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Cinecdockeさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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コメント数 886
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自己紹介 ハリウッドのブロックバスター映画からヨーロッパのアート映画まで何でも見ています。
「完璧な映画は存在しない」と考えているので、10点はまずないと思いますが、思い入れの強い映画ほど10点付けるかも。
映画の完成度より自分の嗜好で高得点を付けるタイプです。
目指せ1000本!

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21.  切腹 《ネタバレ》 
不気味で緊迫感のある白黒映像と音楽に引き込まれ、全編にわたり武士たちの冷徹な眼差しが死線と向き合わせる。金をせびりにきた老いた浪人が切腹されることになり、そこから二転三転して、社会派ドラマにもギリシャ悲劇にも通じる普遍性のあるストーリーが展開される様は見事。貧困で飢えと病に苦しみ死んでいった娘とプライドを捨てた挙句武光で切腹された婿のために、武士道の虚飾を引き剥がす復讐劇に強烈なカタルシスを感じた。誇りある武士道なんて所詮嘘っぱちと言わんばかりに、あまりに残酷で壮絶で、そこまでしても変えられない無常感が最後まで貫く。何もかもぶち壊した果てに、何事もなく取り繕うだけで終わる理不尽さ。空洞になった社会における人情と倫理を問いかける重厚なまでの後味の悪さが残る。痛切な傑作。
[DVD(邦画)] 9点(2018-07-24 21:06:09)(良:1票)
22.  夜と霧 《ネタバレ》 
32分で人生に影響を与えるかもしれない映像体験。 カラーで描かれる青空と緑の平野と対比するように、かつてここが強制収容所だったこと、 そして虐殺があったことをモノクロの映像で淡々と綴っていく。 死体の山をブルドーザーでかき集めていく有名な映像がかつてテレビでも放映されたが、 生首と人皮の工芸品のくだりは実際にあったのかと思考する余裕を与えないほどの"生々しい非現実さ"があった。 終戦からわずか10年で虐殺に向き合った事実に本作の真価があるだろう。 現在までに世界中で虐殺が繰り返され、他方で他人事のように見て見ぬふりをする我々もまた共犯者だろう。
[DVD(字幕)] 9点(2018-03-23 22:31:53)
23.  ガールズ&パンツァー 劇場版 《ネタバレ》 
テレビアニメ及びOVA視聴済。少女と戦車。一見相容れないようでいて、ほんわかした可愛らしいキャラデザと手を抜かない世界観とのギャップが却って王道かつ熱い物語に華を添える。2時間という制約の中、大量のキャラクターをグループ分けして複雑になりすぎない上でしっかりキャラ立てしている。誰も魅力的で捨て駒が一切いない。尚且つ大量の映像の洪水からは新たな発見が何度も見返す度にあって一切の無駄も中弛みもない。アクション→ドラマ→アクションのサンドウィッチ構成で、戦車道で高校を取り戻すだけのシンプルな話なのに、よくこんな展開をいくつも考えたなと、製作陣のこの作品に対する愛情がひしひしと伝わってくる。あとは好きなキャラクターでそれぞれのサイドストーリーを想像・補完して、だからこそファンアートが盛り上がっているのだろう。何故、この作品の魅力に早々と気付けなかったのか、劇場に足を運べなかったのか悔やむばかりである。この作品の魅力は、他の方が仰るように、宮崎アニメを彷彿とさせる矛盾性=主人公のようにかつての敵を仲間として引き入れてしまう"やさしい世界"に近いものを感じてしまうからかもしれない。
[DVD(邦画)] 9点(2017-08-07 23:20:52)
24.  太陽を盗んだ男 《ネタバレ》 
ハリウッドと対等に張り合える大スケールの現代活劇はこの作品だけだ。ただ原爆を作りたかった教師の虚無感が、物質に溢れかえった仮初めの平和に投げかける。自分の存在意義は何なのか。ナイター中継を最後まで見たい薄っぺらさか。常軌を逸した刑事と対峙することで生きる実感を浴びたかった男の悲しさがエネルギッシュに突き刺さる(同時に死ぬのが恐いヘタレというのもリアル)。現在の承認欲求をめぐる事件に通じるものがあり、実際に大量の始末書を書かされた撮影手法(ゲリラ撮影)のそれとリンクする。菅原文太の不死身っぷりには笑ってしまうが、長谷川監督も相当エキセントリックだ。この作品をきっかけに監督は干されてしまったようだが、傑作を一つでも残せただけ羨望の的だろう。存在意義や生きる理由など問わない方がかえって幸せになれるかもしれない。悲惨で辛い現実を目を背けずに日々闘っている人間からすれば普通に生きられること自体がありがたいのだから。「日本は甘ったれているのだ」と。
[DVD(字幕)] 9点(2017-07-03 19:47:26)(良:1票)
25.  殺人の追憶 《ネタバレ》 
雨と土の湿った臭いがスクリーンから漂ってくる。懐かしさを感じさせる田園地帯は、夜になれば漆黒の闇に覆われ、奥に蠢く"怪物"は獲物をひそかに待ち続ける。被害者が増え続けたのは他でもなく警察の杜撰さであり、当時軍国主義だった閉塞感も大きかったのだろう。動物的な地元の刑事と理性的な都会の刑事がぶつかり合いながらも次第に立場を逆転させていく。そこには事件を解決できない苛立ちと諦めが、止むことのないの雨に溶け込んで、トンネルという排水溝に流れていくようだ。さあ、未解決の事件をどうまとめるか? 15年後の事件を知らない児童が発する、「普通の顔だった」という台詞。もしあの手帳を捨てていなかったら・・・映画冒頭へと回想させる構成は見事としか言いようがない。不気味で恐ろしい。黒澤明のダイナミズムとスピルバーグの柔軟性を併せ持ったポン・ジュノにはこれからもついていきたいと思う。
[DVD(字幕)] 9点(2017-05-22 21:11:06)(良:1票)
26.  ミリオンダラー・ベイビー 《ネタバレ》 
この映画には三種類の人間が存在する。才能と実力があり一瞬でも輝いたが潰された人、才能も実力もなく有言無実行で終わっていく人、参加せず野次を飛ばすだけの人──ベクトルは違うにせよ、いずれも敗残者であることは共通している。アメリカンドリームに破れて去っていった人を多く見続けてきたイーストウッドだからこその冷徹さで、希望すら持てない閉塞感が現代アメリカに蔓延しているのは周知の通り。公開から10年以上たった今でも通用する答えのなさ。あのときこうしていれば・・・と嘆いていても、誰も未来など見通せない。神も仏もない。ただ、覚悟を背負って何かをしなければチャンスがやってこないのは事実。たとえ何者にもなれなかった何もない人間のまま、生活のためだけにやりたくもない雑務に追われて、困窮の中で孤立死したとしても、生きた証すら誰も知らないまま塵のように消えていくにせよ、その人生を肯定するか否かは当人が決めること。尊厳と自己満足は紙一重。イーストウッドが言いたいのは単純にこういうことじゃないか。
[映画館(字幕)] 9点(2016-10-31 21:29:21)
27.  レスラー 《ネタバレ》 
プロレスに限らず、どのフリーランスにも当て嵌まるため他人事ではない。肉体の衰え(作家業なら創造性)は誰にも訪れ、特に過去の栄光に縋り続け、プライドが高いのなら尚更。特に娘の約束を忘れて破ってしまう件は血まみれハードコアデスマッチよりも痛々しい。主人公に共感できない人がいるのも当然だろう。それでも仕事と私生活を両立できない不器用な彼に対してある種の羨望を持っているのは事実で、ドサ回りでも彼に声援を送るファンを裏切ることが出来なかった。そういう世界でしか生きられない男のスピーチが胸を打つ。理解者のストリッパーにも去られ、失うものもない彼が死を覚悟したラム・ジャムは、他方からすれば愚かな破滅だが、本人からすれば最期までやり切った生存証明とも言える。それは非現実な世界を生きているか否か、何かを持っているか否かの違いか。落ち目のミッキー・ロークのためにスタジオと闘い続け、プロレスから辛辣な人間ドラマへと昇華させたアロノフスキー監督の着眼点と手腕を称賛したい。
[映画館(字幕)] 9点(2016-08-29 19:14:03)
28.  誰も知らない(2004) 《ネタバレ》 
実在の事件の再現映画ではない。でなければ、携帯電話も最新型マーチ(当時)もワンピの食玩も画面に写さないだろう。現在でも都会のジャングルで"誰も知らない"無戸籍児が存在する、その生存証明を描いているに過ぎない。電気も水道も止まる、髪は伸び、服も汚れてみずぼらしくなる、末っ子の娘が死んでも彼らを捨てた母親が知ることもない。誰かに知られたら、児童保護施設関係者によって引き離される。それでも今日生きなければ明日がない。そんな心情を挿入歌が代弁していた。"宝石"という生存証明は誰によってもたらされるのか? 孤立死が当たり前になっていく現在、過去の無名の個人に関心を持たないように、無責任に叩くだけで何もしないように、誰も自分のことで手一杯でいつの世も無常だ。
[DVD(邦画)] 9点(2016-06-16 21:29:27)
29.  魔女の宅急便(1989) 《ネタバレ》 
期待と不安を胸に、知らない街へ独りで飛び込んで奮闘した日々を疑似体験させてくれる。日本人の抱く、ヨーロッパの美しい街並みへの畏敬と憧れが、空飛ぶほうきで旅立つキキの高揚感とリンクして、題材にもってこいだ。仕事をすればトラブルが起こるし、苦労が必ず報われるとは限らない。打ちのめされて挫折することもあるだろう。それでも真摯に尽くせば、周りが見てくれる、背中を押してくれる、目の前の世界が隅から隅へ広がっていく。そうやって大人になっていくし、今日の人々の営みも形成されていくのだろう。個人対社会の構図を100分弱でまとめあげ、少女の成長と自立を普遍的に描いた傑作。
[地上波(邦画)] 9点(2016-01-27 22:51:10)
30.  L.A.コンフィデンシャル 《ネタバレ》 
原作小説は貸出時間切れで途中で投げ出してしまったが、映画版の大胆な脚色でこの完成度の高さと濃厚さは稀なケースではないか。それだけこの映画は素晴らしい。暗く血生臭い内容であるにも関わらず、爽やかな後味を残す。巨悪を追うタイプの違う三人の刑事は決して潔癖ではないが、それぞれの信念と正義を持ち、そして人間臭い。だからこそ、一つ一つの台詞が伏線となって、鮮やかに決まったときのカタルシスに打ち震える。特に「ロロ・トマシ」と「更生のない悪人を背後から撃つことが出来るか」には痺れた。カッコいい。これに作品賞と監督賞をあげないとは、アカデミー賞最大の汚点として恥じるべきだろう。
[DVD(字幕)] 9点(2015-12-31 01:32:43)
31.  オールド・ボーイ(2003) 《ネタバレ》 
原作漫画既読。 原作を遥かに凌駕した世界観とパク・チャヌク監督のセンスが冴える、最高の形での換骨奪胎な映像化だろう。 15年監禁された男の復讐劇のように思えて、実は主人公が復讐されていたプロットが衝撃的。 勘の良い人なら途中で分かるものの、結末に行き着くまでの過程を飽きさせずに一気に見せる。 無国籍を漂わせるスタイリッシュな映像美とクラシカルで美しいスコアがギリシャ悲劇を想起させる寓話に押し上げる。  一番の功労者は主演のチェ・ミンシクだろう。 イメージトレーニングだけで敵をなぎ倒すリアリティのない展開に説得力を持たせることに成功しており、 真実を知ってしまった男の慟哭は圧巻の一言。 そういう意味ではカンヌ男優賞は彼でも良かった気がする。  毒々しさから一転した白銀の世界。 真実を知らない娘の一言と忘れたかもしれない男の表情に、 終わりなき復讐の痛みと儚き希望がない交ぜになった感情が込み上げる。 ノべライズ版の「絶望的なハッピーエンド」というフレーズが相応しい。 残酷な運命を切り開こうとする二人に幸あらんことを。
[映画館(字幕)] 9点(2015-12-23 00:14:57)(良:1票)
32.  モンスターズ・インク 《ネタバレ》 
子供の頃から親から嫌ほど聞かされたことがあるはずだ。「言うことをきかない悪い子は怪物に食べられちゃうぞ」と、勝手に空想して震えて、親の言うことに従ったものである。しかし、成長すれば怪物は現実にはいない空想上の存在だと分かり、怪物がドアからやってきて非現実の世界に誘うこともなかった。ブーが体験した大冒険も、成長したらいつしかただの夢として捉えられ、記憶の隅に追いやられていくだろう。大人になれば見えなくなっていく幽霊や妖怪のように。かつてブーだった大人達に捧げる、いつか訪れる子供時代の終わりを描いた、ありし日の通過儀礼の物語。ブーとサリーの別れと再会は、笑顔と切なさで満ち足りて、懐かしさで涙がこぼれる。「ただいま、また会えたね」と声をかけたくなる。
[DVD(字幕)] 9点(2015-09-24 00:27:11)
33.  シンドラーのリスト 《ネタバレ》 
派手にやられていくハリウッド映画において、淡々と行われる銃殺の描写に初めて衝撃を受けた。糸が切れたように崩れる人々、色の失われた世界で唯一着色された赤い服の少女、タイプライターで明記された名前、そこにはいつ零れ落ちるか分からない"命"が眼前に横たわっている。シンドラーは金儲けしか考えていない俗物だったが、だからと言って普通の人々が何の疑問を持たずに虐殺に手を貸す、その違いはどこにあったのか。見返りも一切なく、裏切り者として殺されるかもしれない、"偽善"と呼ばれても自分は救えるのかと聞かれると自信はない。ただ、結果的に1100人を救ったのは事実で、そこには打算などない。「お金があればもっと救えたのに」とシンドラーの懺悔とも言える台詞が最も胸に迫る。このシーンからの展開は、今思えば感動に走ってやり過ぎと感じなくもないが。暗いトンネルから抜け出したような青い空があまりにも眩しくて、鮮烈だ。
[DVD(字幕)] 9点(2015-09-24 00:20:44)
34.  愛、アムール 《ネタバレ》 
半身不随になった妻を献身的に支える夫の姿が踊っているようにも見える。本作は過去作に比べて敷居が低く、そして容赦ない。目を背けたくなるほど衰弱していく妻を、事務的にこなす介護師を解雇し、中途半端な態度の娘をも突き返す。長年、苦楽を共にした夫の純粋さと狂気。二人以外の来訪者は聖域を侵す邪魔者でしかないのだ。今までのハネケなら妻の尊厳のために"約束"を果たして、観客を凍りつかせて終わらせるだろう。しかし、映画は愛の到達点を描きだす。二度にわたる鳩の来訪に、一度は拒んできた来訪者を抱き締める夫。鳩が妻の霊魂かは分からない。ただ、夫が綴った手紙が通じたのだろう、具現化した妻が何事もなかったかのように皿洗いをする、ハネケらしかぬ穏やかさに意表を突かれた。そして、二人はまるで散歩でもするような感覚で旅立っていく。妻の何気ない一言に涙があふれた。定冠詞のない"Amour"が象徴するように、開かれた部屋には二人の生きた証が、愛が隅々にあふれている。残された娘はどう感じるのだろう? 第三者から見れば、老々介護の悲劇にしか見えないだろう。しかし、それは悲劇か否かは当事者の二人にしか分からない。如何なる結末であれ二人は安らかに逝けたのではないだろうか。人間をよく知らなければ、このラブストーリーは絶対に撮れない。ハネケにしか撮れない嘘偽りのない純愛にただただ圧倒された。
[映画館(字幕)] 9点(2015-08-24 23:06:27)
35.  霧の中の風景 《ネタバレ》 
政治色が強く、長回し及びロングショットの多用で芸術映画を地で行くアンゲロプロス監督作品の中では 一番分かり易く敷居の低い映画であることには間違いない。  深い黒で覆われたオープニングから引き込まれ、初めて列車に乗った時の高揚感に胸が躍る。 まだ見ぬ父親に宛てた繊細で詩的な手紙に雪で時間が止まった群衆、 失われていく馬の命と遠景の結婚式の対比、 あまりに透徹であまりに美しい映像の力に魅了される。 それ故に政治的・難解さといったフィルターがあまり掛かっておらず、 現実が寓話に侵食し破壊していく様をまざまざと見せ付けられる。 トラック運転手に犯されて"女"にされた姉や時代の流れで廃れていく旅芸人の一座、 ヘリに引き上げられた神の手がそれだろう。  再会し恋愛感情を抱いたにも関わらずすれ違いで別れる際の旅芸人の青年の詩的な台詞が胸に迫る。 悲惨な現実を経て、ボロボロになって辿りついた姉弟を迎え入れるようにそびえる樹木は、 死によって彷徨う姉弟を慰める父親そのものかもしれない。  ある意味で救いかもしれないし、監督の厭世観を感じさせた。
[ビデオ(字幕)] 9点(2015-01-17 22:33:20)
36.  パルプ・フィクション
最初見たときはただ喋っているだけでつまらない映画だと思っていた。時が流れ、映画鑑賞経験を積んだ上で再見すると、改めてその面白さに気付く。クールとは無縁の恰好悪い殺し屋はいるしトイレで用は足す、どうでも良い無駄話に花を咲かせる。それなのに登場人物も小ネタの数々も全て愛おしく、魅力的で可笑しくて、ここまで来ると突き抜けてクールさも感じてしまう。特にチーズバーガーと5ドルシェイクは飯テロにも程がある。パルプロールのように永遠に廻り続ける仕様もない物語は、浅いようで深く融け込んだアメリカ文化そのもので新しい発見だらけ。埋もれて消えていったB級映画のように、「こういう映画があっても良いんだ!」とタランティーノは熱弁する。噛めば噛むほど味の出るスルメみたいな傑作。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-20 22:54:15)
37.  セブン 《ネタバレ》 
世界は不条理の塊だ。意識しなくても誰かと関わって傷つけ、知らずに自分に返ってくる。テレビに映る遠い世界の悲惨なニュースを、画面越しにワイドショー感覚で見ている人は少なくない。ただ、それが自分に及ぶことになってしまったら・・・。ジョン・ドゥは究極の選択を迫ってくる。誰だって人の子なのだからミルズの選択を責められない。そうやって不条理な世界が形作られている。サマセットは引用する。「ヘミングウェイはこう言う。『人生は素晴らしい、戦う価値がある』と。俺は後者に賛成だ」。こうでも言い聞かせないと、不条理な世界に気が狂ってしまう。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-20 22:19:19)
38.  PERFECT DAYS 《ネタバレ》 
小津安二郎を敬愛し、生前の出演俳優のドキュメンタリーを撮ったこともあるヴェンダース初の邦画作品。 平坦なトーンで劇的な展開がないのに飽きずに見せる。  築50年近くの安アパートから一日が始まり、公衆トイレの清掃員としてルーティンワークをこなし、 ささやかなことに喜びと幸せを見出していた寡黙で孤独な男が、 姪の来訪と少しずつ近づく終焉の数々に、その"満ち足りた日々"が崩れていく不安を感じ始める。 彼の過去に何があったのかは分からない。 公衆トイレの設備にきめ細やかな手入れを行うプロとしての誇りとストイックさに敬意を覚えるくらいであり、 自由を謳歌している浮浪者に慈しみを感じながらも、実は過去に向き合えず逃げ続けていただけなのか。  彼の穏やかで急ぎすぎない生き方に憧れても、どこかで「本当にそれで良いのか?」という疑問を抱く。 充実しながらも後悔しているような、達観もしているような心の機微を役所広司が体現する。 人生に上下はないかもしれない、間違いのない選択肢などないかもしれない。 見えていないだけで主人公のような人生を送っている人たちが近くにどこかしらにいるのだろう。 せめてやりたくない末端の仕事を誰かがしていることに感謝の気持ちを持ちたい。
[映画館(邦画)] 8点(2023-12-29 00:41:05)
39.  ガールズ&パンツァー 最終章 第4話 《ネタバレ》 
主戦力のあんこうチームが序盤で脱落し、残されたチームの運命を描いた第4話。 テレビアニメ第1話では全くの戦車道未経験者が、培われたノウハウと経験を総動員する。  54分の上映時間のうち、9割近くがアクションシーンのつるべ打ちでほとんどアトラクションの様相になっている。 あまりに目まぐるしく展開し、状況が分からなくなるくらいの情報量の多さと、 雪原を得意とする不敵な継続高校のBGMにいつ負けてもおかしくない緊張感があった。 後半の聖グロリアーナ対黒森峰の間に挟まれるサウナシーンを除くとずっとアクションシーン。 そりゃ製作に時間がかかるよね…  後半はもちろん聖グロリアーナが勝つのは予想通り。 それも島田愛里寿という大きな切り札を手にして。 エキシビジョンとは言え二度勝てなかった聖グロと劇場版で対決した愛里寿との、 二重の因縁を抱えるみほは如何に挑むのかで映画は終わる。  2年後に公開されるだろう第5話は、第4話では描けなかった、決勝戦前夜のドラマを入念に描くことを期待したい。
[映画館(邦画)] 8点(2023-10-06 21:41:40)
40.  スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース 《ネタバレ》 
世界はバランスで成り立っている。 何かを得た場合、何かを失わなければならない。  その折り合いをつけられず、大人の境界線であがくマイルスは、 親と衝突し、ルールと衝突し、世界と衝突し、同じスパイダーマンと衝突していく。 未熟さゆえの勢いで決められた運命を変えられることを信じて。  彼がイレギュラー扱いされている理由が終盤で明かされる。 本来は蜘蛛に噛まれてスパイダーマンになる"運命"ではなかったのだ。 だから、ピーター・パーカーが死ぬことはなかったし、不幸な事故で科学者がヴィランになることもなかった。 そして、別世界線の蜘蛛に噛まれたために、その世界のスパイダーマンが存在せず、 プロウラーになったマイルスが生まれることになった。 前作の因果が本作で浮上して、"大いなる力は大いなる責任を伴う"というテーマが際立つ。  圧倒的情報量とカオスと色彩は健在で、二次元と三次元の境界線を忘れさせるアニメーション技術はむしろ進化している。 長尺になりすぎて前後編に分けたそうだが、溜めに溜めたまま終わった最後の15分はちょっと惜しい。 それでもマイルスの運命に抗う物語に共鳴した、一部のスパイダーマンたちが如何に反旗を翻すのか、 完結編で満点を出すほど大きな期待を寄せるには十分で8点とさせて頂いた。
[映画館(字幕)] 8点(2023-06-16 23:03:41)(良:1票)
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