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 > にじばぶ さんの口コミ一覧。158ページ目
にじばぶさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 3239
性別 男性
自己紹介 監督別鑑賞作品数

成瀨巳喜男 69
溝口健二 34
川島雄三 41
小津安二郎 37
石井輝男 24
豊田四郎 19
石井岳龍 18
矢崎仁司 12
西川美和 8
山下敦弘 15
今泉力哉 21
フェデリコ・フェリーニ 24
ミケランジェロ・アントニオーニ 14
ピエル・パオロ・パゾリーニ 16
ルキノ・ヴィスコンティ 17
ジャン=リュック・ゴダール 36
フランソワ・トリュフォー 24
ルイ・マル 17
ジャン・ルノワール 15
ジャック・ベッケル 13
ジャン=ピエール・メルヴィル 11
ロベール・ブレッソン 12
イングマール・ベルイマン 27
アルフレッド・ヒッチコック 53
ジム・ジャームッシュ 15
ホウ・シャオシェン 19
ウォン・カーウァイ 14
ジャ・ジャンクー 9

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3141.  ウエスタン 《ネタバレ》 
10分から15分くらいの静かなオープニングであったが、これが最高だった。 いかにも西部劇っぽい場所の駅っぽいところで、ちょっと野蛮な感じのガンマン風の男3人が、何か待っている模様。 電車か?それとも他の何かか? その3人のそれぞれの表情がアップで丁寧に捉えられていく。 そして静かに淡々と時間が進んでいく。 妙に静かだ。 怖いくらいに。 いかにも嵐の前の静けさという感じ。 何気なく観ていたのだが、いつの間にかこの緊張感に引きずりこまれていた。 その後、ある一人の男とそれらの男3人とのしびれる打ち合いがあるのだが、それはまあいいとして、このオープニング、傑作を予感させる素晴らしいものであった。  オープニングの後の展開は、少し趣が変わって、普通っぽい西部劇に。 しばらくして、クラウディア・カルディナーレが登場! いやぁ、待ってましたぁ!という感じ。 何しろ、オープニングで濃い男達の顔を散々アップで見せられたので。  しかし、カルディナーレ、まだこの時点では胸ははだけておりません! その後、期待通りに不自然なくらいに露出してくれるカルディナーレ。 それは嬉しいのだが、どうにもラブシーンがわざとらしい 豊満な胸を隠そうとするばかりに、姿勢がおかしいのだ。 まあ、そんなツッコミはいいとして、汚い男達(これがまた良いのだが)に混じって、このカルディナーレの可憐さと豪快さ。 やはりカルディナーレは素晴らしい女優さんだ。  さて、随所に男を唸らせるニクイ演出が沢山あった。 例えば、ラストシーンで、実は銃で撃たれていたのにやせ我慢しているジェイソン・ロバーズとか。 例えば、チャールズ・ブロンソンとヘンリー・フォンダとの最後の果し合いのシーンとか。 しかし私はもっと別の場所に意識が向いた。 それはヘンリー・フォンダが再三“ピュッ!”と痰の様なモノを吐くシーンだ。 これがまたしつこいのだ。 何度となく出てくる。 しかも妙に音が気持ち悪い。 男の渋さをかっこ良く描いた本作に対する感想で、こんなおちゃらけたシーンについて言及するのは、少しはばかれるが、とても気になった挿入シーンだったので率直に書いてみた。 あれは一体、ヘンリー・フォンダ演ずる男のキャラクター形成上、どれだけの役目を果たしているのだろうか? 甚だ疑問である。
[DVD(字幕)] 7点(2007-09-02 23:00:39)(良:2票)
3142.  家族ゲーム 《ネタバレ》 
理屈抜きに面白いので、この時代の日本映画に対して、私の様な負のイメージを持っている人にも、是非観てもらいたい作品である。 気になったのがラストシーン。 本作の舞台は、高度成長期をイメージさせる団地の一室。 その団地の一室での、退屈極まりない昼下がりが本作のラストシーンなのだ。 本作の魅力の一つに“シュールさ”があると思うが、本作のラストシーンは、その“シュールさ”と不気味さ、そして不可解さ、そして疑問、奇抜なカメラワーク等、いろんな要素が複雑に組み合わさって、何とも言えない余韻を残す素晴らしいラストシーンとなっている。 昼下がり、不気味に静まりかえる団地の一室。 由紀さおり演じる母親は、子供たちを呼ぶ。 しかし返事がない。 部屋に子供たちの様子を見にいくと、そこで子供たちは死んだ様に深く眠っている。 いくら起こしても起きないので、仕方なく母親は台所のテーブルに戻る。 しかし、さっきからどうも外がうるさい。 どうやらヘリコプターが何機も団地の上空を飛んでいる模様。 これがとてつもなくうるさい。 不気味にうるさい。 静か過ぎる団地の一室と、その上空をけたたましい騒音をたてて飛ぶヘリコプター。 “喧騒と静けさ” 相反する二つのものが、複雑に絡み合わさり、不思議でいて、それとない不安を醸し出す。 憂鬱なくらいに静かで退屈な団地の昼下がりに、必要以上にうるさいヘリコプターの騒音。 これは一体、何を意味するのか? 結局、私にそれは分からなかったが、とにかくこの“喧騒と静けさ”は、観ている私を“何となく不安”にさせた。 言葉で説明すると何とも抽象的で分かりづらい表現となってしまったが、実際に本作を鑑賞された方の中で、私の言っていることを何となくでも理解してくれる方がいたなら、それで満足である。 ラストシーンの最後の最後、それまで平面的に空間を捉えていたカメラが、突如、上方に動き、団地の一室を上から三次元的に捉える。 そこでエンドロール。 何とも素晴らしい終り方ではないか。 素晴らしいんだけど、この終り方、どこかで観たことがあるような・・・ そうそう、溝口健二だ。 具体的には『残菊物語』のラストシーンであり、また、『雪夫人絵図』のラストシーンである。
[ビデオ(邦画)] 7点(2007-09-02 22:54:27)(良:1票)
3143.  穴(1960) 《ネタバレ》 
ひたすら“掘る!掘る!掘る!”の土木作業の連続。 こう書くと何だか単調な映画の様に感じてしまうかもしれないが、そういうわけではない。 無骨な“ガチン!ガチン!”という音に釘付けになってしまう緊迫感があるのだ。 特に凄いのが、最初に穴を開けるシーン。 牢屋の地面に穴を掘っていくシーンが何とノーカットで描かれる。 これが異常なくらいに興奮する。 刑務所内に響き渡る音。 観ているこっちが「聞こえるんじゃないか?」と真剣にヒヤヒヤしてしまうくらいの、これ以上ない迫力ある音。 まずこのシーンからして傑作だ。 何とか穴を地下通路まで掘り下げる。 そして地下に男たちは降りる。 しかし看守達の見回りに遭遇してしまう。 しかしそこは密室。 どうやって看守達をやり過ごすのか? 「うわ・・・・」 見事、やり過ごしました。 “小技”が冴えまくりである。 本作全般に言えることだが、ロベール・ブレッソンの『スリ』並に“小技”を披露してくれる。 この看守をやり過ごすシーンといい、合鍵を瞬時に作ってしまうシーンといい、砂時計を作ってしまうシーンといい、覗き窓から外を確認する潜望鏡の作成といい、とにかく技術的で芸が細かい。 これが何とも面白いのだ。  脱獄のシーンとは直接関係がないのだが、この“小技”関係で面白いシーンがあった。 それは、囚人への差し入れの検品シーン。 看守が次々に差し入れの品を実に手際良く検査していく。 たった一つのナイフで外箱やら食べ物やら。 不潔極まりないのだが、おそらくそれも演出の一つであろう。 この検品の手際の良さは観ているだけで楽しい。 なんか芸を見ているかのよう。 この変もブレッソンの『スリ』に共通する面白さだ。   さて、脱獄の話に戻す。 こうして、まんまと下界へ達した囚人たち。 だが自分だけ外に出るわけにはいかない。 裏切りとなってしまう。 最後の穴を開けた二人は、他のメンバーを迎えに牢屋へ戻る。 仲間たちは、穴が貫通したのを知り、「今夜、みんなで外へ出よう」と申し合わせる。  そして時間が経過し、いよいよその時がきた。 お手製潜望鏡で、牢屋の外を最終確認。 しかしそこで見たものは?!  “衝撃のラスト”だった。 ゾクっとするくらいの怖いラスト。 あの潜望鏡からの風景。 しばらくは忘れられないだろう。 最後の最後まで緊迫しており、最初から最後まで完璧。
[DVD(字幕)] 9点(2007-09-02 22:48:12)
3144.  浪華悲歌
溝口健二の代表作の一つにして、『祇園の姉妹』と双璧を成す、溝口の作品の中でも“初期の傑作”と呼ばれている作品。  主演は山田五十鈴。  彼女は本作出演時には20歳になったばかりだったらしい。  この年齢にしてあの演技。 確かに凄い。   さて、溝口健二の代表作の一つということで気合いを入れて鑑賞した。  でも実はそんなに期待もしていなかった。  何故かと言えば、同時期に作られた同じく代表作と言われる『祇園の姉妹』が、世間で言われているほどには感銘を受けなかったからだ。  実際、本作についてもそれは同じだった。  本作はとかく、日本映画で初めて“リアリズム”というものを高いレベルで表現した作品ということで高い評価を受けている。  社会的に高い地位にいる人を中心に描いた作品ではなく、社会の底辺にいる人を中心に描き、観る者の共感を得た歴史に残る作品なわけだ。   しかし、そんな歴史的経緯よりも、少なくとも私の様な一映画ファンにとっては、鑑賞してみて実際に楽しめるかどうかが重要な意味を持っている。  個人的には、溝口作品としては『祇園囃子(1953)』や『山椒大夫(1954)』や『雪夫人絵図(1950)』等の1950年代の“溝口後期作品”が好きである。  ただし1930年代の作品でも『残菊物語(1939)』は好きだったりもする。  そういうわけで、溝口初期作品としては“『残菊物語』に続いて『浪華悲歌』が二つ目のお気に入り作品になるのか?!”と期待して鑑賞したわけだが、残念ながらそうはならなかった。   まだ修行が足らないせいだろう、日本映画、海外映画を問わず、いまいち1930年代中盤以前の作品には感動できないでいる。  いつか1930年代中盤以前の作品でも感銘を受けることができるようになれればいいのだが・・・
[ビデオ(邦画)] 6点(2007-09-02 22:43:56)
3145.  ある映画監督の生涯 溝口健二の記録
溝口映画ゆかりの人達が、次から次へと39人も登場する。  本ドキュメンタリーは、 1.溝口作品の出演者達を、映画以外では知らない 2.溝口作品の出演者達の、その後の姿を全く知らない 3.溝口作品を沢山観たことがある の3つの条件を満たしていれば満たしている程、楽しめるに違いない。 それ以外の人が観ても、何てことのないドキュメンタリーか、もしくは、ただ単に古い人が沢山出てくるだけの退屈なインタビュー映像集になってしまうだろう。  また逆に、現在を起点に考えれば、本作は30年以上も前の作品となるわけで、現在は大半が亡くなられた人達ばかりでもある。 そういう点で考えても貴重なインタビュー集なわけで、特に宮川一夫、川口松太郎、依田義賢、増村保造等の映像を観れたのは良かった。  さてさて、本作を観る上で個人的に一番楽しみにしていたのが、溝口作品ゆかりの女優達のその後の姿をおがむこと。 特に、木暮実千代、山田五十鈴、入江たか子辺りのインタビュー映像は楽しみで仕方なかった。 39人のインタビューの中で、一番衝撃度が高かったのが木暮実千代。 『祇園囃子』でその妖艶さに打ちのめされた私は、すっかり木暮実千代の虜(とりこ)になった。 そして本作で60歳近くになった彼女と“再会”ができるわけである。(実際は、既に『男はつらいよ』で晩年の彼女を観ていたのだが、全く記憶にない) それはとても怖くもあったが、同時にそれ以上にわくわくもした。 そして、『祇園囃子』の過去の映像の直後に、“その後”の彼女が登場・・・ おぉぉぉ・・・・ うーん・・・ これが正直な感想。 でもとても嬉しかったのも事実。 何故なら他の女優達の“その後”が、妙に神経質っぽかったのに対して、木暮実千代のインタビューの受け答えは、とても明るかったから。 “妖艶さ”の面影は消えていたが、親しみやすいマダムな感じで、これはこれで楽しめた。  しかし、インタビューをした監督の新藤兼人さん、「祇園囃子は力の抜けたいい写真でしたね」って、それはないんじゃないの?? それを聞いた木暮実千代も、同意しかねていたではないですか! もちろん悪い意味で言ったのではないだろうけど、個人的には溝口作品の中で一番好きな作品なだけに、木暮実千代同様、私も同意しかねますねぇ~
[DVD(邦画)] 8点(2007-09-02 22:41:32)(良:3票)
3146.  飢餓海峡 《ネタバレ》 
日本映画史上のベストテンを選ぶ際、必ず食い込んでくる名作中の名作をやっと鑑賞することができた。  3時間を超える大作のため、なかなか観る機会を得なかったが、噂通り3時間という時間があっという間に過ぎてしまう力と流れのある名作であった。   監督は戦前からの巨匠内田吐夢。 この監督の作品を観るのは自身初。   音楽に富田勲。 本作のラストシーンは相当な余韻を残すものであったのだが、それはこの人の音楽によるところも大きいであろう。   そして主演に三國連太郎。 その名演技にはただ敬服するのみ。  『釣りバカ日誌』での三國連太郎しか知らないと、なかなかこの人の偉大さは分からないかも。  その他、左幸子、伴淳三郎等の脇役陣も一世一代の迫真の演技をみせている。   本作はミステリーとして観てしまうと、納得のいかない部分が多々ある。 そういう意味では完璧な作品とはいえない。  しかしながら、上記俳優陣の迫真の演技が、本作を“日本映画史上の名作中の名作”に押し上げている。   特に、中盤の左幸子が三國を久しぶりに訪問するシーン。 ここが最大の見所。  この一連のシーンはゾクゾクしたし、ワクワクしたし、感動したし、両者の演技に惚れ惚れもした。   しかし後半は、妙に強引な推理展開が目立ち、やや尻すぼみ。 小説は読んでいないが、文字で丁寧に書かれるはずであろう推理小説的な部分が、駆け足で進行されてしまうのだ。  しかししかし・・・ ラストシーンは圧巻だった。  これは凄い。 観ていて口がアングリしてしまい、開いた口がふさがらなかった。  これはこの3時間以上に及ぶ大作を最後まで観た人へのこれ以上ないご褒美だ。 ややや、まさに衝撃です。   本作は先にも述べたように、ミステリーや小説の映画化として観ると味気のないものになり、魅力は半減してしまいます。  俳優陣の熱演、効果的に挿入され衝撃度を劇的に高める音楽等に焦点を当てつつ、ストーリーの根底に流れる“人間の愚かさと哀しさ”に目を向けてみるといいように思います。  いずれにしても本作は紛れもない名作です。 そして“日本映画史上の名作中の名作”、これも決して大げさなふれこみではありません。  観るチャンスがあれば、絶対に観るべき作品ですね。
[ビデオ(邦画)] 9点(2007-09-02 22:37:29)(良:1票)
3147.  折鶴お千 《ネタバレ》 
溝口健二の、現存する数少ないサイレント作品の一つ。  原作は泉鏡花。 主演は“最後の大女優”山田五十鈴。  そして舞台は、私の大好きな場所の一つでもある「神田明神」である。  これだけでも満足間違いナシの組み合わせ。  しかもラストの主人公ふたりの再会シーンは、『山椒大夫』の基礎となったと言われているだけに、なお更期待も高まった。   私がレンタルしてきたビデオテープは、活弁付きのもので、恥ずかしながら活弁付き映画を観るのは初めての経験。  再生を始めて、いきなり気張った女性の声と共に映像が流れ始め、かなりの違和感をおぼえる。  しかしそれも数分後には何ら気にならなくなり、むしろ分かりづらい活弁ナシのサイレントよりも心地よく感じた。   本作は、傑作『残菊物語』とも共通する、「女性が無償の愛を男に捧げる」というテーマを扱ったもの。  その女性役を山田五十鈴が演じるのだが、その鬼気迫る演技に脱帽。  その迫真の演技を見せた山田五十鈴も勿論すごいが、それを引き出した溝口の手腕はさすがの一言。   それと70年前の神田明神を見れたのも良かった。  前述した通り、大好きな場所なので何度となく訪れたことがあるのだが、本作で見た神田明神は全くそれとは異なっていた。   しかしそれよりも、当時の万世橋の辺りから神田明神が見れたという事実の方が、私にとって新鮮だった。  しかも万世橋の辺りに駅があったとは。  東京を舞台にする古き映画を観ると、こういう発見があるので楽しい。   最終的に主人公の女性は気を違えてしまう。  気を違えた理由は、自分を犠牲にしてまで守ってきた男性が遠い処に行ってしまったからというもの。  理由としては判らなくもないが、気を違えるという説得感には多少欠けるような気がした。  しかしながら、その男性が気を違えた女性と再会を果たす本作のラストシーンは、山田五十鈴が鬼気迫る演技を見せる名シーンであった。  本作が名作と謳われる理由は、このラストシーンに集約されているのではないだろうか。   “再会のラストシーン”   これを溝口に描かれたら、観ているこっちは従順にも圧倒されるより他はなし。   やはり溝口健二の映画は素晴らしかった。
[ビデオ(邦画)] 7点(2007-09-02 22:35:01)
3148.  大阪物語(1957)
溝口健二が亡くなった為に、溝口の没後、吉村公三郎監督が代役で撮った作品。 香川京子が大好きなので、個人的には気に入った。市川雷蔵は雷蔵らしさがあまり 出ておらず、本作では不調。 浪花千栄子もいつも程の調子の良さはない。 全体的にキャスティングを活かしきれてない印象。 しかし溝口が原作とあって、話自体はかなり面白い。 勝新太郎もいやらしいくらいに味を出している。 でも香川京子がやはり最高。 自分の指を舐めて、雷蔵の傷に塗ってあげる場面や、情事の後にいたずらっぽく雷蔵に微笑むところなどが最高に素晴らしかった。  
[DVD(邦画)] 7点(2007-09-02 20:58:20)
3149.  スリ(1959) 《ネタバレ》 
ロベール・ブレッソン初期の頃の傑作サスペンス。 素人採用により、妙に迫真とリアリティを持った作品だ。  尺も76分と、ブレッソンらしい短さで、無駄のない作り。 間延びした映画が多い中、ブレッソン作品のこうした短さへのこだわりは特筆に値する。  主人公のミシェルは大学生とのことだが、全然そうは見えない。 単なるオッサンだ。  スリに味をおぼえ、スリという犯罪を正当化し、ドップリはまっていく主人公を描いた作品。 スリのあらゆる手口が次々に紹介され、観ているこちらは口をあんぐり、目を釘付けにさせられる。 ただ、そのうちの何個かの“スリ実演シーン”は、「それは無理っしょ?」という感じのものもあり、少し残念。  「前の女性がハンドバッグを脇に挟むと同時に、後ろから新聞紙を挟みこんで、取り替える」  これはさすがに無理があるっしょ? そういう意味でも、目が釘付けになること間違いナシ。  ヒロインの女性がかなり魅力的。 こちらも素人さんということで、他の作品では観れないのが悔やまれる。 残念だ。  フランス人監督で、一部に熱狂的なファンを持つ、孤高の映像作家ロベール・ブレッソン。 その人気の理由を理解できたような気がした。 ブレッソンならではの独自の映像世界を持っているのが魅力。  イングマール・ベルイマンもそうだけど、内容うんぬんともかく、その創り出す映像世界は超個性的! こういう監督の作品は何本か観てしまうと、他の作品も全部観てみたいという欲求にかられてくる。 ただ、ほとんどDVD化されていないし、頼みの綱のツタヤ新宿店にもあまり在庫が無いのが残念だ。 特に『少女ムシェット』を観たいのだが・・・
[DVD(字幕)] 7点(2007-09-02 11:45:38)(良:1票)
3150.  赤い殺意(1964)
主演は春川ますみ。  かなりのグラマラスなボディ、というかやや肥満気味。  劇中でも、「おまえ程太った奴はそうはいないだろ」みたいな形で、公然とデブ呼ばわりされている。  裸のシーンが何度も出てくるが、まったく興奮せず。   だけどそれがかえって良いのだ。  春川ますみ演じる主人公の女性は、“たくましき女性”もしくは“母性の象徴”として描かれている。 そういった意味では適役といえよう。   150分という長い尺ながら、それ程の長さを感じさせないところは、さすがキネ旬日本映画部門の7位といったところ。  しかし、最初から最後まで重苦しいモノクロ画像。 シャープなモノクロ画像とは対極に位置する重苦しい感じのモノクロ画像なのだ。  これはこれで本作の独特の世界観をうまく創り出しているといえなくもないのだが、さすがに陰鬱な気分になってくる。  しかも激中、何度となく“方言混じりのおばあちゃんのささやき声”が流れ、これがまた不気味。 というか、耳障り。   そして濡れ場シーンの多さもかえってマイナス。  全然色気を感じない、見ていてもさして興奮しない濡れ場シーンの連続に飽食気味になってしまった。  この辺りが、今村昌平を好きになりきれない理由の一つだ。   最後はうまくまとめてくれるので、鑑賞後はそれなりの満足感を得られるが、不快感も多少残るので、いま一歩といったところ。
[ビデオ(邦画)] 6点(2007-09-02 11:41:08)
3151.  フィツカラルド 《ネタバレ》 
“奇人コンビ”ヴェルナー・ヘルツォークとクラウス・キンスキーによる、ズッコける程に壮大稀有なとんでもないスペクタクル作品。  私も上記レビューに対抗して一言で言ってしまえば、“320トンの船に山越えをさせる○チガイ作品”といったところか。  結果として、山越えを果たしたはいいけれど、向こう側の河で下流までアッサリ流されてゲーム・オーバー。  なんたるオハナシ。 そんなアホな。   巨大な船を山越えさせる話をドキュメンタリー・タッチで時系列的に淡々と描くもんだから、途中ダレまくり。 冗長もいいところだった。  しかししかし・・・   ラストで下流まで流された後を受けての、ラストシーンにおける主人公を演じたキンスキーの言葉が良い。  「結果はこうなってしまったけど、実際に目にできたこと、感じられたこと、得られたことがあればそれでいい。」  そんなニュアンスな言葉。   話としては上に書いたように退屈な面はあったけど、最後の、このキンスキーの一言でジーンときてしまった。  “結果重視ではなく、その最中に感じ取れたこと、得られたこと、それが大切。”  この価値観は、自分にとっての人生観にリンクするところがあって、妙にジーンときてしまったのだ。   死ぬ間際に何も残っていなくとも、その生きてきた過程の中で、沢山の貴重な経験、素敵な出会いがあればそれでいいと自分は思っているし、そういう生き方をしていきたいと思っている。  だけどそれはリスクも高いし、時にはストレスもたまる。 社会的地位を失えば、周りから見くびられるもする。   そういう苦労の中、こうした映画を観れたわけで、妙に感銘を受けてしまったわけである。  私の様な人生観を持っている人、サラリーマンをやりながらも自分の守りの人生に疑問を持ち続けながら毎日を過ごしている人、そんな人達に是非オススメしたい一本。
[ビデオ(字幕)] 7点(2007-09-02 11:31:12)
3152.  愛怨峡 《ネタバレ》 
原作は川口松太郎。 昨日、父親と話していて偶然知ったことだが、あの探検家“かわぐちひろし”の父親らしい。 いけ~いけ~♪かわぐちひろし~♪いけ~いけ~♪ のテーマ曲で有名な、あの川口浩である。  それと、この映画の一個前に、自宅で『現代やくざ 血桜三兄弟』という作品を観たのだが、この作品の中で、ヤクザのボス役として河津清三郎という役者さんが出ていた。  なんと、その河津清三郎が、この『愛怨峡』の中で準主演を演じているではないか。 途中で気付いたのだが、まったくの偶然に感動さえおぼえた。  『愛怨峡』ではまだ若い河津清三郎だったが、『現代やくざ 血桜三兄弟』の方では、貫禄ある堂の入ったヤクザのボス役を演じている。  こういう偶然って、皆さん経験ありませんか??   さて、“幻の作品”と呼ばれるだけあって、劣化はかなりひどい。  だけど、十分に理解できるだけの状態で複製されていたので、特別問題はなし。  話の筋としてはかなり単純で、その後の溝口作品群と比べると、やや物足りなさを感じたが、後半はやっぱり後年の溝口を彷彿とさせる盛り上がりで、尻上がりに楽しめた作品だった。   金持ちのぼっちゃんと別れた主人公の女性は、東京で知り合った少々ヤクザな感じだが情に厚い男性と懇意になる。  しかし、二人の関係は決して深いものではなく、漫才のコンビを組んだり、飲んだりする程度の仲である。  男の方も、「その気なし」という感じで女と接しており、女の方もその男を「男として」見る感じではない。  そんな中、一度自分を捨てた金持ちのぼっちゃんからお呼びがかかり、子供のためを思って女は田舎に戻ることになる。  しかしながら、女はいつの間にか東京で知り合ったヤクザな男を好きなっていた。 そして結局、女は再度田舎を出て、東京のヤクザな男の処に戻るのであった。   つまり、友達同士という体裁で仲良くしていただけのつもりが、いつの間にか「情」から「愛」が生まれ、女はそれに気付き、その男と一緒になったという次第なのである。  アッサリとした終り方ではあるが、妙に感銘を受けてしまった。
[映画館(邦画)] 4点(2007-09-02 11:30:04)
3153.  鞄を持った女
イタリアのこの時代の作品は大好きなので、一つでも多く観ておきたいところだが、中でもこのヴァレリオ・ズルリーニの代表作の一つともいえる『鞄を持った女』は絶対に観てみたかった作品の一つだった。  主演は、“C・C”ことクラウディア・カルディナーレ。  ヴィスコンティ作品で一度観たことのある大女優さんだけど、彼女の代表作といわれるものを観るのは、これが初めて。   そして、監督のヴァレリオ・ズルリーニだが、彼の作品を観るのは『家族日誌』に次いで2作品目。  『家族日誌』はイマイチだっただけに、本作には大きな期待をしていなかったけど、その期待をいい意味で裏切って、十二分に楽しむことができた。   これをきっかけにして、ズルリーニにハマりそうな予感。  なんともいえない、文学的でもの悲しい雰囲気の作品を創る素晴らしい監督だなぁ、と今回見直したわけだ。   ジャック・ペラン演じる16歳の青い青年と、カルディナーレ演じる豊満な大人の女性との、淡くも切ないラブ・ストーリー。  ラブ・ストーリーとはいっても、少年の片想い的な状況なのだが、これが内気な少年の立場から丁寧に描かれており、なかなか引き込まれる。   どうみても不釣合いな二人。  不釣合いどころか、恋が成就する状態になり得ないくらいのギャップがある。  自分も過去に背伸びして、「じゃあ仮に付き合ったとしてどうなるの?」的な女性にゾッコン(笑)だった時代があるだけに、観ていてどうしようもなく辛かった。  逆に、口がうまくて社交的な男や、女性の立場から観たら、どれだけ少年に感情移入できるだろうか。  そういう意味では、観る人を選ぶ作品。   そして、口ベタなクセに何故か、快活で大人な女性に恋をしてしまいがちな男性諸氏には、必ずやハマれる作品ではないだろうか。  ハマり過ぎて、過去の辛い想い出に涙しないように要注意。
[ビデオ(字幕)] 7点(2007-09-02 11:28:08)
3154.  ある殺し屋 《ネタバレ》 
さて、オープニングのシーン。 暗いトーンの映像の中で、市川雷蔵の無言の演技が続く。 ここで既に釘付け。  最初の5分で見事、この作品にハマることができた! これほど幸せなことはない。 その後、大ハズレが無いことを確信できる感じがしたからだ。 映画の最初の5分で、自分との相性が分かると、どこかで耳にしたことがあるが、まさにそうだと私も思う。 この独特の暗いトーンの映像は、溝口作品でお馴染みの国宝級カメラマン、宮川一夫が撮ったモノ。 さすがという感じ。  そしてオープニングの舞台となっているのが、劇中「晴海町」となっている埋立地。 晴海だから、あの晴海か。 空には轟音と共に飛行機が飛んでいるし。 市川雷蔵は、埋立地の中にポツンと位置する汚いアパートに入っていく。 なんと周りには、お墓が! ま、埋立地でこのシチュエーションは、当時でもあり得ないが。 あり得ないけど、こんなシチュエーションがあったら最高だと思える程の、サビシ~い場所。 フィルム・ノワールに“黒い華”を添える、素晴らしいロケーションである。  そして程なくして、野川由美子や成田三樹夫が登場。 野川由美子と言えば、そう、あなたでもきっと知っている、あの野川由美子です。 テレビで数年前に放映された『白い巨塔』。 あの中で、鵜飼教授の夫人を演じていた、あの醜いおばさんです。 ま、本作では当然若い頃の野川由美子なんだけど、「別に。」って感じ。 個人的には、若い頃もあんま好きじゃないっす。  この後の展開は、観てからのお楽しみ。 ところで、肝心の成田三樹夫だが。 本作では、凄まじいまでのカッコよさ。 さすが成田三樹夫の代表作の一つと言われるだけのことはあった。  特にラストシーンでの、市川雷蔵のセリフをパクって野川由美子にそのまま吐き捨てるシーン。 コミカルさも相まって、ゾクゾクするほどのカッコよさ。 やっぱり成田三樹夫は最高にかっこよい!
[DVD(邦画)] 9点(2007-09-02 11:26:17)
3155.  となりのトトロ
ご存知、宮崎駿の代表作の一つ。  そして、それを今まで観たことがなかった私。 それもある意味すごい。  今までずっと宮崎駿アニメがどうも好きになれずにいた。  だからずっと観ないでいたのだが、最近は沢山の映画を観るようになり、その余勢を借りてようやく観ることに成功したという感じ。   さて、本作の舞台になっているのは、東京都東村山市(志村けんの故郷)と埼玉県所沢市(所ジョージの故郷)の県境にある里山「八国山」である。  劇中においては「七国山」と名前が変えられいる。   音楽担当は、私の大好きな久石譲。  他の宮崎作品や北野武作品でも数々の音楽を提供している。  その中でも最高傑作だと思っているのが、北野監督作品『キッズ・リターン』におけるメインテーマ曲であり、その次が同じく北野作品である『菊次郎の夏』におけるメインテーマ曲なのだが、本作におけるその曲の数々は、それらに匹敵するくらい素晴らしいと感じた。  作品自体も、私が観た宮崎作品の中で最も気に入ったのだが、音楽も最高だった。
[DVD(邦画)] 8点(2007-09-02 11:24:02)
3156.  秋刀魚の味(1962)
“名匠”小津安二郎の遺作。  1962年の作品だが、小津の完成された力量が冴え渡る“見事なまでに美しいカラー作品”であった。  小津の代表作『東京物語』については、ラストの笠智衆が一人佇むシーンには圧倒されたものの、それ以外は、“まぁ、こんなもんか”といった感想だった。  そんなわけで、特別に期待して観たわけではなかった本作。  ところがところが、開始早々10分程で、完全にこの作品の持つ魅力に引き込まれてしまった。   冒頭にも書いた様に、本作は初期のカラー作品でありながら、質感を含めその美しさは圧倒的なもの。  機械的にただキレイなだけの現代映画と比べても、その質の違いからか、全くひけをとらない美しさ。  その端整な映像の数々を観ているだけでも飽きさせないものがあった。  登場人物について。  主演は小津作品でお馴染みの笠智衆。 “背中で感情を語る”彼にしか出来ない演技には脱帽。  そして、笠智衆に続いて本作で中心的な役回りを演じた当時21歳の岩下志麻がとにかく美しかった! 和服姿の似合うこと似合うこと。   また、彼女の兄役を演じた“中井貴一”の父である佐田啓二も、このたんたんとしていて渇いた感じの小津作品に完全に同化していて面白い。   そして、石井輝男作品でお馴染みの吉田輝雄。 本作でも好青年的イメージは健在。  石井作品では、ドロドロとした世界の中の唯一まともな人間というのをよく演じていたが、本作では、作品の一登場人物としてすんなり納まっているところに面白味を感じた。   『秋刀魚の味』を観たおかげで、今日は思いもがけず久しぶりに、ほのぼのとしていい日曜日を過ごすことができた。  やっぱり、“OZU”は凄かった。
[DVD(邦画)] 8点(2007-09-02 11:22:42)
3157.  マルホランド・ドライブ
リンチ作品を鑑賞するのは、『砂の惑星』『ブルーベルベット』『イレイザーヘッド』に続き4作品目。  彼のつむぎ出すストーリー展開と映像世界には独特なものがあり、それは観る人を選ぶ個性が強いものである。  私にはどちらかというと“肌に合わない”。  しかしこの作品は、“リンチ作品史上、最高傑作”であると推す声も多く、是非観たくなった次第だ。   主演はナオミ・ワッツ。 この作品で初めて知った女優さんだ。  この作品では対照的な二人を演じている。 いわば“一人二役”だ。  前半に出てくる“ベティ”の方は、ハリウッド女優を目指す清涼感溢れる爽やかなキャラクター。  それに対し、後半で演ずる“ダイアン”の方は、病的で荒んだ陰鬱なキャラクターだ。  前知識が無く観たので、同一人物が演じていることに気付くまで結構な時間がかかってしまった。  それだけ対照的な二人を、ナオミ・ワッツが卓越した演技力で演じ分けしている。  それと同時に、リンチの演出の上手さに舌を巻くほかない。   ナオミ・ワッツであるが、キュートでありながら、そのイメージを見事に打ち壊す魂のこもった熱い演技。 素晴らしいの一言。  そして何よりスレンダーなのがいい。   さて、この作品だが、巷ではもっぱら“超難解作品”と言われている。  かくいう私も鑑賞終了直後は全くの理解不能状態。  しかし、私がその手の難解映画を観た直後に必ず感じる“不快感”が無かったのが不思議だった。  何故だか分からないが、そのままにしておけない気持ちになり、ネット上であらゆるレビューや解説を調べまくった。  この作品に限ってはネタバレしている状態で観たくらいの方が丁度よい気がする。   DVDに付いているインタビュー映像の中で、リンチは、 「この作品は理屈で解釈するものではなく、音楽の様に直感で感ずべきものだ。」 の様なことを言っている。  この発言を聞いていると、さも“ストーリーはあって無い様なもの”と感じてしまう。 実際に、観た直後はチンプンカンプンでもあるし。  しかし、上の解読を読んでいるとそうではないということに気付く。 リンチは詳細にストーリーを積み上げてこの作品を創り上げたのだ。   ある黒髪の女性に恋をした金髪女性の「愛憎」「嫉妬」「絶望」「後悔」等を、切なくミステリアスに、そして緻密に描いた作品なのである。
[DVD(字幕)] 7点(2007-09-02 11:18:44)
3158.  おかあさん(1952)
『浮雲』では、高峰秀子と森雅之が繰り広げる皮肉の応酬に多少なりともゲンナリしてしまったが、本作は全くの正反対な作品だった。  観た後は何とも言えない、ほのぼのとした気分に浸ることができた。  ラストシーンの、香川京子が魅せる“ウィンク”に脱帽。 岡田英次の演ずる劇中の青年が羨ましい。  そして観ている私も、まるで自分が“ウィンク”されたかの様にポッとなってしまった。  自分も男として生まれた以上は、本作における香川京子の様な可憐で可愛らしい女性から、一度は“ウィンク”されたいものである。  他にも舌をペロっと出すシーンがあったりと、噂に違わず本作は“香川京子を最も可愛く映し出した作品”であった。   香川京子目的で観た本作であったが、肝心の内容の方も素晴らしかった。  『浮雲』でもそうであったが、成瀬巳喜男の映画に出てくる東京の風景はとてもリアルだ。  どこかの花町を描いているわけでもなく、どこかの豪邸を描いているわけでもない。 むしろその様なものは他の古き日本映画で観ることが可能である。  しかし、成瀬巳喜男の映画に出てくる古き良き東京は、いわば『サザエさん』の実写的様相を呈していて、庶民の生活をそのままリアルに伝えている。  街の風景もそうだし、家の中の景色もそうだ。  自分はこんな昔の東京を見たことがある訳でもないのに、何故だか懐かしい気持ちでいっぱいになってしまった。  香川京子の存在といい、こういった懐かしすぎる東京の風景といい、茶の間の景色といい、全てが感動的なまでに懐かしきベールに包まれていた。  そしてそれを観ているこっちの方も、心洗われるのだ。   『浮雲』で成瀬巳喜男に対してゲンナリしてしまった諸氏に、是非ともオススメしたい作品である。  『浮雲』も日本映画史に残る傑作だが、こちらも対極に位置する形で、成瀬巳喜男の誇る傑作中の傑作だと言って間違いないであろう。
[ビデオ(邦画)] 8点(2007-09-02 11:16:17)(良:1票)
3159.  雪夫人絵図 《ネタバレ》 
木暮実千代出演作を観るのは、自身二作品目。 この作品においても彼女は艶やかで美しかった。  仕草や話し方が素敵である。 特に、畳に座るときの姿勢が大好き。 ちょっとはかなげに斜めに座るあの感じ。  それに対してその旦那の醜さときたら・・・ この美と醜の対比が、否応なく観る者を興奮させる。(いや、自分だけかな?)  印象に残ったシーンをいくつか挙げてみる。 まずは冒頭の、雪夫人(木暮実千代)を慕う久我美子演ずる少女が、お屋敷のお風呂場に案内されるシーン。 だだっ広いタイルの間に、ポツンポツンと浴槽が地面に埋め込まれている独特なお風呂場。 別に入りたくなるような、いい雰囲気のお風呂場ではないのだが、それを映し出した映像は輝かしく、息をのむ程に美しかった。 久我美子演ずる少女が、ここで同性愛的な発言や仕草を見せる。 「ここで毎日、雪夫人がお風呂に入られているんですね・・・」 水面に目を遣りながら、こうつぶやくのだ。 眩しくて美しいこの映像の中でのこのセリフ。 やっぱり溝口健二の描く世界は美しい。  それともう一つの印象に残ったシーン。 それはラスト近くの、雪夫人が湖に姿を消してしまうまでのクライマックス・シーンである。 雪夫人は湖近くのホテルに姿を現し、屋外の椅子に腰掛ける。 そこにボーイが近寄り、声をかける。 ボーイはその後、建物の中に何かを取りに行き、それと共にカメラも建物の方へ動いていく。 ボーイ、そしてそれを追うカメラが再び屋外に戻った時には、雪夫人の姿は見えなくなっていた・・・ このシーンが雪夫人の最期を演出するシーンなのだが、とあるお方のお言葉を頂戴するならば、  “霧深い芦ノ湖の山のホテルに現れた雪がまたすぐに消えてしまうラストはぞっとするほど幻想的で美しい。”  といった感じで、まさしくその通りのラストであった。  戦後の華族制度廃止によって没落していく旧華族を描いている点についても、非常に興味を持って観ることができた。
[映画館(邦画)] 9点(2007-09-02 11:14:57)(良:2票)
3160.  祇園囃子
「恵比寿ガーデンシネマ」の『溝口健二 没後五〇年特別企画』において鑑賞。   主演は木暮実千代。  木暮実千代の出演作品を観るのは初めてで、“初”木暮実千代であったのだが、そのお色気に見事打ちのめされてしまった。  若い若尾文子より大人の色気漂う木暮実千代が本作では気に入った。 自分も大人になったということかな?  本作は溝口健二作品の中で一番のお気に入り作品となった。 やはりその要因は京都・祇園の風景や文化を見事に描ききっていることに尽きる。  “うなぎの寝床”と呼ばれる京都独特の長屋が建ち並ぶ街風景には特に目を奪われた。  その他の街風景にもため息が出るばかり。 こういった風景を見られるだけでも十二分に価値のある作品であった。   他の溝口作品で私の好きな『残菊物語』や『山椒大夫』に比べるとライトな仕上がりで、上映時間も短い。  それが逆に私にとっては功を奏し、全体として締まりのある切れ味鋭い作品と感じることができた。  最後は溝口作品に特徴的な“怒涛な展開”。 本作では恥ずかしながら劇場で涙してしまった。  最後の主演二人のやり取りは、まさに圧巻。 涙無しには観られようはずもありゃしない。  他の溝口作品でもそうだったが、最後に急展開し、感動的なラストにもっていく運びは、観ていてゾクゾクする。 本作は特にそれが強かった。  今日は風邪気味で体調が悪かったが、本作を観てカタルシスを得ることにより、ストレスと疲れが吹っ飛び、風邪が治ってしまった程だ。  これでますます溝口健二にハマってしまった。  それと同時に、一人でも多くの日本人に、溝口健二作品を観てもらいたいという思いも強くなるばかりである。
[映画館(邦画)] 9点(2007-09-02 11:13:19)(良:1票)
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