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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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401.  ナチュラル・ボーン・キラーズ
本作の脚本を巡ってストーンとタランティーノが激しく対立したことは有名な話ですが、主な改変部分とは、ミッキーとマロリーの生い立ちをストーンが書き加えたという点だそうです。そもそもミッキーとマロリーとは、『トゥルー・ロマンス』の脚本執筆中に、その主人公・クラレンスに影響を与えた人物としてタランティーノが創作したキャラクターでした。クラレンスは、クールな殺人鬼カップルを以前にテレビで見ており、その模倣をする形で自分もアウトローの道に突っ込んだという話にするつもりだったとか。その後、ミッキーとマロリーのエピソードが大きくなったので『トゥルー・ロマンス』からは完全に切り離され、『ナチュラル・ボーン・キラーズ』として一本の脚本にまとめられました。以上の成立過程に起因してか、本派生企画において、タランティーノはミッキーとマロリーの実像ではなく、メディアを通しての虚像を描くということを作品の骨子としており、基本的にはメディアによって取り上げられる姿のみでミッキーとマロリーの物語を構成しようとしていました。しかし、ストーンは彼らの生い立ちまでを描くことで、根本的な作品のあり方を変更したのです。タランティーノは怒って当然ですね。。。 以上の改変は是か非かというと、私は非だったと思います。タランティーノの脚本は、殺人者がメディアによってロックスターのように持ち上げられる様の異常性を訴えたものでしたが、ストーンの改変によって暴力の連鎖という主張が追加されたため、全体として何を言いたいのかが分からない映画になってしまったからです。カマキリが獲物を食べる様から原爆投下まで、実に多くのイメージが作品全体に散りばめられており、本作においてストーンは暴力に関する普遍的な考察をしようとしています。しかし、タランティーノが作り上げた脚本には異常者しか登場しないため、そのドラマから普遍性を見てとることはできません。このことが、作品全体を意味不明なものにしています。。。 ただし、既存のどの映画にも似ていない本作の斬新な手法の数々には、大いに評価の価値があります。当時、世界最高の映画監督だったストーンの発想力はタダゴトではなく、本作を忌み嫌っているタランティーノ自身が『キル・ビル』において本作の手法を取り入れたという事実が、その影響力の強さを物語っています。
[DVD(吹替)] 7点(2014-01-06 01:47:55)
402.  ミッション:8ミニッツ 《ネタバレ》 
公開時に劇場で鑑賞したものの、お恥ずかしいことに話を理解できなかったのでレビューを書くことを断念。それから2年、この作品の存在を思い出してブルーレイを手に取ったのですが、2度目の鑑賞で、ようやく映画の内容を理解することができました。。。 本作のキーとなるのは、原題にもなっている「ソースコード」と呼ばれるプログラム。これは、死者の脳を利用して並行世界へとアクセスするためのプログラムなのですが、生者では当該並行世界への旅行ができないことから、植物状態にあり、死者に限りなく近い身となっている兵士が、このプログラムの一部として利用されています。この基本設定を押さえておくことが本作の理解への第一歩となるのですが、初見時にはバーチャルリアリティの変種だと勘違いしたために、私は途中でお話を見失ってしまったようです。。。 中盤、主人公は8分後のテロ事件を知る自分の行動によって、列車に乗り合わせた人々を救うことができることに気付きます。彼はそのことをプロジェクトの責任者であるラトリッジ博士に報告するのですが、こちらの世界の住人である博士では、そのことの価値を共有することができません。「並行世界で人助けをしたところで、俺らの世界には何の影響もないんだよ。そんなことより、さっさと犯人探しをしろよ」。こちらの世界で生きる者にとっては当然の意見です。しかし、こちらの世界では植物状態でプログラムの一部に過ぎない身であるが、あちらの世界では人間として生きることができる主人公にとっては、あちらの世界を救うということが非常に重要となってきます。それがクライマックスの決断へと繋がるのです。。。 以上の理解にまで漕ぎつければ、本作のテーマは、監督の前作『月に囚われた男』と共通していることが分かります。システムの一部として非人道的な形で生かされていた男が、その呪縛から解き放たれるべく挑む戦い。相変わらず70年代チックなテーマを掲げているのですが、本作についてはその戦いが報われる美しいエンディングを準備したことで、従来のどのSF映画とも似ていない、独自の作品となりえています。なかなかうまいまとめ方だと思いました。。。 本作の欠点は、ラトリッジ博士を完全な悪人にしてしまったということです。博士を悪人にしなければ、より多面的に楽しめる作品となっただけに、その点だけは惜しいと感じました。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2014-01-03 01:50:59)(良:2票)
403.  アポロ13
『ゼロ・グラビティ』にすっかり心酔してしまったこの冬、「そういえば、似たような映画が他にもあったなぁ」ということで、何年かぶりに本作を鑑賞。とはいえ『ゼロ・グラビティ』とはまったくの別ベクトルで製作された映画なので、共通点はあまりないんですけどね。。。 『アルマゲドン』や『スペース・カウボーイ』など宇宙へ死にに行く人間の映画は数あれど、宇宙からの帰還を描いた映画は案外少ないもので、そういった点で本作は参考にすべき過去作品も少なく、さらにはノンフィクションものなので自由な脚色も許されず、お話をまとめることには相当な困難があったと思います。本作の脚色を担当したのは、後に『キャスト・アウェイ』や『父親たちの星条旗』を手がけるウィリアム・ブロイルズ・Jr、彼は驚くべき手腕で本作を2時間のエンターテイメントに落とし込んでいます。何が問題なのか?、それはどれほど深刻なのか?、その解決策は何なのか?、という3点をきっちりと説明して観客に必要十分な量の情報を与えているのです。この手のノンフィクション映画においては、予備知識がなければ理解できないという作品も多く存在していますが、本作については一切の予備知識は不要。それどころか、語り口が極めて洗練されていて情報が自然と頭へ飛び込んでくるため、観客の側が内容の理解に努める必要すらありません。ここまでよくできた脚本は滅多にないと思います。。。 また、ロン・ハワードによる演出も絶好調。本作はサマーシーズン公開の大作だったにも関わらず、ド派手な見せ場と言えば序盤のサターンロケット発射シーンくらいであり、映画の大半は中年のおっさん達が悩んだり、議論したりする場面で構成されています。視覚的な見せ場はほとんどなく、演技や演出のみで観客を引っ張らねばならないという相当に困難な作品でありながら、ハワードはこれを堂々たるエンターテイメントとして仕上げているのです。ハゲやメガネのおっさん達が議論する様がこれほどかっこいい映画が他にあるでしょうか?職業映画を得意とするロン・ハワードの手腕が光りまくっています。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2013-12-24 01:09:25)
404.  ヒッチコック
ホラーやサスペンスというジャンルにおいて、当該ジャンルの流れを一変させるような傑作は、主にインディーズから現れると言われます。作品の内容に口出ししてくる人間の数が少ない、また、倫理コードという制約条件の影響を受けづらいという自由な製作環境が革新的な映画を生み出す素地となるためですが、例外的に『サイコ』は、大手スタジオにおいて生み出されたホラーの傑作でした。監督の自費で制作されたとは言え、大手スタジオの看板を背負う以上、スタジオの重役達は口を出してくるし、検閲官だってあれこれ文句をつけてくる。そんなハイプレッシャーな環境の上に、愛妻の不倫疑惑や、過去に因縁を抱える主演女優との微妙な関係、さらには自身の体調不良まで、本当に多くの問題を抱えながら、それでも意地を通して傑作を作り上げた天才監督の姿には非常に興味深いものがありました。ヒッチコックのフィルモグラフィーは傑作揃いであり、息を吸うように名作を撮っていたというイメージがあっただけに、これだけの苦労をしながら、それでも映画に拘っていたという点は、個人的に意外でもありました。。。 また、本作は老人映画でもあります。40年超のキャリアを持つスピルバーグや、70代のリドリー・スコットがハリウッドのトップに君臨する現在とは違い、50年代・60年代の一般的な映画監督の賞味期限は10年程度でした。生き神様の域に達していたデミルやワイラーならともかく、無冠の帝王にして、50年代には何本もの映画をコケさせていたヒッチコックは、「そろそろ引退しては?」という周りからのプレッシャーを受け続けていました。しかし、彼は「まだまだやれる」ということを証明しようとします。『世界最速のインディアン』の主人公のように。ヒッチコックが『サイコ』に拘ったのは、原作や題材の良さだけではなく、これが誰もやったことのない、まったく新しいものだったからであり、自分の感性の若々しさを証明するためには、これしかないと考えたためでしょう。時代遅れと言われていた者が、自己の存在をかけて大仕事に挑む、なかなか燃える話ではありませんか。。。 以上、素材は硬派なのですが、終始ユーモラスで肩肘張らない本作の演出は独特でした。テンポが良くて非常に見やすいのですが、それ以上のものになっていない点が惜しくもあり、決して悪い映画ではないものの、点数的には7点がせいぜいかなという印象です。
[DVD(吹替)] 7点(2013-12-05 01:16:22)(良:1票)
405.  ユナイテッド93
私は、911陰謀説にはまったく賛同しないのですが、それでも、当日の状況を考えた時に、ユナイテッド93便は米軍によって予防的に撃墜された可能性はそれなりに高いと考えています(永久に証拠は出てくることはないので、事実を確認することは不可能ですが)。なので、本作で描かれるユナイテッド93便内でのドラマについては、映画としての面白さは買うものの、その内容をあまり好意的に評価することはできません。断片的な情報を掻き集めて、アメリカ人にとって都合の良い物語を作り上げただけではないのかという思いがどうしても残ります。実際、荷物運搬用のカートでコックピットの扉を破るクライマックスなんて、現実的にはありえないトンデモ描写だったわけだし。。。 本作で評価できるのは、空の異変に気付いた管制官達のパートです。政府・民間・軍部の複数の管制室が舞台となり、誤情報までが飛び交う混乱した現場でありながら、ポール・グリーングラスは破綻なくこれを再現してみせます。『ブラディ・サンデー』においても、複雑な事実を時系列順に整理して、丁寧に観客に伝えるという手腕を披露していましたが、本作はその何倍もの情報量を的確に扱っています。これはもはや神業の域であり、これだけの映画を撮れる監督は、世界広しと言えどグリーングラスだけではないでしょうか。。。 また、事後的な記憶の上書きによる影響を排除し、事件当日の空気感を徹底的に再現したという点でも感心しました。現在からすれば常識であっても、当日、WTCに旅客機が突っ込んだという事実を理解できる人はいませんでした。私は、WTCから煙が上がっているという第一報の直後からテレビ中継に噛り付き、二機目が突っ込む様は生中継で目撃したのですが、飛行機がビルに突っ込む様をはっきりと見たにも関わらず、あまりに想定外の出来事だったために、何が起こったのかを理解できませんでした。それはテレビのリポーター達も同様であり、その光景を見た者全員が、今見たことが理解できなかったのです。この映画は、そうした当日の混乱までを正確に切り取ってみせています。ハイジャックされた旅客機がNY上空で忽然と姿を消し、直後にWTCから煙が上がった。因果関係は明確なのに、プロの管制官すら、この二つの事象を繋げて考えることができなかった。こうした些細な部分に、本作の出来の良さを感じました。
[DVD(吹替)] 7点(2013-12-03 00:58:59)
406.  セデック・バレ 第一部 太陽旗
大日本帝国の支配に耐え兼ねて反乱を起こしたセデック族の物語であり、国民党政権時代には抗日の英雄として敬われていたモーナ・ルダオの生涯とくれば、日本人の我々としては大いに不安な題材だと言えます。おまけに、プロデューサーには『南京1937』を手がけたジョン・ウーも名を連ねており、これは久々に反日超大作が来たかと覚悟して鑑賞したのですが、そんな不安とは裏腹に、内容は極めてフェアなものでした。さすがは親日国・台湾。。。 内容は『ラスト・オブ・モヒカン』と『アポカリプト』と『ラスト・サムライ』を合わせたようなものであり、滅びゆく種族が体制に絶望的な戦いを挑むという、この手の映画としては非常に典型的な形にまとめられています。テンプレートに当てはめて手堅く作られているおかげで話は非常にわかりやすく、しかもエモーショナルです。また、良い日本人も悪い日本人もいたという点や、植民地支配は負の面だけではなかったという点にもきちんと光があてられており、政治的に偏らないよう細心の注意が払われていることにも感心しました。さらには、セデック族は日本人の女子供にも容赦なく手をかけたという事実からも逃げておらず、台湾側にとって都合の良いことも悪いことも、すべて映画にぶち込んでやろうという作り手の気概を感じました。台湾映画史上最高額の製作費が投入され、絶対にコケることができない本作において、これだけやりきってみせた崇高な姿勢には尊敬の念さえ抱きます。。。 また、演技の質の高さも必見です。主人公・モーナ・ルダオを演じるリン・チンタイは演技経験ゼロのド素人。原住民の若者をオーディションする際に案内人として雇ったおじさんが監督の目に止まり、そのまま主人公に起用されたという滅茶苦茶なキャスティングであり、しかも彼はセデック語が分からないのでセリフ丸暗記で挑んだらしいのですが、そんな彼がモーナ・ルダオになりきり、ベテラン俳優をも超えるほどの威厳とカリスマ性を放っているのですから、これぞ映画のマジックです。日本人キャストも、そこいらの邦画以上の熱演を披露しており、すべての演技が必見と言えます。セデック語に日本語と、台湾人の監督にとっては馴染みのない言語が入り乱れる内容ながら、きちんと演技指導をやっているのですから、その手腕には驚かされます。
[DVD(字幕)] 7点(2013-11-26 01:19:30)
407.  劇場版 天元突破グレンラガン 螺巌篇 《ネタバレ》 
テレビシリーズ視聴済です。『紅蓮篇』ではかなり荒っぽい要約がなされていてかなり驚かされたのですが、当『螺巌篇』においてもテレビシリーズ未見の人を突き放すような端折り方がなされていて、二度驚きました。テレビシリーズ第2部のクライマックスだったテッペリン攻略戦をまさかのダイジェスト処理、ロージェノムの存在を明確に説明しないままテレビシリーズ第3部に該当する本編をスタートさせるという強引な構成には笑ってしまいました。「テレビシリーズを見ていない人は、この映画の対象ではありませんよ」と、製作側が序盤で宣言しているのです。。。 で、本編ですが、不完全と言う他なかった『紅蓮篇』から一転して、本作はかなりうまくまとめられています。テレビシリーズ第3部は少々グダグダな展開が目立っていたのですが、当映画版ではムダな場面の統廃合により物語全体をスリムにしており、テレビ版以上に通りの良い話として作り替えているのです。独立した一本の映画として成立する程度にまでまとめられており、やや投げやりだった『紅蓮篇』と比較して、本作の脚本は相当頑張っています。また、テレビ版では扱いの悪かったアークグレンラガンの活躍場面が大幅に増えており、ロボの動かし方のバランスも改善されています。。。 ただし、クライマックスのグランゼボーマ戦はやりすぎの域に達していて、少々覚めてしまいました。ラーメン二郎並みに濃く、かつ、完璧のさらに上を行く仕上がりだったテレビ版最終回を超えるクライマックスを作ろうとして、映画版は無茶をしすぎたようです。天元突破の大安売りなどは見たくありませんでした。あそこは、テレビ版の熱いクライマックスを再度見せてもよかったように思います。
[DVD(邦画)] 7点(2013-11-13 01:28:05)
408.  欲望のバージニア 《ネタバレ》 
実話であることを売りにしている本作ですが、ハリウッドにおける”based on true story”は非常に範囲が広く、本作についてもフィクションとして見るのが無難のようです。と言うのも、原作を書いたのは主人公・ジャック・ボンデュラントの孫にあたるマット・ボンデュラントであり、幼少期におじいさんから聞かされていた自慢話を小説化したものだとか。年寄りの昔話ほど信用できないものは他にないわけで、実際、ありえない程イカれた捜査官に、ありえない程生命力の強い次男と、実話と言うにはムリのある展開のオンパレード。話半分どころか、話3分の1か4分の1くらいのつもりで鑑賞なさってください。。。 内容は、ハリウッドで頻繁に製作されるアウトローものであり、特段に変わった試み等はなされておらず、一から十まで王道に徹しています。際立った傑作・秀作の類ではないが、この手の映画の黄金率に当てはめて堅実に作られてはいるので、深く失望させられることもありません。監督は、ひたすらに陰鬱な終末SF『ザ・ロード』で世界中の観客の心を粉々に砕いたジョン・ヒルコートですが、『ザ・ロード』に続き、本作でも湿っぽい演出を披露しています。物語は一家の三男・ジャックの成長譚であり、中盤にはジャックのちょっとしたサクセスストーリーも織り込まれているのですが、この監督の個性の賜物か、まったく爽快感を味わえないという点は、唯一、本作で独特に感じた点でした。展開はチンタラしており、インパクトある見せ場もないのですが、この湿っぽさのおかげで、物語には一定の緊張感が維持されています。どこまで意図されたものなのかは分かりませんが、なかなか面白い塩梅の映画だなと思いました。。。 この手の映画は若手俳優の豪華共演を売りにする場合が多いのですが、例に漏れず、本作もなかなかのメンツが顔を揃えています。登場場面の多さは役者の知名度と完全に比例しており、ジェイソン・クラーク演じる長男がいてもいなくても変わらない程の薄い存在感だったことはお気の毒でしたが、一方で、トム・ハーディ演じる次男のかっこよさは頭一つ抜けていました。いざとなればメリケンサックを取り出して相手をボコボコに殴りつけるバイオレンス野郎にして、惚れた女に背を向けて死地へと向かう任侠野郎、最高ではないですか。シャイア・ラブーフなんてどうでもいいから、もっとこいつを見せて欲しいと切に願いましたとも。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2013-11-13 00:36:13)(良:2票)
409.  キャビン 《ネタバレ》 
個人的に、ホラー映画の進化は『悪魔のいけにえ』で終わっていて、以降はシチュエーションを変えながら同じパターンを繰り返しているのみだと感じています。ホラーの作り手達も同様のことを考えているのか、『スクリーム』を皮切りに、『スリザー』や『フィースト』といった、ホラー映画あるあるを柱としたホラー映画は少なからず製作されています。本作もそんな作品のひとつなのですが、世界最強のオタク・ジョス・ウェドンが脚本を書き、それを『クローバーフィールド』のドリュー・ゴダードが監督したとなれば、ただの映画ではないだろうとの期待をさせられます。。。 が、しかし、内容は驚く程グダグダでした。被害者と仕掛人を交互に映し出すためスリルが持続しないし、さらには過去のホラー映画を上回るほどのインパクトある殺戮場面も作り出せておらず、正直言って眠かったです。「これはホラーのパロディですから」と言って作り手側が真剣勝負から逃げているような雰囲気さえ感じて、少々不快でもありました。「これでいいのか、ウェドンさんよぉ」と、心の中で何度も何度も叫びましたよ。。。 が、しかし、舞台が地下の実験施設に移り、話の核心部分に触れた辺りから、映画は異常な勢いで疾走をはじめます。『モンスターズ・インク』実写グログロ版、本当に最高でした。中盤をグダグダにしていたのも、このクライマックスを盛り上げるためだったのねと非常に納得。「疑ってすまんかった、ウェドンさん」と、心の中で何度も何度も謝罪しましたよ。モンスターパニックでお腹いっぱいになった後に、ダメ押しのシガニー・ウィーバー投入。この畳み掛け方は非常に素晴らしいと感じました。さすがはジョス・ウェドン、オタク心のくすぐり方をよくご存知で。 
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2013-11-12 01:31:20)(良:2票)
410.  世界にひとつのプレイブック
当初はシドニー・ポラックが監督に指名されていたものの、「俺じゃ無理だ」と言ってデヴィッド・O・ラッセルに手渡されたという本作。完成した作品においてはシリアスとユーモアが複雑に絡み合った絶妙な塩梅が実現しており、ラッセルの手腕が光りまくっています。予定通りにポラックが監督していればシリアスに振れすぎてしまい、ここまで楽しい映画にはならなかったでしょう。。。 ラッセルには本作の主人公と同じく双極性障害を患うご子息がいるようで、そうしたプライベートでの経験が映画にも活かされています。精神障害の患者を抱える家族のドラマと言われれば、それこそ『普通の人々』のような地獄の葛藤を想像しがちですが、ラッセルは必ずしも負の面ばかりではないという切り口でこれを描いています。子育てに失敗した父親が、もう一度これをやり直す機会として息子の精神障害が機能しているのです。本作はラブストーリーである同時に、家族の温かみが描かれたドラマでもあります。息子は過去に他人を半殺しにし、現在も頻繁に警察のお世話になっているが、家族は彼を決して厄介者とは扱わないし、腫れ物に触るようなよそよそしい態度もとらない。家族にしか出せない温かみが主人公を包んでいる。本作はその描写に成功しているのです。最近は手抜きが目立つデ・ニーロも、本作では久しぶりに高いパフォーマンスを披露。軽さと重さを絶妙に使い分けた演技には舌を巻きました。。。 他方、ジェニファー・ローレンスのオスカー受賞については疑問符が付きます。撮影当時21歳にして16歳年上のブラッドリー・クーパーの相手役を務め、デ・ニーロやクリス・タッカーをも圧倒した高いパフォーマンスには敬意を表するにしても、やはり、この役柄を演じるには年齢が若すぎたように思います。ティファニーはセックスをちらつかせることで男を操るメンヘラ女で、この役柄のイタさを伝えるには20代後半から30代前半の女優が必要だったのですが(当初はズーイー・デシャネルやアン・ハサウェイがキャスティングされていた)、これを若いローレンスが演じてしまったのでは少々ヤンチャなおねえちゃんになってしまうのです。監督も、彼女についてはねじ込まれたキャスティングであったことを匂わせる発言をしており、ローレンスのオスカー受賞については『恋におちたシェイクスピア』のグウィネス・パルトローのような胡散臭さを感じました。
[DVD(字幕)] 7点(2013-10-16 01:47:58)
411.  第9地区
有名な話ですが、本作の元となったのはTVゲーム『HALO』の映画化企画です。『HALO』の実写CMで高い評価を受けたニール・ブロムカンプが監督に起用されていたものの、ピーター・ジャクソンとマイクロソフトが条件面で衝突して『HALO』は頓挫。しかし、せっかく集めた人材や、重ねてきた芸術的協議を捨てるのは惜しいということで、急遽、ブロムカンプの短編映画を長編化したのが本作だったというわけです。突貫工事で製作された本作なので、その生い立ちに起因する作りの粗さみたいなものは随所に現れています。。。 まず、基本設定に光るものがありません。本作の元ネタは1988年の『エイリアン・ネイション』だと考えられるのですが、元ネタを上回るアイデアを提示できていないため、SF映画としてのサプライズには乏しいと感じました(B級映画『エイリアン・ネイション』に見向きもしなかった評論家先生達は、本作を「斬新だ!」と言って絶賛したようですが…)。ディティールについても同様で、宇宙船の燃料を浴びたことでヴィカスの変身が始まるということの原理がよくわからないし、怠け者ばかりのエビ星人の中でクリストファー・ジョンソンだけが行動力と科学知識を持っていることの理由も説明されません。意図的に説明を省いている部分もあれば、そうでない部分もあり、全体として見ると設定が煮詰めきれていないように思います。さらに、SFを通して人種問題を語るという姿勢も、何だか青臭く感じました。SFはしばしば現実社会の写鏡として利用されますが、本作の主張はストレート過ぎて説教臭くなっているのです。。。 ただし、「観客の心を容赦なく刺激する」という点において、本作は確実に成功を収めています。主人公が徹底的にいじめられ、その後、凄まじい反撃をする。アクション映画の基本中の基本を守ることで、驚くほどエモーショナルな物語に仕上がっているのです。また、エビ星人の描き方も秀逸。最初は気持ち悪く感じていたエビ星人に対して、中盤以降は愛着を覚えてしまうという不思議。架空のキャラに魂を吹き込むという点において、本作は突出しています。その他、メカ描写や銃撃戦の迫力には目を見張るものがあったのですが、これらについては『HALO』で積み重ねてきた知識や技術が十二分に活かされています。手持ちの技術・人材で出来ることは何かという点を冷静に分析していたピーター・ジャクソンは、さすがの采配でした。
[映画館(字幕)] 7点(2013-10-12 02:28:44)(良:2票)
412.  エリジウム
長編デビュー作がいきなり興行成績1億ドル突破&アカデミー作品賞ノミネートという、輝かしくも重い経歴を背負ってしまったニール・ブロムカンプの長編第2作。特大ホームランの後に何を撮るのかということは何とも悩ましい問題ですが、ブロムカンプは「前作と似たような映画を撮る」という王道を選択しました。果たしてその出来は?と言うと、得意分野で勝負したおかげで大きな失敗を犯すことはなく、また製作費が大幅に増加したことによる効果を画面にきっちり反映できており、期待される水準には十分に達していると言えます。。。 「死にたければヨハネスブルグを歩けばいい」とまで言われる犯罪タウンで育った監督は、未来のLAをヨハネスブルグ化。ボロボロになった高層ビル群に、地平線まで続く無数のバラック小屋の映像的インパクトは絶大だし、そこに生きる人々の絶望までをきっちりと画面に刻みつけてみせた手腕には目を見張るものがありました。ディストピアSFを扱った作品は他にも多くありますが、本作ほどの表現レベルに達したものは非常に稀だと言えます。また、主人公がエリジウムへカチ込むに至るまでの感情の流れも非常によく計算されており、荒唐無稽な物語でありながらも、観客は主人公への同情心を持ち続けることができます。昨年製作された『トータル・リコール』と比較すれば、本作がいかによくできているかが分かります。やっぱり、この監督さんは映画作りがうまいのです。。。 対する敵も良く作られています。最新鋭の兵器を意のままに操りながらも、ここぞという場面では日本刀をブンブン振り回すキ○ガイなのですが、彼を「ただただ狂っていて、傭兵でもやらなければ他に生きる道がない男」という純粋悪としたおかげで、アクション映画に不可欠な恐怖の対象となりえています。次に何をしでかすか分からないというその異常者ぶりが、映画を引き締めているのです。彼に負けず劣らず狂った部下2人のインパクトも上々であり、クズのサンバルカンは見ていて飽きがきません。。。 ただし、問題もあります。監督の得意分野であるスラムの描写と比較すると、エリジウムの描写は驚くほど薄っぺら。既視感溢れる理想郷ぶりで、あまりに魅力に欠けるのです。また、敵・味方合わせて10名程度が暴れただけで破壊されてしまうエリジウムの社会システムにも疑問符が付きます。クーデターの間、ロボコップたちは何をしてたんでしょうか?
[映画館(字幕)] 7点(2013-10-12 02:26:42)
413.  レディ・イン・ザ・ウォーター 《ネタバレ》 
『シックス・センス』以来の蜜月状態にあったディズニーから出資を断られただの、賛否は割れても興行成績はピカ一だったシャマラン作品史上初の赤字映画になっただの、ラジー賞で最低監督賞と助演男優賞をダブル受賞だのと、とにかく悪評ばかりの本作。確かに、目の覚めるようなオチはないし、笑いやスリルの量も減っており、従来のシャマラン作品と比較すると落ちる出来だと言わざるをえません。ただし、物語にはオリジナリティがあるし、主題に関わる部分もきちんと作りこまれているので、シャマランの意図を理解しながら見てあげれば、十分に楽しめる映画だったと思います。。。 作品の着想は『アンブレイカブル』に近く、おとぎ話を解体してその構成要素をすくい取り、現実社会を舞台にして再構築するという内容となっています。アパートの住人達が自分の果たすべき役割を探すという展開はまさに私たちの人生の縮図であり、悩み、時に間違いを犯し、時には自分の能力に自信を持てなくなりながら、それでも必死にもがいて目的の達成を目指す彼らの姿には、大変に心を打たれるものがありました。各キャラクターが正しい役割を認識した瞬間にすべてがうまく進み始めるという展開にもシャマランなりの人生哲学が反映されているようで(クライマックスがアッサリしすぎていることも批判の対象となっているようですが…)、見ていてすごく楽しめました。。。 また、「つまんねぇなぁ」と思いながらボンヤリと眺めていた前半のドラマが、主題が姿を現す後半パートの伏線になっているという脚本は素晴らしくよく計算されていて、シャマランの構成力の高さにも唸らされました。パンチには欠けるものの、全体としては丁寧に作られた良作だと思います。世界的な思想の指導者となる男をシャマラン自身が演じたり、作品中で映画評論家をブチ殺したりと、あまりに幼稚な点も目に付きましたが、それはそれとして、もうちょっと評価されてもいい映画だと思います。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2013-09-27 01:33:09)(良:1票)
414.  三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船
VFXで古典を大胆アレンジという企画は『シャーロック・ホームズ』の二番煎じだし、監督はダメな方のポール・アンダーソンだし、どうせロクでもない映画なんだろうなと期待せずに観たのですが、そんな予想に反して意外な程よくまとまっていて、きちんと楽しめる娯楽作に仕上がっていました。笑いあり、スリルあり、目を楽しませるド派手な見せ場あり、さらには全編に散りばめられた伏線とその回収もスムーズであり、B級アクションとしては過不足ない出来なのです。。。 また、私は3D版を鑑賞したのですが、3D効果もきちんと発揮されており、技術面での努力も充分に伝わってきます。ポール・W・S・アンダーソンのこういう真面目なところは大好きです。。。 なお、タランティーノは2010年度のベスト映画の一本に本作を含めており(いかにもタラが好みそうな『ドライヴ』よりも高評価)、意外な方面からの評価は受けている作品のようです。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2013-09-01 04:18:06)(良:1票)
415.  ワールド・ウォー Z 《ネタバレ》 
製作費1億9千万ドルという、ゾンビ史上最大の超大作。世界が破滅するお話でありながら、興行的リスクを心配して小規模予算しか与えられてこなかったゾンビ映画というジャンルにおいて(『ドーン・オブ・ザ・デッド』ですら2千万ドル程度)、ようやく話の規模に見合った製作環境が整えられた映画が登場したというわけです。果たして、ハリウッドが本気出して作ったゾンビ映画はどれだけ凄いことになるのか?一般の方々からは悪趣味の一言で片付けられてきたゾンビ映画が、その真価をどこまで発揮するのか?公開前から大きな注目を集めてきた本作ですが、これがなかなかの難産でした。とめどなく続く追加撮影に、度重なる公開延期。追加撮影がなされるということは、納得のいく映画が出来ていないことの証。「これはもうダメかもしれん」と多くの映画ファンが絶望にも近い気持ちを抱いていたのですが、完成した映画は、そんな心配を吹き飛ばす快作に仕上がっています。。。 アメリカに始まり、韓国、イスラエル、ウェールズと物語は世界を股にかけ、行く先々で目を疑う規模の見せ場が繰り広げられます。桁外れの数のゾンビが暴れ回り、それを防ごうとする人類も、もうヤケクソ。ワラワラと押し寄せる数百万のゾンビに対して、ありったけの弾薬を浴びせるというテンションの高い見せ場が続きます。さらには、友情とか家族愛とか、そういうめんどくさい要素は極力排除し、ソリッドなアクション映画として仕上げられています。世界が滅ぶかどうかの時に、プライベートのことなんて気にかけてられないわけです。そうしてドライな語り口に徹した結果、かえって危機感が煽られるという好循環が生み出されているのがうまいところで、自分の身を犠牲にしてでもブラピを目的地へ行かせようとする兵士達の姿なんて、涙なしには見られませんでした。。。 ただし、問題もあります。前半の異常なテンションと比較すると、後半の失速具合がハンパではないのです。最初の脚本にはクライマックスに怒涛の見せ場が準備されていたのですが、続編製作を睨んで物語を完璧には終わらせないという方向性が思案されはじめたことから、本作の後半部分はグダグダになったようです。研究棟での地味な追っかけが続いた後に、「いろいろありましたが、とりあえず今回のお話は終了。でも、戦いははじまったばかりです」、出来損ないの少年マンガみたいな締めには腰が砕けました。
[映画館(吹替)] 7点(2013-08-11 00:49:54)
416.  バビロン A.D. 《ネタバレ》 
宗教団体が政治利用目的で聖母マリアのレプリカを作ったら、思いがけず本物が出来てしまったという簡単なお話なのですが、完成した映画は「どうすればここまで意味不明にできるのか」と思うほどにとっ散らかっていて、もう何が何だかでした。個々の登場人物が何を考えているのか分からない、序盤はダラダラしている割に、終盤では物凄い勢いでネタが明かされて理解が追いつかない等、この映画の語り口は大いに問題ありです。。。 本作はマチュー・カソヴィッツが映画化権を取得し、5年もの時間をかけて脚本を練り上げたという入魂の作品。しかし、撮影に入ると悪天候が原因で大幅な予算超過に陥り、保険会社からの追加融資を受けるまでの状況となりました。この状況になれば映画会社は損切りを考え始めるわけで、「芸術性とかメッセージ性とかどうでもいいから、早く映画を完成させろよ」という雰囲気になってきます。一方でカソヴィッツは自己のビジョンの実現に拘り、現場は泥沼化しました。苦しい中でも会社と現場が協力しながら製作を進めればそれなりの映画になったかもしれないのですが、両者が完璧な対立関係になってしまったことが本作の出来にトドメを刺しました。フォックスはカソヴィッツから無理矢理に映画を取り上げ、監督の意向を無視して適当に編集したものが劇場公開版となったのです。。。 本作の舌っ足らず感、どこかで観たことあるなぁと思ったら、デヴィッド・リンチの『デューン/砂の惑星』でした。あちらは年月とともに熟成してカルト映画化し、現在では一定数のファンを獲得するに至っていますが、本作もカルト化する要素は充分に持っています。アクションなどの完成度を見れば映画としてのベースは非常にしっかりとしていることが分かるし、主題に関わる部分も悪くありません。宗教とテクノロジーという壮大なテーマをたった一人の少女にまで圧縮し、さらには信仰心とは何かという深淵なテーマをミシェル・ヨー一人に象徴させているのです。語り口が不十分だからこそ、観る度に新たな発見があって飽きさせず、カルトに必要な中毒性というものも備わっています。実際、私は連続で二度鑑賞してしまったし、こんなレビューを書いているうちにまた見たくなってきました。フォックスとカソヴィッツの関係を見る限り実現は難しいようですが、アラン・スミシー名義でもいいから全長版をリリースして欲しいものです。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2013-07-02 22:27:52)
417.  アメリカン・ビューティー 《ネタバレ》 
本作は家庭の崩壊を描いた作品だと言われますが、実際のところ、家庭という要素はあまり重く扱われていないように思います。主人公であるお父さんは中盤で吹っ切れてしまい、以降は家庭に背を向けてしまうからです。嫁や娘とどう向き合うかという視点は一切なく、彼女達の存在は彼の頭からは完全に消えてしまいます。むしろ私が注目したのは、本作が1999年に製作されたという点です。1999年といえば、『マトリックス』と『ファイト・クラブ』という映画史に残る傑作が2本も生まれた年。そして両作ともに、くだらない日常を生きる男が、生の実感を求めて戦いの世界に足を踏み入れるというお話でした。本作もまた、上記2作と共通のテーマを扱っているように思います。家庭と仕事に揉まれて人生を見失っていた男が、そうした一切のしがらみを捨てて自分の歩みたい道を目指す。上記2作の主人公が追い求めたのは「全人類の救世主になる」「国中の男を束ねた組織のリーダーになる」という幼稚な夢でしたが、一方、本作の主人公が追い求めるのは「女子高生とセックスする」という実に下世話だが、実に正直な夢。目指すもののレベルはぐっと下がりましたが、レスター・バーナムはネオやタイラー・ダーデンと同根の男なのです。。。 本作の脚本は非常によくまとまっています。「この後、私は死ぬ」というつかみで一気に観客の関心を引き、その後は意外性のある展開が繰り広げられてまったく先読みさせません。コンラッド・L・ホールによる撮影、サム・メンデスによる演出も非常に手堅く、こういうものをよく出来た映画と言うのだという見本のような仕上がりとなっています。ただし、問題に感じた点が一点だけあります。クライマックスにて主人公はついに憧れの女子高生とセックスする機会を得たものの、結局彼はセックスを辞退してしまうということ。そこに大人の良識を介入させたら、青年に戻った中年男の悲劇というドラマの意義が半減してしまうでしょうよ。アメリカ社会の破壊を実行したタイラー・ダーデンを見習って欲しいところでした。
[DVD(吹替)] 7点(2013-06-21 01:25:38)(良:2票)
418.  普通の人々
二人の息子のうち、可愛がっていた方が死んでしまった家族の物語。兄の死や弟の自殺未遂といった映画的に美味しい部分は敢えて省略し、一家が平穏を取り戻そうとしている部分にスポットを当てるという、なかなか斬新な構成となっています。『ペーパームーン』で高い評価を獲得し、後には『スパイダーマン』シリーズを手掛けるアルヴィン・サージェントによる脚色が素晴らしく、本来はドラマティックではない物語が、非常にドラマティックな内容として描かれています。何が素晴らしいって、それまで機嫌良くしていた人間がさっと冷めていく瞬間であったり、何となく保たれていた日常の均衡が崩れる時の気まずさであったりというものが、抜群の臨場感をもって描かれているのです。例えば、祖父母も交えて家族写真を撮る場面。みんな勝手なことばかりを言って会話はまるで噛み合っていないのですが、それでも全員が笑顔で機嫌良く振舞うことで、場の空気は平穏に保たれていました。しかし、イライラを募らせた次男が怒鳴り声をあげたことで一瞬にして全員が凍りつき、「この場を何とか取り繕わなきゃ」と思っても適切な言葉が浮かんでこないという、あの場面の何とも言えない気まずさ。あるいは、冒頭の朝食の場面。母親が作った朝食を子供が食べないというありふれた場面なのですが、本作の母親は「食べないのなら捨てる」と言って、出来たてのフレンチトーストを流しに捨ててしまいます。この数十秒のやり取りで、この母親がキ○ガイだということが観客にはっきりと伝わる仕組みになっているのです。本作にはこの手の的確な描写が多く、ディティールの面で非常に成功した映画だと言えます。。。 レッドフォードは初監督ながら、地に足のついた演出でこの脚本を映像化しています。また、自身が俳優であるためか役者の動かし方もよく心得ていて、エキセントリックな役柄ばかりを演じてきたドナルド・サザーランドに気の弱い父親役を、有名なコメディアンであるメアリー・タイラー・ムーアに神経質な母親役を、演技歴の浅いティモシー・ハットンに繊細な次男役をやらせるという奇抜なキャスティングながら、各々から生涯ベストとも言える名演技を引き出しています。ただし、地に足がつき過ぎて一つ一つの場面が妙に長かった点は、本作の数少ない欠点。今回DVDで見たオリジナル版よりも、正味90分に編集された地上波放映版の方が面白く感じられました。
[DVD(吹替)] 7点(2013-06-19 01:39:47)(良:1票)
419.  ジャッジ・ドレッド(2012)
大風呂敷広げすぎて失敗したスタローン版の反省からか、今回は舞台も物語も徹底的にシンプルにまとめています。無駄を削りすぎて『ザ・レイド』とまったく同じ話になってしまったのはご愛嬌ですが、アクション映画のアプローチとしてはこれが正解。スタローン版と比較すると格段に面白くなっています。『28日後…』のアレックス・ガーランドが脚本を書いたことでハリウッド大作とは一味も二味も違う雰囲気が出来上がったし、キャラ設定やセリフ回し等の基本的な部分もかなりしっかりとしています。本作のドレッドはとにかくカッコいいのです。圧倒的に不利な状況に置かれても、慌てず騒がず冷静に状況を見極めながら行動を決定し、クールに振る舞いながらも内面には激しい怒りを煮えたぎらせている。理想的なダークヒーローぶりではありませんか。相棒を人質にとられるに至り、「俺こそが法だ。敵方についた者は容赦なく処刑する」と数万人の住民に対してたった一人で宣戦布告をする場面なんて、かっこよすぎて死ぬかと思いましたよ。彼に対する大悪党「ママ」もよく作り込まれていて、ドレッドの敵として十分な存在感や威圧感を放っています。マンガ映画としては本当によく出来た映画だと思います。。。 一方で残念だったのは、本作を象徴するような印象的な見せ場を作れなかったという点です。アクション映画としてのアベレージは高いのですが、「これは!」という突出した見せ場がなかったので、やや物足りなさを感じてしまいました。ただし、これは本作のプロダクションを考えれば仕方のない部分でもあります。スタローン版の大失敗の影響からか、本企画についても映画会社は投資に慎重モードとなっており、本当にギリギリの予算しか与えられていなかったのです。これについては、現在企画中の続編できっちり答えを出していただきたいところです。 
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2013-06-11 00:37:58)(良:1票)
420.  そして友よ、静かに死ね 《ネタバレ》 
悪事から足を洗ったヤクザ者が、仲間への仁義から再び犯罪の世界に戻らざるをえなくなるという『カリートの道』のような映画ですが、なんとこれが実話。伝説の犯罪者・エドモン・ヴィダル本人が書いた自伝が本作のベースとなっています。ヴィダルはジプシー出身であるがゆえに幼い頃から差別を受け、冗談半分でサクランボを盗んだ件で服役させられたことから(書類送検で済む事件だったにも関わらず、彼がジプシーであったために通常では考えられないような厳しい刑が課せられたようです)、本格的に悪の道へと入っていきます。映画では、現在のヴィダルの物語と、彼の生涯の物語が平行して描かれるのですが、そのどちらもが激シブの完成度。ヤクザ映画が好きな人には堪らないドラマとなっています。。。 問題点を挙げるならば、ヴィダルと相対するセルジュの人となりの描写が不足していたことでしょうか。彼はいつから仁義の道を踏み外していたのか?その点が曖昧であったため、セルジュの本性を見抜けなかったヴィダルの物語として、やや腑に落ちない内容となっています。
[DVD(字幕)] 7点(2013-06-04 23:42:46)
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