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 > にじばぶ さんの口コミ一覧。159ページ目
にじばぶさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 3239
性別 男性
自己紹介 監督別鑑賞作品数

成瀨巳喜男 69
溝口健二 34
川島雄三 41
小津安二郎 37
石井輝男 24
豊田四郎 19
石井岳龍 18
矢崎仁司 12
西川美和 8
山下敦弘 15
今泉力哉 21
フェデリコ・フェリーニ 24
ミケランジェロ・アントニオーニ 14
ピエル・パオロ・パゾリーニ 16
ルキノ・ヴィスコンティ 17
ジャン=リュック・ゴダール 36
フランソワ・トリュフォー 24
ルイ・マル 17
ジャン・ルノワール 15
ジャック・ベッケル 13
ジャン=ピエール・メルヴィル 11
ロベール・ブレッソン 12
イングマール・ベルイマン 27
アルフレッド・ヒッチコック 53
ジム・ジャームッシュ 15
ホウ・シャオシェン 19
ウォン・カーウァイ 14
ジャ・ジャンクー 9

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3161.  モンパルナスの灯 《ネタバレ》 
やっと観れたジャック・ベッケル監督の代表作。 画家“モジリアニ”の人生をドラマティックに描いた伝記映画である。  やっぱり何度観ても1950年代末から60年代初頭にかけてのモノクロ映像は鮮烈で鋭利で素晴らしい! カラーでは絶対に感じることのできない映像的魅力を強く感じる。  36歳で夭折したフランスの美形俳優ジェラール・フィリップに、私の大好きな女優であるアヌーク・エーメが共演した本作。  このキャスティングだけでも十分に鑑賞に値する。   上に書いた様に若き日のアヌーク・エーメが出演しているのだが、これが参ってしまうほどに美しい。  劇中のモジリアニが惚れこんでしまうのも納得の、心を奪われる様な美しさを存分に発揮している。  エーメを抱き寄せ腕を執拗なまでに撫で撫でしているフィリップに、観ているこっちは羨ましくて仕方ない。   そしてジェラール・フィリップ。 彼の出演作を初めて観たのだが、これがまた魅力的。  本作ではとにかくモテる。 彼の周りには美しい女性ばかり。  そしてその女性のほとんどが彼に好意を持っている。 またしても羨ましい。  魅力ある男に美しすぎる女。 観ていてひたすら羨ましくなる映画だ。  だけど嫌味は感じない。 憧れの対象として目を奪われるばかりだ。  ストーリー的にも申し分なく、最後まで気持ちよく魅せてくれる。   そして本作における三人目のキーマン、リノ・ヴァンチュラ。  彼が演じるのは、モジリアニの死を何ら手を差し伸べることなく待ち続け、彼の死後、彼の作品を非情にも買い漁っていく画商の役。  モジアリニの才能を生前、誰よりも買っていたのは彼であったような気がする。  その彼が誰よりも彼の死を待ち望む。 皮肉で味のある話だ。
[DVD(字幕)] 8点(2007-09-02 11:12:01)
3162.  山椒大夫
本作はヴェネチア国際映画祭で賞もとった国際的にも評価の高い作品である。 個人的には『残菊物語』と並んで溝口作品の中では最もお気に入りな作品となった。   オープニングのキャスト表示からして胸躍る。 重厚な音楽と共に、これから溝口作品が始まることを教えてくれる。  これからも溝口作品を観るにつけ、まるで『男はつらいよ』のオープニングを観るかの様に、条件反射的に胸躍ってしまうに違いない。  そして宮川一夫撮影による芸術的な映像美は言うまでもなく美しい。 単に美しいだけでなく、その映像を通してその世界に引き込まれていくような感覚を覚える。  この感覚がクセになってしまったので、もはやそう簡単には溝口映画から抜け出せそうにない。   そして出演陣では、香川京子に目を奪われた。  美しいというか、かわいいというか。  他の作品で何度か香川京子を観たことがあるが、この作品の香川京子が一番魅力的だった。 足の先まで可愛らしかった。  『ワンダフルライフ』での“おばあちゃん”香川京子を観てしまっているだけに、少々気分は複雑だが(笑)、今だ存命でいらっしゃるのは嬉しい限りだ。   『残菊物語』でもそうであったが、正直、中盤でダレル部分があるにはある。  しかし、これも『残菊物語』と同じく、“ラストの怒涛な展開”がそんな不満を木っ端微塵に吹き飛ばしてくれる。  本作のラスト15分はそれだけ凄まじい印象を残し、涙無しでは観ることができなかった。  こういったラストの怒涛な盛り上がりが、更に溝口作品へのハマりを助長する。 ますます溝口から抜け出せない。 困ったもんだ。  むちゃくちゃ忙しい毎日なのに、困ったもんだ。 あー、困った。 溝口健二には困った。  これから一つでも多くの、美しすぎる溝口作品を観ていきたいと思う。
[ビデオ(邦画)] 8点(2007-09-02 11:10:09)(良:1票)
3163.  家庭 《ネタバレ》 
監督であるフランソワ・トリュフォーの自伝的作品シリーズ“アントワーヌ・ドワネルもの”の第四弾。 トリュフォー作品は何本も観たが、全体的には好みに合わない作品が多かった。 しかし、“トリュフォー=レオ”コンビによる自伝シリーズは別格だ。 『大人は判ってくれない』をはじめとして、『二十歳の恋』や『夜霧の恋人たち』と秀作ぞろいである。  本作の主人公ドワネルを演じるのは、あのジャン=ピエール・レオ。 元々かなり好きな俳優さんではあるが、このトリュフォー自伝シリーズ(ドワネルもの)においては、特に彼の魅力が発揮されているように感じる。 彼に男の“ダメダメぶり”を演じさせたら、右に出るものはいないからだ。 シリーズ前作『夜霧の恋人たち』で無事結婚したドワネルは、実に幸せそうな新婚生活を送っている。 この何気ない新婚生活を観ているだけでも、十分に楽しむことができる本作。 そして、撮影のネストール・アルメンドロスによる美しい映像も、花を添えている。 そんな中、日本人女性“キョーコ”さんというのが登場する・・・  この登場人物が実におそろしい。 どう恐ろしいかって? いやー、何とも表現しにくいが、トリュフォーによる日本人女性への偏見にみちたキャラなのだ。 まあこれはこれでジョークと割切れば、楽しく観れなくもないが・・・ (トリュフォー自身も、これに関連して、“失敗作”と本作を評価しているらしい。) この日本人女性に関するエピソードがあるせいで、日本においては他の“ドワネルもの”に比べて極端に知名度の落ちる本作。 このゲテモノとも言える日本人女性に関するシーン以外は、なかなか魅力がある本作だけに、実にもったいないはなしだ。 (追加) ちなみに、本作は思わずニンマリしてしまうシーンが盛り沢山。 例えば、主人公が電話をするシーン。 「ジャン・ユスターシュさんですか?」 そして、“キョーコ”さんがドワネルに残した置き手紙の内容。 「勝手にしやがれ!」 などなど。 なかなかやってくれます。
[ビデオ(字幕)] 5点(2007-09-02 10:54:33)
3164.  東京画 《ネタバレ》 
ヴィム・ヴェンダースが1983年に東京を訪れ、その際に彼自身が撮影した映像を元に、ドキュメンタリータッチで当時の東京を描いた作品。 ヴェンダース作品群の中にあっても、とりわけマニアック度の高い作品である。 ヴェンダースは小津安二郎を心底、敬愛しているらしい。 それはこの作品を通して強く感じることができる。 又、小津作品の常連であった俳優・笠智衆へのインタビューがこの作品の見所の一つでもある。 ヴェンダースが本作で訴えたかったことと言えば・・・ 敗戦後、アメリカによって文化を支配され国民性を奪われただけでなく、国民一人一人のアイデンティティまでも見失ってしまった日本。 流行の遊び、映画への価値観、人々の服装等、それら全てがアメリカ的価値観によって侵略され、日本人はアメリカ文化を世界へ広める為の道具となっている。 といった様な感じであろう。 ヴェンダースが小津の『東京物語』で観た東京の風景は、全てどこかに消え去ってしまっていたのだ。 又、パチンコや野球放送の垂れ流し等もかなり痛烈に皮肉を込めて映し出されている。 下らないテレビの放送内容を指摘した上で、“強制的に流れる暴力的ですらある映像”と評し、タモリ倶楽部のオープニング映像を流していたのには笑えた。 他にもパチンコという遊戯に対し、“人々はパチンコをして束の間の現実逃避を行っている。しかし、このパチンコというものから得られるものはほとんどない。”という痛烈な批評を行っていた。 多少ドイツ人から観た偏りのある“東京画”であることは否めない。 しかし、ヴェンダースが嘆き主張したかったことについては、非常に共感できた。 特に、アイデンティティの欠落した現代日本人の典型的な遊び(パチンコ、ゴルフ等)を指摘するくだりは、観ていて愉快痛快であった。 そうだ、肝心なことを書き忘れていた。 本作には唐突にヴェルナー・ヘルツォークが登場する。 これが“偶然にも出会った”的に登場するのだが、いかにも嘘クサイ。 それはそれとして、ヘルツォークだが・・・ 彼の創り出す作品も恐ろしいが、彼自身が何と言っても一番コワイ!! 「素材を求める為なら、私は宇宙にでも行く」 とか言ってる時の、彼の気合いに圧倒された。 やっぱりヘルツォークは奇人だった。 ドイツ人は変人が多いのか?! という様な偏見に陥るくらい強烈な人物であった。
[ビデオ(字幕)] 7点(2007-09-02 10:52:49)
3165.  昼顔(1967) 《ネタバレ》 
フランスの“色物的芸術映画の名匠”ルイス・ブニュエルの代表作。 同時にカトリーヌ・ドヌーヴの代表作と言っても、言い過ぎではあるまい。 それだけフランス映画としては比較的、知名度の高い本作。 その知名度の高さの理由としてヴェネチア映画祭で3冠に輝いたということも挙げられるだろうが、もう一つの理由は、やはりその内容の凄さであろう。 官能的で倒錯したそのシュールな世界は、観るものを淫靡でいて罪悪感たっぷりな世界へと誘う。 フランス映画と言うと「退屈」とか「理屈っぽい」とかのイメージがつきまとうかもしれない。 残念ながら、本作もその範疇を出る内容ではない。 でもそこら辺のフランス映画とは何かが違う。 個人的には、監督ブニュエルの持つ“変態性癖”の表現の巧さにその理由を見出してみた。 そしてまた、監督ブニュエルの笑ってしまう程の“脚”への執着。 ドヌーブは、そのお顔がどことなくガイコツじみていて、好みは分かれそうな外見だが、その脚の美しさに異論を唱える方は少ないであろう。 それだけ突出した脚線美を持つドヌーブが、惜しげもなく本作ではその美しすぎる脚をさらしまくるのだ。 ドヌーブは医者の妻役を演じており、金銭的には何一つ不自由はしていない。 しかし、“汚らわしい男に汚されたい”という性癖を持っているのだ。 その性癖により、ドヌーブは度々、変態じみた“夢”をみる。 屋外で木に縛りつけられてムチで叩かれたり、粗野な男に辱めを受けたりする夢だ。 もちろんこれは貞淑な妻であるドヌーブの“願望的な夢”である。 その性癖に基づく淫らな願望を実際に満たすべく、「娼館」に出入りし始める。 そこで乱暴な客に手荒に扱われながらも、感じてしまうドヌーブ。 いや、乱暴に扱われたからこそ感じたのだ。 ドヌーブには立派な夫がいたが、結婚してからというものの、一度も夫との情事はない。 というのも、「日常生活(夜)」では“不感症”であるからだ。 しかし「娼館(昼)」では、乱暴な客や変態嗜好の客に感じてしまうのであった。 そういった変態じみた性的倒錯エピソードが満載な本作。 多少は古臭さはあるが、イマジネーションを想起させるという意味では興奮度は高い。 それは過激な映像がみちあふれた現代においても、色褪せることはない。 いや、直接的過激映像が飽和した現代においてこそ、本作はその価値を発揮するのではなかろうか。
[DVD(字幕)] 6点(2007-09-01 23:59:45)
3166.  他人の顔 《ネタバレ》 
こちらの作品、久しぶりに観ていて思わずニヤリとしてしまう程の面白さ。 サスペンス的な展開とも相まって、終始画面に釘付けの状態となった。  何といっても最も素晴らしかったのは、入江美樹という女優さん。 とにかく美しい!! メインストーリーとは直接関係ないサイドストーリーの中で、精神病院で働く女性を演じているのだが、何故だか顔はまるでお岩さん状態なのだ。 左半分から見るととても美しいのだが、顔の右半分は見るも無惨な状態。 道でナンパされるのだが、そのシーンが印象的だった。  また、勤務している精神病院内では、痴呆らしき老人に後ろから抱きつかれるなど、散々な目に遭う。 最終的には兄と肉体関係を持ち、お兄さんへは「ごめんなさい。」の一言。 その直後、白装束で海へと入り、自殺してしまう。 こういったサイドストーリーまでもが全て印象的。 そして淫靡で残酷で怪しい雰囲気を醸しだしているのだ。  話をメインストーリーに戻すと・・・ 主人公の男性は精神科医にくってかかり、その挑発に精神科医も見事“応える”。 どういった形で“応えた”かというと、精巧なマスクを造り上げ、それを主人公に被らせ、別人として生活させていくというものだった。 これはいわば医者としての研究的な好奇心によるものであったのだ。 最初は抵抗していたものの、マスクのあまりの出来のよさに、心躍る主人公。 全くの別人になれる素晴らしき“他人の顔”を手に入れた主人公は、そこであることを思いつく。 それは、マスクを被り全くの別人になりすまして、妻を口説くというおそろしいものだった・・・  この作品を観ようと思われる人はそうはいないと思うが、一応これから先の部分は伏せておくことにする。 いずれにしても本作品は、私にとって久しぶりの“超お気に入り作品”となった。
[ビデオ(邦画)] 9点(2007-09-01 21:52:12)
3167.  イントレランス
「“映画の父”D・W・グリフィスの代表作という枠にとどまらず、サイレント映画、いや全映画の中でも避けて通るわけにはいかない歴史的傑作。」ということで、鑑賞することに決めた。 180分(実際は160分ちょいだった)ということと、4つの時代が平行して描かれる難解なプロットであることと、古い時代のサイレント映画という点から、かなりの決心が要った。 しかしながら、予想していたよりもすんなり作品に入っていくことができた。 そして何より、普通に楽しめたのが意外だった。   4つの時代が平行して描かれているとのことだったが、そのうち<バビロン篇>と<現代篇>しか、しっかりとは把握することができなかった。 その他の2篇は、最後の最後でやっと話を理解できた感じ。 逆に言えば、それだけ<バビロン篇>と<現代篇>に時間が割かれているわけである。  ちなみに、この作品の最大の見所は<バビロン篇>の“超巨大セットによる空中庭園”である。 正直、この巨大セットを観たくて、この作品を借りたようなもんだ。 映画通の批評を調べてみると、“現代のCGをもってしても、この巨大セットの大迫力に勝るものは創れないであろう”という意見が多かった。  そういうわけでドキドキしながら、観ていたのだが・・・ あまりにも凄すぎた・・・ というのが、率直な感想。 荘厳な音楽(この作品に付けられた音楽は、総じてかっこよかった)と共に、悠然と空中庭園が登場。 “俯瞰ショット”により、遠目から丁寧にその全貌を捉えていく。 わけのわからない、やたらに巨大な“像”が何個も庭園の中に建てられている。 そして、ことわるごとに、“この庭園は1辺が1.6KMある”とかいう、その巨大さを過剰なまでにアピールする字幕が挿入される。 この巨大さをアピールする字幕のしつこさも、なかなか笑えるポイントであり、この作品の肝でもある。 CGと違って、そこに実際あるものを撮っているという事実に基づく迫力は凄いの一言。 まさしく圧巻である。 私の様な好奇心旺盛な人間にとっては、大満足できる作品であった。  このセットを観れるだけでも、この“歴史的大作”を観る価値は十分あると思われる。 好奇心旺盛な方は、是非、ご覧になって下さい。 ただし、90年前の作品ですので、多少は体力を使いますが・・・
[DVD(字幕)] 6点(2007-09-01 21:48:02)(良:1票)
3168.  砂の女
安部公房という作家が原作・脚本を担当、そこにあの『切腹』でも音楽を担当した武満徹が効果的な音楽を提供している。  岡田英次はアラン・レネ監督の『二十四時間の情事(ヒロシマモナムール)(1959)』を観た時に初めて知った俳優だが、アラン・レネの作品自体が趣味に合わなかったということも手伝って、あまり良い印象は持っていなかった。  しかし、本作『砂の女』においてはかなりの個性を発揮しており、その印象は“なかなか味のある俳優だなぁ”というものへと変わった。  そこに対するのは、私の年代の人達にとっても比較的著名な岸田今日子である。  もちろん、私が知っている彼女は“おばあちゃん”な岸田今日子。 こんなに若くて妖艶な彼女に出会ったのは、今回が初めてである。   まずオープニング・タイトル(キャストとスタッフ等の表示)からしてインパクト大。 この時点で、本作に対しただならぬものを感じてしまった。  それは、強いて言葉で表現するならば、  “オープニングでキャスティング等が表示される度に、ハンコ(印鑑)がガツンガツンと表示され、そこに独特の効果音が重なる・・・”  というものなのだが、なかなか言葉では伝えにくい類いの演出なので、興味を持たれた方は一見して頂きたい。  かなりサスペンス的要素が強い作品であり、その点だけでも十分楽しめるのだが、最終的には人生哲学的なテーマにまで話が及んでいくという、広範な守備範囲を持つバランスのとれた逸品である。
[ビデオ(邦画)] 7点(2007-09-01 21:45:42)
3169.  ロベレ将軍
本作は、ヴェネチア映画祭で金獅子賞(グランプリ)を獲っているにも関わらず、他のロッセリーニ作品と比べると知名度としては多少落ちるものがある。 しかも獲られた年代も1959年ということで、かなり後に獲られた作品だ。 全盛期的なイメージのある1940年代ですらあんまり楽しめなかったのだから、そんなに晩年の作品じゃあ大したことはないだろう・・・と踏んでいた。 しかし、映画好きの方々の評判をチェックすると、ロッセリーニ作品の中でも本作は、一際評価が高いのだ。  歴史的背景を熟知していないと、完全にはそのストーリーを理解することはできないであろう内容であり、私もそんなに世界史には精通していないので、ところどころ理解できない部分があった。 しかし、その様なレベルの鑑賞者さえも十二分に楽しませるだけのパワーがこの作品にはあった。 特に主演のヴィットリオ・デ・シーカの演技が素晴らしい。 デ・シーカと言えば名作『自転車泥棒』の監督というイメージが強く、まさかこんなに演技がうまいだなんて思ってもいなかった。 しかしそれは単に私が無知であっただけで、デ・シーカは元々、プロの俳優として映画界に入ってきたとのこと。 そして本作は、そのデ・シーカとロッセリーニが初めてタッグを組んだ作品でもあるのだ。  どこかのサイトで誰かがこう評していた。 「イタリアン・ネオ・リアリズモのニ大巨匠、ロッセリーニとデ・シーカが、イタリアとイタリア映画の意地を大いに見せ付けてくれた名作」 であると。 まさしくその通りに感じた。 又、デ・シーカ役の軍人と敵対する国の大佐を演じた、ハンネス・メッセマーの名演も光っていた。 これがとてつもなくかっこよい。 一発で彼のファンになってしまった。  132分という長尺である為、さすがに途中で多少だれるが、後半はまた息を吹き返し、展開も一気に変わってくる。 前半と後半とで、主人公の雰囲気が全く変わってくるのも観ていて楽しかった。 最後はあっと言わせる展開があり、底知れぬ余韻を残す。 それはあの『無防備都市』をも上回る素晴らしいラストだった。
[ビデオ(字幕)] 8点(2007-09-01 21:42:56)
3170.  アンナ・マデリーナ
大好きなケリー・チャンと金城武の二人が共演する、香港を舞台にしたラブストーリー。  二人が共演している作品は、本作を含めて3作品のみ。 そのうち、『世界の涯てに』と『ラベンダー』は既に鑑賞済だったので、まだ観ぬ二人の共演作は、本作で最後となってしまった。  『世界の涯てに』『ラベンダー』共々、どちからと言えば主演二人の魅力を引き出すことをメインに作られていた感があり、作品としてみるといまひとつの感が否めなかった。  だけど、二人のファンである私にとっては、それで十分楽しむことができた。   ケリー・チャンはいつの時代の作品を観ても、そんなに極端には変わらない(全然歳を取らない!現在も尚美しい!)が、金城武は歳を重ねるに従い、雰囲気がかなり変わってきたように思う。  本作では、まだかなりの若々しさが残っており、まだヒゲもそんなに青くはない。   本作での二人は、『世界の涯てに』や『ラベンダー』と比べると、それほど綺麗に、又はかっこよくは撮られていないように感じた。  その代わり、作品自体の出来は、『世界の涯てに』や『ラベンダー』より良かった。 何より、普通に楽しめたのが良かった。  ただ、細かい面を言えば、少し作りが雑かなぁ、と思えるシーンも多く、洗練度という点ではイマイチかもしれない。  後半で、金城武演ずる主人公の書いた“小説”の再現シーンが流れるのだが、これが作品全体のバランスとリズムを崩すくらい冗長だった。  でも、そういった荒削りな面はあるにせよ、最後は最後でなかなか感動させてくれるし、観た後の気分もなかなか良い。  これで『世界の涯てに』や『ラベンダー』の様に、二人の魅力がうまく撮られていれば完璧だったのだが・・・   2000年以降、ケリー・チャンと金城武の共演作は一つも撮られていない。  ケリー・チャンはまだまだ大丈夫そうだが、金城武が“おじさん”っぽくならないうちに、もう一作品くらい共演作を観てみたい。 二人のファンである私は、それを強く望んでいる。   ちなみに同じく大好きな俳優であるレスリー・チャン(故人)も本作ではチョイ役ながら出演している。  そういう意味でも、本作はかなりのお気に入り作品となった。
[ビデオ(字幕)] 7点(2007-09-01 21:41:11)
3171.  アンダルシアの犬 《ネタバレ》 
1928年製作の古典的な作品を鑑賞。  フランス人監督ルイス・ブニュエルに画家のサルヴァドール・ダリが絡むことにより生まれた、映画史上に残る作品、とされている。  しかし上映時間は17分。 いくらなんでも短すぎる。  世間的な批評では、その短い時間の中に凝縮されたシュール・レアリズムが刻み込まれている、みたいな表現により、その内容の素晴らしさを表現した批評文を多く見受ける。  しかし、世間でとり立たされるこの作品について“名シーン”といえば、“眼球を剃刀で真二つにされる女”とか、“ピアノの上に横たわる気味の悪い動物”とかが大体のところだが、これ以外のシーンについては、意外と落ち着いた感じのシーンがほとんどであったりする。  つまり、全体が17分と極端に短いであるにも関わらず、全編に渡って緊張感がみなぎっているわけではなく、世間でとり立たされる問題のシーン以外は、大したインパクトを持っていないのだ。  もちろん、1920年代製作の作品であるからして、その時代を鑑みれば、これだけでも十分な内容なのかもしれないが、あくまで“現代も色褪せないそのインパクト”と呼ばれるには、少し不満な内容であった。   ただ、その中でもお気に入りのシーンが一つある。  それは、“少年が街のど真ん中で、チョン切れた腕を箱から出して、それを衆人環視の中で突付く”シーンである。  個人的には、その突付く“箇所”が妙に気になってしまった。  チョン切れた腕を普通に突付くのではなく、チョン切れた腕の、その切れ目の辺りのグチャッとした部分を突付くのだ。  これがまた微妙にだけど、気持ち悪い。  おそらく、このぐちゃぐちゃした箇所をつつくという部分において、監督の特別なこだわりも無いであろうし(多分)、大した意味もないだろうけども・・・  ま、こんな観点でこの作品を評している人はまずいないであろう。  しかし、この作品の有名なもろもろのシーンより、個人的には、このシーンが妙に気になったりしたのであった。
[DVD(字幕)] 4点(2007-09-01 21:38:24)
3172.  ニライカナイからの手紙
綺麗な映像の数々ではあるが、そもそも実際の“竹富島”という島の光景自体がとても綺麗なものなので、これは“そのまま美しく撮れている程度”にすぎない。  つまりは、映画作品として考えるならば、もっと美しく撮れていなければ不足なのではないだろうか。  語弊はあるかもしれないが、“現実の美しさを過大に表現した映像”を期待していたのだ。  そういう観点からすると、“映像”に関して言えば、いまひとつというところだろうか。   しかし、もっと問題だったのは、映像以外の演出レベルに関してだ。  現地の人を採用し、リアリティを出したであろうことは容易に推測がつく。 しかし、もう少し演技指導をつめて欲しかった。  それに、あまりにも子役の演技がひどすぎるのも難点。 子役といえど、最低の演技レベルはクリアーしていて欲しかった。   そして、何と言っても一番問題なのは、“竹富島”を舞台にするシーンが前半の40分で終わってしまうことだ。  2時間近くある上映時間の中で、“竹富島”を舞台に繰り広げられる時間帯は、最初の40分だけなのだ。 その後は、主人公が東京に渡ってしまう為、主な舞台は東京になってしまう。  これは、普通の作品ならば、別に何も問題とするところでないであろう。  しかし、この作品を観ようと思った人達は、きっと“ジャケット”やその“タイトル”から、“美しい竹富島でのおはなし”を期待し、この作品を選んだに違いない。  なのに、この時間配分は一体・・・   出来栄え的には難点の多い本作ではあるが、“竹富島の美しさ”と“そこに住まう人々の素朴”さ、そして“その独特なる文化”を伝える作品であるという点において、非常に評価できる作品であると感じたからだ。   “竹富島”が好きな方、“竹富島”に行ってみたいと思っている方には、是非オススメしたい邦画である。  そして、主演を演じた“蒼井優”であるが、特別に美人であるとか、演技が上手というわけではないが、独特の魅力を持った女優さんだと思った。 今後の彼女の活躍に期待したい。→映画『フラガール』でブレイクしたようですね!おめでとうございます!
[DVD(邦画)] 6点(2007-09-01 21:36:56)
3173.  残菊物語(1939)
池袋の新文芸坐にて鑑賞。  本作は、1939年公開の溝口健二監督作品である。   146分という長尺も合点のいく、まさに力作であった。  特に、全編を通して貫かれている、“1シーン1カット”という撮影方法により生まれる、“長回し”シーンの数々に圧倒される。  長回しといっても、それは実験的な長回しであったり、観客を驚かせる為の遊び的な長回しという感じではない。  監督とカメラワークと演じる俳優とが力を結束し、又、それぞれがプロであるからこそなせるものであった。  全編を通して貫かれる、その一貫した撮影スタイルに、溝口監督の強いこだわりと執念を感じた。
[映画館(邦画)] 9点(2007-09-01 21:34:52)
3174.  ブロークン・フラワーズ
「カンヌ映画祭グランプリ」という部分からみれば少し物足りなかったかも。  冒頭の、“ジャン・ユスターシュに捧ぐ”という文字が出た瞬間が、自分のテンションとしては最高潮であった。  この文字が出た瞬間に深い感銘を受けたのは、あれだけ観客がいる中で何人いただろうか。  映画内容より、そのことの方が気になる私であった。
[映画館(字幕)] 7点(2007-09-01 21:33:09)
3175.  ぼくの小さな恋人たち
なんともいえない余韻を残す、ユスターシュの美しき遺作。  あまり観ている人は多くないであろうユスターシュの作品。 フランス映画っぽいけど、他のフランス映画とはどこかが違う。 何が違うのかよく分からないけど、何故か観ていて飽きない。  フランス映画って、雰囲気は良くても、観ていて飽きてしまう作品が少なくない。 その中にあって、ユスターシュ作品は観ていても時間を感じさせないのだ。 でも、その理由は全く分からない。 摩訶不思議だ。 この不可思議さが、この監督の最大の謎であり魅力でもある。  さて、本作はそのオープニングからして心を奪われた。 淡いピンク色の文字に、背景にはフランスの美しい村の映像。 そしてバックに流れるシャンソンな歌。  映像に関しては、ヴィスコンティ作品の様な豪奢感のあるTechnicolorでもないし、現代のDVD映像の様なシャープさがあるわけでもない。 だけど、それらにも劣らない美しさが本作にはある。 全く飾り気ないのに、それでいて美しいのだ。 センスがいい人が、ストレートに画を撮るとこうなるのかな。 とにかく観ていて心地のいい映像の数々。  そして、出演者がみな美しい。 男女に限らずだ。 来ている服もさり気なく美しいし、センスも抜群。 ココ・シャネルがどうのとか、モードファッションがどうのとか、そういう類いの“衣装”の美しさでは決してない。 あくまで出演者の着ている“服”が、自然でいてセンスがよく、ユスターシュが描く本作の世界観にマッチしているのだ。 特筆すべきは、主演の幼い男女二人。 とても画になる二人。 こういうのを観てると、自分が日本人に生まれたのを恨めしく思うね。  思春期特有、特に男子に特有の「歯がゆさ」というか「やりきれなさ」みたいなものがうまく表現されている。 それは痛々しいほど繊細に描かれていて、観ているこっちも辛くなるほどだ。 これはユスターシュの自伝的作品であるとも言われており、彼の思春期の頃の想いを垣間見ることができる。 若くして自殺したユスターシュ。 あぁ、もっと彼の作品が観たかった。
[ビデオ(字幕)] 9点(2007-09-01 21:31:49)(良:1票)
3176.  憂鬱な楽園
ホウ・シャオシェン監督としては珍しい「現代」を舞台にした作品。  彼の作品といえば、「過去」や「想い出」を映像化したものがほとんである。 「現代を舞台にした作品を撮るのは苦手」と、ホウ監督自身もインタビューの中で語っている。  実際、彼の作品の中で広く一般的に評価を受けている作品は、「過去のある時代」が舞台となったものばかりだ。  逆に現代を扱った『珈琲時光』などは、高い評価を受けているとは言い難い。 (もっとも、私が一番好きなホウ監督の作品は『珈琲時光』だが。)  「現代の東京」を描いた作品が『珈琲時光』ならば、「現代の台湾(台北)」を描いたのが本作だ。  私としては期待しないわけがない。   本作の撮影担当は『夏至』のリー・ピンビン。  クリストファー・ドイルの映像も個性的で大好きだが、リー・ピンビンの映像もそれに勝るとも劣らないくらい素晴らしい。  リー・ピンビンの撮る映像はドイルと比べれば控えめな印象はあるものの、透明感があって瑞々しさに溢れており、とても美しい。  “熱帯の緑鮮やかな台湾をリー・ピンビンが撮っている”というだけで観る価値のある作品である。  そして音楽。  メニュー画面にも流れている、この作品の「テーマ曲」がある。 その他、車で郊外へ飛ばすシーンや、バイクで山をぐんぐん登るシーンなどで使われている。  テクノ調の曲なのだが、本作を見終えた後もかなり耳に残っていた。 元々、テクノ調な曲が好きってのもあるけど、テーマ曲に関してもかなり気に入った。  映像と音楽が自分の感性とぴったり合っていて、観ていてとても心地良かった。  途中、「置時計」がかなり長い時間をかけて撮られているシーンが出てくる。 ストーリーとは全く関係のないワンシーンなのだが、とても透明感があって美しかった。 それも印象的だ。  しかし、ストーリーはなんてことはない。 だらだらと台湾のチンピラの生活が描かれているだけだ。  でもそんなことはどうだっていい。 ホウ監督の映画でストーリーを追ったっていいことはない。  台北の夜景、熱帯の緑鮮やかな風景、美しい置時計に、美しい女性歌手、そして強引に挿入されるテクノ音楽。  そしてそれらとコラボするリー・ピンビンの創り出す映像世界。  そういったものを楽しむべき作品である。
[DVD(字幕)] 7点(2007-09-01 21:30:25)
3177.  サヨナラ COLOR 《ネタバレ》 
新文芸坐の「気になる日本映画達〈アイツラ〉2005」に本作が含まれていたので行ってみた。  竹中直人の監督5作品目にあたるラブストーリー。 ヒロインは、竹中直人がプライベートでも憧れていたという原田知世。  竹中作品は、今まで『無能の人(1991)』『119(1994)』『東京日和(1997)』の3作品を観てきた。  その中でも、本作『サヨナラCOLOR』は、自分的に一番のお気に入り作品となった。  世評では、“竹中直人の独りよがり的な映画”という厳しい意見も聞かれたが、私はむしろその点が気に入ったのだ。   癌におかされた未知子(原田知世)は、かつてのクラスメートだった正平(竹中直人)の病院に入院してくる。 そこで彼女の主治医となったのが正平だった。  だけど彼女は彼のことを憶えていないと言う。 学生時代からずっと想いを寄せていた正平はそれを聞いてショックを受けるが、学生時代には相手にもされなかったクラスのマドンナと、こうしていつでも話しができるのが嬉しくてたまらなかった。  そして日ごと打ち解け、手術前には逆に彼女からのプロポーズを受けたのだった・・  しかし実は正平も癌だった。 そして彼女を熱心に診たがために、命を落とすことになる。  悲しさに涙を流す未知子。 かくして、未知子にとって正平は永遠の存在となったのだ。  これはまさに男にとっての理想の死に方である。 自分がずっと憧れてきた女性に最後はプロポーズされ、そして死んだ後も彼女の心の中にずっと存在し続ける。  だけど、残された女性の立場からすればたまったもんじゃない。 せっかく好きになったと思ったら、先立たれてしまうのだから。 ずっとこれから彼の面影を背負っていかなければならないわけだし。   この日、同時上映された作品が『トニー滝谷』という作品だった。  この作品は本作とは全く逆で、“愛する女性を失い、その面影をずっと追い続ける男”の話だ。  女性の方に勧められて観たのだが、辛いだけであまりいい印象は残らなかった。 女性にとってはいい映画にうつるかもしれないけど、男の私からしたらあまりに切なすぎて後味が悪すぎるのだ。  『サヨナラCOLOR』と『トニー滝谷』という、男女の立場が全く正反対な作品を同時上映。 このスケジュールが意図的に組まれたのだとしたら、“新文芸坐恐るべし”だ。
[映画館(邦画)] 7点(2007-09-01 21:28:39)
3178.  ママと娼婦 《ネタバレ》 
ええ?!ジャン・ユスターシュの傑作に今までレビューゼロですか?! それがまず残念です・・・ さて気を取り直して、単独レビューを開始致します。  “ゴダールが認めた最後のヌーヴェル・ヴァーグ作家”と言われるジャン・ユスターシュの大長編力作。  主演はヌーヴェル・ヴァーグの常連俳優であるジャン=ピエール・レオ。  彼は印象的な作品にばかり出ている俳優さんだ。 その中にあっても、本作における彼の演技はずば抜けて印象的だった。   この作品における彼の役どころは、いわゆる“ヒモ”。 仕事もせずに年上の女性と同棲している。 もちろんそこは彼女の家だ。  ところが、彼には本命の女性がいる。 その女性に求婚するも、断られてしまう。  そこでナンパを決行する。 ナンパした相手は看護婦だった。  その看護婦と深い仲になった彼は、平気で同棲相手の家にその看護婦を連れ込んだりしている。  同棲している年上の女性はそれが我慢ならないが、年上の弱味だろうか、何となく許してしまうのだった・・・  とまあ、こんな感じで“淡々”と話は進んでいくのだ。   しかし、それにしてもあまりに長い。 何と上映時間は怒涛の“220分”。  170分くらいまでなら何とかなるが、どんな内容でもさすがに200分越えはしんどい。  しかししかし、何でだろう、しんどいと思いながら最後までスルスルと観れてしまったのだ・・・  これがジャン・ユスターシュという監督の魅力なのだろうか。 摩訶不思議な映画だ。  男女の日常が延々と描かれるだけの内容。 でも、最後までグイグイとひっぱられてしまうのだ。  “長い長いと思っていたら、いつの間にか220分経っていて、長いんだか長くないんだがさっぱり分からずじまいの映画”  と言ったら分かりやすいかもしれない。  それとこの作品、とにかくセリフが多い。 主演のジャン=ピエール・レオなんか、ずっとしゃべりっぱなしだ。  こんだけ尺の長い作品なのに、これだけのセリフの多さ。 さぞかし、この作品の撮影は疲れたであろう。  ジャン=ピエール・レオの、その“プロ根性”に心から敬意を表したい。
[DVD(字幕)] 8点(2007-09-01 21:27:09)
3179.  ゴダールの決別 《ネタバレ》 
DVD裏面の解説には、「ゴダール映画史上、最難解作品!」と書いてある。 その為、“ゴダールと決別するのに相応しい作品”と心の中に決めていた。  この作品を観てとことんゴダールを嫌いになり、きっぱりさっぱりゴダールを忘れてやろう!という寸法だ。  そうは言っても、かなりの数のゴダール作品を観てきた私である。 難解な晩年のゴダール映画には慣れてきたつもりだ。  「どんだけ難解なんだろう」と、逆に期待をしながら、いざDVDの再生ボタンを押したのだった・・・   さて始まった。  いつもの“晩年のゴダール作品調”全開だった。 具体的には、  ・唐突に挿入される画面いっぱいの文字(黒地に白い文字)。 ・いきなり流れるクラシックなBGM。 ・登場人物とは無関係に挿入される、気色の悪い音声(ガラガラ声)。 ・やたらに綺麗な森の風景。 ・海の風景。 ・意味なく乱暴な動きや振る舞いをする登場人物。 ・いきなり裸になる女性達。 ・哲学的な言葉のむやみな引用。  などなどだ。 (ただし、今回は「鳥の鳴き声」みたいなのは無かった。)  しかし本作には、今までとは明らかに“違う”ことがあった。 それは、“あまりの難解さ”加減だ。  いやいや、これはいよいよ全くもって訳が分からんぞ。 さすがに焦ったね。  その他の晩年のゴダール作品は、難解な部分やセリフ回しがあっても、全体の中の一部分でしかなかった。 それがこの作品においては、全てがそんな感じなのである。  よくもまあ、こんだけ訳の分からんシーンを84分も“数珠つなぎ”にできたもんだ。 呆れるを通りこして、感心するばかりである。   ただし、この作品、ただ難解なだけではない。 とにかく映像が美しいのだ。  他のゴダール作品と比べても、圧倒的に素晴らしい。 ゴダール作品の中で“最も美しい作品”だと私は感じた。  映画レビューサイトでも誰かが書いていたが、「字幕なし」で観たら最高だろう。 まあ、かと言って、それを実践するほどの魅力を感じた訳ではないが。   さて、かくして私は、この作品にて“ゴダールとの決別”を果たしましたとさ。  だって、84分という短い尺なのに、観るのに「映画3本分のエネルギー」を使ったからね。  もういいよ、ゴダールは。 さようなら、愛すべきゴダール。
[DVD(字幕)] 4点(2007-09-01 21:24:37)
3180.  乞食/アッカトーネ 《ネタバレ》 
イタリアの名匠、ピエル・パオロ・パゾリーニの監督デビュー作。  主演は、パゾリーニ映画の“常連”であるフランコ・チッティ。 この人の顔は何度も見たことがあったけど、顔と名前をしっかり憶えたのは今回が初めて。  他の作品でもかなりの個性を発揮していた彼だが、本作においては主役ということもあって、存在感ありまくりだ。  舞台はローマのスラム街。 主人公であるアッカトーネは職にも就かず、プラプラと日々暮している。  彼の経済的根拠は“ヒモ”。 要するに、自分は毎日遊び呆け、女性に食わせてもらっているのだ。 なんという羨ましい暮らしぶりだろう。  「仕事なんて堕落した人間のすることだ。」  と、彼は劇中でのたまう。 なかなか哲学的なプータローだ。  自分も多分にプータロー気質な部分があるからして、こういった「怠け者の若者」を題材にした作品は、それだけで自分のツボにハマってしまう。   袖まくりをしながら、ガタイのいい(体格のいい)彼は街をブラブラとしている。 ロクに働いてもいないのに、無意味に体格がよろしい。  とあるきっかけで肉体労働を一日だけすることになるが、すぐにバテテしまう。  あのガタイは一体、何の意味が! 見かけ倒しかよ、おい!  そんなとこも自分に似てて楽しかったりする。  そんな彼もついには奥さんに見捨てられ、家を追い出されてしまう。  それでも彼は働かない。 ガタイを活かさない。  しかしながら、さすがにそんな彼でも飯なしでは生きていけない。  「お腹が空くのは、食べることが習慣になってしまった証拠だ。」  と、またしても哲学的なことをのたまうが、要するに腹ペコな彼。 ついには、子供をあやすフリをして、子供の首にかかったネックレスを盗んでしまう。  そうして堕落の道をひたすら突き進んでいくのだが・・・   後期の彼の作品群に比べると、過激な描写はほとんど無い本作。 それだけに、パゾリーニの描き出す独特の映像世界にどっぷりと浸ることができた。  パゾリーニ映画のモノクロ世界は、見ていてとても心地良くなる。 彼の作品群の中で、それを最も強く感じさせたのは、この『アッカトーネ』という作品だった。  巷のレビューサイト等で、非常に評判が良かった為、観ることを決めた本作。 どうやらその「口コミ評判」に間違いはなかった様だ。
[ビデオ(字幕)] 8点(2007-09-01 21:17:59)
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