21. スクール・オブ・ロック
《ネタバレ》 ジャック・ブラックによるロック版『いまを生きる』。だが、当然のごとくコメディに比重が置かれ、深さはない。プロットも大雑把で、決して出来はよくない。なのに……なぜなんだろう。クライマックスのコンテストシーンで鳥肌が立ち、全身が小刻みに震えだし、急に目頭があつくなってきた。そう、やっぱり映画って理屈じゃない。脚本の理屈では「そこそこ」でしかなくても、そこに「魂」が吹き込まれると、映画の奇跡が起きる。ブラック&ホワイト万歳! 9点(2004-05-28 23:10:07)(良:3票) |
22. g@me.(2003)
《ネタバレ》 原作は東野圭吾にしてはやや凡庸な出来。当然、映画も少々こぢんまりとした印象。しかし、原作を更に押し進め、「騙し愛」のコンゲームに仕立て直した井坂演出・尾崎脚本はなかなかの味わい。ラブ・ストーリーパートにリアリティが欠如しているのが残念だが、B・ワイルダーの傑作『サンセット大通り』を意識したオープニングから二転三転の結末まで、娯楽サスペンスとしては充分楽しめた。特に石橋凌の存在感が圧巻で、「このゲームにはいささか自信があるんです」のセリフに、背筋に電流が走った。とはいえ、藤木直人はどうにかならないのか?セリフはもちろん、主人公の心理の流れを無視したさわやかスマイルには一気に醒めてしまう。難点はあるが、作品全体としては原作を超えようという製作陣の意気込みに惚れ込み、少々甘めに8点献上。※あっ、藤木直人をくさしてばかりだと悪いので、一つだけ感心したことを。キスがよかった。最近のタレント達のキス・シーンは唇を軽く触れるだけのものだが、本作では、漢・藤木、唇かみかみしてた!……って、単に仲間由紀恵と楽しみたかっただけかもしれないけど(苦笑)。 8点(2004-05-22 13:05:05) |
23. バイオハザード(2001)
《ネタバレ》 観客=プレイヤーという視点が使えない以上、ゲームを移植する感覚では映画化できない。そこで、少しでも主人公=観客と近づけるために記憶喪失サスペンスとして再構築した点は高く評価したい。P・T・Aと区別するため、「冴えない方の」などと揶揄されていたP・アンダーソンとしては会心の出来といってよいSFアクションには仕上がっている。それにしても、ミラを撮る視点がイヤらしすぎないか、アンダーソンくん? 7点(2004-05-09 19:15:31) |
24. π(パイ)
ここで取り上げられている題材が理系受験生レベルかどうかも判断つかない文転組の俺。しかし、映画だから必ずしも本当に最高難度の数学である必要はないとフォローしつつも、やはり展開にはのめり込めなかったのは事実。主人公の苦悩の本質が今ひとつはっきりしてこないんだよね。とはいえ、独特の映像感覚には引き込まれたので、点数としてはこんなものかな。 5点(2004-05-09 19:08:36) |
25. PERFECT BLUE
アイドルのストーカーを巡るサスペンスに引き込まれながらも、どうしてアニメでやる必要があるのかと中盤まで解せなかった。しかし、クライマックスに至り、アニメだからこそできる仕掛けが明らかになり、思わず納得。テーマも実写を観る者よりもむしろアニメおたくにこそ合っている。アニメおたく達のニーズがあるかはわからないが。ともあれ、自分のジャンルの特性を考えないクリエーターが多く見受けられる昨今、本作のスタッフの真摯な姿勢を是非とも見習ってもらいたい。 8点(2004-05-09 19:01:05) |
26. パーフェクト ストーム
w・ペーターゼンのダイナミックな演出のおかげで、決して飽きはしない。しかし、見終わって人間ドラマとしての余韻が何も残らないのも事実。一つだけ出発前の酔っぱらいのセリフに共感できるものがあったが、もう忘れてしまったので引用できず。そのため見返してみようかと思ったが、やはりそこまでするほどでもないな。M・ギブソンが断ったのも納得がいく薄いプロットが致命的。 4点(2004-05-09 18:51:27) |
27. 木更津キャッツアイ 日本シリーズ
《ネタバレ》 まずは自分の立場を明確にしてからレビューへ。『IWGP』が気に入り、TVドラマ『木更津~』も観たが、あまりのテンポの悪さ(画面展開が早い=テンポがいい、ではない)に辟易。その後、時々観ていたが、「余命半年の青年の青春を明るく描く」というコンセプトのよさは認めるものの心情を描けぬ脚本に飽き飽き。その後、クドカン作品は初回だけは観るがやはり辟易し、リタイアという経歴を持つ。そんな俺だからだろうが、この映画にはやはりノレず。そもそもクドカンはコメディとコントを勘違いしていないか? 岩松了・船越栄一郎らの出オチや、何度も蘇生する主人公。これじゃ、死と向き合う青年とその親友達の心情なんか描けるわけがない。だから、島で親友達が深刻な顔で主人公の死体を見つめても滑稽なだけで、どんどん不愉快になってくる。そして、ドラマの縛りゆえ表裏構成を踏襲していたがこじつけばかりで、ちょっと話が進む度に後戻りし眠気を誘う。わざわざ見せなくても観客はバカじゃないから、裏で見せてることはほとんどわかってるって!(ゴミンゴは別だが)極めつけはユンソナとの恋。余命半年の男が結婚?!そんなふざけた話があるか?ユンソナからもちかけられて苦悩するならわかる。また、組長から偽装結婚を持ちかけられてという『ラブレター』『グリーンカード』的な設定ならわかる。しかし、真実も打ち明けられず、ただ結婚話だけを進めていく青年は、好感どころかエゴ丸出しのしょうもない男としか受け止められない。俺は荒唐無稽な設定がダメと言っているのではない。アメリカのくだらぬおばかコメディにも主人公の心理劇としての側面があるんだ。だからギャグが活きてくる。クドカンよ、『ゼブラーマン』もそうだったが、そろそろ「ドラマ」とは何か真剣に考えてみてくれ。せっかくのセリフのセンスもこのままでは、『IWGP』のような骨格がある原作ものでしか活かせないぞ。0点と言いたいとこだが、役者陣の元気の良さに免じて甘めに2点献上。 2点(2004-05-09 18:38:03)(良:2票) |
28. ゼブラーマン
現場で直感で脚本を大幅に変更することで有名な三池崇史。賛否が分かれるところだろうが、発売されている宮藤官九郎の脚本と比較してみると、三池が脚本の弱点を補うべく適切にセリフ・シーンを補完しているのがよくわかる。元々の脚本では家族の扱いがぞんざいすぎる。しかし、その三池でもプロットの根本的な欠陥である真のヒーローに進化していく理由まではごまかすことができなかったようだ。と考えていくと、理に叶わないこの脚本はスピーディにノリで押し切る演出が必要であり、堤幸彦演出を希望する【うさぎ】さんの指摘はもっともだ。クドカンはもっと人間ドラマの構築と向かい合わないと、堤幸彦以外との仕事は上手くいかなくなるのではないか? とまぁ、クドカンファンが読んだら怒りそうな批判ばかりですみません。ちなみに俺のご贔屓の三池監督も切れ味という点では今回は鈍かった。特にラストシーンの大観衆の空々しい喝采ぶりは『サラリーマン金太郎』の悪夢再びという感じ。それでも高得点をつけるのは、ゼブラーマンという発想の素晴らしさと鈴木京香ほどの女優がゼブラナースを熱演していたから。ある意味、ヌードやベッドシーンより勇気が必要だったのではないか? そして、水木一郎アニキの熱い歌声にもしびれたぜっ! 7点(2004-05-06 17:37:29) |
29. パーフェクト・カップル
どうもM・ニコルズとは相性の悪いおいら。史上最低の主人公を描いた『卒業』にだけ妙に共感できたのだが、それはまた別の話。(興味を持たれる方が万が一いたら、『卒業』のレビューを参照のこと)この人の欠点は、人間の弱さを描く際に妙にシリアスになってしまうことではないか? それもかなり中途半端な。もっと軽いノリでこの大統領予備選を描いていたら、きっともっと楽しめるものになっていたに違いない。役者陣は概ね好演していたので、甘めに採点。 6点(2004-05-06 17:09:49) |
30. バートン・フィンク
《ネタバレ》 コーエン兄弟の作品は、一見不条理に見えて意外に理に落ちてしまうことが多い。本作はその典型例である。しかし、脚本家が避けることのできない創造の苦悩を、夢という媒体を用いて観客にも追体験させていく仕掛けはうまい。これから観る人は理屈を考えずに、コーエン兄弟が生み出すヴィジュアルイメージに身も心も、そして脳もゆだねるのがいいだろう。とはいえ、そこかしこに「論理」が現れてくるので、クローネンバーグの『裸のランチ』ほど世界に酔うことはできないのが難点だが。 というわけで、作家追体験ソフトとして皆さんには、『バートン・フィンク』→『裸のランチ』→『アダプテーション』の3点セットをおすすめしたい。 体験談:今まで凡人だと思ってた私もこれですっかり脚本家になった気分に浸っております。でも、やっぱり脚本家になったらなったで苦しみっぱなしでもう死にたいです……。 恭人さん(仮名) 32歳 7点(2004-05-06 16:57:21) |
31. バーニーズ/あぶない!?ウィークエンド
アイデアは面白いが、今ひとつプロットが膨らんでいかなかったのが残念。もっともっと仕掛けられる題材だったとは思うのだが。あわてふためくA・マッカーシーはなかなか魅力的。 5点(2004-05-06 16:56:13) |
32. ハードネス
みなさん言う通り、女版『ダイ・ハード』……まんまです。そして、本家でベトナム戦争自慢をしていたあのR・ダヴィも出ています。まぁ、それも大したウリにはならないのだが^^;。 3点(2004-05-06 16:35:19) |
33. ハートブルー
囮捜査で知り合った男二人の友情物語。もっといくらでも面白くなりそうな題材だが、丁寧に心情を描こうとしたため、結果中途半端になってしまった。やはり、アクション映画としてもっとプロットもダイナミックに動かしてほしかったものだ。それはさておき、当時「この世でもっとも美しい男」としてキアヌーを売り出していたのに違和感を覚えたのは俺だけか?! どう見てもA・ドロンの足元にも及ばない。まぁ、俺よりかっこいいのは間違いないんだが……(あたりまえ)。 3点(2004-05-06 16:31:33) |
34. バードケージ
まぁ、R・ウィリアムズとN・レインを見ているだけで充分楽しめる。特にN・レインは『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』でもこの役を意識した感じでカメオ出演していた位、ハマリ役といってよい。しかし、何かしっくりこない。と思ったら、これ、M・ニコルズなのか。やはりコメディとしてのはじけ方が今ひとつこなれていず、硬いのが難点のようだ。もっとドライな味付けであれば、もっともっと面白くなったはず。惜しいっ! 6点(2004-05-06 16:24:53) |
35. バード・オン・ワイヤー
今思うと、『張り込み』の大ヒットを契機にこの辺りからJ・バダムが職人化しだした。そして、M・ギブソンとG・ホーンというあんまりな組み合わせでも文句を言わず、それなりに仕上げていく手腕はさすが。定石通りのゆるい脚本に資質が全く違うキャスト2人なので、バダムでなければ大惨事になっていたのではないか?とはいえ、やっぱり何も記憶に残らないアクション・ラブ・コメディであることに違いはない。 5点(2004-05-06 16:17:45) |
36. ハード・ウェイ(1991)
当時はJ・ウッズを『ヴィデオドローム』でしか知らなかったおいら。ぐちょぐちょ銃を持った刑事とさわやかBOYマイケルってどういう組み合わせだ、と驚いた記憶がある。しかし、さすがは職人監督J・バダム!程良いさじ加減で軽妙なバディムービーとして仕上げていて心地よい。「大人の役が欲しい!!」とバタバタと動くマイケルは必見。早く完治して完全復帰してくれ!がんばれ、マイケル! 8点(2004-05-06 16:10:50) |
37. バード(1988)
C・パーカーを題材に孤高の天才の苦悩を扱った作品。実在の人物を描くと主人公を美化し、どうしても描写に偏りが起きてしまうので、あまりこういった作品は好みではない。しかし、本作では普遍的なテーマを中心に据えているため、『アマデウス』同様そのような違和感は覚えなかった。(もちろん、実際のパーカーと作中のパーカーには差異が大きいのだろうが)物を極めれば極める程高くなっていく天井。やはり俺は彼らのような天才の気持ちが痛いほどよくわかってしまうんだよなぁ……すみません、わたくし嘘をついております(反省)。 8点(2004-05-06 16:03:36)(笑:1票) |
38. バーチャル・ウォーズ
5代目J・ボンド、P・ブロスナン主演のヴァーチャル・リアリティ版『アルジャーノンに花束を』。当時、近未来の代名詞として「ヴァーチャル」という言葉が流行していたなぁ、などと今観ると妙にノスタルジックになれるかもしれない。が、所詮はB級映画で人間の感情のうねりなどは全く持って浅い。やはり、SF映画においても人間ドラマとしての深さが重要であると痛感する今日このごろであった……。 4点(2004-05-06 15:48:48) |
39. “アイデンティティー”
《ネタバレ》 前半方向性が定まらず、少々ダレ気味。しかも、冒頭を含め随所に挟まれる精神鑑定のシーンを見ていれば、ミッドポイント(開始45分ぐらい)の囚人が逃げたつもりがモーテルに戻ってきてしまうシーンでみんな多重人格であることは確信できる。しかし、そんなのは製作陣の計算通りなのだろう。真犯人(人格)を巧みに隠し、仮にばれても芸達者の役者陣で見せきってしまおうという潔さは買い。中でもレイ・リオッタはこういう役をやらせると安定感がある。ケレン味には欠けるが、連続密室殺人事件ものとしても、多重人格サスペンスとしても充分に整った佳作。あえて言えば、アマンダ・ピートが終始オーバーアクトで場を白けさせてしまうのが残念。顔はキレイなのに……。あと、タイトル自体がネタばれすぎないか? 8点(2004-05-05 18:54:01) |
40. キル・ビル Vol.2
随所にタランティーノ節がひしめき、なかなか魅力的な展開。エル・ドライバーとの死闘などまさに映画史上に残りうるオトシ方である。しかし……どうにも乗り切れない。ここからは、少々個人的すぎる日本びいきの感想になってしまうが、やはりタランティーノに暴走させるほど影響を与える映画は日本映画以外にはないということではないのだろうか? 昨今、日本では韓国映画を軸とするアジア映画が大ブームを起こしている。しかし、タランティーノにとっては、理屈を忘れるほどの心地よさは香港映画にもマカロニ・ウェスタンにも感じられなかったのではないか? 故深作欣二をはじめとする石井輝男・三池崇史といった監督を擁する日本映画界ほど無国籍なアクションものの魅力を伝えられはしないのだろう。これを機に日本人が今一度自国の映画に目を向けることを望みたい。 6点(2004-05-05 16:30:56) |