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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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421.  オズ/はじまりの戦い
3D版ブルーレイを鑑賞。 『死霊のはらわた』の監督がディズニーでファンタジー大作を撮る日が来るとは、一体誰が想像したでしょうか。しかも、題材は『オズの魔法使い』。MGMが1939年に制作した実写版は現在に至るまでアメリカの国民映画の一つとして位置づけられており、本作は、そんな超名作の姉妹編にあたるという、アメリカ人にとっては只事ではない立ち位置にある作品なのです(日本でいえば、『七人の侍』の続編を撮るようなものでしょうか)。さらには、1954年に『オズの魔法使い』の続編の映画化権を取得して以降、ディズニーは60年近くに渡ってこの企画を温めてきており、まさに社を挙げての大プロジェクトであるという側面も持っています。そんな映画をホラーの巨匠・サム・ライミに任せるとは、ディズニーもなかなか思い切った人事をやるもんだと感心したもので、ライミとディズニーがどんなコラボレーションを披露するのか、大変楽しみな映画でした。。。 そんな期待とは裏腹に、ライミは完全に個性を消してディズニーの望む映画を撮ることに全力を注いでいます。人が死ぬことはないし、直接的な暴力描写もない。主人公は勇気とエンターテイメント精神で悪い魔女を追い出すことに成功します。悪い魔女だって、観客の前で悪さはしません。「私は悪い人です」という話し方をするだけです。1939年ならともかく、現在の観客がこんな映画で手に汗握ることはできませんね。悪い魔女に負けた場合、どれほど恐ろしいことが起こるのかという煽りがなければ冒険は盛り上がらないし、痛みが描かれなければ戦いに感情移入はできません。『ナルニア国物語』でやったのと同じ失敗をディズニーは繰り返しているのです。人畜無害な娯楽などアニメの世界でしか通用しない、実写にはある程度の毒が必要だということに、早く気付いてもらいたいものです。。。 お話の方も、長年に渡って温めてきた割には特徴のない平凡なものでした。サム・ライミが1993年に撮った『死霊のはらわたⅢ/キャプテン・スーパーマーケット』とまったく同じ話で、ディズニーほどの大スタジオが練りに練り上げたお話にはどうやっても見えないのです。これだけの大きな企画なのに、何のサプライズもない脚本がよく通ったなと、変なところで感心してしまいました。本国では大ヒットしたため続編も製作されると思いますが、私はこれ一本で十分です。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2013-11-12 01:32:39)
422.  キャビン 《ネタバレ》 
個人的に、ホラー映画の進化は『悪魔のいけにえ』で終わっていて、以降はシチュエーションを変えながら同じパターンを繰り返しているのみだと感じています。ホラーの作り手達も同様のことを考えているのか、『スクリーム』を皮切りに、『スリザー』や『フィースト』といった、ホラー映画あるあるを柱としたホラー映画は少なからず製作されています。本作もそんな作品のひとつなのですが、世界最強のオタク・ジョス・ウェドンが脚本を書き、それを『クローバーフィールド』のドリュー・ゴダードが監督したとなれば、ただの映画ではないだろうとの期待をさせられます。。。 が、しかし、内容は驚く程グダグダでした。被害者と仕掛人を交互に映し出すためスリルが持続しないし、さらには過去のホラー映画を上回るほどのインパクトある殺戮場面も作り出せておらず、正直言って眠かったです。「これはホラーのパロディですから」と言って作り手側が真剣勝負から逃げているような雰囲気さえ感じて、少々不快でもありました。「これでいいのか、ウェドンさんよぉ」と、心の中で何度も何度も叫びましたよ。。。 が、しかし、舞台が地下の実験施設に移り、話の核心部分に触れた辺りから、映画は異常な勢いで疾走をはじめます。『モンスターズ・インク』実写グログロ版、本当に最高でした。中盤をグダグダにしていたのも、このクライマックスを盛り上げるためだったのねと非常に納得。「疑ってすまんかった、ウェドンさん」と、心の中で何度も何度も謝罪しましたよ。モンスターパニックでお腹いっぱいになった後に、ダメ押しのシガニー・ウィーバー投入。この畳み掛け方は非常に素晴らしいと感じました。さすがはジョス・ウェドン、オタク心のくすぐり方をよくご存知で。 
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2013-11-12 01:31:20)(良:2票)
423.  ザ・マスター
貫禄を見せるフィリップ・シーモア・ホフマンと、彼に全力でぶつかっていくホアキン・フェニックス。そして、影の実力者らしき静かな存在感を見せつけるエイミー・アダムス。確かに、彼らの演技合戦は素晴らしいレベルに達しており、見て損のない映画に仕上がっています。その一方で、この映画が一体何を言いたかったのかという点については腑に落ちない点が多く、アカデミー賞で演技部門には複数ノミネートされたものの、作品内容に係る部門でのノミネートがなかったという評価には、非常に納得がいきました。。。 本作はサイエントロジーの設立から拡大までを描いた作品だということで、本国では大きな論争を生みましたが、実際には、宗教や信仰というものはそれほど大きく扱われていません。教祖様の教えは科学と宗教を折衷したインチキ臭いものだが、アル中の主人公・フレディは、そのデタラメな教えによって人生を救われてしまう。この点を深く掘り下げれば、「信仰とは何か?」という哲学的な映画になったはずなのですが、勿体無いことに、本作はその点を見事にスルーしているのです。では本作で何が描かれているのかというと、インチキ教祖と信者の間に生まれた謎の友情。暴力に訴えてでも教団と教祖様を守ろうとするフレディは完全にイカれており、教祖様の周囲でも、「あの人はヤバいから切ってしまおう」という声が根強いものの、なぜか教祖様はフレディに対して特別な思い入れを持ち、決して切りません。フレディもフレディで、教祖様の巻き添えを食って留置所に入れられた時には、「なんだよ、この教え。インチキじゃないか!」と信仰をはっきりと否定するものの、その後も教祖様と行動を共にするという意味不明さ。本作は信仰の物語ではなく、異常者同士の歪んだ友情を描いた物語なのです。。。 しかし、二人の間の友情がどうにも消化不良。監督が言わんとすることは頭で理解できるものの、ドラマチックではないので心に響いてこないのです。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の仮想的な親子関係や、『マグノリア』の憎んでも憎みきれない肉親への愛情物語などと比較すると、PTAの演出は随分落ちたなと落胆させられました。撮影技術や役者への演技指導といった表層的なスキルについては熟成を感じさせられるものの、主題の煮詰め方については、寧ろ退化しているように感じました。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2013-11-10 02:41:42)
424.  クロユリ団地
さすがはJホラーを代表する監督・中田秀夫による作品だけあって、伏線の張り方や落とし方は非常にしっかりとしています。Jホラー特有の陰惨な空気も見事に醸成されており、丁寧に作りこまれた良作だと言えます。主演の前田敦子も、小慣れてはいないものの演技を全力でやりきっており、役作りのために自分を相当追い込んだことが伺えます。最初は、アイドル映画だと思って舐めた目で見ていたのですが、実際にはかなり本格的なホラー映画だったことは嬉しい誤算でした。。。 以上、褒めるべき点の多い作品ではあるのですが、ひとつひとつの場面が妙に長いために、全体としてチンタラした映画だという印象を受けたこともまた事実。静かな場面の積み重ねからいきなりショックシーンで観客を驚かせることはホラー映画の常套手段なのですが、観客の眠気を誘うほど静かな本編では、ショックシーンの勢いも削がれてしまいます。
[ブルーレイ(邦画)] 6点(2013-11-06 01:11:45)
425.  バレット(2012)
シュワルツェネッガーの『ラスト・スタンド』と併せて見たので余計にそう感じるのですが、60代後半でここまでの体力を維持し続けているスタローンの役者魂には心底恐れ入ります。シュワ氏が完全におじいちゃんとなり、小走りすらキツそうだった『ラスト・スタンド』と比較すると、上半身裸での格闘や、ジェイソン・モモアとのタイマンを余裕でこなす本作のスタローンは、本当に輝いて見えます。その一方で、歳をとって年季の入ったスタ氏の顔は、若々しさとは別方向での迫力を見せており、老いと若さが絶妙にブレンドされた現在のスタローンは、映画史上でも非常に稀なポジションにいると言えます。。。 ウォルター・ヒルの演出は、良くも悪くも昔ながらのものでした。勢いや迫力よりも風情を重視した演出により、殺し屋稼業というものをじっくりと映し出そうとしているのです。老いた殺し屋と若き刑事との掛け合いなど、それなりに見るべきものはあるのですが、その一方で、21世紀のアクション映画としては残念すぎるほど展開がチンタラしているという欠点も気になります。陰謀の正体も大したものではなかったし、こんなどうでもいい謎解きに観客を付き合わせることなどせず、もっとストレートに情念をぶつける内容にした方がよかったのではないかと思います。ジェイソン・モモア演じる殺し屋が非常に良かっただけに、黒幕ではなく彼をフィーチャーした殺し屋バトルにでもすれば、より盛り上がったのではないかと思います。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2013-11-06 01:10:45)(良:1票)
426.  ラストスタンド
合理性よりもエモーションを重視したアクションを得意とするという点において、キム・ジウンはジョン・ウーの流れを汲む監督だと個人的には考えているのですが、本企画はそんなキム・ジウンのハリウッドデビュー作としては妥当なものだったと思います。物語は意図して大雑把に作られており、いかにかっこよく、いかに面白くするかという点に最大の関心が払われています。登場人物は全員非現実的なのですが、作り手側がそれを面白がって作っているので、演出にきちんと余裕があるのです。適度に笑わせ、適度に興奮させる。アクションの迫力も水準以上であり、監督として必要な仕事はきちんとこなせていると思います。。。 問題はシュワ氏でした。『ターミネーター3』以来10年ぶりの主演作ではあるものの、『エクスペンダブルズ』シリーズで観客に対する顔見世が終わっているため、レア感は失せてしまっています。さらには、不遇の時期にも細々と俳優業を続けてきたスタローンとは違い、シュワ氏は別業種で時間を費やし過ぎたために、アクションのキレも、主演俳優としてのカリスマ性もなくなっており、そもそも演技が上手くない人が、余計下手になって帰ってきただけの映画に終わっています。主演がこれでは厳しいですね。ラストの殴り合いなんて、あまりの迫力のなさに驚いてしまいました。本作を見ると、体力と威圧感を維持し続けているスタローンがいかに凄い役者であるかがよくわかります。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2013-11-06 01:09:38)(良:1票)
427.  マーシャル・ロー(1998) 《ネタバレ》 
劇場公開時には驚くほどヒットしなかったものの、911後にはその先見性に注目が集まった本作。確かに、その内容には凄まじいものがあります。軍隊による捕虜への拷問がひとつのトピックとされているし、アメリカが使い捨てにした地元工作員が後にテロリストになったという事実の指摘や、テロリストを生み出した国家に対してアメリカが戦争を仕掛けることにまで言及されており、1998年の時点でよくぞここまで考えていたものだと感心させられました。さらには、アメリカの入国管理がザルでテロリストが自由に入出国できる状態にあったという、911の元凶となった事項へのツッコミもあり、本作の先見性には本当に驚かされます。本作が製作された時期にはハリウッドは厭戦ムードに入っており、『ザ・ロック』や『ピースメーカー』といったアメリカの正義に対する疑念を出発点とした娯楽作が多く製作されましたが、テーマの捉え方という点において、本作は突出していたと思います。。。 問題は、映画としてまったく面白くなかったということでしょうか。映画は社会派ドラマと娯楽アクションの間で絶えず揺れ動き、結局、どっち付かずとなっているのです。前述の通り、時に鋭い指摘がなされるものの、同時に、ブルース・ウィリス率いる進駐軍がテロリストそっちのけでFBIと内輪揉めを始めたり、アラブ系住民に対する差別を糾弾する平和的デモ(いわば、テロリスト側にとっては味方)が爆弾テロの標的にされたりと、意味不明な展開が多くて参ってしまいます。「俺こそが法だ!」と叫ぶデヴロー将軍は堂々のズレっぷりですが、アネット・ベニング演じるCIAエージェントも地味にヘンです。潜入対象に情が移ってしまい、もっとも身近に爆弾魔がいたという事実に気付かないというバカっぷりを披露。CIAがこの体たらくではテロリストに勝てませんよ。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2013-10-23 00:49:34)(良:1票)
428.  愛、アムール
老老介護という平凡なテーマに、『アムール』という直球勝負のタイトルですが、そこはミヒャエル・ハネケ作品だけあって、一筋縄ではいきません。この映画、ラスト近くのワンシーンを除いては極めて単調。映画全体の密度が非常に薄く、かなりの眠気に襲われます。もちろんこれは監督の意図したところであり、テーマを煮詰めれば当然にこの構成に行き着くわけですが、この意図された退屈さをどう感じるかが、本作の評価の分かれ目だと思います。私は、この単調さに音を上げてしまったクチなので、本作への評価は低めになってしまいましたが、少なくとも一度は見る価値のある映画だと思います。テーマの掘り下げ方は素晴らしいし、俳優達の鬼気迫る演技や、ダリウス・コンジによる撮影など、見るべきものは非常に多いので。
[DVD(字幕)] 5点(2013-10-18 00:33:56)
429.  ゴーストライダー2
怪力でヘリを振り回したり、バイクが壁を垂直に登ったりといったバカバカしい見せ場のオンパレードにはグっとくるものがあって個人的に『1』は嫌いではないものの、一方であまりの世評の悪さに続編は諦めていた『ゴーストライダー』ですが、世界が『アベンジャーズ』や『ダークナイト・ライジング』に夢中になった2012年にしれっと復活。物語を無難にまとめる力はあるが、前作をそれ以上のものにはできなかったマーク・スティーブン・ジョンソンは降板し、代わって『アドレナリン』シリーズのバカコンビが監督に就任。さらには、アメコミ番長デヴィッド・S・ゴイヤーがメインライターを務めるなど、個人的にはなかなか熱いメンツで固められていて、「ひょっとしたら『ブレイド』以来の突き抜けたB級アクションが出来上がるのでは?」という密かな期待もあった本作ですが、出来はまぁまぁといったところでした。。。 007を思わせるオープニングから、アニメーションを用いたタイトルバック、ゴーストライダー再登場までの流れは完璧。優秀なクリエイター陣の手腕は序盤で一気に披露されるのですが、良かったのはここまで。本筋に入ると映画は一気につまらなくなります。世界の存亡を握る子供がいて、その子を追う巨悪がいて、悪と同等の力を持つ者が子供のボディガードになる。『ターミネーター2』以来、何度見たか分からないほど陳腐な物語が何の捻りもなく提示されるので、少なからずガッカリさせられます。さらには、子供が悪の手に渡ればどんなに恐ろしいことが起こるのかという煽りが不足しているし、追っかけに絡んでくるキリスト教勢力の背景の説明も不十分(耳なし芳一状態で出てきたクリストファー・ランバートの無意味ぶり)。敵が異常に弱くて、勝つか負けるかのスリルが味わえないという前作の欠点は本作においてもまるで改善されておらず、『ダークナイト』や『マン・オブ・スティール』の脚本家の作品とは思えないほどに話は隙だらけです。。。 コンビ監督はスリルとユーモアのバランスを整え、それなりに面白い見せ場を作っているものの、予算制約もあって前作のようなド派手な見せ場は見当たりません。インタビューではさんざん前作の悪口を言っていましたが、前作と比較して見違えるほど良くなった部分はなかったように思います。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2013-10-17 00:35:38)
430.  ジャッキー・コーガン 《ネタバレ》 
私も、宣伝に騙されてブラピ主演のギャング映画だと思って見たクチです。劇中、大統領演説がやたら繰り返されることから「どうやらこれは政治経済を扱った映画のようだ」ということに気付き、そこから頭を切り替えて何とか大枠は把握したのですが、それでも細部までは理解できないまま映画が終わってしまいました。日本の配給会社が本作の売り出し方に困り果てたことは容易に想像がつくのですが、それにしても、もう少し誠実な売り方はできなかったのでしょうか。。。 賭場=サブプライムローン、賭場の主人=サブプライムローンを扱っていた金融機関、賭場の客=なけなしの金を巻き上げられた米国の一般市民、強盗=サブプライムローンの証券化というインチキ商売で米国国民の富を奪っていたウォール街の住民達、マフィアの幹部=事態の収拾にあたった米国政府、私が読み取れたのは以上の情報のみ。強盗の一人が犬を飼っていたことや、ジェームズ・ガンドルフィーニ演じる高給取りの殺し屋が口先だけで無能だったことなど、意味があるのかないのかよくわからない小ネタも多く、何とも釈然としない内容でした。。。 日本の配給会社の手落ちは置いとくとして、それでも本作は間口が狭すぎる映画だと思いました。サブプライム問題の原因と影響、さらには米国政府の対応についての細かな知識がなければ何を言っているのかが分からない内容であり、ほとんどの観客は置いてけぼりにされてしまうのです。史上最大の金融危機をマフィアの抗争に置き換えるという切り口は面白いものの、作り手の方向性が完全に間違っています。本来、この映画は「金融って何?サブプライムって何?」という人がサブプライム問題の概要を理解できるように例え話を用いるべきだったのに、いろいろと作り込み過ぎた結果、高度な知識がなければ映画の内容を理解できないという本末転倒な事態となってしまっているのです。。。 さらには、監督の力量不足も感じました。本作は会話劇で、動いている場面がほとんどないのですが、この会話がちっとも面白くないのです。タランティーノがいかに優れた監督であるかが、本作を見ればよくわかります。さらには見せ場も少なく、本作で見るべきものと言えば、強面レイ・リオッタのヘタレ演技と、凝りに凝ったレイ・リオッタの死にっぷりのみ。要は、レイ・リオッタ以外に見るべきものがないのです。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2013-10-16 21:40:14)
431.  世界にひとつのプレイブック
当初はシドニー・ポラックが監督に指名されていたものの、「俺じゃ無理だ」と言ってデヴィッド・O・ラッセルに手渡されたという本作。完成した作品においてはシリアスとユーモアが複雑に絡み合った絶妙な塩梅が実現しており、ラッセルの手腕が光りまくっています。予定通りにポラックが監督していればシリアスに振れすぎてしまい、ここまで楽しい映画にはならなかったでしょう。。。 ラッセルには本作の主人公と同じく双極性障害を患うご子息がいるようで、そうしたプライベートでの経験が映画にも活かされています。精神障害の患者を抱える家族のドラマと言われれば、それこそ『普通の人々』のような地獄の葛藤を想像しがちですが、ラッセルは必ずしも負の面ばかりではないという切り口でこれを描いています。子育てに失敗した父親が、もう一度これをやり直す機会として息子の精神障害が機能しているのです。本作はラブストーリーである同時に、家族の温かみが描かれたドラマでもあります。息子は過去に他人を半殺しにし、現在も頻繁に警察のお世話になっているが、家族は彼を決して厄介者とは扱わないし、腫れ物に触るようなよそよそしい態度もとらない。家族にしか出せない温かみが主人公を包んでいる。本作はその描写に成功しているのです。最近は手抜きが目立つデ・ニーロも、本作では久しぶりに高いパフォーマンスを披露。軽さと重さを絶妙に使い分けた演技には舌を巻きました。。。 他方、ジェニファー・ローレンスのオスカー受賞については疑問符が付きます。撮影当時21歳にして16歳年上のブラッドリー・クーパーの相手役を務め、デ・ニーロやクリス・タッカーをも圧倒した高いパフォーマンスには敬意を表するにしても、やはり、この役柄を演じるには年齢が若すぎたように思います。ティファニーはセックスをちらつかせることで男を操るメンヘラ女で、この役柄のイタさを伝えるには20代後半から30代前半の女優が必要だったのですが(当初はズーイー・デシャネルやアン・ハサウェイがキャスティングされていた)、これを若いローレンスが演じてしまったのでは少々ヤンチャなおねえちゃんになってしまうのです。監督も、彼女についてはねじ込まれたキャスティングであったことを匂わせる発言をしており、ローレンスのオスカー受賞については『恋におちたシェイクスピア』のグウィネス・パルトローのような胡散臭さを感じました。
[DVD(字幕)] 7点(2013-10-16 01:47:58)
432.  第9地区
有名な話ですが、本作の元となったのはTVゲーム『HALO』の映画化企画です。『HALO』の実写CMで高い評価を受けたニール・ブロムカンプが監督に起用されていたものの、ピーター・ジャクソンとマイクロソフトが条件面で衝突して『HALO』は頓挫。しかし、せっかく集めた人材や、重ねてきた芸術的協議を捨てるのは惜しいということで、急遽、ブロムカンプの短編映画を長編化したのが本作だったというわけです。突貫工事で製作された本作なので、その生い立ちに起因する作りの粗さみたいなものは随所に現れています。。。 まず、基本設定に光るものがありません。本作の元ネタは1988年の『エイリアン・ネイション』だと考えられるのですが、元ネタを上回るアイデアを提示できていないため、SF映画としてのサプライズには乏しいと感じました(B級映画『エイリアン・ネイション』に見向きもしなかった評論家先生達は、本作を「斬新だ!」と言って絶賛したようですが…)。ディティールについても同様で、宇宙船の燃料を浴びたことでヴィカスの変身が始まるということの原理がよくわからないし、怠け者ばかりのエビ星人の中でクリストファー・ジョンソンだけが行動力と科学知識を持っていることの理由も説明されません。意図的に説明を省いている部分もあれば、そうでない部分もあり、全体として見ると設定が煮詰めきれていないように思います。さらに、SFを通して人種問題を語るという姿勢も、何だか青臭く感じました。SFはしばしば現実社会の写鏡として利用されますが、本作の主張はストレート過ぎて説教臭くなっているのです。。。 ただし、「観客の心を容赦なく刺激する」という点において、本作は確実に成功を収めています。主人公が徹底的にいじめられ、その後、凄まじい反撃をする。アクション映画の基本中の基本を守ることで、驚くほどエモーショナルな物語に仕上がっているのです。また、エビ星人の描き方も秀逸。最初は気持ち悪く感じていたエビ星人に対して、中盤以降は愛着を覚えてしまうという不思議。架空のキャラに魂を吹き込むという点において、本作は突出しています。その他、メカ描写や銃撃戦の迫力には目を見張るものがあったのですが、これらについては『HALO』で積み重ねてきた知識や技術が十二分に活かされています。手持ちの技術・人材で出来ることは何かという点を冷静に分析していたピーター・ジャクソンは、さすがの采配でした。
[映画館(字幕)] 7点(2013-10-12 02:28:44)(良:2票)
433.  エリジウム
長編デビュー作がいきなり興行成績1億ドル突破&アカデミー作品賞ノミネートという、輝かしくも重い経歴を背負ってしまったニール・ブロムカンプの長編第2作。特大ホームランの後に何を撮るのかということは何とも悩ましい問題ですが、ブロムカンプは「前作と似たような映画を撮る」という王道を選択しました。果たしてその出来は?と言うと、得意分野で勝負したおかげで大きな失敗を犯すことはなく、また製作費が大幅に増加したことによる効果を画面にきっちり反映できており、期待される水準には十分に達していると言えます。。。 「死にたければヨハネスブルグを歩けばいい」とまで言われる犯罪タウンで育った監督は、未来のLAをヨハネスブルグ化。ボロボロになった高層ビル群に、地平線まで続く無数のバラック小屋の映像的インパクトは絶大だし、そこに生きる人々の絶望までをきっちりと画面に刻みつけてみせた手腕には目を見張るものがありました。ディストピアSFを扱った作品は他にも多くありますが、本作ほどの表現レベルに達したものは非常に稀だと言えます。また、主人公がエリジウムへカチ込むに至るまでの感情の流れも非常によく計算されており、荒唐無稽な物語でありながらも、観客は主人公への同情心を持ち続けることができます。昨年製作された『トータル・リコール』と比較すれば、本作がいかによくできているかが分かります。やっぱり、この監督さんは映画作りがうまいのです。。。 対する敵も良く作られています。最新鋭の兵器を意のままに操りながらも、ここぞという場面では日本刀をブンブン振り回すキ○ガイなのですが、彼を「ただただ狂っていて、傭兵でもやらなければ他に生きる道がない男」という純粋悪としたおかげで、アクション映画に不可欠な恐怖の対象となりえています。次に何をしでかすか分からないというその異常者ぶりが、映画を引き締めているのです。彼に負けず劣らず狂った部下2人のインパクトも上々であり、クズのサンバルカンは見ていて飽きがきません。。。 ただし、問題もあります。監督の得意分野であるスラムの描写と比較すると、エリジウムの描写は驚くほど薄っぺら。既視感溢れる理想郷ぶりで、あまりに魅力に欠けるのです。また、敵・味方合わせて10名程度が暴れただけで破壊されてしまうエリジウムの社会システムにも疑問符が付きます。クーデターの間、ロボコップたちは何をしてたんでしょうか?
[映画館(字幕)] 7点(2013-10-12 02:26:42)
434.  PARKER/パーカー
『悪党パーカー』シリーズは過去に何度も映画化されているものの、私が観たのは『ペイバック』のみ。そんなわけで、本作については必然的に『ペイバック』との比較となってしまうのですが、今回の映画化企画にはハードボイルドな空気が足りていないという印象を受けました。。。 この企画の骨子は「毒をもって毒を制す」という点にあり、仁義を守らない小ズルい悪党を、本物の悪党パーカーが度胸や腕っ節を武器に容赦なく追い詰めるところに面白さがあると思います。実際、『ペイバック』ではたったひとりでヤクザの事務所に乗り込み、大親分と対峙しても一歩も引かない主人公の姿が痛快だったのですが、一方で本作の主人公は身分を偽って隠密行動をとり、素行も控えめなので、犯罪者を主人公にしたことの意義が薄くなっています。探偵や元刑事を主人公にしても似たような映画が撮れてしまうのです。また、敵となる悪党たちの悪ぶりが足りていないし、彼らの後ろ盾となっているヤクザがいかにヤバい連中であるかも伝わってこないので、この内容に求められるスリルやカタルシスも不足しています。。。 さらには、主人公達の行動原理が不可解なので、彼らへの感情移入も困難です。南部の成金だと思っていたパーカーが、実は犯罪者であることを知った不動産営業のレスリー。普通ならマッハで警察に駆け込むところですが、彼女はパーカーの前に再度姿を現し、「土地勘のある私が仲間になるから、分け前をちょうだい」と言い出します。いくら金に困ってても、素人はそんなことしないって。そして、そんな怪しい提案を受け入れ、「よし、明日連絡する」と言ってアッサリと仲間にしてしまうパーカー。序盤では、周到な計画の下に動くプロの犯罪者というキャラ付けがなされていたはずなのですが、これでは考えの足らないバカです。そもそも、素人が数分調べただけでバレるような偽装をやってる時点で一流の犯罪者とは言えないわけで、この脚本は設定を煮詰めきれていません。。。 本作で褒められる点は、役者がしっかりとしていたことでしょうか。ステイサムはさすがのB級番長ぶりですが、意外だったのは、アラフォー・バツイチ女を演じるジェニロペのハマり具合です。10年前は女王様だったジェニロペが、ヒロインにすらしてもらえない世にもあんまりな中年女役を熱演。執拗に繰り返される尻ネタも悲しい笑いを誘っています。本作のジェニロペは必見です。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2013-10-04 01:23:42)
435.  もうひとりのシェイクスピア
ローランド・エメリッヒが『2012』と『ホワイトハウス・ダウン』の間に撮った時代劇と言われれば、どんなバカ映画が飛び出すことかと思うところですが、これが至極真っ当な出来だったので感心しました。撮影は繊細で美しく、役者の演技も上々。デジタルで蘇った17世紀ロンドンの完成度も非常に高く、さらにはリドリー・スコットあたりに任せれば1億ドル近くかけたであろう作品をわずか3,000万ドルの予算で作り上げたことも驚きであり(ハリウッドでエメリッヒが重宝される理由のひとつとして、比較的少ない予算で超大作を完成させるという点が挙げられます)、そのルックスは事前の予想をはるかに超えていました。。。 以上、映画の見てくれは非常に良いのですが、肝心の中身については少なからずガッカリさせられました。本作の脚本は90年代の時点ですでに完成していたものの、『恋におちたシェイクスピア』とのバッティングを避けるために製作を延期されて以来、10年もの間、ハリウッドを彷徨っていました。その間に脚本は肥大化していったようであり、シェイクスピア別人説を核として、天才作家との力量の差に圧倒される平凡な作家の物語や、宮廷内での人間ドラマ、王位継承を巡る陰謀劇に、老いた女王の苦悩など、構成要素がパンパンに詰め込まれた複雑極まりないドラマとなっていました。熟練監督が3時間超えの上映時間をもってしてようやく収まるかどうかというボリュームの脚本を、ドラマ演出の経験の浅いエメリッヒが2時間強でやっつけてしまったために、映画は終始駆け足で感動もへったくれもありません。ロクな紹介もなく登場人物がどんどんブチ込まれてくる不親切な序盤に始まり、3つの時代を行き来して何をやっているのかがイマイチ掴みづらい中盤を経て、計画の全貌がよく分からないままクライマックスへと突入。観客に何を感じて欲しいのかを考えずに各場面を撮っているために、ドラマもサスペンスもまるで盛り上がらないのです。脚本自体はよく出来ているだけに、もっとじっくりと仕上げて欲しいところでした。
[ブルーレイ(字幕)] 5点(2013-10-02 01:15:18)
436.  ジャンゴ 繋がれざる者
『ジャッキー・ブラウン』までは緻密な構成力とオタクらしいおふざけのバランスが素晴らしかったものの、『キル・ビル』辺りからB級マニアを意識しすぎた映画作りが鼻につくようになり、『グラインドハウス』でとうとう自家中毒に陥ってしまったタランティーノですが、その後の2作(『イングロリアス・バスターズ』と本作)ではオタク趣味を控えめにし、純粋に面白い映画を作ろうという姿勢にシフトしたように感じます。どちらの映画も時代劇であり、得意の音楽談義や映画談義ができない舞台を設けることで自身に制約を課したようなのですが、それでいて、従前からの選曲センスで観客の意表を突いてくるという遊びは面白く、タラの個性が非常に良い形で出た娯楽作として仕上がっています。。。 本作で感じたのは、私たちが思っている以上に、タランティーノは引き出しの多い監督さんだということです。かつて、タランティーノと言えば捻れた構成が第一の特徴として挙げられていましたが、一方本作は驚く程シンプルです。ジャンゴという男の物語が一直線に進むのみであり、時間軸の解体等のテクニックで観客の目を誤魔化したりはしていません。また、演出についても笑いに逃げている部分が少なく、正統派のウエスタンをやってやろうという気概に溢れています。90年代にはオフビート専門でオンビートの映画を撮れない監督だと思われていたタランティーノが、ここまで真っ当な娯楽を追求したことは意外であり、本作はこれまでの彼の作風の正反対をいく企画だと言えるのですが、これをほぼ完璧に作ってきたことには驚かされました。ジャンゴのかっこよさ、生理的嫌悪感を抱かせる敵、そしてガンファイトの迫力、そのどれもが非常に高いレベルで仕上がっています。長い上映時間がまったく苦にならないほど展開はスピーディであり、さらには農場での食事の場面など、アクション以外の部分にも只ならぬ緊張感が漂っています。これだけやってくれれば大満足です。。。 さらに、黒人奴隷の物語でありながら、人種問題を過度に扱い過ぎていない点でも好感を持ちました。ジャンゴのパートナーは白人だし、敵方にも黒人のブレーンがいる。余計な政治的要素を排除したおかげで、純粋に楽しめる娯楽作となっています。
[ブルーレイ(吹替)] 8点(2013-09-30 01:03:54)(良:1票)
437.  逃走車
低予算でもそれなりの映画が作れるということもあって、ワンシチュエーションでのサスペンスアクションはここ数年多く製作されていますが、たいていは盛りの過ぎたスターが出演するVシネマです。そこに来て、現役のスターであるポール・ウォーカーが製作までを兼任し、さらには自身の出世作を連想させるカーアクションを中央に据えた映画とくれば、ジャンルの中でも頭一つ抜けた出来を予感させるところですが、これが完全に期待はずれの駄作でした。。。 本作の脚本はネタの詰め込みがとにかく甘く、エンドロールを含めて85分というコンパクトな上映時間でありながら、中弛みをするというどうしようもない事態を引き起こしています。劇中に起こるイベントの数が少なすぎるのです。また、巻き込まれた主人公の動機付けが弱いために、ダメ男が正義に目覚めるというドラマとしての感動も薄くなっています。さらには、社内の様子しか映さないという監督の試みも完全に裏目に出ており、視点が固定されてしまったためにカーチェイスの迫力は半減しているし、俯瞰ショットを使えないために、主人公がどれほどの包囲網の中にいるのかもよく伝わってきません。
[ブルーレイ(吹替)] 4点(2013-09-30 01:03:04)
438.  バベル
一応は劇場公開時にも鑑賞したものの、記憶喪失にでもなったのかと思うほど内容を覚えていなかったので、再度の鑑賞となりました。作品賞を含むオスカー大量ノミネートにカンヌ映画祭監督賞受賞と、完成時には恐ろしく評価の高かった本作ですが、果たして本当に優れた映画なのだろうかという点には大きな疑問符が付きます。タイトルが示す通り、本作は人類のコミュニケーション不全を壮大なスケールで描いた作品なのですが、劇中起こるトラブルはどれもバカな奴がバカなことをしでかした結果のものであって、「人間の悲しい性」みたいなものは感じさせられませんでした。そもそもの問題として、感情移入可能な登場人物が一人もいないというのは、ドラマとして失格でしょう。出て来るのは、感情の振れ幅の激しいヒステリックな人間か、恐ろしいほど考えの足りないバカのどちらか。観ていて疲れましたよ。。。 また、4つのエピソードを交錯させるという構成も、さほど効果をあげていないように感じました。この手の映画は、バラバラに進行していたエピソードがクライマックスに向けて収斂していき、最終的にひとつの結論を導き出すという構成をとることが常套手段なのですが、一方で本作は最後まで各エピソードが独立したままなので結論部分が弱くなり、そのために肩透かしを食らったような気分にさせられました。。。 さらに、ひとつひとつの場面が妙に長いことも、観客のテンションを下げる原因となっています。一目見れば分かることを数十秒かけて見せる。こういうムダな時間の積み重ねにより全体が非常に間延びしてしまい、せっかくの美しい撮影も、観客にフラストレーションを抱かせる原因にしかなっていません。
[ブルーレイ(字幕)] 3点(2013-09-29 02:56:25)
439.  レディ・イン・ザ・ウォーター 《ネタバレ》 
『シックス・センス』以来の蜜月状態にあったディズニーから出資を断られただの、賛否は割れても興行成績はピカ一だったシャマラン作品史上初の赤字映画になっただの、ラジー賞で最低監督賞と助演男優賞をダブル受賞だのと、とにかく悪評ばかりの本作。確かに、目の覚めるようなオチはないし、笑いやスリルの量も減っており、従来のシャマラン作品と比較すると落ちる出来だと言わざるをえません。ただし、物語にはオリジナリティがあるし、主題に関わる部分もきちんと作りこまれているので、シャマランの意図を理解しながら見てあげれば、十分に楽しめる映画だったと思います。。。 作品の着想は『アンブレイカブル』に近く、おとぎ話を解体してその構成要素をすくい取り、現実社会を舞台にして再構築するという内容となっています。アパートの住人達が自分の果たすべき役割を探すという展開はまさに私たちの人生の縮図であり、悩み、時に間違いを犯し、時には自分の能力に自信を持てなくなりながら、それでも必死にもがいて目的の達成を目指す彼らの姿には、大変に心を打たれるものがありました。各キャラクターが正しい役割を認識した瞬間にすべてがうまく進み始めるという展開にもシャマランなりの人生哲学が反映されているようで(クライマックスがアッサリしすぎていることも批判の対象となっているようですが…)、見ていてすごく楽しめました。。。 また、「つまんねぇなぁ」と思いながらボンヤリと眺めていた前半のドラマが、主題が姿を現す後半パートの伏線になっているという脚本は素晴らしくよく計算されていて、シャマランの構成力の高さにも唸らされました。パンチには欠けるものの、全体としては丁寧に作られた良作だと思います。世界的な思想の指導者となる男をシャマラン自身が演じたり、作品中で映画評論家をブチ殺したりと、あまりに幼稚な点も目に付きましたが、それはそれとして、もうちょっと評価されてもいい映画だと思います。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2013-09-27 01:33:09)(良:1票)
440.  藁の楯 《ネタバレ》 
ハリウッドでたまに製作される護送ものの日本版ですが、移送する者とされる者の心の交流を描く作品が主流という当ジャンルにおいて(『ガントレット』『ミッドナイト・ラン』『3時10分、決断のとき』etc…)、同情の余地ゼロの凶悪犯を護送する羽目になった公安の葛藤を描くというコロンブスの卵的な着想は素晴らしいと感じました。さらには、護送を妨害する行為に多額の報奨金がかけられ、一般大衆が敵に回るというアイデアは2003年に製作された『S.W.A.T.』からの拝借だと思われますが、細部のツメを怠ったために荒唐無稽なアクション映画に終わってしまったネタ元の反省を活かし、この設定を観客に受け入れさせるべく細かな描写が理詰めで考えられている点にも感心しました。観客に過不足なく情報を与えると同時に、絶妙なタイミングで見せ場が挿入されるという本作前半部分の完成度は特に素晴らしく、職人監督・三池崇史の手腕が炸裂しまくっています。仮にこのテンションが2時間続けば、日本映画史上に残る傑作になるだろうと思いました。。。 しかし、パーティが新幹線に乗り込んだ辺りから映画は急激に失速をはじめます。理詰めで作られていた序盤と比較すると考えの足りない展開が目立つようになり、観ている側は映画に集中できなくなってしまうのです。「そんなアホな」の連続には苦笑の連続なのでした。構成上のそもそものミスとして、エリート揃いのSPの世界でもNo.1とNo.2の実力を誇り、日本最強のコンビと言っても過言ではない銘苅と白岩が高い戦闘スキルを披露する場面がまったくなく、それどころか凶悪犯から目を離すという脇の甘さを度々見せてしまうお間抜けさんぶりにはガッカリさせられました。。。 また、己の命を張って人間のクズを守ることとなったSP達の葛藤も、あまりに表面的すぎて訴求力に乏しいと感じました。何人もの死人を出しながら必死に守った犯人が、数ヵ月後にはアッサリ死刑にされてしまうというラストにしても、もっともっとやるせない空気が漂って欲しかったし、総じて主題部分へのツッコミが甘いと感じました。
[ブルーレイ(邦画)] 4点(2013-09-26 10:30:23)
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