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ボビーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1016
性別 男性
ホームページ http://blog.livedoor.jp/gepper26/
年齢 37歳
自己紹介 いつまでもこどもでいたいから映画は感情で観る。その一方で、もうこどもではいられないから観終わったら映画を考える。その二分化された人間らしさがちゃんと伝わってくる映画が好き。

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201.  さくらん 《ネタバレ》 
個人的には登場人物の誰にも感情移入できない作品だった。おいらんを頑なに拒んでいた主人公がいつの間にかおいらんになっていたし。よくわからない。ついていけない。設定はわかったし、主人公の性格も分かりやすかった。けど感情移入ができなかった。映像も綺麗。でもしつこい。あんまり同じようなものばかり見せられても、面白くない。金魚も、演出の一つとして巧いと感じたのですが、台詞でそれを説明してしまったらまったく意味がない。心に残らない。右から左で鬱陶しいだけ。蛇足です。そんな演出が多かった。あざとい、説明しすぎ。こっちに考えるという選択肢を与えない。全部答えを言っちゃってる。ここまでされるともう退屈です。映画の7割は観客に考えさせるというのが基本中の基本なのに、それを無視してテレビドラマのように説明する。テレビだった成功していたかもしれませんが、個人的には好きになれない作品です。
[映画館(邦画)] 6点(2007-04-15 11:40:41)
202.  チルソクの夏 《ネタバレ》 
あの時代にぼくは生まれていない。だから、どういう生活があり、どういう社会背景があったのかさっぱり知らない。そのおかげで、別に突然歌いだそうが、驚くほど元気一杯だろうと気にならなかった。 ぼくが観ていてもっとも心引かれたのは、彼女と韓国人の青年との間にある壁だった。身分の違いを無視して愛し合ったロミオとジュリエットを比喩して、二人が住む世界が違うというのを壁にしていたのは巧い演出だと思った。観ていても少しも臭くないのは、やはり映画全てがそういう演出方法で構成されているからだった。 さらに主人公の少女は走り高跳びという競技をしていたが、これもまた比喩がされており、彼女は越えるべきバーに挑み続けている。無理だと思わないその精神が、ストーリーの中にも巧く描かれていた。 韓国人の青年に対しての思いを迷った瞬間に、全てが一緒に無理だと思い始める。何のために今までやってきたのかわからなくなる。誰しも感じれる心。非常にスタンダードな恋愛映画ではあるけれど、この作品の壁の置き方は素晴らしい。 ただラスト、現代に戻ったところで「あの頃は良い思い出」というような締めくくりになっている。それは少々唐突ではないだろうか。せっかく本編で少女、あるいは青年に感情移入していた心はどう持っていったらいいのだろう。何十年という月日が流れ、心も身体も大人になった、それはわかるけど、でもぼくはそこまでは着いていけなかった。
[DVD(邦画)] 7点(2007-04-15 11:14:52)
203.  青いうた~のど自慢 青春編~
まさにこれは田舎に住む若者(僕もそう!)の理想と現実を描いた作品。東京にいけば何かが変わる、大きくなれる、金持ちになれる、そういった田舎に住む若者ならば誰もが思う理想が、現実の厳しさの前で脆くも崩れていくというストーリー。だが、そこには郷愁に駆られる若者の清き心も描かれている。逃げ帰ったわけではない。もっと早く分かっていたが、逃げになると思っていたのか、あるいはプライドが邪魔していたのか、青年は帰らなかった。あるいは帰れなかったのか。あまりにも現実的で切ない物語ではあるけれど、同時に爽やかな清々しい作品でもある。若いゆえに出来るあの行動力、躊躇いもなく好きだと言えるその純粋さ。うむ、素敵な作品だ。全ての登場人物の、痛みと喜びをわが身のことのように感じることができる素晴らしい作品でした。
[DVD(邦画)] 8点(2007-03-12 02:15:58)
204.  初恋(2006)
みなさんがご指摘の通り、登場人物の映写がまったくされていない。誰が誰で、どの人がどの人なのかまるでわからない。照明が暗いせいもあるのか、顔すらわからない。完全に人物映写の時点で失敗している作品だった。主人公二人にもびっくりするぐらい魅力がなく、薄っぺらい。宮崎あおい演じる少女の親はなぜいない。どうしていなくなった。なぜ他人の家にいるのか。そのへんがまったくわからない。もしかすると説明があったのかもしれないが、まったく印象に残っていないから説明していないのと同じ。でもって主人公の青年も酷い。何を思っているのかもわからない。無免許で運転が出来るのと、女であることが選んだ理由。おいおい、好きになった女を逮捕されてしまうかもしれない犯罪につき合わすのか?そんな事ができたくせに彼女に会いにいかない。彼女が捕まることを恐れてか?設定の時点で絶対この人、馬鹿だろう。絶対頭よくないだろう。人物映写ができていない事で、感情の部分でも辻褄があっておらず、腑に落ちないことが山ほど発生していた。ストーリーがつまらないならまだ許せるけど、人物映写ができていないってそれって、脚本のプロとして基礎中の基礎ができていないことになるのではないのか?だからもう、シーン一つ一つがバラバラ。感情のつながりを感じない。感情の変化も存在していないように見える。車内で「生理か?」「…最低」という掛け合いの後での演技はアドリブだろうか。あそこで変化が見えたような気がしたが次に繋がっていない。もし、あれをアドリブでやらせていたのだとしたら、あれは完全に監督のミスだ。あれはNGにすべきだ。もう、否定はまだまだ山ほど出てきそうだ。これ以上やったら機嫌が悪くなりそうだからもう辞める。得点の全ては宮崎あおいさんのコスプレに。まぁ、とにかく、“つまらない”以前の問題が多すぎる作品だった。
[DVD(邦画)] 4点(2007-03-12 02:01:24)
205.  いつか読書する日 《ネタバレ》 
冒頭の数シーンで田中裕子さん演じる中年女性のそれまでの人生を垣間見ることができます。毎朝行っている牛乳配達。朝の長崎の坂道を、青白い光が優しく染める。どんビキの画の中には静けさがあり、その中で僅かに聞こえる牛乳瓶のぶつかり合う音。それは町中に響く。毎朝、毎朝。田中裕子さんは、その中に完全に染まっていた。めだち過ぎず、それでいて埋もれていない。この演技。これぞ演技だと実感する。気合を入れて上る長い坂道、玄関の前で座って待っているおじいちゃんに渡す牛乳瓶、それを急かす訳でもなく呼吸を整え飲み終わるまで待つ、そこには慣れを感じる。歳を感じるのにも関わらず、老夫婦の家に来ると子どもに見える。そこには昔からの積み重ねを感じる。そして躊躇するかのような表情を見せる一軒。10分かそこらで、町にとっての彼女の存在位置を理解することができる。話が進むに連れて、彼女がなぜあそこまで辛い仕事をするのかが理解できていく。彼女の台詞にもあったように、考える暇がないほど働き、疲れた状態で一日の終わりに読書をする。それが彼女の幸せだと。しかしその一方で、その全てが“愛”を意識しない為に行われている行動だという事にも気付く。そして、彼女は意識してしまう。考えてしまう。ミスをしてしまう。そんな彼女の変化、動揺、葛藤がヒシヒシと伝わってくる。生きていること、その中で人は誰かを愛さずにはいられない。彼女もまた、愛に溺れた。象徴的な展開だった。燃えるように愛し、そして燃え尽きた。が、しかし、彼女の中にからつっかえは消えた。意識しなくてもいい日々が訪れた。と同時に悲しみを背負った。だけど、そんな表情一つも見せない。それが彼女の強さであり、美しさだった。愛する人がいなくなった家に届け続ける牛乳瓶。そこに彼女の消えていない愛を感じる。
[DVD(邦画)] 9点(2007-03-12 01:39:10)(良:2票)
206.  松ヶ根乱射事件 《ネタバレ》 
やっぱり素晴らしいです。山下監督。ふつうの演技をしてしまうであろう役者さんたちを、一体どういった方法であのように自然にしてしまうのだろう。まるで演技をしていないかのような演技。沈黙や台詞の掛け合いの一瞬の間にうまれるあの微妙な空気は、凄すぎます。ふつうの監督とはまったく違う観点。映画ならば次こうなるだろう、という僕らの予想、当たり前だと思う感情をことごとく裏切ってくれます。現在の日本で、独特の世界観をここまで強く持っておられる監督は山下監督とあと数えるほどしかおられないと思います。乱射事件というタイトルから完全にこっちは勝手に考えを膨らませ思い込む。そこがきっと山下監督の狙いなのでしょう。凄いです。あの裏切られた感。嬉しくて仕方ありません。あと、新井さん。あの人は作品が変われば人が変わりますね。それが演技なのですが、それが出来ない役者さん、あるいはそれを求めていないプロデューサーが多すぎます。この作品は新井さん以外の若手の役者さんには絶対できないと思いました。二枚目ではないけど、不細工でもない。地味ではないけど派手でもない。中途半端ではなく、完全なオリジナル。素晴らしいです。この作品もまた、中途半端でも平凡でもなく、とにかくオリジナル。異常なまでのリアルの積み重ねで出来上がったリアルの結晶。これぞダメ人間の作品。バカで、中途半端で、なんだそれって行動ばかり取る。あぁ、人間を見たな、とつくづく思う作品。
[映画館(邦画)] 8点(2007-03-12 00:47:01)(良:2票)
207.  バブルへGO!! タイムマシンはドラム式 《ネタバレ》 
バブルの時代を知らないので、まるで非現実な世界に見えました。バブルの崩壊は多分、悲劇だったでしょう。20年経って、やっとその悲劇を遠い記憶のものに出来、その結果この作品が生まれたのではないでしょうか。現在の辛い部分と、過去の華やか部分をしっかり対比させる事で、いかに昔が夢のようで、意味馬鹿げた時代だったかが客観的に描かれていて面白かった。広末という存在を通して、バブルを否定したり、バブルはすごいんだぞとアピールしたり、その矛盾した監督の思考も理解できた。だから、その今と昔の対比は個人的には好きでした。でも、ラストで未来。しかも中途半端に描いた未来を見せられて、それが初めはただの違和感で済んだのですが、それが違和感ではなく徐々に実感として頭の中で形になった瞬間。監督の「やりたいことやった」以上の「やりすぎた」部分が見えてきて、全てに興醒めしてしまいました。
[映画館(邦画)] 6点(2007-03-01 02:58:32)
208.  天国は待ってくれる(2007) 《ネタバレ》 
個人的には、ベタなのは問題ないと思うのですが、ここまで全てが予定調和だと観ている方は面白くありません。映画の6割は観客の想像に任せるのがふつうですが、この作品では僕ら側が想像する箇所があまりにも少なすぎます。幼少時代の女の子の演技が非常にわかりやすいので「あぁ、この子はこの少年が好きなんだな」とすぐにわかり、大人の状態では「あぁ、この子はまだこっちの男が好きなんだ」などと想像する点はいくつかありますが、それはまぁ、理解して当たり前のような部分なので微妙です。映画の面白いところは見る側の思い込みだとかをひっくり返してくれるような展開だとか、深い感情移入ですが、この作品にはのめり込むようなポイントがなかった。友達想いなのもわかる、人を好きなる気持ちもわかる。でも、だから何?何が言いたいんだ?この作品のストーリーならテーマやメッセージがあるはずだろう。でも、この作品にはそれが薄い。薄すぎる。友情のレベルも、ふつう、家族が息子を思う気持ちもふつう。それくらいするだろうな、というレベル。地上波のレベルではないだろうか、この作品の脚本。決してつまらないわけではないが、全てがあまりにもふつうすぎて、退屈だった。
[映画館(邦画)] 6点(2007-03-01 02:40:25)
209.  僕は妹に恋をする 《ネタバレ》 
二人が始めて感情を表に出すシーンは、完全なるワンシーンワンカット。撮影、照明の凄さを感じます。また、あのシーンではワンカットであるがゆえに“間”が素晴らしい。流行の無駄なカッティングがない分、そこにある二人の感情が画からヒシヒシと伝わってきます。それはそこに音楽がないからであり、あるのは時を刻む時計の小さな音と、二人の息遣い。ワンカットで撮るからこそ産まれる静けさの素晴らしさ。二人の感情が緊張感となって痛いほど伝わってきました。音楽が極めて少ないけれど、随所で感情の大きなゆれが表現される時に使われている。これもまた凄い。“間”と“静”が生み出す感情の流れを監督は完璧に描いていた。監督のおかげで僕は二人にしっかりと感情移入することが出来、二人が胸に抱える喜びと悲しみをしっかりと感じることが出来た。しかし、それらは今の現代では受け入れられないかもしれない。昔は当たり前だった長回しも、今ではほとんど観られることはなくなった。地上波のドラマでは意味のないところでカットがコロコロと割られ、まるでインタビューの時間削減をしているかのようにぽんぽんと変わる。そんな時代に“間”は受け入れられられないかもしれない。でも、そんな時代に真っ向から映画の本質をぶつけるが如く、信念を貫く安藤尋監督を僕は心から尊敬し誇りに思う。時代に流されない日本映画の持つ力強さをこの先も貫き続けて欲しい。期待と感謝を踏まえて満点に限りなく近い9点を点けさせていただきます。
[映画館(邦画)] 9点(2007-02-06 22:55:32)
210.  山椒大夫
あまりにも深い絶望。苦しくて、どうしようもなく、それなのになぜ死に行く安寿はあれほどまでに美しく描かれているのだろう。水面が揺れ、吸い込まれていく肉体が絶望さえも吸い込んでいくように、美しく見える。溝口監督の作品には必ず、どこかに小さく、本当に目を凝らし、心を完全に広げていなければ見えてこないような儚い希望の光が見えるような気がする。繊細で尊い命という名の光。それを我々に教え、伝えてくれる。心が震えた。
[ビデオ(邦画)] 9点(2007-02-04 15:31:46)(良:1票)
211.  キートンの大列車追跡
なんでこんなに凄いんだ。涙が出そうだ。寂しそうなキートンの真っ白な顔、車輪と車輪を繋ぐ棒の上にチョコンと座り、そんな表情を浮かべて、なぜあんなにアクロバティックな演出をするんだ。まるで自分の意思とは無関係に流されていく彼の寂しい心を象徴的に描いているようだった。全てに全力を尽くし、観る者に笑顔を与え、驚きを与え、そして感動を与える。なぜだ、なぜ今の映画にはこの全力さがないのだ。泥臭く、かっこ悪くてもそれでも全力で何かを表現しようとする人間がなぜいないんだ。半世紀以上も昔の映画でできた事が今の映画にはなぜないのだ。悔しさと、喜びが胸のうちで叫んでいる。キートン、最高!きっと百年後にも、千年後にも誰かがこう言う。キートン、最高!キートンは今はいなくとも、キートンの残したものはいつまでもこの世界で、銀幕の中で、人々の瞳の奥で輝き続ける。
[ビデオ(字幕)] 9点(2007-02-04 03:13:59)(良:2票)
212.  好きだ、
17年前は言えなかった事も、今は笑って話せる。あの頃は勇気を振り絞ってやれた事が、今ではあっさり出来てしまう。何が変わってしまい、何を忘れてしまったのか、その一つ一つをゆっくりと思い出し、また未来へつなげようとする男と女の話。そこにある後悔の念や、忘れられない想い、その全てが共感でき、二人の心の奥にある繊細な変化を読み取る事ができた。台詞が少なく、それでも“間”の中にあるちょっとした視線の動きや息遣いに乗せて感情の変化を届けてくれる。心地よい静けさが素晴らしい作品だった。何度も観返したくなった。
[DVD(邦画)] 8点(2007-02-03 00:27:45)
213.  リアリズムの宿
山下監督の作品の中に短編で『子宮で映画を撮る女』という作品があり、それはドキュメンタリーだと思っていました。自己中心的な女の映画監督とスタッフの間で本気の喧嘩が起きています。しかも、それが妙に笑えました。が、しかし、観終わった後、監督が「これフェイクです」と仰った。ようするに全部が嘘、脚本通りだったそうです。山下監督の中のリアリズムとは、限りなく現実に近く、それでいて現実とは遠い存在の人間たちを描いておられます。なぜこんなにも口調が自然で、その動きの一つ一つにリアリティーがあるのだろう。この作品でも、登場人物にちょいちょいおかしな人間が出てくるものの、その一人一人の何気ない動作や口調などは、身近にいてもまるでおかしくないほどの親近感を持っています。山下監督の作品はどれも一様に同じリズムと同じ演出方法で作られ、僕はその全てに魅力を感じずにはいられません。この独特の世界観とリアリティー。孤高の天才!素晴らしい。
[DVD(邦画)] 8点(2007-02-03 00:11:00)
214.  幸福な食卓 《ネタバレ》 
この作品を観終わってから、じっくりと時間を掛けてこの作品が何を伝えたかったのか考えてみた。自分なりにではあるけれど、うっすらと見えてきたものが一つあった。それは、“家族の再生”、あるいは、“人生の再出発”ではないでしょうか。中原家の少し異質で感情の欠落したようなファーストシーンからそれらは始まっていたように思います。遺書まで残し、家族を捨ててまでこの世を去ろうとした父は「父さん、父さんを辞めようと思うんだ」なんていいだし、それに対してお兄ちゃんは「あらまぁ」で軽く流すような発言をしている。これがふつうな筈がない。正しい家族のあり方や間違いのない人間になる為に、それぞれがそれぞれのやり方で修正しようとするけれど、それは簡単な事ではなかった。過去を忘れようとしても、忘れられるものではない。でも、振り返ってばかりいては前に進めない。さまざまな苦しみを受け入れて進まなければならない。しかし、中原家の中で、彼女以外のみんながそれから逃げていた。ラストシーン、主演の北乃きいさんが、土手の道を歩く長いシーンがある。僕の記憶にはなぜかあのシーンばかりが鮮明に残っている。この作品の中で中原家だけでなく、多くの登場人物が悩み、苦しんでいるその葛藤があのワンシーンに集約されていると感じた。何度も後ろを振り返り、何かにすがるような目をする。そこには彼女の心の内にある忘れらない想いと忘れたくない想いがあるのがわかった。そして、一つのカットを挟んだ後、彼女はもう後ろを振り返ることなく、前だけを見て歩いていた。彼女の中でどういう心境が働き、変化したのか、その全てを理解することは僕にはできなかった。ただ誰かに支えられ、また時には支え、そして彼女は向かったように思います。彼女をいつも見守っていてくれる家族の待つ食卓へ。 すばらしいラストシーンだったと思います。
[映画館(邦画)] 9点(2007-01-31 13:02:35)(良:1票)
215.  ただ、君を愛してる 《ネタバレ》 
写真展のシーンは本当に素晴らしいシーンでした。平凡で、ありふれた、当たり前の日常から切り取られた白と黒の写真。それは、静流と誠人の平凡な日々のほんの一瞬の出来事で、誠人はその平凡な日々がいつまでも続くと思っていた。いつまでも変わらずそこにあり続けるものだと、そう思い込んでいた。でも、当たり前は、いつだって不意に終わりを告げるもの。何の前触れもなく訪れた別れに、人は、その当たりまえの日々がいかに幸せで、いかに喜びに満ちていたかをようやく気付く。いつまでもそばにあり続けると思っていた温もりや香りが突然消えてなくなる、それは愛情とはまったく別離の感情ではあるけれど、喪失は必ず誰にでもやってくる。それなのに僕らはそれを忘れ、当たり前の喜びを見失いがち。それがどれだけ儚く、尊いものか忘れてしまう。どんな大きな出来事よりも、日々繰り返される平凡な営みこそが幸せだということに気付けないのだ。いつまでもそばにいると信じ切っていたせいで、言わなかった事や行かなかった場所。もっと笑っていればよかった。もっと彼女に触れていればよかった。もっと早く気付けばよかった。そんな誠人のどうしようもない悔しさや切ない感情が画面から痛いほど伝わってくる。それでも静流が悲しんでいないのは、きっと誠人に出会い、愛することの幸せと喜びを知ったからだと思う。誠人に振り向いてもらえるよう大人の女性になろうとするその純粋な片思いの心も、とても素敵だった。そして最後の静流の写真。それは、美しくなった彼女の姿だった。初めに誠人が出会ったときとはまるで別人のようだった。さらに、池の畔でのキスの写真は本当に素敵だ。「生涯ただ一度のキス、ただ一度の恋」というタイトルのその写真は、彼女の想いが溢れるほど込められていたように思う。人生の全てをその瞬間に注ぎ込んだような写真だった。だからとても幸せそうで、美しく見えるのだろう。そして誠人もその瞬間、静流を愛していた。想いが重なった唯一の写真。その写真の中での二人の想いは強く結ばれていた。だから僕の涙は止まらなかった。人を愛することの素晴らしさを教えてくれる素晴らしい作品。
[映画館(邦画)] 9点(2007-01-28 00:45:13)(良:1票)
216.  ゆれる 《ネタバレ》 
主人公の目線で物語が始まり、二人が画面の中に収まった時点から確実に揺れ始めていた。兄との違いに揺れ、それは嫉妬であり、劣等感であり、優越感だった。兄の背中を見て育った弟は、兄の幸せを望み、兄が掴もうとしていた幸せを奪い取り、兄を庇い、そして兄を陥れようとした。全ては兄への嫉妬から生まれた物。自分に無いものを全て持っている兄に対し抱いていた劣等感。優しさなどはそこには存在しない。兄の幸せを願ったのは、自分はすでに幸せであるという遠まわしな嫌味であり、兄を庇おうとしたのは、自分が始めて優位に立てる状況を作ろうとしたからだった。全ての原因は捻じ曲がった弟の心がもたらした。そんな目には見えていない危うい心が、しっかり雰囲気となって、まさにゆれている橋の上にいるような恐怖や緊張感を僕に感じさせてくれた。この映画は素晴らしい。
[映画館(邦画)] 9点(2007-01-21 07:47:20)(良:1票)
217.  それでもボクはやってない
この作品を観終わった後、電車に揺られて家に帰った。その間ずっと、痴漢に間違えられないように怯えながら帰った。この作品の中にあるもの全てがあまりにも距離が近い。いつ、どんな形で同じ目に合うかわからない。ぼくはこの映画を観終わった後、どうしようもなくイライラした。それはこの作品が悪いわけではない。この日本の現状に腹が立ってしょうがなかった。日本の法律、それを取り巻く警察、検察、裁判官、その全てに腹が立ってしょうがない。裁くべき人間を裁かず、裁かれるはずのない人間が何を償えばいいのかもわからない状態で牢屋に押し込められ、時間を奪われる。そんな事、一分でも、いや一秒であってもあってはならない。この作品を通して監督が訴えたいことが心に染みた。もしかすると、満員電車が怖くて乗れなくなるかも…恐ろしい恐ろしい…
[映画館(邦画)] 7点(2007-01-20 18:35:05)
218.  手紙(2006) 《ネタバレ》 
現在の社会で、殺人事件があまりにも多発しすぎていて、当たり前のように日々報道されている気がします。それは数ヶ月経てば報道もされなくなり、忘れ去られていく出来事が多いとも思います。また、それらはいつだって他人事でしかなく、新聞やニュースなどの報道では伝わってくる物は表面上のものでしかないため、本質は何も訴えられていないように思います。それは確かに事実ではありますが、本質ではないような気がします。この作品は、本来目にする事ができない本質を訴えているような気がしました。人の命を奪うという事が、他に何を奪っていくのか、それらをしっかりと知ることが出来ました。人生を奪われ、人生の選択肢を奪われ、それは加害者も被害者もこの作品の中では同じでした。血の繋がっている家族も、血の繋がっていない赤の他人であっても、その事実がそこにあると言う事は、関わる周りの人々に大きな影響を与えていました。その真実をこの映画を観て、考え、そして学びました。知るという事は辛い事ではあるけれど、それをそれぞれの人々がそれぞれの考え方で乗り越える事に意味があるのだと思いました。この作品は、被害者ではなく、加害者側の家族の視点からそれらを観た事で今まで知らなかった事を知り、また気付かされる事も山ほどありました。ただ、この映画には多少、甘えがあったような気がします。どこまでも痛烈な差別が原作にはあったのに、この映画化では沢尻エリカの存在があまりにも大きいせいで、本当に描かれるべき部分が弱まっていたような気がします。最後に見せればいい筈の優しさが沢尻エリカが終始出続けていたせいで、優しさが当たり前のように作品にあったのは残念でした。
[映画館(邦画)] 7点(2007-01-07 18:51:25)
219.  鉄コン筋クリート
原作マンガは一度も目を通していませんが、非常に楽しむことが出来ました。独特な世界観を先端技術を駆使したアニメーションで見せてくれたこの作品は、映像がとても綺麗だった。疾走感や躍動感といったものを非常に感じ、子どもたちの姿もとても輝いて観えました。心に闇を持つクロと、純粋な心を持つシロ。名前からしてその存在の意味を感じますが、そのキャラクターも本当に両極端で上手かった。純粋な心を持つシロを守ろうとするクロの力は、実はシロの純粋な心が守っていた。汚れ無きシロは、全てを包み、全てを許す。それは子どもは神だという言葉を証明するような存在でした。そんなシロに守られていたからクロは闇に包まれる事はなく、生きることができていた。しかし、シロを守れないとわかった時から、クロは闇にその身を落としてしまった。シロも純粋すぎるが故に、人の苦しみを理解でき、耐えることが出来てなかった。二人は共に支えあい、共に補い合って生きていた。それは金パチ先生が言っていたように「人と人とが支えあって人になる」と。確かにその通りだと思った。金パチ先生すげぇ。
[映画館(邦画)] 8点(2006-12-25 11:20:41)
220.  カーズ
あまりピクサーを悪い風に言いたくはないのですが、この作品に限っては書かせていただきたいと思います。まず何より気になったのは、全てが車であること。車を修理する存在も車で、しかも虫でさえも車。何が言いたいかと言うと、全てを車にしてしまうとそこには人間を通した目線がない為、他のピクサー作品にあった人を通した温度がなかったと言うこと。現代の時代背景で、レーシングカーを主人公をするのはさほど問題はないのですが、そこに人間がいないのは問題だとおもう。今までにのピクサー作品は、身近に存在する玩具や魚、あるいは人間が作り出した架空のモンスターだとかヒーローだとか、そういった人間がいて始めて成立する存在が主人公になっていた。人間がいるということは、そこに共感があり、架空の主人公には憧れや夢の要素があった。それは昔のジブリにも言える事であって、それを見ることで、その二つの要素を楽しむことができ、また作品に奥行きが出ていた。それは当然子どもが観ても面白く、大人でも非常に楽しむ事が出来たと思う。がしかし、この作品は人間がいない事、また全てを車にしてしまった事で、両方の要素の力をかなり落としていると思う。またその二つが合わさる事で感じる感動がこの作品にはまったくと言っていいほどなかった。好奇心のアンテナにまるで引っかからず、ただの子ども向け作品で留まってしまっている。決してつまらないストーリーではないが、あまりにも単調なストーリーで始まった時点で結末が一つしかない。心の曲がった人間が改まっていい人になる。それは子どもに見せるにはいいが、映画をたくさん観ている大人にはわかりきっているストーリーで退屈ではないだろうか。僕は正直、好きになれない。ストーリーがではなく、こういう姿勢で作品を作ったピクサーの考えが、好きになれないのだ。もし、ピクサーを買収したあの会社がこの作品を作らせたのなら、僕はあの会社を心から憎む。
[映画館(字幕)] 6点(2006-12-25 10:38:03)(良:4票)
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