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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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21.  シビル・アクション
普通の法廷ものを期待すると裏切られる作品です。本作における取捨選択の基準は独特で、哀れな公害被害者や法廷闘争の扱いはあくまで控えめ、物質主義者だった主人公が人情で動く弁護士に生まれ変わるまでの過程が映画の中心となります。最大のクライマックスであるはずの評決がラストでテロップ処理された時にはさすがに驚きましたが、これは脚本・監督を務めたスティーブン・ザイリアンの潔さの表れでもあります。すべてを描けば3時間超えの散漫な映画になるかもしれなかった物語を断腸の思いで整理し、描く対象を絞り込むことで上映時間を2時間に収めてみせたのですから。。。 まずはっきりさせるべきは、これは法廷闘争をメインにすべき物語ではなかったという点です。というのも部が良いのは圧倒的に原告側であり(そもそも主人公が案件を引き受けたのは勝つのがわかりきった訴訟だったからだし、実際、被告企業はかなり早い段階で和解を申し込んできている)、これでは勝つか負けるかのスリルが生じえないからです。この物語がドラマチックなのは、金で幕引きをしようとする被告企業からの申し出を拝金主義者だった主人公が断り、借金を重ねてでも巨悪を暴こうとした点にあります。この映画はその点を思いっきりクローズアップしますが、この判断は正解でした。主人公は財産も友人も失い、被害者たちからは「こんな安い賠償金で納得できるか」と罵られてたった一人になるのですが、それでもなお戦い続けて公害企業を廃業にまで追い込みます。この執念をきっちりと描くことに成功しているからです。また、爽快な部分はあえて削ぎ落とし信念に固執することの苦しみを中心に据えることで、「エリン・ブロコビッチ」や「レインメーカー」のような爽快感重視の作品とは一味も二味も違う独自の立ち位置を確立できています。
[DVD(吹替)] 7点(2012-07-04 01:50:08)
22.  ジャッジ・ドレッド(1995)
本サイトにおける平均点がスタローン作品中最下位にしてアメコミ作品中でも最下位という、駄作の中の駄作との評価をいただいている本作ですが、私は好きです。世間で言われるほど悪くはないと思います。コミックで描かれる未来都市をまんま実写で見せた映像センスは評価に値するし(ありがちなブレードランナー風ではなく、あえてコミック風にダサめのデザインにしているところがミソ)、CGが十分に発達していない90年代半ばだからこその、実物大セットとミニチュアとCGとを組み合わせた職人技的なVFXを楽しむことができます。ホバーバイクによるチェイスシーンなどはテーマパークのアトラクションのような楽しさがあって、すべてがCGではないからこその絶妙な粗さが独特の味となっています。砂漠に住むミュータント一家の特殊メイクも素晴らしい仕上がりで、本作のスタッフは相当頑張っています。「プレイデッド」という低予算映画でデビューしたばかりのダニー・キャノンによる演出も悪くはなく、ドレッドの実力やジャッジ達の武装、メガシティワンの治安状況を冒頭のアクションでコンパクトに見せるなど、話のまとめ方を心得ていることには好感を持ちました。本作についてケチをつけるなら、脚本を練りすぎたことでしょうか。スタローン主演のアメコミ映画と来ればヒーローがバッタバッタと敵を倒す単純明快なアクション大作を期待するものですが、陰謀や裏切りを物語の核としてしまったためにバカバカしくも派手に盛り上がるという展開を作れていません。本作は映画化の話が持ち上がってから10年以上も試行錯誤された企画だけに、その過程で物語がややこしくなりすぎたようです。なお、現在はカール・アーバンを主演に迎えての再映画化企画が進んでいるようですが、こちらの脚本を担当するのは「28日後…」のアレックス・ガーランド。またしても複雑な物語になりそうです。
[レーザーディスク(字幕)] 7点(2011-01-29 21:52:53)
23.  シザーハンズ
小学生の頃にクラスの女子がやたらと「良い映画だ」と騒いでいたので試しに観てみたのですが、事前に聞いていた評判とは正反対のドロドロとした居心地の悪い印象を持ち、まったく好きになれなかった映画です。大人になった現在になって観返すと、その時に持った違和感の正体が分かりました。これは感動作でも美しい愛の物語でもない、グログロのドロドロの性根で作られた世間に対するうっぷんの塊のような映画なのです。ディズニー映画のようなファンタジーの殻を被ってはいるものの、その中身は「タクシードライバー」をはじめとしたポール・シュレイダー作品と大して変わりません。社会に適合できない若者がいったんは楽しくやっていけるかもという希望を持つが、その希望はあっさりと裏切られて孤独な生活に戻っていくという、何の救いもない暗い暗い物語。世間の冷たさとヒロインの薄情さが主人公を苦しめます。特にウィノナ・ライダーV3には怒りを覚えました。見た目は綺麗だし、エドワードの前では理解者として振舞ってくれる。しかし不幸な誤解から非難を受けることとなったエドワードの弁護はしてくれません。話すことに不慣れなエドワードは自分の口から事情を説明することが出来ない。だからこそ彼を泥棒に引き込んでしまったウィノナ・ライダーV3がみんなに事情を説明してあげねばならないのに、彼女はエドワードの盾にはなってやりません。事情が明らかになると自分や彼氏の悪事がバレてしまうから。二人きりになった時にだけ「エドワードごめんね」と言って良い人になろうとする様には虫唾が走りました。無意識のうちに人を傷つけながら自分では良い人だと思っている彼女もまた、エドワードを攻撃する街の人々とは変わらないのです。それを理解したからこそ、エドワードは彼女の思いを拒絶したのでしょう。。。しかし不思議なのは、本作がクリスマス映画の名作に数えられていること。これは「クリスマスを楽しんでる奴らなんか大嫌いだ!」という、もっともクリスマスに観てはならない映画なんですけどね。この映画の美しい外面だけを観てティム・バートンの真意を理解してあげない人もまた、エドワードを持てはやした末に追放した街の人々と同じなのでしょう。「スウィーニー・トッド」に対する批判がまさにそれでした。「怖い!気持ち悪い!こんなの観に来たんじゃない!」って、ティム・バートンは昔からこうでしたよ。
[DVD(字幕)] 7点(2011-01-19 22:20:02)(良:3票)
24.  シンドラーのリスト 《ネタバレ》 
マンハントシーンにおける容赦のない暴力、収容所所長アーモン・ゲートによる無秩序な殺戮。そんな極限状態における人の死の描写は異様にリアルで、頭に銃弾を撃ち込まれた瞬間、魂が抜けたように体が崩れ落ち、死体からはどす黒い血がドバドバ流れ出すというかつて見たことないほどの衝撃的な描写となっています。これら一連の描写はいかなるホラー映画でも勝てないほどで、不謹慎な言い方ですが、完成され尽くした恐怖映像の連続には目を見張りました。また、そんな恐怖演出の中に赤いコートの少女のような情緒的なアイコンをも忍ばせるのですから、スピルバーグの監督としての技術とカンはズバ抜けています。赤いコートの少女の扱いは残酷大将スピルバーグらしいもので、普通の監督であればユダヤ人の未来の象徴としてあの少女を描き、恐らくは少女を生かしておいて、クライマックスに再登場させるという演出をするはずです。しかしスピルバーグは少女を殺してしまい、観客が忘れたタイミングでその遺体を再登場させるという、実にショッキングな演出を加えます。ショックのツボをここまで心得ているものかと感心したし、人類史上稀にみる悪事を描くにあたっては、このくらいの力量を持つスピルバーグこそが適任だったと思います。。。ただし、問題もあります。スピルバーグはシンドラーという人物を理解できなかったのか、それとも彼を描写する自信がなかったのか、主人公であるはずのシンドラーの描写がかなり雑です。安価な労働力としてユダヤ人を利用することを考え、コネと賄賂で成功を掴む事業家としての前半と、私財を投げ打ってでもユダヤ人を救おうとする後半がまるで別人。特に、ヒューマニズムに目覚める後半になるとキャラクターとしての魅力がすっかりなくなり、空気のような存在となってしまいます。この不自然さこそが、本作が「偽善的」と揶揄される原因となっています。さらに本作が不自然なのは、迫害の対象となるユダヤ人が主要キャラクターに一人もいないということ。基本的にドイツ人キャラによって物語は展開し、ユダヤ人として唯一重要なポジションを担うイザック・シュターンにしても収容所所長から目をかけられており、迫害の渦中にいる者とは言えません。この辺りの構成のアンバランスさも、本作の評価を難しくしています。前半最高、後半まぁまぁ、ラストの演説が最悪というのが私の印象です。
[DVD(吹替)] 7点(2010-10-28 20:05:06)
25.  16ブロック 《ネタバレ》 
劇中では明言されていないし、レビュワーのみなさんも指摘されていないのであえて言いますけど、エディって知的障害のある役ですよね。つまりモーズリーは、タイムリミットまでにある地点へ到着しなければならないことと、フォレス・ガンプを連れて敵から逃げねばならないことの二つのプレッシャーと戦わねばならないわけです。主人公にタイムリミットを課すアクション映画は多くありますが、その相棒が知的障害者という設定が本作の新機軸。もしこれをマーティン・ローレンスやエディ・マーフィーのような面白黒人の一種だと勘違いすると、単なる鬱陶しい相棒になってしまうわけです。。。本作のようなタイトな作品においては、職人監督リチャード・ドナーの手腕が冴え渡っています。アクションには緊張感が溢れ、ドラマも手慣れたものです。妙に感動させたり、登場人物達に立派なことを言わせたりなどせず、基本はあくまでアクション、ドラマはその合間に差し込む程度。演出は変に欲をかかず、しっかりとしたサジ加減で仕上がっている点が好印象でした。。。リチャード・ドナーのフィルモグラフィーを振り返ると、本作の出現は必然だったように思えます。70年代後半から90年代前半にかけてはハリウッドトップクラスのヒットメーカーだったものの、90年代半ばに彼の転機が訪れます。「暗殺者」「陰謀のセオリー」という気鋭の脚本家によるエッジの立った作品を、立て続けに台無しにしてしまったのです。それ以来、彼はハリウッドの第一線から離れました。自分の感覚が時代に合わなくなったことを察したのでしょう。そして、本当に久しぶりの監督作がこの「16ブロック」でした。ド派手な爆破や銃撃戦のない引き締まった70年代風アクションに、80年代に絶頂を極めたコミカルなバディムービーの要素を追加。21世紀の作品としてはかなり古臭い内容なのですが、これこそドナーの手腕を最大限に発揮できる企画でした。企画の趣旨通り、ドナーはこれに21世紀風のムダな装飾や小理屈を挟まず、贅肉のないシャープな仕上がりとしました。結末にしても、モーズリーを殺して締めるのが妥当な落とし所ですが、安易に彼を殺さず温かみのある結末とした意図的な時代錯誤ぶりも心地よかったです。人生最後の作品と決めて本作を監督したのではないか?そう思わせるほどドナーらしい作品でした。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2010-06-27 22:16:55)(良:2票)
26.  ジャッキー・ブラウン 《ネタバレ》 
タランティーノ作品においてダントツで影の薄い作品ですが、彼の才能やクセがよく現れ、キャリアの分岐点となっている作品だと思います。とにかく長いこの映画。パルプ・フィクションも同じ155分でしたが、あちらは4つのエピソードを組み合わせているのに対し、こちらはワンエピソードで長尺を引っ張っており、本来B級の素材で2時間半は長すぎるように思います。しかしこれが絶対的な欠点でもないのが難しいところで、ムダに上映時間が長いのではなく、登場人物を丁寧に描いた結果がこの長さとなっています。タラのキャラ描写は独特で、ただテレビを見たり、ヤクをやってボーっとしているだけという「何も起こっていない」様子を映すことで、彼らの特徴を示します。そのため話は常に進んではおらず、完璧に止まっていることもあります。こうした、話全体にとっては何の意味もない描写により登場人物は特有の存在感を放っており、例えば同時期に製作されたアウト・オブ・サイトと比較すると、こちらの方がずっと印象に残るし、映画自体も楽しいものとなっています。問題は、タラが観客の生理に合わせた映画を作ろうという意思を持っていないことでしょうか。好きなキャラクター、好きな音楽、好きな場面をコラージュし、自分流の映画を作ることについては完璧。また、タラは変わった映画を作る監督として認識されていますが、ショッピングモールで紙袋をすり替えるシーンなどは、銃撃や追っかけが起きているわけでもなくただ紙袋をすり替えるだけなのに、ハンパではない緊張感に包まれており、正攻法の演出の才能もズバ抜けたものであることがわかります。しかし一本の映画としてのトータルのバランスはあまり意識していないようで、ショッピングモールで映画のテンションが最高潮に達した後に30分もダラダラと映画を続けてしまったことは失敗でした。一方でレザボア・ドッグス、パルプ・フィクションと初期作品はバランスのとれた娯楽作となっていることから、タラは娯楽ができない人ではなく、やろうと思えばできるけど、自分の描きたいものを優先して全体のバランスを犠牲にしてしまう人なのだと考えられます。本作以降はさらに好きなものに突っ走り、当初評価されていた抜群の構成力まで捨てつつあります。才能あるクリエイターが迎合しすぎず好きなことをやるのは良いのですが、最初の2本だけが傑作という状況はもったいないように思います。
[DVD(吹替)] 7点(2009-06-11 17:25:38)(良:4票)
27.  ジャーヘッド
前作ロード・トゥ・パーディションがいかにも優等生的でつまらない映画になってしまったので、その反省とばかりにサム・メンデスは本来の持ち味である斜めの視点で本質をえぐり取るという皮肉精神を取り戻しています。ディア・ハンター以降、戦争映画と言えば主人公が「俺は殺人行為をやったんだ」と悩み、戦争で抱えた苦悩を背負う作品ばかりになってしまいましたが、この映画は四半世紀ぶりにその傾向に風穴をあけるような面白い姿勢で作られています。主人公が厳しい体験の中で成長するわけでもなく、悲惨な現実の中で何かの教訓を学ぶわけでもなく、「戦争行ったけど特に何もなかった」ということがテーマの変な戦争映画です。上官に向かって「俺の手で敵を殺させてくれ」と兵士が泣いて頼むという常識はずれのシーンまであります。監督も自分の試みに自覚的だったのか、ドラマ路線の戦争映画として最高の評価を受けるディア・ハンターのビデオにポルノまがいの不倫映像がダビングされてるくだりがあり、一方で「戦争映画としては非現実的だ」との批判を受ける地獄の黙示録を見て兵士が最高潮に盛り上がったりと、「『これが本当の戦争だ』と言ってた今までの戦争映画だって所詮脚色されたもんでしょ?」とでも言わんばかりの挑発ぶり。確かにこの映画の異色ぶりは相当なもので、これまでの戦争映画がどれも判を押したように「悲惨の連続」だったのに対し、この映画が描くのは「退屈の連続」。延々と退屈が続きそこに生死を分ける一瞬が突然やってくるというのが戦場の実態のようですので、「生死」並に大きな要素でありながらこれまで映画が取り上げてこなかった「退屈」という側面をはじめてテーマにしたところにも、この映画の価値はあると言えます。ただしこの監督、挑戦的な内容を扱いつつも映像や語り口に良くも悪くも「えげつなさ」がないという特徴を元々持っており、アメリカン・ビューティーにおいては過激な内容をうまくまとめてさらっと見せる手腕が良い方向で現れたものの、戦争映画においては刺激不足の原因となり、後半に猛烈な長さを感じさせられました。また最初と最後のモノローグは完全に蛇足で、何か意味ありげなあのモノローグは「何もない」がテーマのこの映画の本質をかえって見えづらくしています。
[DVD(吹替)] 7点(2006-11-03 22:03:58)(良:1票)
28.  G.I.ジェーン
公開当時、「白い嵐」との併せ技で「リドリー・スコットも終わったな」と世界が確信した作品ですが、今になって見ると意外とおもしろかったです。フルメタル・ジャケットとトップガンをあわせたようなお話のため、硬派なドラマとして見るべきか娯楽作として楽しむべきかがわからなかったのが公開時の失敗要因でしょうか。しかし「グラディエーター」以降花開いた監督の残虐路線を念頭に置けば、この映画に大したメッセージ性はなかったであろうことが伺えます。リドリー・スコットという監督はスピルバーグと並んでサディズムを感じさせる監督です。↓のパブロン中毒さんもおっしゃってるように、表現手段としてあえて残虐性を選んでいるのではなく、個人的な趣向としてやっていることを感じさせられるのです。しかしその性向はグラディエーター以降にようやく判明したものですので、オニールに加えられる必要以上に凄惨な拷問の意味に観客は戸惑い、一転して普通のアクション映画になってしまったラストの救出作戦に素直に興奮していいものかがわからなかったのです。一般の作品に登場する凄惨な暴力には何か意味を感じなければならなかったのが公開当時の常識であり、そういう意識で見ればこの映画はさっぱり理解不能。また本作はフェミニズムの立場に立ったお話でもありますが、同様に監督は本当にフェミニズムを描こうという意思はなかったでしょう。この監督は「テルマ&ルイーズ」という女性映画も撮っていますが、こちらも表面的な主張にのみとどまっていました。監督の興味は虐げられるものを描くことにあり、その題材として社会的に受け入れられやすい女性問題を選んでいるのではと思えるのです。カラー・パープル、シンドラーのリスト、アミスタッドと、こちらもなぜか虐げられる者のドラマを作りたがるスピルバーグと似たような性質を感じます。そんな監督の作品ですので、この映画にも大した意味はないのです。ただひたすら目の前の映像を見てればよろしい。そう思って見ると、ラストの救出作戦なんてトニー・スコットの映画みたいで興奮しますよ。そうそう、トニー・スコットとリドリー・スコットの力量の差って、恐らく変態性の差じゃないですかね。どちらも最上級の技術を持ってるわけですけど、やっぱり変態パワーが芸術家としてのリドリー優位の根源ではないかと。トニーは変態じゃないから普通の映画しか撮れないんですよ。
[DVD(字幕)] 7点(2006-04-30 17:23:36)(良:2票)
29.  ショウタイム
なんと、DVD版はエディ・マーフィの吹き替えが下条アトムでした。かつてはエディといえば下條アトムの声でした。「エディ・マーフィのものまねやります」と言って、下条アトムのあのしゃべり方のマネをはじめる中学生も大勢いたほどメジャーだったあの吹き替えですが、最近では旧作ですらその組み合わせを見ることが少なくなってたところです。しかし、その素晴らしい組み合わせを21世紀になって突如見ることができるとは!感動しました。エディがしゃべり出すたびに爆笑してしまいました。下条アトムのあの心の入っていない、いかにも口先だけのしゃべり方が、エディのキャラに非常にマッチしているのです。その吹き替えのおかげか、今回のエディ・マーフィにはえらい笑わせてもらいました。カメラをチラチラ見ながら臭いセリフを言うシーンのヘタさ加減なんて、「エディ、やっぱりあんたはプロだぜ」と見直しましたよ。一方、デ・ニーロの演技とは思えないイヤそうな顔もさすがで、「さすがはアクターズ・スタジオ!」と見直しました。て、あれはリアルにイヤそうでしたけど。しかしまぁ、この映画は本当にふざけて作ったとしか思えない出来なのでいいんです。ウィリアム・シャトナーが出てきて、「あんな大根役者は見たことがない」とまで言うんですから。ホント、いかにもアメリカ人なおふざけなんですよ。敵のペラペラ加減にしたって「バッドボーイズ」を遥かに上回っており、添え物にすらなっていません。だいたいあんな特殊な銃を街中で撃ちまくっては、「私が犯人です」と言ってるようなもんです。そんな感じで、真剣に見てはいけないんですよ、これは。要するに、「リーサル・ウェポン」よりも「刑事ジョー ママにお手上げ」のつもりで見るべき映画なんです。そんな気持ちで採点をすると、下条アトム効果もあって7点を付けさせていただきます。
7点(2004-11-18 22:05:58)(良:3票)
30.  新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生 《ネタバレ》 
【2010/06/20レビューを書き直しました】前回のレビューではDEATH編が不要だと書いたのですが、今になって見返すと印象が変わりました。この総集編は、公開までの製作スケジュールが逼迫した監督による時間稼ぎだったという批判をしばしば受けます。私もそう思っていましたが、実際には物語のクライマックスに突入する準備として必要な情報の整理がなされています。続く「Air」「まごころを、君に」ではサードインパクトという地球規模の壮大なイベントが結末を迎えると同時に、シリーズで描かれてきた主人公達の心のドラマにもついに結論が出ます。アスカは「他人から評価されないと生きていけない」という強迫観念から解放され、レイは他人からの要求を拒否するという自我を獲得し、シンジは他人が存在する世界を受け入れます。彼らはそれぞれの抱える心の問題を乗り越え、大きく成長した姿を披露することとなるのですが、以降に控えるこのダイナミックなドラマの前提として、これまでの登場人物達の感情の推移を整理するDEATH編は必要でした。なぜなら、当時の私を含めたエヴァファン達はSF的な設定や入り組んだ謎、作り込まれたアクションや美少女キャラ達には惹かれていたものの、このシリーズが重く扱っていた心のドラマには特に関心を示していなかったからです。エヴァは多くのファンから舐めるように鑑賞され、また普段はアニメなど扱わない媒体からも取り上げられるほどの人気を獲得しましたが、監督はそれに浮かれず、ファンが付いて来ていない部分があることを冷静に認識していたようです。もしかしたら、「こいつら、俺の言ってること分かってないじゃん」という苛立ちもあったのかもしれませんが、ともかくクライマックスの理解を助けるために今一度ドラマ面を提示しなおす必要があり、そこでDEATH編を作ったように思えます。事実、DEATH編を丁寧に見てから「まごころを、君に」を鑑賞すると、意味不明と言われたクライマックスを意外なほどすんなりと理解できます。。。同時にDEATH編からは、監督がファンを信頼していることも伺えます。これはただのダイジェストではなくシリーズをバラバラに分解して再構築したものであり、ワンシーンを見ただけでどのエピソードからの出展であるかがピンとくるようなレベルの高い観客のみを想定した作りになっています。多くのファンはそのレベルに達しているはずだと監督は考えていたようです。
[DVD(邦画)] 7点(2004-08-07 14:10:05)(良:1票)
31.  THE END OF EVANGELION 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に 《ネタバレ》 
【2010/06/20レビューを書き直しました】前のレビューでは「大風呂敷広げ過ぎてオチが浮かばず、不快な描写でファンを煙に巻いて終わらせた」と評価していたのですが、あらためて見ると私の認識は完全に誤っていました。生理的な不快感を伴う劇中の表現は監督の逃げではなく必然性のあるものだし、結末もテレビシリーズとの整合性を保ちつつ、予定調和ではない突き抜けたもので、「エヴァらしさ」という意味では最良の終わらせ方だったと思います。。。本作はサードインパクトの様子がひたすら描かれるのみで、内容は至ってシンプル。サードインパクトの行方はシンジに委ねられ、彼は「人類の心が補完され、誰からも傷つけられない世界」か「他人から傷つけられる恐怖と、他人と触れ合う喜びが同居する世界」かの決断を迫られます。シンジは他人から傷つけられることを極度に恐れ、他人のいない世界を常に望んでいましたが、そうした恐れは人と触れ合いたいという欲求の裏返しであることに気付き(ラストでアスカの首を絞めたのは、好きであるが故に拒絶されることが怖かった為)、そしてサードインパクトを途中で終わらせ、再び他人と共に生きることにします。ひとつオトナに成長した息子を見て安心したのか、母親ユイの魂が込められたエヴァ初号機は、地球を離れ宇宙へと旅立っていきます。エヴァという永遠の寿命を持つ箱舟に乗り込み、50億年後に地球が滅んだ後にも人類が生きた痕跡を残すために。。。本作の内容はこれだけで、大して難しい話ではありません。本作を難解にしている最大の要因は、監督が描きたいことと、ファンが見たいものの齟齬にあると思います。私を含めた当時のエヴァファン達はSF的な設定や入り組んだ謎、作り込まれたアクションや美少女キャラ達には惹かれていたものの、このシリーズが重く扱っていた心のドラマには特に関心を示していませんでした。一方で監督はキャラクター達の内面を描写することに重きを置いており、キャラクターの内面に注目すればシンプルな話だったにも関わらず、入り組んだ設定に注目したためにそれがノイズとなって理解を難しくしていました。また、私を含め多くのファンが本作で裏切られたと感じたのも、自分達の見たいエヴァと監督のエヴァとが違っていたため。監督が「ファンの見たいエヴァ」を目指した新劇場版を見た今になると、本作の意図がパっと見えるようになりました。
[DVD(邦画)] 7点(2004-08-07 13:51:24)
32.  シルミド/SILMIDO
あつーい映画でした。「特攻大作戦」から「アルマゲドン」までならず者部隊の映画は数あれど、これほどに熱いのは他にはありません。ハリウッドクラスの技術を用いてド演歌をやるってのが韓国映画の特徴ですね(けなしてるわけじゃありませんよ)。前半は素晴らしかったです。地獄の訓練やその中で成長していく兵士の姿が熱くさせました。しかし中盤以降は一気にペースダウンし、さらに韓民族ならではの熱演がかなり胃に重くなってきました。とはいえ、この映画にはそれ自体に熱い闘志がみなぎっており、件のもたつきすら製作陣の息吹のように感じます。脚本上の計算や、演出的な効果を狙ったのではなく、製作側が心で作った映画なのだと思えるんです。これぞハリウッドが失ったものであり、代わって韓国映画がそれを復活させようとしているのかもしれません。香港も「インファナル・アフェア」を生み出すまでに成熟しているし、それにひきかえ日本映画ときたら・・・。
7点(2004-07-02 01:17:36)
33.  シャイン
偏屈な性格なのでなかなか定職に就けず、他に誇るべきことがないので過剰なまでに家族に執着して狭い世界の中で余計に偏屈度合いが加速していくという、無職オヤジの負のスパイラルが見事に描かれた前半部分は最高に楽しめたのですが、このオヤジが出てこなくなる中盤以降は、普通の良作になってしまったという印象です。 アカデミー賞をはじめとして世界中で多くの受賞歴があるだけあってジェフリー・ラッシュの演技は素晴らしいものの、実はラッシュが出ている中年期が一番面白くありません。父親との関係の清算、後に奥さんとなる占い師との出会い、トラウマを乗り越えてのカムバックなど、このパートは構成要素が盛りだくさんのはずなのに、そのすべてがあっさりと流されてしまうためにほとんど感動がなく、ジェフリー・ラッシュの名人芸を楽しむだけのパートになっています。
[インターネット(字幕)] 6点(2018-04-08 11:59:04)
34.  灼熱の魂 《ネタバレ》 
【注意!かなりネタバレしています】 ミステリーとしては面白かったのですが、紛争国を舞台に憎悪の連鎖を描こうとする社会派作品としてはピンときませんでした。 捕えられたナワルの拷問人としてやってきたのが生き別れになっていた彼女の息子でしたという点と、その拷問人がナワルと同じ町内に引っ越しており、かかとの入れ墨が見えるプールで再会しましたという点があまりに強引であり、どんな凄い偶然だよと冷めてしまったために、本作の内容を現実問題と繋げて考えられなくなったことが原因ではないかと思います。
[インターネット(字幕)] 6点(2017-10-14 01:39:49)
35.  ジュピター
当初よりフランチャイズ化を目論んで作られた作品であるため一本の娯楽作としては過剰なほど設定や伏線が多く、大して難しくないはずの物語がゴチャゴチャしすぎているために直感的な面白さを感じづらくなっています。また、宇宙規模の物語ながら、すぐにワープ移動してしまうために舞台の広さを実感できず、基本設定とは裏腹にこじんまりとした印象を受けました。肝心の物語にしても、スペースオペラの皮を被りながらも、その実態は金や相続の問題というギャップに面白みを感じるべきだったのでしょうが、そこも、それほど面白くありません。総じて、ディズニーが『ジョン・カーター』でやらかしたのと同じ失敗をしています。 ただし、ウォシャウスキー姉弟の作品だけあって美術やVFXの作り込みはハンパではないし、ギリギリで救援が駆けつける際のタイミングの取り方もよく、娯楽映画としては一定の水準に達しています。シリーズ化を見越していただけあって主要登場人物はほとんど死なず、鑑賞後の印象もスカっと爽やか。チャニング・テイタムとショーン・ビーンはカッコいいし、ゴチャゴチャした物語はこの際無視し、悪い奴からお姫様を救い出す冒険談と割り切って鑑賞すれば、それなりに見られる映画にはなっています。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2015-08-29 00:06:05)
36.  ジュラシック・パーク
さすがはスペクタクルの巨匠だけあって、単なる最新技術の発表会に終わらせず、ちゃんとした演出が施されています。例えばブラキオサウルスをはじめて見た時、私達はグラント博士と同様の驚きと感動を味わいます。あのタイミング、盛り上がる音楽、「えらいもん見てしまった」という俳優たちのリアクション。CGの恐竜がノシノシ歩くだけではこの映画は成立しなかった、優秀なスタッフと優秀な監督あってのジュラシック・パークなんだなぁと感じるわけです。T-REXが暴れ出す場面でも、不気味な兆候を積み重ねていよいよ千両役者登場という演出の巧さには唸ります。映画としてやるべきことがちゃんとなされているのです。。。現在になってあらためて見返すと、むしろ技術がこの映画の制約となっているような気さえします。当時の技術水準ではさすがに恐竜を出ずっぱりにすることは不可能であり、またCG恐竜に演じさせられるアクションにも限界があったため、主役でありながら恐竜の出番は抑え気味。「ジョーズ」でも効果を発揮したスピルバーグの「見せない演出」と、恐竜をなるべく出さないで済むように工夫されたシナリオの存在を感じます。こうした制約のため特に中盤はほとんど見せ場がなく、はっきり言って中だるみしており、ひとつひとつの場面を取り出すと印象的である一方で、映画全体としては他のスピルバーグ作品よりは下の出来だと言わざるをえません。また娯楽に徹するためか、物語から難しい部分を意図的に取り去っていることも残念なところ。「ジョーズ」では大人のドラマをやったのに、本作はすっかりファミリー向けになったのは70年代と90年代の違いでしょうか?科学技術と生命倫理のバランス、娯楽のためにどこまで危険を冒していいのかという問いかけ、経営者ハモンドと、それについていけない部下達との関係等々、掘り下げると面白いネタは山ほど転がっていたのに、知的好奇心に訴える部分のほとんどが切られています。その割を食ったのがマルコム博士で、「何が起こるかわからんから新しいことはやるな」と言ってるだけの、頭が固くて空気の読めない人間にしか見えません。しかしクライトンは、心配性の母親みたいな主張をさせるためにカオス理論を出してきたのではないはず。自分達の力を過信しすぎるなという本作の核となる主張をカオス理論に託していたのに、映画版ではその主張がなくなっています。
[映画館(字幕)] 6点(2009-12-29 20:19:16)
37.  将軍の娘/エリザベス・キャンベル 《ネタバレ》 
まとまりは悪くないんですけど、どうにも残らない映画ですね。まずは監督のサイモン・ウェスト斬り。彼に大した演出力がないのは周知の事実ですが、とりあえず画面を見栄えよくまとめる技術は持っています。この映画においても、何かに驚かされたり、目を見張るようなシーンがあったわけではありませんが、2時間を退屈せず見れる出来にはなっていました。お次はトラボルタ斬り。トラボルタはどの映画でどんな役をやってもトラボルタ。つまり演技がどうのというよりも、彼はつねにトラボルタでしかないのです。この映画でもとくに演技に驚かされることはありませんが、当時の彼はまさに絶頂期にあり、スター・トラボルタはきちんと輝いていました。これまた見ていてとくにアラや欠点は気になりません。お次は脚本斬り。混乱を起こさないように丁寧に整理されたお話はよかったのですが、あまりに展開を滑らかにしすぎたために、謎説きをやってる気にさせられなかったのはサスペンスとしてマズイと思います。見ている側に推理させる余裕を与えないまま、話だけがサクサクと進んで行きましたから。それでも途中までは「どんなスゴイ陰謀が隠されてるんだ?」と期待してたんですけど、謎の正体が要するに親子ゲンカってのも、ちょっとガッカリですね。エリザベスのSM趣味や、心理研究班勤務(しかも人体実験中と思われる兵士の姿が一瞬映る)、地元警察との軋轢など、前半には面白くなりそうな伏線がいくつもあったのに、結局それらはネタふりにもなっていないし。それに、いくらツライ目に遭ったとは言え、外で素っ裸で大の字ってのは、やっぱりおかしいですよ。そこに「彼女は自分のトラウマを消すべく心理学に没頭し、そして人格が壊れていったんだ」みたいな理屈をつけてくれれば、まだスッキリとはしたんですけど。やっぱりサスペンスなら、伏線はきっちり回収しないと納得できませんよ。てなわけで、本当にヒマつぶし程度なら楽しめる映画なので、6点ってことにします。
6点(2004-11-25 17:28:22)(良:1票)
38.  ジャンヌ・ダルク(1999)
もったいないというか、なかなか深い映画なんですけどね。ジャンヌ・ダルクをテーマにしながら、神の意思や英雄物語の否定をやっちゃってるわけですよ。神の意志による戦争という矛盾、伝説ではないジャンヌの実態など、すごくいい視点ですよ。ジャンヌの抱く、美化された死や奇跡のイメージのビジュアル化、人格化された良心との対話など、素晴らしいアイデアもいくつかあります。ただし、全体的に切り口が短絡的なために、主題がかえってブレてしまってます。戦場に転がる死体にショックを受けるジャンヌ、愚直なまでに神への信仰を叫ぶジャンヌなど、ちょいとしつこすぎです。王位を得た途端に傲慢になるシャルル7世の描写も、あまりに単純すぎてガッカリでした。姉の惨殺、ジャンヌへのリンチなどの描写も、生々しすぎてかえってメッセージ性を削いでしまってます。この辺が、常にベタにこだわり続けるベッソンの限界なんですね。まぁ、戦場の迫力は大変なものだったし、「Follow me!」には燃えたし、アランソン、ジル・ド・レ、ライール、ジャン・ドーロンなど、ジャンヌの脇を固める男達はみんなかっこよかったし、娯楽性もそこそこ。悪い映画ではないと思います。
6点(2004-07-31 16:29:51)
39.  ジェイソン・ボーン 《ネタバレ》 
IMAXにて鑑賞。 『アルティメイタム』で綺麗に終わった話をどうやって再開するのかという点が鑑賞前の不安だったのですが、案の定、完成した作品は語るべき物語を見失って迷走していました。ジェイソン・ボーンのアイデンティティを探る話はまだまだ続くのですが、シリーズ継続のために捻り出された後付けの設定があまりにご都合主義的なので醒めてしまいます。『24』もそうでしたが、エージェントもので実は父親も陰謀に関わっていたという話を出し始めると、いよいよお終いですね。 国家が作り出した殺し屋というものを見たことがある人はほとんどいないため果たしてそれがリアルなのかどうかは分からないが、少なくとも「殺し屋とは、きっとこんな感じなんだろう」と思わせるような説得力ある描写こそがボーン3部作の魅力でした。地下鉄を脱線させろとか、大爆発を起こせとか言ってくるスタジオと喧嘩しながら堅実な作風を守ったダグ・リーマンが本シリーズの基本路線を作り、ポール・グリーングラスがそのスタイルを継承発展させることでボーン3部作は本物志向のアクション映画の太祖となったのですが、一転して本作は『ボーン・アイデンティティ』が登場する前の単純な爆破アクションに先祖返りしています。観客を楽しませたいというサービス精神は理解できるものの、ド派手になりすぎた見せ場にはもはや生身の人間が闘っているという感覚が残っておらず、見せ場が派手になればなるほど手に汗握らなくなるというアクション映画の典型的な衰退サイクルに入っています。クライマックスのカーチェイスなどは『ワイルド・スピード』の新作のような有様であり、本シリーズのファンが求める見せ場からはかけ離れています。そういえば、『ボーン・レガシー』続編の監督にジャスティン・リンが起用されたという話が一時期ありましたが、結果的にボツとなったその企画で考えられていたカーチェイスがそのまんま本作に流用されたのではないか。そんな邪推を生むほど、クライマックスのカーチェイスはシリーズ全体の雰囲気から浮いていました。 見せ場のインフレとともにジェイソン・ボーンはさらに超人化。パンチ一発で格闘家を気絶させるほどの格闘スキルに、プロのレーサーをも超える反射神経とドライビングテクニック、スリのような小手先の技に、電気配線に細工をする技術と、もはや何屋さんなのか分からないほどの多才ぶりを披露します。殺し屋みたいな潰しの利かない職業なんかにはつかず、何かひとつでも特技を極めていればその道で食えていたんじゃないかと思うほどの器用さであり、その多才ぶりゆえに殺し屋というそもそもの設定が没却してしまっています。これもやりすぎでした。 また、敵エージェントとの関係も変質しています。悪いのはラングレーのオフィスにいる上層部であり、現場のエージェントはただその指示に従っているのみ。命を狙われてもボーンは敵エージェントを恨んでいないし、殺し合いを演じつつも互いに敬意を払い合うエージェント同士の武士道のような関係性こそが本シリーズの熱さに繋がっていました。また、そうしたエージェント達の姿がエンディング曲”Extreme Ways”の歌詞と見事にシンクロしていたのですが、一方本作のエージェントは私怨剥き出しでボーンに襲いかかってくるため、戦いの意味合いがかなり変わっています。私としては、従前のエージェント達のプロフェッショナル道が好きだったため、この変更を良いとは思いませんでした。 国家によるSNSの監視や諜報機関OBによる機密情報漏洩などの時事ネタを出してきているものの、こちらもジェイソン・ボーンの物語とはうまく絡んでいなくて不発に終わっています。アクション映画としては及第点ではあるものの、待ち望まれた『ボーン・アルティメイタム』の続編としては期待外れな出来だったと言えます。
[映画館(字幕)] 5点(2016-10-08 03:16:24)(良:2票)
40.  ジャッジ 裁かれる判事 《ネタバレ》 
当て書きだったこともあってダウニーJrはハンク役に完璧にハマっているのですが、少年の心を持つ不良中年、芯の通ったひねくれ者といういつものダウニーJrなので、特に目新しいものはありません。娯楽作で活躍する彼が、プロデューサーも兼ねて小規模予算のドラマ作品に出演したからには、俳優として何かしらのチャレンジがあるのだろうと期待したのですが、そういうものは見られなかったので少々ガッカリしました。他方、ジョセフ役のロバート・デュバルは御年83才にして体を張っており、こちらの演技には目を見張るものがありました。磯野波平を10倍濃縮したような頑固オヤジぶりと、年齢に勝てず弱っていく老人ぶりを同時に見せるという器用な演技を披露しており、演技の幅の少ないダウニーJrをうまくフォローしています。 父と子の対立と和解が作品の主たるテーマであり、ソリの合わない父親を田舎に残している私としては、他人事とは思えないお話だったのですが、これがビックリするほど心に刺さりませんでした。この手のシナリオのテンプレートに当てはめて作ったようなお話で、あまりに無個性なのです。長めの上映時間も有効には活用されておらず、似たり寄ったりの話を何度も繰り返すのみなので、途中で飽きてしまいました。とどめはエンドロールに流れる音楽で、ご丁寧に本作のテーマをすべて歌詞にして歌ってくれます。「大丈夫、もうわかったから」と言いたくなりました。 法廷劇としても中途半端。いかにも出来るげに登場したビリー・ボブが主人公達を苦しめる強敵となるのかと思いきや、こいつがほとんど活躍しません。ハンクを阻む最大の敵は、容疑者であるジョセフその人。ハンクは、ジョセフがしらばっくれることで故殺の疑いからは逃れられるような導線を作るのですが、肝心のジョセフがこの作戦に乗ってこないのです。これにはさすがにイライラさせられました。ハンクは勝つために何でもやる弁護士であることは当初から分かっていたのだから、そのやり方に従えないのであれば、そもそもハンクを雇わず、心根の優しい田舎弁護士にでも頼んでいれば良かったのです。一度はハンクに弁護を任せながら、その作戦にうだうだと文句をつけてくるジョセフがめんどくさくて仕方ありませんでした。そして、容疑者自身に勝とうという目的意識のない裁判では、さすがに手に汗握れません。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2015-07-12 01:23:22)
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