81. どっこい! 人間節-寿・自由労働者の街
これは凄い。 壮絶なドキュメンタリー。 1970年代。 社会の底辺で必死にもがき、日々を死と隣り合わせで生きる日雇い労働者たちの姿。 そこにあるのは、ひたすら過酷な日常である。 日本全国から横浜・寿町に集まってきた人達。 それらの人々は、誰しもが暗い過去を背負い、心の傷、体の傷を背負って生きている。 全国をさまよい、やがて行き着く場所が寿町だったのだ。 33年前の作品だったので、寿町が今もなお同じ姿を留めているのか非常に興味が湧き、映画館を出た後、一路寿町へと私は向かった。 なんとそこには、今も変わらぬ日雇い労働者の町が存在していた。 このような町が存続していること自体は、社会的にみて決して好ましいことではない。 しかし、私は寿町というドヤ街が今もなお存在していることに、正直、安堵してしまった。 関東では、山谷のドヤ街が実質的に消滅しかけてる今、生ける負の文化遺産として貴重な存在である。 ただ、このままであってはならない。 このような町は早く消滅すべきである。 そういった言わば自分の中の正義と、いつまでも負の文化遺産として姿を留めておいてもらいたいという自分勝手で興味本位な悪の心とが、自分の中で併存しているのだ。 このように、“ドヤ街”寿町は、私の心の奥底を揺さぶるのだ。 自分をそういった気持ちにさせ、寿町という町の存在を知らしめた、この貴重なる力作ドキュメンタリーに拍手を送りたい。 そして、早くして亡くなった数知れない寿町日雇い労働者の人達のご冥福を心より祈りたい。 [映画館(邦画)] 8点(2008-11-02 22:20:23) |
82. 時をかける少女(1983)
知世ちゃんの魅力をひたすら味わうべき作品ですね。 はっきり言って、映画そのものの完成度としては、取るに足らないレベルです。 だけど、エンディングで流れる主題歌『時をかける少女』には、何故か心揺さぶられるものがありました。 70年代から80年代にかけての、あの甘酸っぱい独特の雰囲気が、タイムカプセルのように保存されているような気がして、あの曲を聴いた瞬間に、まるで「時をかける」気分になれました。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2008-10-08 00:22:58)(良:2票) |
83. 東京マダムと大阪夫人
神保町シアターにて鑑賞。 川島雄三監督作品、自身23本目の鑑賞。 これがなかなかの愉快作! しかも、とても良くまとまっている。 女優陣も、芦川いづみに北原三枝と、綺麗どころが出演しており、華もあってよい。 うるさいマダム連を、ガァガァとわめくアヒルにダブらせるユーモアは最高! 又、サラリーマン族の暮らしぶりを、暖かい目線で喜劇調に描いており、安心して楽しむことができた。 [映画館(邦画)] 7点(2008-10-05 00:27:40) |
84. 東京オリンピック
記録映画の精度としてみるとレニ・リーフェンシュタールよりもオリンピックの全体像が克明に描写されている。 かたや、芸術としての映像という視点でみると、レニより劣るのではないだろうか。 ところで私は映画好き以上のマラソン観戦好きなので、ラストで感動を呼ぶべきマラソンについては不満を感じた。 マラソン観戦は、やはりスタートの瞬間からゴールまでをずっと観られてこそ魅力を感じる。 しかし、ドキュメンタリーならではの、リタイアした選手の様子とかが映されていて、それは楽しめた。 又、熱狂に沸き返る当時の日本、いや東京を映像として観られたことは、非常に貴重な体験となった。 記録映画としての存在価値は、今もなお失われてないのではないだろうか。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-09-21 16:58:12) |
85. 虎の尾を踏む男達
黒澤映画としては、『羅生門』に次いで好きな作品です。 アクション過ぎる『七人の侍』や、ヒューマン臭が過ぎる『生きる』『赤ひげ』などの世間的評価の高い黒澤作品よりも、本作の方が好きです。 尺も短く、緊迫感が最後まで持続し、見事な出来栄えです。 大河内傳次郎の、迫真の演技も特筆すべき素晴らしさでした。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-09-03 23:40:27) |
86. ドラゴン怒りの鉄拳
《ネタバレ》 ツッコミどころ満載で、中だるみもあるが、そんな些細(些細ではないが)なことはどうでもよくなってしまうくらい、ブルース・リーのアクションが凄い! あの動き、あれはブルース・リーにしかできないスピード感。 独特のほえ声も決まっている。音楽もカッコイイ。 これでディティール部分の演出と、ストーリーに重みが出れば、完璧なアクション映画だ。 それにしてもラストは、あの角度でピストルを撃つと、後ろの人達に当たる様な気がするのだが・・・ [CS・衛星(字幕)] 7点(2008-08-15 21:51:52) |
87. ドイツ零年
《ネタバレ》 前に一度観たことがあったような気がしたが、記憶が定かでなかったので、もう一度鑑賞してみた。 やはり観たことがあった。 しかし、どうも印象が薄い。 第二次大戦後の風景をフィルムに残した記録映画としては貴重な作品だが、話はただ単純。 それがイタリアン・ネオリアリスモなのかもしれないが、映画としての面白さという点では疑問が残る。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2008-07-20 18:30:23) |
88. 東京ギャング対香港ギャング
《ネタバレ》 鶴田浩二、高倉健、丹波哲郎の三大スター共演で、香港を舞台にしたギャング映画。 ところが、前半40分を経過しても、高倉健しか出てこない。 他の二人が出てこないのだ。 そうしている間に、高倉健演じる主人公らしき人物は、撃たれて死んでしまった(!)。 なんてことだ。 その後に、鶴田浩二と丹波哲郎が登場。 おいおい! 三大スター共演っていったって、三人が一緒に出てこないじゃないか! なんか騙された気分。 それはそうと、冒頭の高倉健が出てくるパートは、とても面白かった。 香港のダウンタウンを舞台にして繰り広げられる、ギャング間の白い粉と金の争奪戦。 いかにも石井輝男作品といった風情のBGMが流れ、興奮と期待が高まった。 そこでいきなり主人公が撃たれて死んでしまい、舞台は日本へ。 ここから一気につまらなくなった。 冒頭の高倉健が出てくる部分の雰囲気が、最後まで続けば間違いなく傑作となったであろう。 本作が石井輝男作品の代表作とは言われてない理由はそこにあるような気がする。 後半の尻すぼみが無ければ、石井監督の代表作と言われたに違いない。 それだけに不満が残る内容だった。 それにしても、鶴田浩二演じる男が、シャブ中だとは思いもしなかった。 ラストも丹波が生き残り、しかも刑事だったというオマケ付き。 なかなか面白い内容なのだが、やっぱり後半がどうも間延びしていた。 あー、もったいない作品だ。 [ビデオ(邦画)] 6点(2008-07-06 12:08:57) |
89. トロピカル・マラディ
カンヌ映画祭監督賞受賞作品。 シネマート六本木にて鑑賞。 この日の4本目の鑑賞で疲れているせいもありましたが、後半は見事に観る気力が失せていきました。 このアピチャッポン・ウィーラセタクンという監督の作品は、とにかくラストが緩みすぎで苦手です。 前半はバンコク・ホモ・ストーリーで気分がダウン、中盤ではタイ式ホウ・シャオシェン作品の様な味わいでとても良かったのですが、後半でタイ式プレデターみたいになり、再度ダウン。 そして、ラストの間延びした緩みすぎフェイド・アウトにノックアウトされました。 お疲れさまでした・・・ [映画館(字幕)] 6点(2008-07-03 20:34:29) |
90. 殿方ご免遊ばせ
フランス映画のことを「理屈っぽい」とか「難しい」とか言う人がいるが、たぶんそういう風にいう人はフランス映画をあまり観ていない人だ。 本作を観れば、そんなフランス映画に対するイメージは間違っていることに気付くはず。 本作は、とてもスピーディで、明朗で、バカっぽくて、楽しくて、単純だ。 主演のBBことブリジット・バルドーは、やっぱり可愛い! キュートという言葉がまさにぴったりである。 そこにきて、完璧なスタイル。 腕も脚も細くて綺麗なのに、何故だか胸が大きい。 そして色白金髪。 BBを目当てで鑑賞したのだが、十分に満足できた。 ただし、この頃のBBは少し子供っぽすぎるかなぁ。 ゴダールの『軽蔑』辺りの頃の方が、色気とキュートさのバランスがとれているような感じがする。 [ビデオ(字幕)] 7点(2008-07-02 22:07:38) |
91. どん底(1936)
《ネタバレ》 本作で根底に流れているテーマは「愛の力」。 愛さえあれば、人はどんな“どん底”からでも這い上がれる。 そんな前向きで楽観的なメッセージが伝わってくる作品です。 その反面、アル中である人間が更生を夢みて前に進もうとするが、ちょっとした一言でその夢は儚くもくずれ、その後首をつってしまうという、「人生、一寸先は闇」といったシリアスな面も描いています。 また、「友情」「仲間意識」「嫉妬」「愛と金と権力」など、様々な人生に関するテーマがてんこ盛りで、人生勉強すらできてしまうという内容。 ジャン・ルノワールに対し、私はブルジョアというイメージを持っていました。 しかし、そんなルノワールが、こういった社会の底辺にいる様な市井の人々の暮らしや気持ちを、ここまで詳細に描けるなんて、とても驚きました。 ルノワールという監督は、何て幅が広いんでしょうか。 本当に驚きです。 この人間的な幅の広さこそが、ルノワールをして、巨匠と呼ばれている所以なんじゃないでしょうか。 [ビデオ(字幕)] 7点(2008-05-14 22:39:22) |
92. 冬冬(トントン)の夏休み
《ネタバレ》 うーん、この頃のホウ・シャオシェン監督作品は良いものが多かったので期待して観たのですが、期待はずれ。 なんでかと思案したところ、ホウ監督作品に彩りを加えている印象的なBGMが本作にはない。 かろうじてラストで「赤とんぼ」が流れるも、時すでに遅し。 全体的に退屈な作品になってしまっています。 台湾の田舎を舞台に、子供の視点で綴られるドラマ。 台湾の気候と穏やかな雰囲気が良く伝わっているのは良かったのですが、なんか中途半端で残念です。 それにしても、胃の手術後で、その痛みに「アアアアアー」と叫びをあげるお兄さん。 あの声には笑いました。 [ビデオ(字幕)] 5点(2008-04-27 21:04:18) |
93. 隣りの八重ちゃん
期待が大きすぎたせいか、そこまで特別なものは感じなかった。 ただし、八重ちゃんの可愛らしい嫉妬、好きな男と一緒にいる時のはしゃぎ様、とても純粋な振る舞いで、観ていて心が和んだ。 心の安らぎを得ることのできる良作だ。 それにしても助監督に豊田四郎と吉村公三郎、撮影助手に木下惠介という布陣は凄いなぁ。 [ビデオ(邦画)] 6点(2008-04-21 22:46:34) |
94. 特急にっぽん
川島雄三監督の作品は、観ていると何だか幸せな気分になれる。 心が落ち着くのだ。 ドタバタした喜劇でさえも、心が落ち着く。 これはとても不思議だ。 本作は青観さんもおっしゃる様に、特別に秀でた川島作品だとは思わない。 しかし、心が和み、居心地の良い作品である。 愛すべき作品なのだ。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2008-04-01 22:33:20)(良:1票) |
95. トリュフォーの思春期
《ネタバレ》 子供が好きでないので、前半はイライラしながら観ていた。 ところが、終盤から何故かイライラしなくなった。 トリュフォーの演出が素晴らしいせいだろう。 斬新な色使いも印象的な良作である。 本作でも、トリュフォーの脚フェチが全開! 脚、脚、脚のオンパレード。 あと、妙に腹が出ている子供がいて驚いた。 なんだ?あの体型は。 最後のキスシーン。 良いシーンだなぁ。 女のコがかわいいし、男の子も良いキャラしている。 グレゴリー坊やがマンションの10階から落ちるシーン。 いかにも人形ってのがバレバレで興ざめだが、面白いシーンだ。 グレゴリー坊や、タダモンじゃない。 でも10階から落ちたら、普通、赤ちゃんでも死ぬでしょうに。 年下の男が、年上の女性に恋をするシーンは『夜霧の恋人たち』と共通。 トリュフォーの好みの設定なんだろうな。 [ビデオ(字幕)] 7点(2008-02-16 22:05:15) |
96. 戸田家の兄妹
《ネタバレ》 前半は面白くなかったが、しり上がりに良くなった。 特に、ラスト付近の佐分利信が軽薄な兄妹たちを豪快に追っ払うシーン。 そして、熱心に母や妹を説得し、中国の天津に希望を持って誘うシーン。 これらのシーンはとても良かった。 でもこういう家族内のいざこざや女性同士の問答を内容とする作品であれば、成瀬巳喜男監督なら、もっと上手く撮ったのではないか。 小津監督は、カラっとしたコメディタッチなものを撮らせると最高に上手い監督だし。 成瀬監督は沢山の作品を撮っているから、本作の様なテーマと似た作品を既に撮っているかもしれないけど、本作の成瀬バージョンを観てみたい気がする。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-02-05 00:35:14) |
97. 独立少年合唱団
大林宣彦監督の『青春デンデケデケデケ』を好きな人なら楽しめるはず。 私は苦手なジャンルの作品だ。 [ビデオ(邦画)] 5点(2008-01-13 23:35:22) |
98. 東京の宿
まあ、内容としては小津サイレントの中でも平凡なレベルでしたね。 しかし、本作が小津最後のサイレント作品とは! つまり、これで視聴可能な小津サイレント作品のほとんどを観たというわけです。(まだ数本、未見のものがありますが) これには感慨無量です。 [ビデオ(邦画)] 6点(2008-01-12 17:23:42) |
99. 東京の女
やはりカットされていたんですね・・・どうも話が短絡的すぎるというか、しっくりこない感じがありましたから。 違和感がある部分をあげればきりがないですが、検閲によるカットがなされた後の作品としてみれば、まあ仕方ないんでしょうね。 [ビデオ(邦画)] 4点(2007-12-26 22:25:25) |
100. とんかつ大将
《ネタバレ》 川島雄三の作品を傑作とそれ以外の二つに分けるとすれば、本作は間違いなく傑作の部類に入ると思われる。 まず『とんかつ大将』というタイトルからして秀逸。 そして主演の佐野周二。 彼は元々好きな俳優だが、本作では特にいい味を出していた。 そして菊江役の角梨枝子。 私なら彼女を間違いなく選ぶであろう、色っぽさ。 木暮実千代にも似た色気を漂わせる女優だ。 ただし、本作にも難点はアリ。 まず、話が色んなところに拡散し過ぎ。 その為、全てを丸く収めてしまうラストは、かなり都合良すぎの感が否めなかった。 でも、本作全体の出来としては相当なレベルなので、まあいいのではないだろうか。 そう思えてしまうほど、味の出たいい作品だった。 [ビデオ(邦画)] 8点(2007-12-23 23:43:12)(良:1票) |