421. ホタル(2001)
確かに映画としての出来は…だけど、作り手の心意気というか、真摯さは画面からセツセツと伝わってくる。それだけでも、ぼくはこの映画を見てよかったなと思います。特に健さんが韓国の地で「アリラン」を歌う場面と、回想シーンで、在日の特攻兵が恋人への「遺書」を口にするところには胸を打たれた。出来・不出来や面白い・つまらないの他にも、映画を評価する選択肢はあるはずだよな…というのが、ぼくの正直な感想です。 6点(2003-09-25 14:24:01) |
422. 僕らはみんな生きている
公開当時、かなり感心したことをおぼえてます。何にって、ヘンなナショナリズムを交えることなく、今のニッポン人の醜さや切なさ、そして愛しさをきっちり表現していたことに。アジアでの我々って、所詮ああいった情けない醜態を現地の人間の前でさらけだしているんだろうな。でもって、そんな我々にも、まだニンゲンとしての心意気が残っているだってことをしめした真田広之のクライマックスでの言葉に、けっこうカンドーしちゃいました。滝田洋二楼カントク、そして一色伸幸サンの脚本が巧いです。 8点(2003-09-25 14:13:35) |
423. 北北西に進路を取れ
正直言って、ヒッチコックにはどうも完全にはのめり込めない小生(見たら見たで面白いし、感心はするんだけど…)。しかし本作は、『サイコ』『めまい』とならんで、文句なしに大好きなヒッチ作品です。理由もわからないまま、殺人犯にされるは命は狙われるは謎の一味や美女に追い回されるは…というケーリー・グラントの主人公が、実はマザコン気味だったというのは、『鳥』のロッド・テイラーと同様だけど、こちらのほうがずっと陽性で気に障らないし。特にラスト、これぞソフィスティケーションの極致ですなあ。 10点(2003-09-25 14:03:15) |
424. 僕の村は戦場だった
水、火、風、土(草木)という、いかにもタルコフスキーらしいい「物質的想像力」が、この長篇処女作ではやくも全開。物語はいかにも当時のソ連風教条主義的プロパガンダなんだけど(ナチスに母を殺された少年と、赤軍兵士の友情。ああ、ナチス憎し、ソビエト赤軍万歳!…)、そういうストーリーとは裏腹に、タルコフスキーが本当に撮りたいものをしか撮らないという決意が画面から伝わってくる。よくぞやったと思うと同時に、これじゃ当局からにらまれるのも無理はないよなあ…と。とにかく、まだ随分とナイーヴでみずみずしいこの天才の、愛すべき1本。 9点(2003-09-25 13:45:01) |
425. ぼくの伯父さんの休暇
『ぼくの伯父さん』以降のジャック・タチが”文明批判(!)”的なスタンスの中に独自のスラプスティック芸術を昇華させていったのに対し、本作はまだ純粋に漫画的なギャグの創造に喜々としている。だからこそこの天才の本質が十全に発揮されて、たぶんタチの作品でも一番好きかも。とにかく、駅のホームを人々が行ったり来たりするナンセンスな冒頭シーンから、朗らかに笑わせてくれます。でもって、見終わった後、じんわりと幸福感に満たされます。 10点(2003-09-25 13:27:11) |
426. ぼくの伯父さん
天真爛漫さと、社会に対する醒めた眼差し。それをホンワカとしたギャグに昇華するジャック・タチって、何てチャーミングなんだろう。野良犬たちが原っぱを、通りを駆け抜けるそんなワンシーンだけで、ぼくたちはこの天才的な映画作家(というより、心優しき詩人)の作品のトリコになってしまう。遠い将来、フランス映画で唯一残るのは、たぶんタチ作品じゃないかな。本気でそう思うものであります。 10点(2003-09-25 13:17:21) |
427. 望郷(1937)
「名画」にも、賞味期限があるってことを、この作品も残酷に証明しているなあ。いかにもセット然としたカスバの街並みが古色蒼然たる「詩情」を漂わせ、裏切り者を始末する場面でのジュークボックス(だっけ?)の使い方なんかも、どこか気恥ずかしい…。この頃の映画でいっつも死んでいた印象があるジャン・ギャバンの”情死(?)”ぶりも、フムこんなものか、程度の感想のみ。でも、同時代のルネ・クレールやジャン・ルノワールの作品がいまだにハッとする瞬間や新鮮さがあるのに、この映画が単に古臭いだけなのは、やはり監督の才能のモンダイなんでしょうか。 5点(2003-09-25 12:45:31)(良:1票) |
428. ダーティファイター(1978)
『許されざる者』みたいな”陰”のイーストウッド作品もいいけど、こういった徹底的に陽気でノーテンキなイーストウッド作品も大好き(最近じゃ『スペース・カウボーイ』がこっちの方向だよね)。イーストウッドの主人公を中心とした、オランウータンを含むへんてこな”家族”に、ぼくも加わりたいっす…。ラストの意外なホロ苦さも、絶妙なテイストになっとります。それにこの映画のソンドラ・ロック、可愛いじゃん! 8点(2003-09-18 12:05:01) |
429. 奇人たちの晩餐会
最近あんまり笑ったことないんだけど、この映画見た時はそれこそ死ぬほど笑い転げました。バカを笑うつもりが、自分の方がバカを見たという、皮肉と諧謔とナンセンスのオンパレード。どうしても舞台劇調になるのは仕方ないけど、ここまでおかしけりゃ文句なし! ややペーソスをまじえての後半は、このまま無難に終わるのか…と思わせつつ、ラストでもう一発カマしてくれるあたり、ほとんどひれ伏したくなりましたです。おすすめ! 8点(2003-09-18 11:55:24) |
430. 危険な遊び(1993)
人気子役の競演作品で、よくぞここまでダークな「R指定」作品を作ったなあ。マコーレー・カルキン君は、これでキャリアに幅を持たせようとしたんだろうけど、これじゃ逆効果だったかも(事実、これ以降の彼は急速に忘れさられていく…)。まあ、監督に陰湿なスリラーを得意とするジョセフ・ルーベンをもってきたことが、この作品の魅力であり、問題点でもあったかな。見終わった跡のイヤ~な感じは、まさにこの監督の真骨頂なんだけど。 7点(2003-09-18 11:44:27) |
431. サイコ(1960)
《ネタバレ》 世に完璧(オーソン・ウェルズみたく「パーフェクション!」と発音すれば、気分かな)な映画が存在するとすれば、これがその1本。主人公だと思っていたジャネット・リーが、いきなり惨殺されるあの名高いシャワールームの場面は、視覚的にも作劇的にも初めて見た時にゃ腰が抜けるほどの衝撃でした。そして、あの階段での殺人と、ミイラ…。あからさまな精神分析的展開はいささか図式化が鼻につく向きもあるだろうけど、何回見てもそんなことまったく気にならない。つくづく、傑作です。 10点(2003-09-18 11:23:57) |
432. ウインドトーカーズ
ジョン・ウーは何を撮っても「ジョン・ウー映画」になってしまう…。それが悪いんじゃないけど、そのスタイルは意外にも戦争映画には合っていないという齟齬感が最後まで消えませんでした。…断じてツマンナイ作品じゃないとは思うんだけど。そう言えば、彼の”祖”であるサム・ペキンパーは、『戦争のはらわた』で燃え尽きたんだよなあ。ちょっと心配… 6点(2003-09-18 11:11:49) |
433. ウィークエンド・シャッフル
う~ん、日常の裏側にはこれだけの不条理や背徳(?)がうごめいているんですよ…という内容は面白いんだけどねえ。映画は何かチープでうらぶれた「貧しさ」ばかりが眼について、失望。ただ、秋吉久美子のヌードは「ごちそうさま」でした…。 5点(2003-09-18 11:02:13) |
434. 飾窓の女
《ネタバレ》 ジョーン・ベネットの、モノクロ画面からも匂いたってくるような色香に、クラクラ。悪夢のようにトラブルが加速度的に膨らんでいくエドワード・G・ロビンソンの「災難」も、ベネットを前にしたなら全オヤジすべからくナットク! でしょう(だからこそ、怖い…)。問題の夢オチも、まだ戦時下(!)の倫理コードじゃ、ここまで不道徳な内容だと、こういう結末でないと観客の不興を買うと判断したんでしょう。とにかく、今見てもめちゃくちゃ面白いです。必見! 9点(2003-09-18 10:55:41) |
435. チキン・ハート
これって、ちょっとした傑作だと思うけどなあ。ここまで愛すべきダメ男たちが出てきて、いじけたりするんじゃなく、しみじみと好感を呼ぶ映画なんてそうはないっすよ。大袈裟じゃなく、「エロ事師たち」とか、「夫婦善哉」とか以来っすよ! …特に松尾スズキのダメっぷりには、おおくの男どもが共感と自己反省の念を抱いたことでしょう。忌野清四郎、ホレます。少なくともぼくはホレ直しました。 9点(2003-09-16 18:42:01) |
436. 地球爆破作戦
おおっ、この隠れた佳作SFを取り上げてくださった↓の方に感謝! グローバル・ネットワークが現実と化した今こそ、その無気味さがよぉ~く身にしみます。考えてみれば『ターミネーター3』なんてこの映画のパクリみたいなもんだし(…とは、ちと言い過ぎだけど)。それにしても、米ソのスーパーコンピュータが”合体”する展開って、考えようによっては、一種の「狂気の愛(!)」ものでもあったんだなあ。TV映画じゃ秀作を連発してきたものの、何故か劇場映画となると実力が発揮できないジョセフ・サージェント監督だけど、これはその幸福な例外。 8点(2003-09-16 18:26:08) |
437. チート
セッシュー・ハヤカワの水もしたたる”色男”ぶりには、なるほど、後輩のルドルフ・ヴァレンチノに優るとも劣らない妖気(?)があるなあと感心。ただ映画は、セシル・B・デミルって、この頃からあざとくハッタリだけのショーマンだったのね…という印象のみ。同時代のグリフィスやジョージ・B・サイツなどのオリジナリティにくらべたなら、その才能の差は歴然でしょう。 4点(2003-09-16 18:14:10) |
438. 河童(1994)
《ネタバレ》 初監督にしちゃ技術的にまあまあだとか、そういったこととは別にこの映画の”叙情垂れ流し”ぶりにヘキエキ。クライマックスでいきなり藤竜也が「ボクをずっと待っててくれたの?(グシュン)」と”幼児還り(?)”したかのように少年口調でカッパ宇宙人に語り出した時にゃ、見ているこちらが赤面しちまったぞ! 結構予算もかかった、日本映画にすれば大作の部類に入るだろうに、それをこんなクサイ、幼稚な代物にした石井某に、敵意をいだいたぼくなのだった。 3点(2003-09-16 17:03:16) |
439. ワールド・アパートメント・ホラー
壮大なSFものとは別の、初期の大友克弘が描いていた奇妙な味のファンタジーとして、これはこれで見事に大友ワールドですねえ。しかも、実写映画をかくも達者にこなして、自己のヴィジョンを実現した彼の才能とセンスに感心。アニメもいいけど、またぜひ劇映画にチャレンジしていただきたい…そう思わせる出来映えです。笑えて、ヘンテコで、オチまでしっかり! 7点(2003-09-16 16:53:22) |
440. ブレスレス(1983)
《ネタバレ》 ラスト、いきなりリチャード・ギアが踊り出すのにはア然。が、そのダサさが逆に不思議な愛嬌を感じさせ、結構キライじゃありません。『勝手にしやがれ』をアメリカ映画にリメイクするって話は、確か60年代にゴダール自身が計画していたはず。それがこんなカタチで実現したことに、本人はどう思ってるんだろ? オリジナリティのかけらもない映画だけど、くり返しますがぼくはその野心のなさが結構キライじゃないんです。 6点(2003-09-16 16:31:45) |