼けのショットが鮮烈だ。  そして全編通してイエスに当てられる格別美しい光が印象深い。  その初登場シーンは盲目の子供の眼を癒すエピソード。子供の主観ショットである闇の画面に次第に光がもたらされる。 その中にイエスの顔が浮かび上がる。  彼の輪郭線を眩く輝かせる斜め背後からの強い光線が荘厳かつ幻想的だ。  
[DVD(字幕)] 8点(2012-02-14 21:23:12)
16.  キック・アス 《ネタバレ》 
ネット配信される悲惨なリンチの画像に見入りつつ、もたれかかる女性を抱きとめ喜色満面となってしまう主人公の親友たち。その悲喜劇の組み合わせの不謹慎さ。 そして、満を持したマズルフラッシュが一閃し、周囲が闇に落ちる。 喜劇的な伏線が、復讐劇の重い感動に転化する瞬間のカタルシス。  犯人やトラップをあらかじめ観客に明かすことによってサスペンスを煽るヒッチコックの映画術のように、明瞭に配置された伏線が、救出劇のエモーションを高める。  暗闇の中に鋭く弾ける銃撃炎の激しい照り返しは、姿なき娘の怒りの表象となり、 彼女が装着した暗視スコープの主観画面は、機敏かつ冷徹な銃捌きを見せる手のアクションを以って怒りの強度を伝えるとともに、観客に同化を促さずに置かない。  映画は、クライマックスの銃撃戦・格闘戦のさなか、夜が明けていく窓外の光の推移も丹念に捉え続け、ラストで闇からようやく抜け出た少女を逆光の朝陽で包ませる。  そのビル屋上のツーショットが大変爽やかだ。    
[映画館(字幕)] 8点(2011-01-19 22:59:17)
17.  君に届け
「窃視」の映画といっても良いくらい、画面の中をすれ違う視線の数々。入学後、お互いを意識しはじめている二人は、お互いに見守られている事を知らぬまま見つめ、また見つめられる。『映画研究塾』の成瀬論が言うところの「見られていることを知らない無防備な身体」のショットの丁寧な積み重ねが、二人が惹かれあっていく裏付けとして強い説得力を獲得していく。  その身体性を保障するため、作者たちは映画の特権としてパソコン・固定電話・携帯電話といった簡易なコミュニケーションツールを主人公から周到に排除する。多部未華子は、手を取り合い、ノートを手書きし、肩を抱き合い、懸命に走って会いにいき、相手の目を見つめながら、直の言葉を相手に届け、思いを伝える。「走る」ショット自体の運動感にやや不満はあっても、支持されるべき映画的な美点だ。  初めて友人達とラーメンを食べた帰り道、自転車を押しながら先を歩く三浦春馬と、その後を遅れながらついていく多部の二人を捉える横移動のショット。その二人の歩調と微妙な距離感が素晴らしい。  「内気」な少女が「家を出」る成瀬的「親離れ」の物語は、エンディング後のラストに、上の移動ショットに対応する意味からしても必須となる成瀬的ショットを以って的確に締めくくられる。
[映画館(邦画)] 8点(2010-10-13 00:42:20)
18.  96時間
序盤の平穏な生活の場面では落ち着いた固定ショットが中心。誘拐場面では、手持ちカメラの微妙な揺れが心理を表し、後半のアクション場面では鋭利なカッティングが主人公の機知・技量・意志を印象付けていく。常套的ながら、感情に沿った撮影と編集によって物語自体も明快かつエモーショナルになっている。アクション場面のせわしない編集は半面でまやかしであり、特に中盤・終盤のカーチェイスは雑で脈絡ない繋ぎ合わせによって偽のスペクタクルに堕しているが、格闘場面の編集は小手返しや手刀といった最小限の身体動作による一撃速攻技が中心の為か許容範囲に納まっている。優しさと非情さ、冷静さと荒々しさの同居した主人公のキャラクター造形と、それを小道具類の活用によって描写していく手口も鮮やかである。同様に、彼からみた娘の無邪気で幼いイメージを冒頭のVTR映像と彼女の走り方程度で簡潔に印象付ける語り口の巧さも光る。そのヒロインの幼さ=弱さの強調も、グリフィス的な「最後の瞬間の救出」のドラマが盛り上がる所以だろう。
[映画館(字幕)] 8点(2009-09-22 14:01:49)
19.  驚異の透明人間
サーチライトに浮かび上がる秀逸なオープニングタイトルが即座に次の脱獄場面に連携する。 この脱獄のシークエンスがカットバックを含むわずか10カット足らず、時間にして1分弱の簡潔明瞭さ。極端な短さながら、サーチライトとマシンガンによる光と影のコントラストによってその印象度は強烈である。 カラーの時代ながらモノクロの選択が功を奏している。透明化が不完全で実体が現れてしまう場面の特殊撮影もまた、モノクロ効果と馴染んで違和感がない。その特撮もわずか数カット。 その効果を最大限に活かすために全編をモノクロに統一する映画人としての矜持。 フリッツ・ラング作品の美術担当によって培われただろう、ポイントを押さえたセット・小道具類へのこだわりと創意工夫が随所で見事に活きている。
[DVD(字幕)] 8点(2007-09-30 14:01:12)
20.  キングスマン: ゴールデン・サークル 《ネタバレ》 
ストーリーの中に、水中に潜る・高所に登るなど舞台の高度差を組み入れてストーリーを構築するところが前作にも通ずる巧さ。 前作のスカイダイビングに相当するのが、今作でのゴンドラの滑落といった具合だろう。 上昇ー下降の動線を踏まえながら物語を作っているのがわかる。  冒頭の潜水や下水管の移動は、中盤の水攻めを通して前作との繋がりも強調する。  蘇生装置のギミックは、種明かしの説明だけでなく、実際に活用するシーンをつくって反復してみせることで より説得力を付与する。これも的確な処理だ。  追跡装置を女性に仕込むのに躊躇う主人公は後ろ手で装置を隠す。 その後ろ手は、クライマックスの宿敵との格闘で今度はフェアに戦う為の所作として昇華される という具合に、様々な反復のテクニックも充実している。勿論、輪投げやゴンドラなどのサークルのモチーフの変奏も。  それとこのシリーズでは、世界の危機なるものが、身体的な疾患の形で具体的に提示されるのもいい。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2018-02-24 16:01:23)
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