81. 三十九夜
事件に巻き込まれた男が追われながらも追う展開がテンポ良く進み片時も目が離せない。男ハネイに今一つ深みがないのが物足りないものの、瑞々しいロバート・ドーナットの熱演が光る。「そういうことか!」と驚くと共に「それ、ペラペラ口にするか?」という真相が印象深い。秀作に対する邦題のセンスの無さに呆れる。 [DVD(字幕)] 7点(2018-06-11 03:32:31) |
82. 裂けた鉤十字/ローマの虐殺
《ネタバレ》 1944年3月24日に起きた『アルデァティーネの悲劇』が描かれた作品。前日に起きたイタリア抗独パルチザンによる爆弾テロ事件に怒り狂った将軍の報復としてドイツ兵犠牲者1人につき50人のイタリア人を処刑せよとの命令に、ローマのゲシュタポ長官であるカプラー大佐(実際は中佐)が戦後の戦犯問題を考慮し異議を唱えベルリンも彼の意見に賛成する。諦めきれない将軍はベルリンにかけあいヒトラーの命令という形で24時間以内に1人につき10名の処刑が決定される。320名の処刑者リストの作成にあたり、死刑囚、死刑確定者、犯罪者、それでも足りない分をユダヤ人とかき集める状態。何度も考え直して数を揃える大佐の姿に悲哀を感じてしまう。更に、将軍との確執から処刑の実行役まで押し付けられ、場所や方法の算段をすることになる。この話をききつけたアントネッリ神父が司祭長やローマ教皇に助けを求めるも静観するだけお祈りするだけの役立たず状態。遂に大佐に直談判するが、大佐は逆に「もう、後戻りは出来ない」と腹を括る。 二人の対峙に胸が詰まってしまったのに、更に更に地獄絵図のアルデァティーネ洞窟内での二人に胸が潰れそうで暫く立ち上がれなかった。このシーンが2018年鑑賞作中最もショッキングなものでした。 こんな形で職責を果たさねばならない大佐の無念さと祈りが訳が解らぬまま奪われる命を救えない神父の無念さをリチャード・バートンとマルチェロ・マストロヤンニが持ち味であるドライな演技で示してくれた秀作。二人が語りあった「軍隊の無い世界、宗教の無い世界」が理想郷なのだろうかと考えさせられました。 [DVD(字幕)] 8点(2018-05-29 16:42:17) |
83. 砂漠の鼠
(「砂漠の鬼将軍」同様のロンメルを演ずる)ジェームズ・メイソン、リチャード・バートン共演に胸躍らせての鑑賞。唯一二人が顔を合わせるシーンで、ちょっと恰好つけ過ぎかとも思われたものの若きバートン相手に貫録を見せつけたメイソンにメロメロ。何度も何度も観直し(DVDの利点)1時間費やし2時間半の大作となりました。連合国側のバートン主役の肩のこらない戦争映画の良作。 [DVD(字幕)] 7点(2018-05-05 01:31:39) |
84. 砂漠の鬼将軍
「ワルキューレ」「将軍たちの夜」でヒトラー暗殺未遂事件、ロンメル元帥に関して多少の知識有り。元帥の軍人としての葛藤が主に描かれており、ヒトラーをはじめとしてSSが欠片も持ち合わせていない騎士道精神に背筋が伸びる思い。今生の別れでは妻の気丈さが悲しみに輪をかける。遺品のコートを着用したジェームズ・メイソン渾身の演技に見惚れた傑作。 [DVD(字幕)] 8点(2018-05-05 00:56:58) |
85. 桑港(サンフランシスコ)
《ネタバレ》 メリーが愛したのはバーリーは勿論ブラッキーでもなくオペラ歌手であり、その打算的な振舞に吐き気が。息子の死を知ったバーリーの母親が「仕方ない、それが神の御意思なのだから」と取り乱すのを懸命に堪える深い信仰心に泣けてしまった一方で助かったメリーを見て神に感謝するブラッキーの姿が薄っぺらいとまでは言わないまでもご都合主義的で白けてしまった。クラーク・ゲイブルはジャイアンのようなキャラを生き生きと演じていた一方でスペンサー・トレイシーは今一つインパクトに欠けていて残念であると共にオスカーノミネートはどう考えてもおかしいでしょう。恐ろしさ溢れる地震シーンは特筆ものの素晴らしさでありました。 [DVD(字幕)] 7点(2018-04-10 01:48:38) |
86. サンダーボルト(1974)
《ネタバレ》 むさ苦しいイメージしかないジェフ・ブリッジスの屈託のない笑顔に「へぇ~」っと驚くばかり。私もラストに真夜中のカーボーイが浮かびました。都合良く生き残って都合よく大金をせしめるサンダーボルトに何一つ魅力を感じず退屈なオハナシに眠気が襲う。珈琲3杯飲みながらどうにか完走、疲れました。 [DVD(字幕)] 4点(2018-03-17 23:44:00) |
87. 裁きは終りぬ
末期癌の恋人の要請に応じて安楽死させた薬学研究所に勤める女性の裁判。無作為に選ばれた7人の陪審員それぞれの人となりが丹念に描かれており、彼らがメインの作品。病気の息子を殺そうとする衝動を堪える印刷屋さんの「自分ならどうするか、人の生死は神が決めるので、彼女は有罪」台詞が印象深い。7人それぞれが自身の価値観や置かれている状況でもって裁きを下す。専門家の裁きと陪審員の裁き、詰まるところ人が人を完全無欠に裁くのは不可能なのだと改めて思わされます。 [DVD(字幕)] 7点(2018-01-30 16:47:13) |
88. 最後の戦闘機(1936)
厚い友情で結ばれた男二人が心底愛している女が同じ人物だった。判明後の二人の苦悩が見応えあるも、女の浅はかさに辟易する。幼児のように「ジュテーム」を連呼するのに血圧が上がりまくる。悲恋をかきたてる幼い弟の存在感が秀逸。 [DVD(字幕)] 7点(2017-12-08 15:36:23) |
89. ザ・シャウト/さまよえる幻響
《ネタバレ》 スザンナ・ヨーク、ジョン・ハート、アラン・ベイツ共演に釣られて鑑賞。病人クロスリーの妄想劇。日本未公開がさもありなんと思う珍作に三人が出演した理由を知りたい。本作がカンヌ映画祭特別審査員賞受賞したことに「何でやねん」と叫びたい。 [DVD(字幕)] 4点(2017-12-03 23:59:12) |
90. 山河遥かなり
《ネタバレ》 ロケ地ドイツの当時の荒廃模様はまさに国破れて山河あり。救い出された子供たちは皆が無感情で、極めつけのカレル少年に胸が詰まる。少年に人間味を取り戻させる米兵演じる苦手なモンゴメリー・クリフトに初めて感動させられた。まだかまだかとお預けさせられた母子再会に心からの拍手を。 [DVD(字幕)] 8点(2017-10-23 13:58:44) |
91. 31年目の夫婦げんか
豊かな暮らしを送らせてもらって物欲を満たされた女房の欲求は性欲。聞くに堪えないカウンセリングシーンと見るに堪えないキスシーン。コメディらしいが笑うところ皆無で映画館のエピソードに怒り心頭。痛々しさしか感じなかったジョーンズさん、こんな作品に出たらあきまへん。薄っぺらい邦題にも腹が立つ。 [インターネット(字幕)] 2点(2017-10-20 16:44:44) |
92. ザ・ワイルド
《ネタバレ》 クマの腕(脚か)の下で抱かれるように横たわるチャールズにどうやって撮影したのだろうかという疑問にエンドロールが答えてくれました。バートくんグッジョブ。うろたえることなく知識と知恵と勇気でもって対処するチャールズの姿に、億万長者の事業家は譲り受けたのではなく自ら勝ち取った地位なのだと思わされます。自分を殺そうとした者を助けるのは挑戦する価値があるという考えが印象的。この世は挑戦の連続なのでしょう。このような人物はアンソニー・ホプキンスのドンピシャのはまり役。大自然の中に一際美しく映えるブルーグレイの瞳に、数あるツッコミどころも封殺されました。 [DVD(字幕)] 7点(2017-09-21 16:11:25)(良:1票) |
93. さらば愛しき女よ
うらぶれた探偵が魅せる仕事に対する矜持に見惚れ、任務完遂後、遺児のもとに向かう背中が見せるやるせなさと優しさに痺れます。絶世の美女と呼ぶにふさわしいシャーロット・ランプリングの視線で人が殺せるような眼差しにクラクラしました。 [DVD(字幕)] 7点(2017-06-17 14:42:09) |
94. ザ・コンサルタント
会計士と殺し屋の2つの顔を持つ男の活躍を期待したものの、主人公の自閉症に重きを置いた物語に爽快感は無く盛り上がりも無く余韻も無い作品でした。 [DVD(字幕)] 4点(2017-06-09 01:29:04) |
95. サブウェイ123 激突
《ネタバレ》 オリジナル未見。犯行目的が曖昧な元証券マンらしからぬ残忍性溢れる犯人と始終モッサリしたガーバーの対峙に魅せられず。派手な現金移送シーンで「何故ヘリを使わんのだ」という市長に「ごもっとも、でもアンタがそれを言うのか」と苦笑させられる。空回り感が強い作品。 [DVD(字幕)] 6点(2017-05-03 09:52:21) |
96. 西鶴一代女
《ネタバレ》 幸せと不幸せが交互に訪れるお春の人生が丹念に描かれており、彼女の生き様に「失意泰然、得意淡然」が思い浮かびます。勝之介の遺言に監督の思いの丈をぶつけているように思えます。 [DVD(邦画)] 6点(2016-11-27 02:54:14) |
97. さよならをもう一度
中年男女と若い男の三角関係。名優三人が締りのないグダグダ感を表現してくれているものの、平板で退屈な作品。 [DVD(字幕)] 5点(2016-11-12 23:46:01) |
98. サムライ(1967)
《ネタバレ》 仕事の完遂に向けて喜怒哀楽が皆無の姿はサイボーグのようなマネキンのような。他人を一切寄せ付けない孤独がサムライとは思えない。ピアニスト殺しの依頼に空の拳銃で向かった理由は分からないが、孤高な死に様はサムライを連想させた。そして、柔和な物腰と裏腹に犯人逮捕の意志を見せる警部もまたサムライ。演じたフランソワ・ペリエの存在感はキレッキレのアラン・ドロンに劣らぬものだった。 [DVD(字幕)] 7点(2016-11-08 01:48:45) |
99. さざなみ
《ネタバレ》 邦題のほうが物語を言い表していて齢70にして枯れていないシャーロット・ランプリングに惹きつけられた作品。結婚45周年パーティを間近に迎える夫妻の様子からは共に穏やかに齢を重ねてきたと思われる。50年前にクレパスに滑落死した結婚を考えていた彼女の遺体発見の報を受けて彼女を懐かしむ夫に心掻き乱されてゆく妻の様子が丹念に描かれている。妻の嫉妬に共感できる部分もあるが度が過ぎているように見えた。二人の今後を想像させられるラストショットが秀逸。 [DVD(字幕)] 6点(2016-11-03 01:57:02) |
100. サイレントパートナー
《ネタバレ》 モッサリしているが悪知恵が働く小悪党エリオット・グールドと残虐さに目を背ける悪党クリストファー・プラマー(「トラップ大佐」のキレキレの狂気模様に心底仰天)の絡み合いは先が読めなく結構ハラハラさせられた。緊張感が高まった中での悪乗りが過ぎた女装姿に脱力したまま結末を迎えたのがすごく残念。 2017.11.25 オトコマエの狂乱模様を観たくて再見。残忍なチンピラ役は見事な役作りだとしても、子供の頃からの悪役好きの私が見ても魅力のカケラも感じない。オトコマエがけったいな顔にしか見えなかったのが致命的。女性の顔を踏み躙ったり、女性の喉を掻っ切ったり、モッサリ銀行員にいいようにしてやられたり、「愚か者が! 女にしか勝てんのか!」と憤慨する始末。金輪際見ること無い作品。不細工な女装姿にちゃんとした役だったら美人になるのだろうかと考えてしまった。 [DVD(字幕)] 7点(2016-07-30 17:07:39) |