401. 私に近い6人の他人
今をときめくウィル・スミスが、あっと驚く演技派ぶりを見せてくれる、それだけでも一見の価値あり。しかも、シドニー・ポワチエの息子(!)と偽って上流社会の面々に取り入ろうとする心情が、日本の我々が見ても決して他人ごとじゃない”切実さ”を感じさせて、心にしみます。ほとんど話題にもならない舞台劇の映画化だけど、映像的にも工夫が凝らされて、忘れ難い佳作と言えるでしょう。 8点(2003-06-09 19:45:57) |
402. 夜霧のマンハッタン
ミステリーかと思えば、都会調のしゃれたコメディー風でもある。それを「中途半端」ととられた方もいらっしゃるようですが…。1930・40年代のハリウッド映画には、こういったソフィスティケーテッドな軽いミステリーがたくさんあったそうで、『影なき男』シリーズとか、今見てもスマートで楽しい。これはそういったセンを現代に復活させようとした、そして見事に成功した1本だとぼくは思っています。レッドフォードはもちろん、。デブラ・ウィンガーにこんなロマンチックな味が出せるってのも、うれしいオドロキだったし。このあたりも含めて、アイバン・ライトマン監督が『ゴースト・バスターズ』だけの人じゃないってことを証明してみせたってことでしょうか。イイじゃないすか、これ! 8点(2003-06-06 18:06:24) |
403. 夢を生きた男/ザ・ベーブ
すべてにオールドファッションな、そういう意味じゃ反時代的タッチと言えなくもない伝記ものの王道。やはり、点数が悪いっすねえ…。ぼくは大好きですけどね…。特に、ベーブ・ルースの薫陶を受けた少年が、引退試合に青年として再登場するくだりは、常套手段だとは分かっていても泣ける。今どき、こんなパターンをきちんと踏襲してくれる作品の方が貴重じゃないですか、皆さん! 決して好きな監督じゃないけど、アーサー・ヒラー、さすが大ベテランらしい良い仕事っぷりです。 8点(2003-06-06 17:46:05) |
404. UFO少年アブドラジャン
やはりあの親父さんのキャラに尽きるでしょう。ほんと愛すべき俗物って感じで、宇宙人少年とのやりとりや、かみさんの尻に敷かれてるあたりの日常風景の面白さが、とってもいい感じ。ウウベキスタンの田舎町というロ-カル色も、作品に民話調の大らかさを与えているしね。共産主義政権への風刺も、実にユーモラスに処理されていて、一見プリミティヴだけど意外や洗練されたタッチによって作られていることも分かる。スピルバーグ、この作品見たのかなあ。見たならきっと喜んだだろうなあ。 8点(2003-06-06 17:34:53) |
405. 無能の人
つげ義春の世界を、小津安二郎のテイストで映画にしてみたら、これが実にマッチしていた。…という”発見”に満ちた、愛すべき竹中ワールドの原点。とにかくキャスティングの素晴らしさこそが、成功のポイントですな。もっとも、監督・竹中は、未だこのデビュー作をその後越えられないでいる。 8点(2003-06-06 16:11:42) |
406. マンハッタン無宿
マンハッタンでテンガロンハットを被った主人公の保安官が、街の人間に「テキサスか?」と聞かれて「アリゾナだ」と苦々し気に答えるシーンがくり返し描かれ、笑える。この男、常にクールだが女にだらしないってあたりの設定も、実に人間臭くてよろしい。そんな、けっこうダーティ(後のハリー・キャラハンほどじゃないにしろ)なヒーローを、イーストウッドが快演。ドン・シーゲルの簡潔明快な語り口も、最近のジェットコ-スタ-調の16(時には32)ビートじゃなく、8ビートの映画的テンポで快調であります。 8点(2003-06-06 13:44:33) |
407. 真昼の死闘
うん、めちゃくちゃ面白かったという幸福な記憶が、今もしっかりと残り続けているクリント・イーストウッド=ドナルド・シーゲルの名コンビ作品。ただ、これって明らかにシャーリー・マクレーンのために企画されたという感じで、そのためイーストウッドはどうしてもいつもより影が薄いかも。それでもクライマックスの大戦闘シーンは、シ-ゲル監督らしいあれよあれよの名調子で、見ごたえ十分っす。少々お下品なユーモアもいい感じだしね。 8点(2003-06-06 13:11:57) |
408. マイ・ビューティフル・ランドレット
当時(たぶん、今も)の英国内事情を切実に描きながら、どこかポジティヴな前向きさを感じさせてくれるなかなかの逸品。ダニエル・デイ=ルイスのマッチョなパンク野郎ぶりと、コインランドリーとの奇妙なミスマッチぶりがいい味出してます。どんな世の中でも、どんなに八方ふさがりでも、ささやかな夢を持ちながら生きていこうよね。たとえ無慈悲に踏みにじられることがあろうとも、ご同輩。スティ-ブン・フリア-ズ監督も、この小品が最も良いのではないかな。 8点(2003-06-06 12:31:14) |
409. マキシマム・リスク
まず何より、映画としてよく完成されている。いきなりヴァン・ダムが死んでしまう意外な冒頭から、「1人2役大好き(?)」なヴァン・ダム作品のパターンを踏襲しながらも、敵・味方の絡ませ方が実に納得できるものだった。見せ場にしても、さすがリンゴ・ラム監督らしいパンチとスタイリッシュさが効いているじゃありませんか。だてにフランスの演技派ジャン=ユーグ・アングラードを相手役に迎えちゃいないな、という立派に「アクション映画」の佳作であります。…文句のある者は、一歩前に出るように。 8点(2003-06-05 18:33:53) |
410. マウス・オブ・マッドネス
ちょっと理に溺れ過ぎかな…と思わせなくもないけど、実にスリリング! スティーブン・キングというより、まさにラブクラフト風な邪悪さが気色いいです。カーペンター作品としては、『エスケープ・フロム・LA』みたいな一見ノーテンキな作品の方が好みなんだけど、これは彼の「実は俺ってばインテリなのよ」という一面が最も良く出たものとして、評価したい。まさにメタ・ホラー・フィルムですな。 8点(2003-06-05 18:23:36) |
411. マーキュリー・ライジング
そんな、皆さんが酷評するほどヒドイ映画とは思えないんだけどなあ…。まあ、確かによくありがちな内容かもしれないし、アレック・ボールドウィンの悪役は、あまりにも絵に描いたような馬鹿馬鹿しさだしね。ただ、『シックス・センス』の時にも思ったのだけど、ブルース・ウィリスは子どもと絡むととても良い味を出すなあってのが、まず好印象。それに、自閉症児を演じる少年が結構イイ線いっていて、ラストの感動を盛り上げてくれるし、様々な欠点を補ってあまりある見どころの多い作品だと小生は信じとります。ほんと、デリカシーとハートのある捨て難い映画っすよ。《追記》ビデオで再見。やはり好感度し。ラストで、自閉症の少年がそれまで必死に自分を守ってくれたブルース・ウィリスの主人公をぎこちなく抱擁する。その“ぎこちなさ”ゆえのデリカシーに、またもナミダする。よって従来の「7」より1点追加! 8点(2003-06-05 17:44:15)(良:1票) |
412. マーヴェリック
ううっ…(感涙)。リチャード・ドナーの映画で、かくも皆さんに受けの良い映画などそうそうありますまい。彼をアメリカ映画の中でも傑出した(しかしあまりにも理解されない)天才(!)だと信じて疑わない者としては、それだけでもう大満足。ほんと、この映画にしても、撮影現場での和気あいあいとした雰囲気が、そのまんま画面に反映されている。この幸福感こそ、ドナー作品の最も大きな魅力のひとつだよね。すべてにメカニカルになった昨今のアメリカ映画界にあって、彼の「人間味」は実に貴重なものである、と言っておきましょう。とにかくまあ、メル・ギブソン以下あのジョディ・フォスターまで、なんて楽しそうで幸せそうなんだ…あ、嬉しナミダが出てきた… 8点(2003-06-05 12:51:53) |
413. 冒険者たち(1967)
中坊のころ初めてテレビで見て、大感動させられたものだった。でもその後、大森一樹だのあの年代の人間たちに語られ過ぎ、神格化され過ぎって感じで、大学に入ってリバイバル公開された時には、微妙な「反発」を覚えてしまい…。でも、トリュフォーの『突然炎のごとく』とはまた違う”男2人・女1人”の永遠の夏休みを生きるかのような関係は、今なお憧憬をかきたててやみません。だから、なおさら、後半の、3人の関係が”死”によって崩れ去っていくさまが、哀しく忘れられないんでしょう。とまれ、ジョアンナ・シムカスとレティシアの名前は、ぼくら映画ファンの胸にこれからも深く、甘酸っぱく、残り続けるはずです。 8点(2003-06-03 10:38:26) |
414. ピースメーカー
映画の後半、マンハッタンのど真ん中で爆破させるため核弾頭を持った男を、警察の狙撃手がビルの屋上から狙う。が、男の手前で、子どもを肩車した男がさえぎって発砲できない。その旨を無線で聞いたジョージ・クルーニーとニコール・キッドマンは、同じように「早く撃て!」と叫ぶ。再び、ライフルの望遠スコープを覗く狙撃手。大写しになる子どもの笑顔…。本来が正義の側に入るはずのヒーローとヒロインが、一人の子どもの死を顧みることなく核弾頭の爆発を防ぐことのほうを選択する。つまり、彼らはここで「アメリカ」という”国家”の立場にあることを図らずもも暴露している。ここまで、シビアに「ヒーロー」の実態をさらけ出した(しかも「娯楽アクション大作」で!)アメリカ映画なんて、なかったのでは。結果、カタルシスのないほろ苦い後味が残ることとなったけれど、観客をバカにしている(というか、バカになるようしむけている?)映画ばかりが横行する昨今、こうした志の高い映画は、とても貴重だと思う。ぜひ見てください。 8点(2003-06-02 13:24:19)(良:1票) |
415. ペイバック
う~ん、自分を裏切った女や仲間への復讐じゃなく、わずか7万ドルぽっちでここまで命を張る主人公ってだけで、十分笑える。周囲のチンピラどもも、それぞれイイ味だしてるし、ブライアン・ヘルゲランド、初監督としちゃ上々じゃん。と、思っていたのに…。これまでヘルゲランドが脚本を書いてきた作品に接してきた者なら、このオフビート感は当然予想できたはず。彼ならではのヒネッたウィットが「不真面目」に映るとして、だからこそ面白いんじゃないか。それこそがヘルゲランドの持ち味じゃないか! あの、メル・ギブソンが付け足したのであろうラブ・ロマンス部分をのぞいて、そういった「不真面目さ」こそを楽しんでほしかった…なんて、言っても仕方ないか。皆さん、「真面目」なのですね…。 8点(2003-05-31 17:45:12) |
416. フォーエヴァー・ヤング/時を越えた告白
あの『13日の金曜日』シリーズや『ガバリン』なんかを撮ってた監督が、こんな心優しい映画を作ってどうする! と言いたいところだけど、本当に愛すべき作品だったので許すっ! 個人的には、イライジャ・ウッドの母親役ジェィミー・リー・カーチスが魅力的で、なんでメル・ギブソンは彼女とナニにならないんだろ…と、ちょっとヤキモキ(?)させられましたが。そいて、少年たちが作ったコックピットで、本当に空を飛んでいるかのようなあのシーンは、レイ・ブラッドベリの名作短編小説『宇宙船』を想わせて、忘れられないな。うん、とても好きな映画です。 8点(2003-05-31 12:25:17)(良:1票) |
417. フィアレス
ピーター・ウィアー監督って、何を撮っても「傑作に限りなく近い秀作」にしてしまう。たまには破綻だらけの壮烈な失敗作をこの人の映画で見てみたい気にさせられる、数少ない才人ですよね。で、この映画も、まさにそんなピーター・ウィアー作品のひとつ。とにかく、ジェフ・ブリッジスが素晴らしいです。他の方も書かれてましたが、どんな作品であろうと確実にクオリティを上げる、そのくせまったく「熱演」だとか「名演」に見せない彼の役者っぷりに、あらためてホレボレさせてくれます。 8点(2003-05-31 11:33:12) |
418. 氷壁の女
おぼこ娘風のベッツィ・ブラントリーが、ハダカを見せる一瞬のシーンがあまりに強烈すぎて、作品全体の印象トンじゃってます。すみません。それでもあえてコメントさせていただいたのは、フレッド・ジンネマンへの敬意を込めて。この遺作は、結果的にこれまでの彼の重厚かつ野心がギラギラした鬱陶しい「名作」にはない、軽やかな叙情と、諦観、そして”若さ”へのアンビヴァレントな感情が、見る者の心に染み通っていくようでした。最後に美しい映画を残してくれて、巨匠ありがとう! 8点(2003-05-30 18:48:10) |
419. トーマス・クラウン・アフェアー
武骨者マクティアナンに、これほどの洒落っ気があったとは! どうやら先のマックィ-ン版の方が評価が高いようですが、クロード・ルルーシュのモノ真似でしかないチャラチャラした映像美とやらにヘキエキさせられた者としちゃ、断然こちらに軍配をあげたい。ストーリー全体が、実は精神分析医を前にピアーズ・ブロスナンが語る一種のホラ話(男の夢!)ともとれる仕掛けなど、ディテールもさり気なく凝ってるしね。だいたい、レネ・ルッソのハダカを拝めただけでもありがたいことじゃありませんか! …小生のようなオジサンには、何ともうれしい「クリスマスプレゼント(笑)」的作品であります。 8点(2003-05-29 15:23:04)(良:3票) |
420. デイズ・オブ・サンダー
小生にとって”天敵”とも言えるジェリー・ブラッカイマー製作作品中、たぶん最も好きかも。どうってことのないありがちな展開だしキャラクターなんだけど、そうした劇画調人物たちにこれほど血肉を通わせたロバート・タウンの脚本に1票! トム・クルーズが後に『ミッション・インポッシブル』シリーズでかれを再度起用したのもよく分かるシブイ技量でありました。ご贔屓マイケル・ルーカーも実に実に良かったし。 8点(2003-05-29 14:14:28) |