2201. グロリア(1980)
ギャングの裏金を横領した父。組織の制裁を恐れた母は親友のグロリアに息子ジャックを託します。殺される家族。ジャックの手には裏金の証拠となる手帳。2人の逃亡が始まります。グロリアにしてみれば、ジャックはただの厄介者。助けても何の得にもなりません。何故彼女は自分の命を危険に晒してまで子供を助けたのでしょうか。背負うものが無い人生。それはとても気が楽です。しかし同時に孤独と物足りなさがあります。彼女の中に、人を愛し、愛されたい、誰かの支えになりたいという気持ちが潜んでいたのではないでしょうか。それを「母性」と呼ぶのかもしれません。最初はお互いに接し方がわからず、喧嘩したり、別れたり、上手くいきません。しかし次第に芽生える絆。それが「家族」の始まりなのです。厚化粧のおばちゃんが素晴らしく格好よく、派手なシャツの子供が小生意気だが愛らしく感じます。派手なシーンはありませんが、全編見事にハードボイルド。エンディングと共に流れる音楽に言い表せない気持ちになる心に刻まれる作品です。 [DVD(字幕)] 9点(2006-05-09 17:52:29) |
2202. ゴシカ
サイコサスペンスとして、伏線の張り方などわりとよく出来ていると思うのですが、今一歩楽しめませんでした。この作品のオチ自体にケチを付けるつもりはありませんが、物語の真相部分のエピソードが胸糞悪いので、鑑賞後イヤな気分だけが残ります。アメリカ作品にこのようなエピソードが多いのは、それだけ深刻で日常的な問題ということでしょうか。 [DVD(字幕)] 4点(2006-05-08 17:51:12) |
2203. 未来世紀ブラジル
情報管理された近未来社会を描いていますが、社会風刺、コメディ、恋愛、精神世界の要素が混在しているジャンル不定の作品です。中でも独特なアナログ風テクノロジーと社会風刺の描写が先ず目につきます。物語前半はこの作品の楽しみ方が掴めず戸惑うかもしれませんが、終盤は怒涛のたたみかけに圧倒されます。エンディングは呆然と眺めるしかありませんでした。個人的に、社会風刺はあまり好きではないのですが、コメディの部分は文句なくはまりました。とくにデ・ニーロ出演部分や伝書人間のくだりは大好きです。全体を通じて手放しで面白いわけではありませんが、すぐにもう一度観たくなりました。ラストカットは紛うことなき名シーンです。万人受けはしないと思いますが、言い表せない魅力を持っている、リメイク不可能な異色作です。 [DVD(字幕)] 8点(2006-05-08 17:47:46) |
2204. モーターサイクル・ダイアリーズ
南米をバイク1台で旅する2人の若者を描いたロードムービーです。一応目的地はあるものの、旅そのものが目的となっており、旅の中で体験する様々な国、文化、価値観に触れる主人公の感情の揺れが主軸に描かれています。伝記ものですので、旅に起こるイベントやアクシデント等はさほど刺激的ではありませんが、それ故リアルに感じられました。各エピソードはかなり淡白に描かれており、観客がその後の成り行きを想像で補う必要がありますが、逆にその点がこの作品の味になっていると思います。ラストエピソードでは「何かを成す人とはどういう人か」を的確に表現しており、良いと感じました。キューバ革命もチェ・ゲバラも知らなくても十分楽しめます。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2006-05-07 01:59:23) |
2205. 紅の豚
宮崎駿監督が自らを描く場合、時々使う豚がそのまま主人公となった本作。何故豚を主人公にしたのでしょうか。見た目全然かっこよく無い豚。ところが作品中ではとてつもなくかっこよく見えます。あの声はほとんど反則技です。かっこよくない豚=さえない中年(監督自身も含めて)を、見た目だけで判断するな、人生長く生きてきたってことはそれだけでカッコイイんだと言いたかったのかもしれません。豚を主人公にするあたり実に宮崎監督らしいチョイスですし、豚の方が逆に照れくさく無く物語を進められるのもわかります。アニメである以上、子供受けという点も計算に入れなければならないことも判ります。それを承知で言いますが、普通の中年のおっさんを主人公にして勝負して欲しかったです。やっぱり豚キャラを主人公に据えるのはずるいと感じてしまいます。それでも、メッセージに押し付けがましさが無く清涼感の残る佳作だと思います。 [ビデオ(邦画)] 8点(2006-05-06 02:44:34) |
2206. マイノリティ・リポート
予言者による犯罪予測が可能となった未来。それは罪を犯す前の人間に罰を与える世界。自らが殺人を犯すとの予言がなされた警官である主人公。追う者から追われる者へ。果たして自分は罪を犯すのか?設定はかなり面白いです。未来のテクノロジーも良いです。ターゲットとなる場所と時間が特定されているため、緊迫感もあります。予言者役でサマンサ・モートンが出ているのは個人的にプラス要素でした。終盤の畳み掛けが弱いと感じましたが、軽い感覚で楽しめる面白い作品だと思います。 [DVD(字幕)] 6点(2006-05-05 21:54:38)(良:1票) |
2207. 十二人の怒れる男(1957)
もう20年近く前になるでしょうか。家の近くに初めてレンタルビデオ店が出来ました。そのとき初めて父が借りてきたビデオがこの作品でした。「これ面白いんだぞ。まあ観ろ。」めずらしく家族揃ってこの作品を観たのを覚えています。派手なアクションも笑いも涙もない、モノクロの作品がなんと面白いことか。ただのドラマだけでこれほどドキドキする感覚になったのはこの作品が初めてでした。お金をかけなくても面白い作品は出来るという見本のような作品です。自分も子供が年頃になったら、父と同じようにこの作品を教えてあげたいと思います。未見の方はぜひ観てくいただきたい、これぞ名作中の名作です。 [ビデオ(字幕)] 10点(2006-05-05 21:40:25)(良:1票) |
2208. ローマの休日
なぜ、この作品はこれほど多くの人から愛されているのでしょうか。理由のひとつは「オードリー」。彼女ほど透明感あふれる魅力的な女優はいないと思います。(日本人だと夏目雅子が近いイメージです。)彼女のおかげで、この実にシンプルなストーリーが輝いているのだと思います。もうひとつの理由は「思い入れ」。古い作品ですので初鑑賞から何年か経っている方も多いと思います。素晴らしい作品ほど、時間が経つにつれて、その感動は深まっていくような気がします。自分の場合は、父親がこの作品が大好きだったため、小さい時に初めて本作を見せられました。鑑賞後の切ない思いは色褪せることなく、心にいつまでも残っています。理屈では言い表せない、好きな作品です。 [DVD(字幕)] 10点(2006-05-05 17:14:07)(良:3票) |
2209. ラヂオの時間
メディア関係者が見た場合、「そんな奴いないだろ」というツッコミが入りそうなくらいベタな業界人がわんさと出てきます。そのため、観客はイメージし易く、すんなり物語の世界に入れると思います。ストーリーは、ラジオの特性を生かしたドタバタをお馴染みの三谷節で魅せます。自分はAMラジオが大好きで、今でも番組を録音して聴くくらいなので、ラジオ業界が取り上げられただけで嬉しかったです。あえて「ラヂオ」というタイトルを付けるあたりが、古き良き時代の主役だったメディアとしての郷愁を誘います。 [DVD(邦画)] 6点(2006-05-05 01:12:24) |
2210. セルラー
この作品、とても時間にこだわっています。短い上映時間はもちろんですが、次から次へと襲い来る難題は、すべてタイムリミット付です。さらに終盤には、ご丁寧にもセリフとして「あと20分で終わる」と観客に説明しています。とにかく展開が速く、テンポ良く、ストレスを感じず観ることが出来ます。ストーリー自体には結構無理があるものの、細かいことは気にせず楽しみましょう。警官役のウイリアム・H・メイシー、カッコイイです。ホームランではありませんが、2ベースヒットくらいの良作です。 [DVD(字幕)] 7点(2006-05-05 01:02:45)(良:3票) |
2211. ナイト・オブ・ザ・コメット
SFホラー作品でありながら、非常に淡々と物語は進みます。緊張感はほとんどありません。癒し系ホラーとでもいいましょうか。ある意味新しいジャンルなのかもしれません。一応「ゾンビ」ものですので、お好きな方は教養のひとつとしてご覧になるのもアリかなと思います。あと事態の終息の仕方が、かなりの力技ですので、最後に「ええ~??」と言いたい方にはお勧めします。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2006-05-04 01:41:47) |
2212. 日曜日が待ち遠しい!
殺人の容疑がかけられた男を救うため女が奔走し、そこに恋が芽生えるという、ラブコメサスペンスお決まりパターンの作品です。また、コメディの要素が強く、小粋な雰囲気が漂っているので、お好きな方にはお勧めできます。ただ、恋におちる男性役があまり魅力的でない点や恋愛に発展する過程に感情移入ができなかったため、個人的にはヒットとなりませんでした。というかこれ1982年の作品ですか? [CS・衛星(字幕)] 5点(2006-05-02 18:31:59) |
2213. 世界の中心で、愛をさけぶ
《ネタバレ》 率直な感想は「普通」。いわゆる難病ものなので、可哀相だなという気持ちにはなりますが、泣くほどではないなという印象です。ただ、この作品の長澤まさみは文句なく魅力的ですので、そちら目当てに観るのもアリかなと思います。(以下軽いネタバレを含みます)ちなみに代表的なシーン、空港での「助けてくださーい」については、周りの人間に助けを求めているというよりも、特定しない誰か(いわゆる神様)に対してこの運命から助けて欲しいという意味にとれましたので、「無断で病院を抜け出しておいて何をいまさら」という気持ちにはなりませんでした。 [映画館(邦画)] 5点(2006-05-02 18:24:23)(良:1票) |
2214. 真夜中の弥次さん喜多さん
《ネタバレ》 原作未読のうえでの感想です。この作品、最初はいい意味で単なる「おバカ」映画と思って観たのですが、まったく違いました。これから観ようとする方は、必ず最後まで作品をご覧になることをお勧めします。前半と後半ではまったく趣きが異なります。ただ、面白いかどうかは人によります。(以下ネタバレを含みます。あくまで私個人の捉え方ですので、的はずれかもしれません。)本作のテーマは「現実(リアル)」とは何か?です。喜多はドラッグにより、弥次は旅することにより、向き合いたくない「現実」から逃避しています。つまり物語で起こっているほとんどの事象は2人にとって「現実」ではないわけです。こう考えると時代設定無視の事柄も「現実でない」ことを端的にあらわしているといえます。弥次は向き合いたくない現実(妻殺し)と向き合うことで「現実」を取り戻す(死後の世界から生還という形態)一方、喜多は向き合いたくない現実(弥次殺し)から逃避することで、別の「現実」を得ようとします。こうしてみると「現実」とはいかに不確定なものかが分かります。実際、作品中のあるべき「現実」を取り戻した後も、弥次喜多2人はいるはずの無いピンクの像にまたがり、あるはずの無いバイクで疾走しています。「現実」か「現実」でないかは観客本人が決めること。あなたは「現実」を生きていますかと問われている気がします。考えすぎかな。もっと単純にわははと笑うのが正しい見方かもしれません。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2006-05-02 00:07:49)(良:1票) |
2215. クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険
自分も「オトナ帝国」「戦国大合戦」からクレしん映画に入りました。そのため本作には「本来あるべきクレしん映画」というものを見せてもらった気がします。構成自体はまさしくオトナ帝国のそれですが、こちらは純粋に子供が楽しめる作品だと思いました(大人ももちろん楽しめます)。ここぞという場面で思い切りギャグに走るあたりも非常に好感が持てました。あと、映画シリーズおなじみの芸能人ですが、本作の雛形あきこさんは違和感なく物語に溶け込んでおり(意味のある登場の仕方)、その点でも良かったと思います。清々しい気持ちになる作品はいいものです。 [ビデオ(邦画)] 8点(2006-04-30 18:05:06) |
2216. Mr.インクレディブル
「ディズニーアニメ=大人が子供に見せたいアニメ」という先入観があったため、本作も長らく未見でした(なんかウソくさいのが嫌なので)。ただ、他のディズニー作品とはちょっと様子が違うかなと思い観てみたのですが、これがむちゃくちゃ面白い!前半と後半の緩急の付け方といい、問答無用のスピード感、迫力あるアクションシーンといい、家族愛といい、不覚にもちょっと涙が出てしまいました。エンドクレジットも洗練されており、久々にDVD鑑賞でありながら最後まで観ました。日本語吹替え陣も良く、違和感はありません。極上のエンターテイメント作品だと思います。ただ、こういう作品に出てくる日本人(?)ってホント嫌な描かれ方をしていますね。それが残念です。 [DVD(吹替)] 8点(2006-04-30 04:17:55) |
2217. ロング・エンゲージメント
ストーリー自体は非常にオーソドックス。ただ、名前が覚え難いので途中経過がわかり難かったです。また、笑いを誘うような表現と人間の生臭い部分を表現するシーンが混在しており、全体として中途半端な印象を受けました。個人的には、R15指定を受けない程度の表現でも十分作品のねらいは果たせたのではないかと思います。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2006-04-30 03:39:00) |
2218. 28日後...
自分の中で突如始まった「ゾンビ映画フェスティバル」の一環としてこの作品を観ました。画がフィルムを使っていない?ため(デジカメみたい)、テレビドラマのような印象でしたが、04年リメイク「ドーン・オブ・ザ・デッド」と共に楽しめました。ただ本作はゾンビものというよりも「災害パニックもの」という気がしました。物語途中どうにも気分の悪くなる展開になりかけましたが…気の利いたエンディングは好みです。(他のエンディングパターンもあるそうですが、自分はこのエンディングでOKです。) [DVD(字幕)] 6点(2006-04-28 19:05:08) |
2219. グッバイガール
非常にベタに思えました。当たり前です。同じような和製TVドラマを今まで何度となく観てきたのだから。ですからストーリー自体に新鮮味はありません(こちらの方が先に創られているのですから、この表現は変ですね)。でも主演の2人と子役が上手いので、観ていて飽きることはありません。また、大事な場面で「雨」を効果的に使っているのも気に入りました。とくにエンディングはしびれます。惜しむらくはこの作品を今初めて観たことです。もっとまっさらな気持ちで観られたなら、もっと楽しめたと思います。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2006-04-28 00:44:33) |
2220. アイ・アム・デビッド
収容所からの脱出という設定は、名作「大脱走」をイメージしてしまいますが、本作はまったく趣きが異なります。憲兵の追跡や国境検問などはあるものの、かなり淡白に描かれており、それよりも収容所という特殊な環境で育った少年が、一般の社会や人々と触れ合うという側面の方が主軸に描かれています。少年が閉ざした心の鍵を開ける過程を描いていると言った方が正しいでしょうか。そのため、少年が目的を遂げるまでの試練もさほど多くなく、予定調和な感は否めません。ですが逆に安心して観られます。次から次へと苦難を乗り越えるほうが確かに面白いですが、このような静かなロードムービーも悪くないと感じました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2006-04-27 00:23:07) |