2561. 花とアリス〈劇場版〉
岩井俊二監督、いつの間にこんなまともな作品を撮るようになったのか。 結構、ストレートな青春モノで驚いた。 岩井監督の十八番、ゲテモノ的な物や登場人物がほとんど登場しない。 そういう意味で新鮮味があった。 蒼井優のバレエシーンに固唾をのんだ。 美しい。 最後の脚を上げるシーンは、彼女本人か、それとも代役が演じたのか。 遠目でよく分からず。 それにしても、鈴木杏の魅力の無さ加減にはびっくり。 役柄のせいもあるが、あれはキツい。 主演の俳優も全く男としての魅力がなく、中心に据えるには無理があった。 蒼井優と言えば『フラガール』だが、あの感動のフラダンスの下敷きになったのが、もしや本作のバレエシーンなのでは?? だとすれば、岩井監督は先見の目がある。 本作には、そこかしこにユーモアが散りばめられている。 これが微妙な笑いを誘い、岩井監督のユーモアセンスの高さを伺わせる。 この絶妙なるさじ加減のユーモア演出に反応できないと、本作を楽しむのは難しいのではないだろうか。 単なる女のコが楽しむ映画と簡単には片付けられないクオリティを感じた。 岩井監督は元々そんなに好きな監督ではなかったが、本作でかなりイメージが良くなった。 おまけだが、広末涼子。 カッチリきめた彼女のスーツ姿が観られたのは嬉しかった。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2008-02-08 13:49:37) |
2562. 恋する惑星
私が生涯観てきた作品の中でもTOP5に入る、宝物の様な作品。 音楽も素晴らしいし、金城武やトニー・レオンも素晴らしい。 返還前の香港の夜を知っている人には、たまらない映像の数々。 実際に香港に行ったことがあるかどうかでも、見方はかなり変わるかも。 パイナップルの缶詰、トニー・レオンが女性を口説くシーンなど、その他どれをとっても記憶に残るシーンばかり。 これらにクリストファー・ドイルのカメラが一役かっていることは間違いない。 やはりドイルは天才だ。 本作でドイルのファンになり、今でも彼の撮る作品は追い続けている。 又、舞台となった「重慶(チョンキン)マンション」には実際に宿泊したことがあるので、その点においても感動が高まった。 本作くらいの作品を、またカーウァイに撮ってもらいたいなぁ。 [ビデオ(字幕)] 10点(2008-02-08 09:21:33)(良:1票) |
2563. 天使の卵(2006)
《ネタバレ》 本作に高得点はつけようがない、といったところか。 それだけ、作りが稚拙、ベタ。 小西真奈美、いや、こにたんを目当てで鑑賞したので、それでもそれなりに満足はできた。 こにたんが好きな人なら、ストーリーや演出には目をつぶって観ましょう。 きっと楽しめるはず? さて、更に言うと、セリフ回しがとにかく酷い。 学芸会に毛の生えたレベル。 ただし、唯一凄かったシーンがある。 それは、山を望む廃屋屋上での長回しシーン。 長い長い。 長ければいいってもんじゃないかもしれないけど、あれには感心した。 そして、沢尻エリカ。 本作では純真な妹を演じていて、非常に好印象。 とてもかわいい。 教師役におけるスーツ姿がグッド。 タイトスカートが眩しかった。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2008-02-08 08:49:05) |
2564. ゆれる
《ネタバレ》 西川美和監督、凄い実力です。 師匠の是枝裕和監督を既に抜いていますね。 しかしながら、純粋に脚本としてみるとシックリこない部分があります。 結局、事実としては「手を差し伸べたが落ちてしまった」だと思われますが(兄の手の傷から)、それに対し、法廷で最終的に「突き落とした」と偽証した弟を、あのバス停で笑顔で迎えるには、さすがに無理があります。 ただし、もしかしたら、兄は弟を心理的に揺さぶることによって、何かを弟に伝え、そして弟はそれをきっかけに兄を理解した。 その満足の結果として、あの笑顔がもれた。 そう考えることもできます。 ただ、これは前述した通り、7年もの刑期を負わされた兄が、そこまで弟を良心的に解釈するには無理があり、説得力を欠くと個人的に感じました。 しかし、ここまで観た後に、考えさせられる時点で、西川監督に見事に翻弄されているのです。 そういう意味で、脚本的には少々無理があるものの、西川監督の並々ならぬ実力に感服しました。 この女流監督の今後の活躍に目がはなせませんね。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2008-02-07 19:02:28)(良:1票) |
2565. ナイルの娘
映像センスと音楽センス、そして登場人物の服装や髪型が、おそろしく痛々しい作品であります。 例えるならば、一昔前の香港映画、もしくは1980年代辺りのイケてない日本映画に似た香りがしました。 ホウ監督の作品としては、並といったところでしょうか。 特別面白くはありませんが、この監督ならではの雰囲気は良く出ています。 ホウ監督の作品を楽しむためには相当な鍛錬が必要なようです。 少なくとも私はそうでした。 いくつものホウ監督の作品を観ているうちに、だんだんとこの監督の魅力が分かってきたような気がします。 というか、この監督の作品を観慣れていないと、退屈極まりないと感じる人も多いと思われます。 ホウ監督の撮る映像は、おそろしく自然です。 その為、何にも起らないという気分になってしまうかもしれません。 ところが、その優しい映像を通して、私達が日頃何気なく感じている「何か」をさり気なく訴えかけてきます。 ホウ監督は紛れもなく天才です。 こんな暖かみのある自然な映像を撮れる監督は世界中探してもそうはいません。 観れば観るほど、病みつきになる。 そういった魅力がホウ監督の作品には漂っているのです。 [ビデオ(字幕)] 5点(2008-02-07 09:12:18)(良:1票) |
2566. 地獄の黙示録 特別完全版
《ネタバレ》 これはベトナム戦争を客観的に描いた一大叙事詩的作品だ。 マーロン・ブランドがトップクレジットながら、ラスト付近にしか出てこないがおかしい。 面白くはないが、ベトナム戦争に興味がある方なら興味深く観ることができるに違いない。 それにしても、途中出てきたフランス人女性、とても美しく見えた。 やはり白人女性は、アメリカ人よりも欧州女性に限る。 そんなことに着眼して本作を観た人はいないかもしれないが。 全体的に冗長なだけに、そんなことにでも執着して観ない限り、3時間超なんて耐えられっこない。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2008-02-07 00:32:00) |
2567. ツィゴイネルワイゼン
第一に面白くない。 そしていかにもな映像センスが自分とは合わない。 更に、原田芳雄が苦手。 大楠道代も楠田枝里子の様で気持ちが悪い。 だけど、不思議と印象に残る作品だ。 この特別な印象こそが、本作が高く評価される源なのかもしれないが、その良さを十分には理解できなかった。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2008-02-05 19:03:37) |
2568. 戸田家の兄妹
《ネタバレ》 前半は面白くなかったが、しり上がりに良くなった。 特に、ラスト付近の佐分利信が軽薄な兄妹たちを豪快に追っ払うシーン。 そして、熱心に母や妹を説得し、中国の天津に希望を持って誘うシーン。 これらのシーンはとても良かった。 でもこういう家族内のいざこざや女性同士の問答を内容とする作品であれば、成瀬巳喜男監督なら、もっと上手く撮ったのではないか。 小津監督は、カラっとしたコメディタッチなものを撮らせると最高に上手い監督だし。 成瀬監督は沢山の作品を撮っているから、本作の様なテーマと似た作品を既に撮っているかもしれないけど、本作の成瀬バージョンを観てみたい気がする。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-02-05 00:38:06) |
2569. 橋(1959年/ベルンハルト・ヴィッキ監督)
《ネタバレ》 前半は退屈極まりない。 本サイトでの高得点に疑問を持ちながら鑑賞を続けた。 しかししかし、1時間を経過する辺りから様相が一変。 非常な緊迫感の持続する終盤へと突入した。 ここからは固唾をのんで鑑賞した。 見事、その作品に引き込まれた。 この引き込まれる感覚。 これこそが映画鑑賞の醍醐味。 あー、楽しい。 楽しいけど、内容はそれとは正反対。 残酷な終幕。 戦争の虚しさと愚かさ、命の儚さ。 そんなことが映像だけを通して雄弁に語られる。 戦争映画としては硬派な部類に入り、派手さはないが、間違いなく傑作だ。 [ビデオ(字幕)] 7点(2008-02-04 20:33:33) |
2570. 破れ太鼓
まず阪妻。 凄まじい存在感! これぞニッポンの雷オヤジ! 息子役の森雅之が「こわぃ、オヤジだなぁ・・・」とつぶやくのが愉快、そして納得。 あの森雅之を子供扱いにする阪妻の迫力は流石。 そして次女役の桂木洋子。 本作でもやっぱり可愛いかった。 いつも思うが、桂木洋子って若い頃の「いとうまいこ」(若い頃の芸名は「伊藤麻衣子」)に声も雰囲気もソックリな気がする。 又、妻役の村瀬幸子だが、観ている間中ずっと沢村貞子に似てるなぁ、と思っていた。 そしてラスト付近で、その妹だが姉だか「おばさん」役の、当の沢村貞子が登場。 これにはビックリ。 やはり似ている。 そしてこの似ている二人を姉妹にもってきたのが、また良い。 阪妻に話を戻すと、前述した「存在感」や「迫力」といったものを前面に出しながらも、同時に「コミカルさ」や「人間の弱さ」なども滲ませている。 これは阪妻の天性のものか、それとも演技によるものか。 いずれにしても、凄い俳優だ。 阪妻の出演作には傑作が多いのがよく理解できた。 阪妻という俳優は、その一人の力で、作品全体を傑作にまで至らしめるパワーと実力を持った俳優なのだ。 傍若無人な大太鼓。 哀愁漂う破れ太鼓。 両方を見事に演じ分けた阪妻の演技に、ただただ敬服するばかりである。 [DVD(邦画)] 8点(2008-02-03 09:04:37)(良:1票) |
2571. 父ありき
小津作品を年代順に観てきたが、本作でかなりの「完成」を感じた。 小津スタイルが確立された頃のような気がした。 音声の劣化が酷く、まともに視聴できる状態でないのが悲しい。 しかしながら、笠智衆の演技が抜群に良い。 小津サイレント時代の常連俳優、坂本武も脇で良い味を出していた。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-02-02 22:05:36) |
2572. 赤い風船
例えれば、「少年と赤い風船のプチ・ロードムーヴィ」か。 何とも切ないお話である。 30分ちょっとの間に雄弁に語られる少年と赤い風船の物語。 時に哀しく、時にユーモラスに。 テクニカラーの独特なカラー映像、街に映える風船の鮮やかな赤。 いかにも映画といった映画で、音楽と映像、そしてストーリーが、赤い風船の摩訶不思議な動きと相まって、不思議な感動を呼び起こす。 メルヘンな雰囲気が好きな人なら気に入るはず。 [ビデオ(字幕)] 6点(2008-01-30 22:44:05) |
2573. まごころ(1939)
御茶ノ水の「アテネフランセ文化センター」という摩訶不思議な場所で見てきました。 とても古臭く、かび臭い巨大なビルです。 そこの4階で上映されました。 舞台の様な場所に、プロジェクターというか、16mmでの上映でした。 作品ですが、成瀬作品としては平均的なレベルです。 平均的とは言っても、決してレベルが低いという意味ではありません。 成瀬作品はレベルが高いので、その中で平均ということは、普通からすれば傑作と呼んでも言い過ぎではないほどの出来です。 1930年代という点において、音声が聞き取りにくい、映像がぼやけている、50年代に比して完成度が低いなどの問題点はあります。 しかしながら、なかなか地味に見せるいぶし銀の味わいで、何回も繰り返し観られる奥の深い作品でした。 やはり、この頃の入江たか子は正統派美人ですなぁ。 ぐうの音も出ない程の美人顔であります。 晩年に新藤兼人監督のドキュメンタリーでそのお顔を拝見した後に観ただけに、そのギャップにやられました。 時というものは本当に残酷ですねぇ・・・ [映画館(邦画)] 7点(2008-01-29 23:32:44) |
2574. 肉体の悪魔(1947)
まず、ヒロインに魅力を感じない。 年下の少年を惑わす魅力が感じられない。 そしてストーリー。 どこかありがちで、型にはまっている。 面白いとは思えないが、ラブロマンスとしては王道的なもので、安心感はあるにはある。 そこを素直に楽しむことができるか、ありがちといった感想を持ってしまうか。 そこが本作を楽しむことができるか否かの分かれ目であろう。 主演の貴公子ジェラール・フィリップだが、25歳にしては随分と若く見える。 そして痩せすぎ。 もう少し晩年のフィリップの方が魅力があるかもしれない。 [ビデオ(字幕)] 5点(2008-01-28 22:20:59) |
2575. 大菩薩峠(1966)
《ネタバレ》 時間の経過を忘れるほど鬼気迫る仲代達也の演技と眼光。 大人数を相手にした立ち回りは、迫力十分だが、ややリアリティを欠くのが残念。 終り方はかなり拍子抜け。 加山雄三のあの気合いは何だったのか? そしてお松は一体どこに? 西村晃はいかにもクセ者風で、最後にキーパーソンとなるのか?と思わせぶりながら、活躍は最後まで観られず。 敢えてこういう終わらせ方にしたのだろうが、どうも消化不良気味だ。 だが、全編を通してみなぎる緊張感、そして、観る者を釘付けにし続ける演出は見事だ。 [ビデオ(邦画)] 8点(2008-01-27 20:15:06) |
2576. 真空地帯
《ネタバレ》 戦時下における、軍隊の内幕をリアルに描いた作品。 軍隊内部ではイジメや暴力が日常茶飯事に行われており、むしろそれが内部では当たり前のこととされている。 上層部は物資を横流ししたり、人事を不当に行ったりと、こちらも腐敗し放題である。 そういった軍隊内部の内幕を、嫌というくらいにリアルに見せ付ける。 これが本当にリアル過ぎて辛すぎて、観ていて嫌になる。 作品の出来具合としては、文句のつけようがない。 時間の経過を忘れる程の力作である。 しかし、先に書いたように、観ていてどうも嫌になる。 気分が悪いままに二時間が経過するのだ。 「良い物観た」ではなく、「胸くそが悪い物を観た」。 観終えた後、そんな気分になってしまう。 そこがこの作品の良い所であり、悪い所でもある。 いずれにしても、本作が非凡な作品であろうことは間違いない。 久しぶりに凄い邦画を観た気がする。 [DVD(邦画)] 8点(2008-01-27 20:04:02)(良:3票) |
2577. にっぽん昆虫記
《ネタバレ》 内田吐夢監督の『飢餓海峡』と負けず劣らず左幸子の演技が凄まじい。 彼女の熱演なしには、本作のパワーは生まれなかったであろうことは相違ない。 男と女が情欲に流されるまま、まるで昆虫の様に生きる姿をリアリティに演出した今村監督。 『赤い殺意』と非常に似たテイストの作品だが、本作の方がパワー・リアリティ・性的描写の全てにおいて上であろう。 宗教、父娘の親密過ぎる間柄、母娘丼、売春、他人の子を身篭り「あなたの子」と騙す、チクリ、金への執着、強姦、、などなど、際どいテーマてんこ盛り。 それらを下手に飾ることなく、リアリズムに徹して描いた今村監督。 「調査魔」と呼ばれた今村監督だからこそ、リアリティを欠くことなく描くことが出来たのではないだろうか。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-01-27 11:48:47) |
2578. 暗殺のオペラ
これまでに観たこともない様な森林の緑。 あまりに美しい映像だ。 ゴダール作品にも通ずる様な雰囲気が漂う。 ただし、ゴダール作品ほど難解ではない分良い。 ストーリーで観る作品というよりも、映像美を固唾をのんで堪能すべき作品の様に感じた。 [ビデオ(字幕)] 6点(2008-01-26 23:56:05) |
2579. 淑女は何を忘れたか
《ネタバレ》 やはり、小津監督はユーモアのある作品を撮らせてこそ本領を発揮する監督である。 斎藤達雄と桑野通子との掛け合いが素晴らしい。 特に二人で示し合わせて説教をするシーン。 ドアの使い方、全てが軽妙洒脱でセンスも良い。 ラストのエロス漂う演出も見事。 [ビデオ(邦画)] 7点(2008-01-24 22:12:47) |
2580. The Follow
ウォン・カーウァイの送り出した幻の短篇。 幻と呼ぶには、取るに足らない作品だったが、さすがの映像美であった。 [インターネット(字幕)] 5点(2008-01-23 21:08:11) |