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1.  告白(2010) 《ネタバレ》 
告白とは主観だ。そこには話者の思い込みや誤解、そして嘘が含まれる。つまり告白とは純然たる真実をありのままに語るものであるとは限らない。少年と少女が睦まじく戯れる同じ光景が、少女の告白においてはまぎれもない恋である一方、少年の告白の上ではくだらない暇つぶしに過ぎないようにだ。いびつな道路反射鏡や防犯ミラー、あるいは姿見に反転させて中島哲也監督が描くのは、そうしたこの世界の不確実さだ。窓外の風景は常に磨りガラスやカーテンにより遮蔽され、リアルから切り取られたその世界の上空には常に不純物としての雲が配置される。時に鈍色に時に茜色に空を蔽う雲は、まるで真実を不透明に彩る彼らの告白=嘘の暗喩のようだ。森口先生の娘を殺した修哉と直樹それぞれの嘘、直樹の母親の嘘、修哉の理解者たる美月の嘘、1年B組の教室に渦巻く嘘、さらには熱血教師ウェルテルの滑稽な存在意義それ自体の嘘。だが、無限の嘘で塗り固められたその箱庭を、中島は最後の最後に容赦なく爆破する。そうしてそこにただ一つの真実を強烈に叩きつける。それは、粉々に魂を砕かれる人間の、想像を絶する痛みと、断末魔だ。中島が『夏時間の大人たち』や『嫌われ松子の一生』で祈るように描いてきた、階段上の一室で両手をひろげて自分を待ち侘びてくれる、大切なだれかの愛情。修哉にとってのその階段が、愛が、木っ端微塵に破壊され焼失するさまは、まさに胸をえぐるばかりの壮絶さだ。愛する人に見せたかったくだらない発明品=逆回り時計によって甦る彼の切望した光景が、針を戻したこの装置に再び跡形もなく焼き尽くされるその地獄。牛乳に血を混ぜたと語る森口の告白を、美月の告白における森口が覆したように、時限爆弾の顛末もまた森口の嘘であったかもしれない。「あなた方は嘘をつくのが実に上手」だと生徒たちを評する彼女にとっては、その嘘こそを彼らへの復讐の刃とすることに大きな意味があるからだ。大切なものが消える音が私にも聞こえたと森口は言う。すさまじい形相で彼女が放つ爆発音は、あの夜プールサイドで彼女自身が聞いた、その音でもあるだろう。そうして森口が突きつける、本当の地獄。想像を絶するその痛みに自らも貫かれた時、少年Aはようやく森口と同じ地平に立つ。リアリズムの映画ではない。正しい映画でもない。だが、ただ一つの真実が、凄まじいその痛みが、観る者の胸をも木っ端微塵に打ち砕く。
[映画館(邦画)] 10点(2010-06-08 12:36:37)(良:3票)
2.  告発 《ネタバレ》 
映画はヘンリーが受けた残虐な仕打ちも彼が犯す殺人も、克明に描く。けれど克明でありながら、その描写はとても冷静だ。より露骨に声高に描ける可能性を、映画は勇気をもって捨て去る。裁判のシーンもその判決も、観客の求めるカタルシスをもっとドラマチックに感動的に満たすことはいくらでも可能だっただろう。しかし映画は誠実に、それをしない。ヘンリー・ヤングは弁護士ジムに言う。自分のように暗闇でクソにまみれて這い回っていたわけでもないのに野球中継を見ないなんて、と。俺は女を知らないと。穴蔵に迷い込んできた蜘蛛が唯一の友だちに思えたと。おまえと俺は一体どこが違うのかと。裁判の過程や事件の真相とは直接関係のないヘンリーのその焦点のズレた発言の数々は、けれど彼の台無しにされた悲しい人生を静かに物語る。看守の目を盗みジムがヘンリーに娼婦をあてがう一見下世話なそのシーンの持つ意味は、あまりに切実で痛ましい。人間の尊厳をあらかじめ奪われながら、人生の大半をただ生き延びたヘンリー。そんな彼がジムとならんで座り、トランプのカードを飛ばして遊ぶシーンが忘れられない。彼の人生たった一度きりのその幸福な瞬間が、肝心の判決が下る待ち時間の出来事というのは象徴的だ。ヘンリーが望むのは身の潔白や無実などではなく、ありふれた人間としての当り前の価値、ただそれだけなのだ。人としての価値を踏みにじり続けた副所長を裁判中もずっと直視することができなかったヘンリーは、けれど再び戻るアルカトラズの入り口で、ついにまっすぐしっかりと彼の目を見据える。恐ろしい穴蔵へと続く階段を降りながら、それでもその瞬間彼はようやく価値ある一人の人間として、誇り高き勝利のその意味を噛みしめる。彼はもう哀れなヘンリーではない。ようやく美しき一人の人間として、気高くそこに立つ。裁判でも判決でもなく、その時にこそ、彼は本当の意味で勝ったのだ。
[DVD(字幕)] 7点(2009-11-24 21:10:22)(良:1票)
3.  恋する女たち(1986) 《ネタバレ》 
斉藤由貴のどこか陰性な暗い本質を見抜いたのが彼女のデビュー作『雪の断章ー情熱ー』を撮った相米慎二なら、そのコメディエンヌとしての資質をいち早く見出したのは大森一樹だろう。最初から過去の時代を描いた次作『トットチャンネル』が現在でもさほど色褪せて見えないのに対し、古都金沢を舞台にしつつ80年代当時最先端ファッションの斉藤由貴を描いた『恋する女たち』がひどく褪せてしまったのは残念だ。流行は廻ると言うが、この映画が逆にかっこよく見えるなんて時代はこの先も来ないだろう。なにしろダサいのだ。安っぽいのだ。気恥ずかしいのだ。ツルゲーネフやサリンジャーの引用、文学的な言葉遣いを随所にちりばめる少女たちの感性、コミカルな描写の古さ、高井麻巳子、菅原薫二人の驚くべき大根ぶり、暴走族の決闘の軽薄さなどなど欠点をあげればきりがない。しかし、である。それでも斉藤由貴が輝いているのである。この映画で描かれるのは、彼女演じる主人公多佳子の初恋だ。勝気な少女がそれでもどうしようもなく直面する恋というと、どこか樋口一葉の『たけくらべ』の美登利のそれを彷彿させもするが、理屈っぽくシニカルな分、多佳子の初恋はより厄介だ。強気に纏っていたはずの全能感を打ちのめす初恋という制御不能なその感情に、彼女が時にとまどい、時に居直り、七転八倒の末やがて素直にそれを受け入れていくさまが、コミカルにそれでいてとても真摯に共感をもって綴られていく。自分の恋に気づいたこの少女が、一生の不覚とばかりに落胆する描写がなんとも面白い。惚れることと負けることを同義とする、大人からすれば滑稽で幼いそんな潔癖さは、けれどたしかに初恋の一つの真実ではなかったか。美しい初恋映画は数あれど、こんな視点から恋を描いた映画は他に類がない。恋に関する印象深い名台詞の数々も含め、氷室冴子の原作に拠る部分は大きいだろう。それでも「なぜ世界でたった一人、よりによって彼でなくてはダメなのか、そんなこともわからないで愛だの恋だの私には言えないんです」と切に涙し、いつしかひたむきに恋する自分と向き合っていく多佳子の姿には胸を打たれずにはいられない。ラストの油絵が象徴するように、かたくなな鎧を脱ぎ捨て裸となるそんな少女に斉藤由貴が見事に同化している。ダサくて安っぽくて気恥ずかしい、けれどそれ以上に恋することの大切さを教えてくれるすばらしい青春映画である。
[DVD(邦画)] 10点(2009-08-09 22:33:24)(良:2票)
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