2461. ポゼッション(1981)
ポーランド人監督によるベルリンが舞台であろう1980年に製作された本作。尋常ならざる情念をぶつけ合う男女は、変革していこうとする国家の体制であるように感じました。私もアンナと保母さんが一人二役である事になかなか気づきませんでした。何時もの「恋に破れた果て」ではないアジャーニの完全に常軌を逸した様の凄まじさ。彼女の役者魂にただただ脱帽です。不明な点が多々ありましたので、また観てみたい作品です。 [ビデオ(字幕)] 7点(2007-01-24 22:40:24) |
2462. 暗黒街のふたり
4,5年前に一度観たきりです。ドロンが最期にギャバンと一瞬視線を交わすシーンが語る更生する事の厳しさ、罪に対する罰の非情さを嫌と言うほど思い知らされますが、まっとうに生きる事はもっと厳しい事ですので、本作の結末は致し方ありません。二度と観たいとは思いませんが、出会えて良かったと言える作品です。 [ビデオ(字幕)] 8点(2007-01-24 21:37:17)(良:1票) |
2463. 男と女II
20年の歳月を経て再会したアンヌとジャン・ルイ。演じるのは前作の2人なので、あの日のあの場所での回想シーンに時の流れを感じます。歳を重ねていくに伴い蓄積されるしがらみに拘束される者同士は、思慕の念と理性がせめぎ合い、正直な胸の内を素直に伝えられないものだと私は思います。ですので本作の2人には違和感がありました。 [DVD(字幕)] 6点(2007-01-24 21:20:49) |
2464. 名探偵コナン 時計じかけの摩天楼
《ネタバレ》 爆弾魔との対決でテンポ良く進む中盤とじっくりと見せる終盤、めりはりが利いていて観応えがありました。私は赤を切ってしまうと思っていましたので、蘭ちゃんの台詞には唸らされ、年甲斐もなくグッときてしまいました。クサくて大いに結構、大切な絆は切られてしまうのは止む無くとも自らが切ってはいけないのです。 [映画館(邦画)] 7点(2007-01-23 01:05:54) |
2465. カリートの道
危険だと分かりきった道を一瞬のためらいも見せず進んでいったカリート。何よりも義理を重んずるのがヤクザ社会、義理を通した報いを受けるのもヤクザ社会、夢の世界までの最後の一歩を踏めなかったのは自明の理なのでしょう。ホームでの一瞬の笑顔は結末がわかっているだけに切なさが際立つ、私のパチーノ名場面集の一つです。ホームを運ばれていく際の台詞は、パチーノの眼が語っていましたので個人的には不要でした。ドアチェーン越しに「かかってこい」とばかりに挑発したゲイル、特筆もののゲス振りを見せてくれたクラインフェルド、この二人もカリートと共に忘れじのキャラクターです。私の忘れじの作品です。 [DVD(字幕)] 9点(2007-01-22 23:44:24)(良:1票) |
2466. めぐり逢い(1957)
《ネタバレ》 前半のコミカルさたっぷりの浮世離れした恋のときめきと、後半の生活してゆく厳しさの中における愛情の深さ。対比が鮮やかです。彼に負担をかけたくないという一念は、愛する人に同情される事が彼女にとっての負担だったように思います。ラストの女々しさ漂う彼に対する、彼女の愛するが故に慰めを拒む姿は神々しいまでの美しさです。私の憧れの女性の一人です。安堵感で体の力が抜けてしまったエンディングでした。 [DVD(字幕)] 7点(2007-01-22 22:55:37) |
2467. ヒート
パチーノとデ・ニーロを十二分に堪能させてもらいました。名シーンに次ぐ名シーンの中でパチーノが娘を惨殺された母親を抱きしめる姿はパチーノ名場面集の一つです。弱者を慈しむ温かさと「罪を憎んで人も憎む」刑事としての信念の熱さにシビレました。対するデ・ニーロのストイックな仕事振りにもシビレました。この二人が雌雄を決したのは、背負った者を背負い続けようとした者と降ろしてしまった者の差なのだと思います。ラストのパチーノの姿は「罪を憎んで人を憎まず」思いだったのでしょう。もう、感電死状態です。 [DVD(字幕)] 9点(2007-01-21 20:53:05) |
2468. マルサの女
伊丹監督作品の中でこの作品が私にとって最高です。知恵と度胸の板倉亮子への憧れと、査察部の面々の一丸となっての仕事振りを観た時の羨ましさは、当時も今も変わりありません。受けて立つ権藤との攻防は手に汗握りました。この作品を作り上げた方々の一丸となっての仕事振りにも敬意を表します。 [映画館(邦画)] 10点(2007-01-20 23:08:24)(良:1票) |
2469. フェイク
情よりも重い掟、情よりも重い任務。組織の一員としての責任を果たす厳しさを互いに理解していた二人の姿に胸が痛みます。レフティが小引き出しに一つ一つ身に着けているものを置いて部屋を後にする姿はパチーノ名場面集の中でも1,2位を争うシーンです。己の不明さを悔いているのか、一花咲かせようと挑んだ事に悔いなき想いなのか、何時も考えさせられます。私がパチーノにのめり込むきっかけとなった記念すべき作品です。 [DVD(字幕)] 9点(2007-01-19 21:28:06)(良:1票) |
2470. 昭和残侠伝
昭和残侠伝シリーズは小学生の頃、テレビで父と一緒によく観ました。登場人物とストーリーの細部は忘れましたが「親にもらった大事な肌を・・・」の歌をバックに健さんが単身敵地に向う道すがら池部良と合流し並んで歩くシーンは歌詞共々覚えており、毎度毎度池部良のカッコよさにメロメロになったものです。何十年か振りかの鑑賞でしたが、前奏が流れただけで鳥肌が立ちました。本作ではお馴染みの二人以上に江原真二郎に魅了されました。優男が見せる滅びの美学に、不覚にも涙ぐみそうになってしまった私は、いい歳になってもシビアに物事を考えられない甘ちゃんなのだと感じました。 [DVD(邦画)] 7点(2007-01-18 18:35:22) |
2471. 冬の華
《ネタバレ》 初めて観ました。冒頭とラスト。歴史は繰り返されました。抗い切れなかった健さん、洋子と対峙しても素性を明かさなかった健さんにヤクザの筋の通し方、そんな生き方が美学とされるヤクザ社会の哀れさを見ました。感情を封印して無言で一突きする相手が身内なので、抗争相手の描かれ方がおざなりなのは致し方ないのかもしれませんが残念です。また、人となりや価値観の窺い知れない洋子の描かれ方も物足りないところでした。 [DVD(邦画)] 6点(2007-01-13 20:42:17) |
2472. 処刑人
兄弟と父(ですか?)と捜査官の抱く義憤がどれ程の悲しみと怒りから来るものかを描いていない中で、人殺しを神の名の下に於いて行う不遜さが不快です。小奇麗な兄弟ですが、品も知性も伺えなく何の魅力も感じません。悪乗りが過ぎる捜査官の怪演がなければ0点の作品です。 [DVD(字幕)] 2点(2006-12-19 00:36:53)(良:1票) |
2473. HELL ヘル(2003)
《ネタバレ》 心の支えを失い劣悪な環境の中で人間性を失った者が、己を取り戻し巨悪に挑む姿が闘いを通して描かれています。この筋立て悪くないのですが、各過程において踏み込みが浅く歯痒さの残る作品でした。具体的には、妻との絆、冷酷さの希薄な人間性の欠如ぶり、己を取り戻せた要因、451との絡み、下衆さばかりで卑劣さのない管理者達です。肝心のスパルカも単調で退屈でした。もっと残酷にしろとは言いませんが、攻めと守りとやられっぷりに工夫が欲しかったです。本作の収穫はラストで主役を食っていた451の存在です。鋭い観察眼と的確な状況判断、殺る時はためらいなく殺る姿が参考になりました。 [DVD(字幕)] 5点(2006-12-16 14:05:02) |
2474. ヘッドライト
若い時は悲しい恋に感じましたが、今は情けない恋に軽蔑の思いです。家族を幸せに出来ない男は彼女も幸せに出来ない事を知らしめてくれます。これは、男と女が本作とは逆の立場であったとしても言える事でしょう。 [ビデオ(字幕)] 6点(2006-12-16 09:23:18) |
2475. チャーリーズ・エンジェル フルスロットル
《ネタバレ》 初めて観ました。指輪を取り合うストーリーの骨子について語るのは野暮なのでしょう。三位一体での暴走振りは、CGの効果もありなかなか楽しいものでした。マックス・ケイティもどきのオグレイディにはクスリとさせられ遊び心も感じる作品です。ディラン対オグレイディはまずまずでしたが、メインがナタリー対マディソンであったのは興ざめでした。サシの対決でぶちのめされる屈強なボスキャラは男でなくてはいけませんね。 [DVD(字幕)] 5点(2006-12-15 22:17:26) |
2476. 西部戦線異状なし(1930)
冒頭の教室の模様に戦争のやり切れなさを見ました。このシーンがあるので、その後の丹念に且つ淡々と描かれた最前線の模様が、死は名誉と言う事が如何に空虚であるかを浮かび上がらせています。この教師や酒場で机上の空論を繰り広げる父親達の姿に、次代を担う子供達を誤った道に導かぬ為の教育(徳育、知育、体育)が国家の基本だと感じさせられました。一人でも多くの方に観て頂きたい作品です。 [DVD(字幕)] 9点(2006-12-14 19:20:47) |
2477. 自転車泥棒
《ネタバレ》 泥棒行為の背景にある、敗戦による庶民の疲弊した暮らしぶりの描写は当時のイタリアのありのままの姿なのでしょう。親子の自転車追跡の過程での世間の非情さもありのままの姿なのでしょうか。万策尽きた父は泥棒をしてしまいます。「逃げ切れ」と願いましたが、本作はそれを許しませんでした。唐突なエンディングで理不尽さに不愉快になりました。しかし、考えてみますと、監督は父の背に「悪条件に負けて自らが罪を犯してはいけない、苦しくても前向きに生きよ」と言っているのであり、その事を学んだ幼い息子の大きな財産にもなったのです。嫌な人物ばかりの中で、警察に突き出す事を堪忍してあげた武士の情けを知る者がいた事は救いでした。 [DVD(字幕)] 8点(2006-12-11 00:35:27) |
2478. 序の舞
女流画家とその母、二人の女性の生涯が描かれています。女性が当時の画壇で生きる厳しさを、過ちを重ね苦悶する姿が見せつけます。その苦悩が作品を生み出す糧となるところが芸術の奥深さなのでしょう。彼女を支えた、母の端然とした生き方に通ずる居住まい、佇まい、立ち居振る舞いの美しさ、芯の強さ、子供に対する慈愛の念に圧倒され通しで、母親の有り難味というものを痛感させられました。演じた岡田茉莉子は素晴らしいの一語です。予備知識がなく、タイトルの意味は鑑賞後に知りました。原作とモデルの上村松園画伯の作品に触れてみたいです。 [DVD(邦画)] 8点(2006-12-07 21:12:30)(良:1票) |
2479. 氷点
『汝の敵を愛せよ』は人を責めない事に通じる事で、その困難さと尊さを辻口一家から感じます。川べりの陽子の姿に「そんなに何回も飲んだらあかん、死んでしもたらあかんがな」という思いと、太陽の如き彼女の心を凍てつかせた、啓造の偽善者振りと「女は子宮で物を考える」という妄言も止む無しの夏江の浅はかさに、沸点の低い自分は腸が煮え繰り返りました。葛藤の末彼女を兄として愛した徹のためにも死なないで欲しいと祈り続けました。本作のテーマである『原罪』という考え方には納得出来ません。罪は犯した時に責任を取り背負うものであって、生まれた事が罪ではないと考えます。原作を読んでみることにします。 [DVD(邦画)] 7点(2006-11-28 01:22:02) |
2480. 散り行く花
《ネタバレ》 笑いが皆無の暮らし、笑い方を知らないのか、あのような方法で笑顔を作る姿に胸が詰まります。目を覆うばかりの薄倖の彼女が大輪の花を咲かせて輝きました。それはほんの一瞬の事で儚く散ってしまいましたが、散り際に笑顔をみせようとした姿に、人がこの世に生を受けた価値を感じるのです。『死んで花実が咲くものか』自ら若いつぼみを絶たないでいただきたい。花開く時は来るのです。 [DVD(字幕)] 8点(2006-11-13 20:44:02) |