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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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541.  バッファロー'66 《ネタバレ》 
女性に縁のなかった30男の前に、勝手に自分を好きになってくれる女性が現れる男のファンタジー。…と普通ならありえない話なので、脚本や撮影にデフォルメ化の工夫が凝らされています。ビリーの登場からして独特で、なんとおしっこのエピソードで彼の人となりが紹介されます。「このトイレは使うな」と言われれば素直に従い、清掃中の公衆トイレに無理矢理入ったりもせず、限界に近いのに立ちションもしないという律儀な性格。ようやく入ったトイレで「俺のもん見ただろ」とブチ切れますが、幼い子供はち○こが大きいことにコンプレックスを抱き、大人になると小さいことにコンプレックスを抱くと言われており、立派なものを持っているのにこれを見られることを極端に嫌うビリーは、歳だけとっていても中身は子供なのです。ビリーが大きな子供である原因、それは両親にありました。ふたりとも100%の悪人ではなく、息子の奥さんを快く受け入れたり、お節介を焼きたがる面もあるのに、一方で息子のアレルギー体質のことも覚えておらず、ビリーやレイラがバレバレのウソをついても詮索しない。息子に対する関心が極度に欠けており、ビリーは30歳をすぎた今もこの両親を振り向かせるために必死です。人生ではじめて自分を無条件に愛してくれるのは両親なのですが、この愛情を受けられなかったビリーは自分が人から愛されるということをなかなか理解できません。そんな彼を辛抱強く待つレイラはまさに天使ですが、レイラはなぜビリーを好きになったのか?そのとっつき憎さから、多くの人はビリーの良さに気付く前に距離を置こうとします。しかし誘拐というシチュエーションにより、レイラはイヤでも彼を近くから観察することになります。またレイラ自身も変わり者で、ダンス教室でもみんながダンス用のウェアを着ている中、彼女だけは私服で踊っています。ふくよかな体型に何かを間違えたメイクと華やかな人生を送っていないことは察しがつきますが、ビリーはそんな彼女を捕まえて「奥さんになれ」と言い、また乱暴な態度の彼がレイラの見た目や性格について文句を言うことは一度もありません。これはビリーが一方的に愛情を受ける話ではなく、レイラにとってもビリーは人生で欠けていたものを補ってくれる存在であり、孤独に生きていた人生に突然現れた天使なのです。
[DVD(吹替)] 7点(2009-06-18 14:54:53)(良:7票)
542.  墨攻 《ネタバレ》 
原作未読の私にも、要約に苦労したことがよくわかる出来となっています。敵意むき出しだった王子が革離に傾注したり、革離暗殺を命じられた農民たちが革離に信頼を寄せるまでの過程がスッポリと抜けていたりと、唐突な展開が多々見られます。一方で荒っぽい要約が吉と出ている部分もあって、前半、革離が次々と知略を披露して敵を撃退する様は、矢継ぎ早な展開のおかげで彼が戦略家として際立った人物であることを強く印象付けます。アンディ・ラウは革離役に抜群にハマっており、ただ理屈を述べるだけではなく、人々を引きつけるカリスマ性も兼ね備えた人物にきちんと見えます。対するアン・ソンギもアンディ・ラウにまったく見劣りしない悪役となっています。弱小の梁国相手に負けを重ねるという下手すれば無能に見えかねない役柄であったにも関わらず、知性と人間性を併せ持った名将に見えるのですから、この役柄を脚本以上の人物にしてみせたと評価できます。後半は革離の影響力を恐れた梁王一派が粛清をはじめるという興味深い展開を迎えるものの、ここで映画はいったん失速します。基本的に本作はアンディ・ラウとアン・ソンギが引っ張っているため、ふたりが不在となるこの部分が致命的につまらないのです。脚本レベルでは人間の普遍的な残虐性や愚かさを提示しようとしたと思われるこのパートも、良い役者が不在であったり展開に深みがないため、梁王をはじめとした本作固有の登場人物がただ暴走しただけにしか見えません。王子を失った梁王の悲しみや怒り、また革離を排除せよとの命令にいったんは反対するものの、梁王への忠義からその先頭に立つこととなる将軍の葛藤など描くべきものは多くあったにも関わらず、お手軽なドラマ作りのために残虐な処刑等で不快な気持ちにさせられるのみです。しかし、アンディ・ラウとアン・ソンギが戻ってくると映画は再び息を吹き返します。どんな戦闘シーンよりも彼らのやりとりは見ごたえがありました。また、梁王によって反乱軍と見なされ、いったんは国を離れた部隊が趙軍を撃退するのですが、解放された民衆は過ちを犯した梁王を再び担いでしまうという皮肉な展開をとってみせたことには驚かされました。逸越をニアミスで殺してみせたり、民衆の愚かさにさすがに愛想尽かし孤児を連れて梁を後にする革離等、見る側に考えさせるバッドエンドは満点の締めだったと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2009-06-16 22:39:11)(良:1票)
543.  Mr.&Mrs. スミス 《ネタバレ》 
ブラピ&アンジーという豪華キャスト(しかも単純な娯楽作を敬遠する傾向にあるふたり)を揃えながら、意外なほどストレートなアクションコメディとなっています。また、監督がダグ・リーマンだけに一筋縄ではいかない作品になるのかと思いきや、最後まで軽いノリを通しているのが好印象です。この手の作品にありがちな「絆を再確認する夫婦の感動的な姿」みたいなホロっとさせる展開も入れておらず、アクションコメディはこうあって欲しいという仕上がりとなっています。豪邸に住む美男美女の殺し屋夫婦という浮世離れした設定ながら、これを違和感なく演じてみせるブラピ&アンジーのスターオーラは大したもので、高い服を着こなしたり、夫婦の軽いやりとりをしたり、激しいアクションをやったりとどれも様になっているのはさすがです。ボーン・アイデンティティの時に「もっと見たい」と思ったダグ・リーマンのアクションもたっぷり楽しめます。この人のアクションに独特のクセはないものの、美しさと合理性、武器へのこだわりが調度いいバランスで同居しており、なかなか良い見せ場を作ります。またコメディ部分もただバカバカしいだけではなく、夫婦というものがきちんと描けています。片方の話をもう片方がほとんど聞いていなかったり、悪意なくとっさに出た一言(ここでは一発の銃弾)が相手に火を点けたり、一方が優しくなった時にもう一方が意固地になってトゲのあることを言ったり(そして直後に後悔)、日本もアメリカも夫婦のやることは同じなんだなぁとしみじみしました。ジョンはガレージに、ジェーンはキッチンにと、家の中なんだけど男(女)にはわからない場所に武器を隠してあるのもツボでした。残念なのは夫婦ゲンカが終わって二人が力を合わせる後半になると、途端に話がつまらなくなること。会話の面白みはなくなるし、アクションも大味でありきたりなものとなります。「二人を相討ちさせるために全部組織が仕組んだものだった」というオチは完全に蛇足で、そんな気の長く不確実性の高い罠を張るくらいなら、直接殺した方が早いわけです。またスミス夫婦は「逃げずに戦おう」と決心したのでてっきり組織の中枢に襲撃でもかけるのかと思いきや、ショッピングモールで刺客を返り討ちにして終了(ど真ん中に突っ立って一心不乱に撃ちまくったら敵が全滅という投げやりなアクション)で、大変な肩透かし感がありました。
[映画館(字幕)] 7点(2009-06-13 13:46:58)(良:2票)
544.  ジャッキー・ブラウン 《ネタバレ》 
タランティーノ作品においてダントツで影の薄い作品ですが、彼の才能やクセがよく現れ、キャリアの分岐点となっている作品だと思います。とにかく長いこの映画。パルプ・フィクションも同じ155分でしたが、あちらは4つのエピソードを組み合わせているのに対し、こちらはワンエピソードで長尺を引っ張っており、本来B級の素材で2時間半は長すぎるように思います。しかしこれが絶対的な欠点でもないのが難しいところで、ムダに上映時間が長いのではなく、登場人物を丁寧に描いた結果がこの長さとなっています。タラのキャラ描写は独特で、ただテレビを見たり、ヤクをやってボーっとしているだけという「何も起こっていない」様子を映すことで、彼らの特徴を示します。そのため話は常に進んではおらず、完璧に止まっていることもあります。こうした、話全体にとっては何の意味もない描写により登場人物は特有の存在感を放っており、例えば同時期に製作されたアウト・オブ・サイトと比較すると、こちらの方がずっと印象に残るし、映画自体も楽しいものとなっています。問題は、タラが観客の生理に合わせた映画を作ろうという意思を持っていないことでしょうか。好きなキャラクター、好きな音楽、好きな場面をコラージュし、自分流の映画を作ることについては完璧。また、タラは変わった映画を作る監督として認識されていますが、ショッピングモールで紙袋をすり替えるシーンなどは、銃撃や追っかけが起きているわけでもなくただ紙袋をすり替えるだけなのに、ハンパではない緊張感に包まれており、正攻法の演出の才能もズバ抜けたものであることがわかります。しかし一本の映画としてのトータルのバランスはあまり意識していないようで、ショッピングモールで映画のテンションが最高潮に達した後に30分もダラダラと映画を続けてしまったことは失敗でした。一方でレザボア・ドッグス、パルプ・フィクションと初期作品はバランスのとれた娯楽作となっていることから、タラは娯楽ができない人ではなく、やろうと思えばできるけど、自分の描きたいものを優先して全体のバランスを犠牲にしてしまう人なのだと考えられます。本作以降はさらに好きなものに突っ走り、当初評価されていた抜群の構成力まで捨てつつあります。才能あるクリエイターが迎合しすぎず好きなことをやるのは良いのですが、最初の2本だけが傑作という状況はもったいないように思います。
[DVD(吹替)] 7点(2009-06-11 17:25:38)(良:4票)
545.  ハプニング 《ネタバレ》 
死にたくなる毒素が撒かれるというアイデアがまず凄い。異様な死に方の数々はかなり衝撃的で、他の映画とは違うもの、今までなかったものをちゃんと作り上げているのですからシャマランはやはり何かあるクリエイターだと思います。生き延びるためには集団から離れていなければならないというルールも秀逸で、群れをなす性質のある人類にとって、追いこまれるほど集団に依拠できず個人で対応するしかないのは恐ろしいことであり、またその状況で生き延びている他人は常日頃から集団に馴染まない変わり者であったり、人に手を貸さない自己中心的な人物である可能性が必然的に高くなるのですから、人間関係も非常に不安定なものとなります。主人公達は人智の及ばぬ現象と、常識の通用しない理不尽な人間を同時に相手にせねばならないわけですから、「ゾンビ」と「悪魔のいけにえ」の良いとこ取りが可能な、極めて秀逸な設定を作り出したと言えます。人間の描き方も相変わらずユニーク。夫婦の絆の再生というありがちなテーマをとりつつも、この夫婦の亀裂は他愛のないもので、一度ティラミスを食べに行った相手が勘違いして彼氏気取り、それを必要以上に後ろめたく思って旦那に言い出せない奥さんと、その話を聞いて機嫌を悪くする旦那という、「この深刻な世界観でそんな話かい」と呆れるほどどうでもいいものです。シャマラン作品の登場人物は皆平凡で、映画向きではない普通の人たちが常識を超えた現象に立ち会い、これに戸惑い、時にちぐはぐな行動をとり、そして最後には成長してこれを乗り越えるというパターンをとりますが、人間の描き方が抜群にうまいため、SF設定とほのぼのドラマという普通は馴染まないものを綺麗にまとめてみせます。子役の扱いも毎度うまいもので、映画に登場する子供は嫌味なほど良い子か、劇中のイベントを起こすためわがまま放題かの両極端なのですが、本作の子供は緊急事態であることを認識し、何も言わずひたすら大人についていくという現実的な描かれ方となっています。本作で残念なのはラストがあまりに安直だったことで、かなりの人口が失われたはずの街が何事もなかったかのように復興していたり、現象の正体を必要以上に説明してくれたりと、危機の余韻がまるでありません。三人仲良く暮らして新しい子供を妊娠しましたというのもありきたりで、ここで一気にドラマの良さも失われたように感じました。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2009-06-08 14:53:41)
546.  ディパーテッド 《ネタバレ》 
豪華メンバーで製作されたものの仕上がりはオリジナルと同じという、なんとも評価に困るリメイク版です。とはいえパクリの一言で片付けられないのは、プロットのおいしいところだけをいただいた別モノにはせず、シーンひとつひとつに至るまで丁寧にオリジナルをなぞっていること。往年の名作ならともかく、いちアジア映画をハリウッドの大御所がここまで忠実にリメイクというのは前例がありません。ヘタな改変をしてはならないという敬意すら感じられます。例えば、ジャック・ニコルソン扮する親分は地のヤクザにしか見えず、覆面捜査官を送り込むほどの重要人物には感じられないという欠点があります。話に説得力を持たせるにはより大きな犯罪組織にすべきでしたが、あえてオリジナルと同じスケールにしているように思います。携帯や封筒といったアイテムや仕掛けの使い方もオリジナルと同様ですが、ハリウッドの力があればより凝ったサスペンスにもできたはず。しかしそれをあえてやっていないのです。以上話の大枠は一切いじらず、ドラマの通りがよくなるように人間関係のみが変更されています。最大の変更点は主人公達の年齢で、オリジナルでは潜入から相当な年月が経っている設定でしたが、リメイクでは潜入開始から数年間の様子が描かれます。この変更の影響は大きく、大義名分があるとはいえ犯罪に手を染め、自分は警官としての本質を失いつつあるのではと悩むオリジナルの主人公に対し、リメイクでは素性がいつ暴かれるかというビリーのストレスが主に描かれます。この部分のテコ入れのため、ディグナムというキャラクターが追加されています。ビリーを危険な戦場へと突き放すためには温厚なクィーナンのみでは不足であり、ディグナムのような厳しく融通の利かない人間が必要だったのです。こうした変更によりビリーの生死がかかったドラマであることがより強調され、後半では自分はほぼ死人(=ディパーテッド)のようなものであることを悟りながらコリンと対峙するビリーの悲壮感がよく描かれていました。コリンはオリジナルから一転して悪役に徹しています。ビリーの物語を描くためには、コステロとはまた違ったタイプの純粋悪である方がよいので、その上での変更だったと思います。これにより、ラストの廃ビルでの顛末が、形式的にはオリジナルとまったく同じであるものの、意味合いが正反対になっているのは興味深いところでした。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2009-06-02 18:25:03)
547.  コントロール(2004) 《ネタバレ》 
普段はゴミみたいなB級アクションを製作しつつ、たまに「16ブロック」や「ブラックダリア」を作るミレニアム・フィルムズの、メジャーとB級の中間に位置する作品です。B級として見れば傑作の域に入る完成度。凶悪犯リー・レイが変貌する過程が自然で、見ている私達が冒頭で彼に感じた嫌悪感も自然と愛着へと変わっていき、最終的には「彼に悪いことが起こらないでくれ」と思わせてしまいます。コープランド博士についても、さほど多くはない描写の中で背景や心情がきちんと説明されています。特に素晴らしいのが息子の死について話す場面で、感情的にならず淡々としゃべる姿に、深い悲しみやそれを乗り越えてきた重みが込められています。辛い思い出を話した直後にも関わらず「頑張れよ」と笑顔でリー・レイを送り出すところにも、彼の人柄やリー・レイへの思いがよく表れています。ラストで車からコープランドを救い出すリー・レイ、銃弾に倒れたリー・レイを看取るコープランドの友情は、そこいらのメジャー映画にも勝るほど熱く感動的なものでした。最後のオチも単なるサプライズではなくドラマ上の必然性もあり、こういう良いオチをビシっと決めたおかげで映画全体が締まった印象となりました。一方残念なのが、B級専門会社の性か後半が単純な追っかけっこになってしまったことで、ここの安さで予算の少なさがモロバレになってしまい、またせっかく質の高かったドラマが中断されてしまいます。アクションで短絡的に終わらせるのではなく、凶悪犯だった過去を知られて社会的に追い込まれるという展開にした方が本作には合っていたと思います。リー・レイの社会復帰をコープランドや私達は歓迎しましたが、その背後にはかつての彼に傷付けられ、人生が変わってしまった被害者がいます。改心して無害になれば彼は許されるのか?癒されない損害を受けた被害者がいる一方で、彼に人としての幸福を追う自由を与えてもいいのか?という倫理上の問いかけがこの話の背後には存在するはずですが、ここをスルーしてしまったのが残念なところ。「これはあくまでB級映画だから、盛り込み過ぎずシンプルな出来にしよう」という製作サイドの判断もあながち間違ってはいないのですが、せっかく重いテーマにも耐えられる演出や演技が準備できていたにも関わらず、B級止まりにしてしまったのが本当に残念。映画は難しいものです。
[DVD(字幕)] 7点(2009-01-03 13:30:58)(良:2票)
548.  タイタニック(1997)
構造はターミネーターと同じで、不満を抱きながら日常を送っている女性の元にある日イケメンが現れ、襲いかかる脅威から全力で自分を守ってくれる中で愛が芽生え、数日の間に一生分の恋愛を経験するという女のファンタジー。このイケメン、顔だけでなく中身も完璧で、ありのままの自分を愛してくれると同時にいざという時には身を呈して守ってくれる理想の男性。このように少女マンガみたいなベースにアクションを作るのがキャメロンの独特なところです。ただ、ターミネーターの時にはこの傾向にもさほど違和感はありませんでしたが、タイタニックでは特殊な方向にまで進化しています。女性視点で話を展開するどころではなく、フェミニズムへの迎合が見えるのです。「女だからと言って自分の人生を生きられないのはイヤだ」というローズの嘆きはかなりストレートで、女性を縛りつける昔ながらの社会をはっきり悪と位置付けています。婚約者キャルはローズを束縛し、思い通りにならなければ暴力も振るうDV男だし、その対極にあるジャックは「君は人として自由になりなさい」とローズを導きます。キャメロン作品には珍しく一方的な価値観が作品を貫いており、それは物語のバランスを崩しかねないほど。不満があるにせよれっきとした婚約者がいるのに、昨日今日出会ったばかりの男とフラフラ遊び回るのはさすがにマズイでしょとか、貴族社会が息苦しいと言っても、庶民では一生食えないものを食い、欲しいものをいくらでも買えて貴族社会に属する恩恵も十分受けてるんだから、ちょっとはガマンなさいよとか、この映画のモラルには脆弱な部分がいくつもあります。悪役とされるキャルにしても、貴族社会の中では十分浮いているローズの行動を忍耐強く見守っており、また彼女を取り戻すべく沈没寸前のタイタニックに残るなど彼なりに彼女に対して最大限の愛情を注いでいて、一方何不自由なく生きられるはずのローズを貧乏生活に引き込もうとするジャックが正しいとも言い切れません。つまりこれは女性の自立を絶対的な善とするフェミニズムに立脚した物語であり、これをなぜ男性であるキャメロンが作ったのかはよくわからないところです。別に私はフェミニズムが悪いとは思わないのですが、一面的な主張がこの作品の奥行きを奪っているのは確か。ローズの母やキャルの思いも平等に描いて観客に考える余地を与えていれば、もっと良い映画になったと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2009-01-02 03:39:46)(良:3票)
549.  地球が静止する日 《ネタバレ》 
序盤は最高。宇宙人の超越的な力と人類の反応をリアルに描き、知的ながらも見せ場としての面白さも十分。クラトゥの生体構造の考察等、科学的にそれらしく見せることを大事にしているのが好印象です。しかしキャシー・ベイツが現れると途端に話は失速します。国防長官としての対応にまるでリアリティがないのです。宇宙人との接触という歴史的事件に、なぜ合衆国の一閣僚が交渉を行っているのか。ファーストコンタクト時に人類では勝てない相手だとはっきりしたのに、なぜタカ派の姿勢を崩さないのか。そして、ヘレンの息子ジェイコブが話に加わることで、映画はさらに失速します。悪態たれるわ、やかましいわ、警察に通報するわのやりたい放題。こいつの為にヘリに乗ってた兵士が死んでるのに、一切反省なし。あれだけクラトゥに悪態つきながら、いざ自分の命を救われると「あんたいい人なんだね」ってたいがいになさい。そんなジェイコブと再会したヘレンの言葉が「ごめんね、私が悪かった」。親がちゃんと叱らないから、馬鹿ガキが調子乗るんだよ。本来、この墓地の場面が映画のキーだったはず。人類の英知と理性を象徴するヘレンと、人類の排他性と身勝手さを象徴するジェイコブ(子孫が偉大な民族になるとの神の約束を受けたヘブライ人の祖)が、血はつながらず人種が違っていても愛情で繋がっていること、生命を機械的なシステムとして捉えるクラトゥ達よりも深く豊かな生命倫理を人類が持っていること(父を生き返らせてくれと懇願するジェイコブと、それに当惑するクラトゥのやりとりに注目。科学者や政治家をやり込めていたクラトゥが、ここだけは子供相手にも関わらず会話に負けています)、成長によりジェイコブ(=人類の未熟な面)は変わっていくことなどをクラトゥは知り、人類抹殺の中止を決意する最重要シーンだったはずなのに、これが感情移入しがたくなっているのが本作の致命傷。ラストのクラトゥの自己犠牲(=イエスの贖罪)もまったく立たないまま話は終わってしまいます。実はハルマゲドン兵器だったというエヴァンゲリオン初号機状態のゴート(司令室とちょうど目が合う拘束室もまんまネルフ)や、文明を食い尽すナノロボット等、後半のアイデアもなかなかよかったのですが、ドラマ部分の失速によりせっかくの見せ場もインパクト半減。見るべき点は少なからずあるのに、大事な所でコケたのが残念です。
[映画館(吹替)] 7点(2008-12-27 01:14:40)(良:9票)
550.  ボーン・アイデンティティー
映画館ではじめて観た時は「よく出来た佳作アクション」という印象でした。ダイ・アナザー・デイ、トリプルX、トータル・フィアーズ、そして本作を断ってブラッド・ピットが主演したスパイゲームとエージェントものが多く作られた時期でしたが、ド派手な見せ場を売りにした作品ばかりの中、見せ場を切り詰めて地味ながらも穴のない仕上がりとした本作は異色な存在だったと同時に、派手なだけのアクション映画に観客が飽きはじめている空気をうまく感じ取って作ったもんだと感心した記憶があります。とはいえ飛び抜けて面白いわけでもないので「佳作」。現在見返しても単品ではその印象は変わらないのですが、アクションの金字塔となったシリーズの第一作として振り返ると、本作の重要性、非凡さがうかがえます。ジェイソン・ボーンは基本的に知性を武器とし、衝突を避けながら行動していることは論理的に筋が通っているし、いざという時に飛び出す殺人技はこの上なくプロっぽいし、また彼を仕留めるべく放たれた刺客達はストイックなかっこよさに溢れてるし、CIAは役人の勤める官僚組織としてきちんと描写され、お役所ならではの強力なネットワーク、権限の脅威が物語で効果的に使われているしと、このシリーズの持つ優れた点は、すべて第一作の時点で完成されているのです。第二作以降の慌ただしい編集、カメラワークがないので全体的に落ち着いた雰囲気なのですが、影になって役者の顔が映っていないカットがあったり、役者がアクションを起こした後にカメラがその後を追っていたりと(アクション映画にありがちな、見せ場にカメラが先回りしているというショットが一切ありません)、視覚にリアリティを重視しているのも第一作からのようです。「派手な見せ場を入れろ」という映画会社とケンカしてでも作品を守り、結果的にそれが3部作を支える柱となったわけですからダグ・リーマンのビジョンは的確なものであったと言えるし、余計なものは加えず第一作の継承・発展に集中したポール・グリーングラスの手腕も抜群であったと言えます。そんな中、唯一残念なのがマリーの存在で、「どうしたの?」「何があったの?」といちいち聞き返してくる彼女がアクションのテンションを相当下げています。マリーと別れて挑んだ「教授」と呼ばれる刺客との戦いの異様な盛り上がりを見るにつけても、彼女はもっと早く退場させるべきだったと思います。
[映画館(字幕)] 7点(2008-09-06 01:44:53)(良:1票)
551.  バンテージ・ポイント 《ネタバレ》 
テロが起こった23分間をグルグルと違う視点から映し出し、少しずつ全体像を見せるというのはこれまでありそうでなかった手法。なかなか面白い見せ方だし、「現時点で観客に何を見せるべきか」という情報の取捨選択も非常に的を射ていたように思います。デニス・クェイドがモニターで何かを発見し、「これは大変だ!」と言って突然走りだすシーンなどのじらし方は本当に絶妙でした。脚本もよく練られていて、この手法を最大限活かせる体裁になっていたように思います。テロリストが一枚岩ではなく、騙されたり脅されたりして犯行に加わっている者が混ざったことで、事実が解明されていく過程の面白みが格段に上がっています。また、広場でのテロはあくまで陽動作戦だったというアイデアを挟んできたのも、23分間を何度も何度も見せるという、ともすれば同じ画を見せられてアクション映画としての面白みを失いかねない本作において、舞台を増やす為の得策だったと思います。テロリストが女の子を避けようとした為に事件が解決というオチのつけ方も面白かった。まぁ観終わった後考えれば近年稀に見るほどご都合主義の連続ではありますが、複数の視点から語るアクション映画という特性をいかに盛り上げるかのみに集中して作られているので、90分はきちんと楽しめる作品となっています。作り手も話がムチャすぎるという点には十分自覚的で、一気に見せて一気に終わるという一発芸的な作りに専念しているのです。例えば、テロリストの背景や動機の説明がもっと欲しいようにも思いましたが、本作においてこれ以上描きすぎるとかえって犯人像が陳腐化してしまうし話のテンポも奪ってしまうので、作り手もうまいところで切り上げています。本作で唯一背景を語られる主人公のデニス・クェイドにしても、過去のいきさつや現在の心理状況、組織内での立ち位置をほんの数シーンで説明してみせるという、神業的な要約のみで終らせています。とにかく切るものは切って見せるべきものだけ見せるという、実に潔い映画なのです。唯一残念だったのが視覚的な斬新さに欠けたことで、映画自体が斬新な割に視覚的には普通だったので、妙なバランスの悪さを感じました。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2008-08-25 22:20:24)(良:1票)
552.  暴走特急
観ている間中、「決して危機に陥らない主人公」というムチャクチャな前提でよく映画が成立してるなと感心し通しでした。世のすべての物語は紆余曲折があるからこそ面白いのに、絶対に勝つことがわかっている、その過程で一切の危機に陥らず、主人公が顔色ひとつ変えずに映画が始まり終わっていく、そんな代物がよくぞ100分それなりに退屈させない出来に仕上がっているものです。これはセガールという映画史上もっともミステリアスな俳優でこそ出せる珍味であり、そういう意味ではセガールはそれなりに評価すべき人物なのではないかと思います。デ・ニーロですらコピー不可能な、世界唯一の芸当を持った俳優さんですから。監督や脚本家も地味に頑張っています。「主人公が危機に陥らない映画を作れ」と言われてまぁそれなりにまとまった形に脚本を仕上げ、映画として成立するレベルの演出をしてみせるというのは高等技術ではないでしょうか。首尾よく列車を制圧したものの、ライバックが乗ってるとわかるや「ヤバイ、俺達終わった」と焦りだすテロリスト、一方で「ライバックが乗ってるってよ、やったー」と喜び出すペンタゴンの偉いさん達、こんなセガール作品ではおなじみの光景を、笑わせずそれなりに見せてしまえるというのは影ながらの演出の巧さのおかげでしょう。この映画には、そんなコメディギリギリの描写が盛りだくさん。「こんなものは俺には効かんよ」と、痴漢撃退スプレーをまるで香水かのように自分の顔に吹きかけるテロリストのボス。ボスの強さアピールの描写でしたが、明らかにヘンなシーンなのに「あぁ、そうなんだ」とそれなりに見れてしまうのはこの映画ならでは。一方セガールはもっと強烈で、敵のスナイパーに肩を撃たれるも「貫通してるから撃たれてるうちに入らない」と他人事のようにコメントし、本当に何事もなかったかのようにその後のアクションをこなすという超人ぶり。こういうおかしな描写をサラっと見せてしまえる演出は素晴らしいことですし、「セガールにとってはそんなもんなんだろうな」と無意識に納得させてしまえるセガールの存在感も見事なことです。 ちなみに本作の脚本を書いたのはマット・リーブスという人物で、本作後テレビ界で実績を重ね、「クローバーフィールド」の監督を任されるまでに出世したようです。セガール塾での経験が「クローバーフィールド」につながったんだと私は信じています。
[DVD(字幕)] 7点(2008-08-25 18:56:14)(笑:1票) (良:1票)
553.  ダイ・ハード2
通常の映画がクライマックスに持って来るレベルのアクションを次々に見せつけられて所見時は大興奮でしたが、現在の水準から見てもアクションは特盛大サービス状態。「1」を超えるものを作ろうとひたすらスケールの拡大、見せ場の充実を図っているのですが、「これ以上やりすぎるとかえって緊張感がなくなる」というギリギリのところでうまく踏みとどまっているので、満身創痍で戦っている生身の感覚がまだちゃんと残っています。アクションの自家中毒に陥っていた「3」「4」よりはひとつ上の仕上がりと言えるでしょう。また、レニー・ハーリンを監督に引っ張ってこれたのも幸運で(「エイリアン3」の監督に内定するなど、当時はハリウッド中が注目する若手監督でした)、この人の手腕が作品にかなり貢献しています。「動く歩道を起動させ銃をキャッチ!」「迫りくる飛行機からギリギリで身をかわす!」と、バカバカしいまでのカタルシスをバッチリ味わわせてくれます。中でも白眉なのが飛行機爆破からの脱出で、外には銃を構えたテロリスト、ドアはロックされ完全に身動きの取れなくなったところに山ほど手榴弾が投げ込まれ絶対絶命のピンチ!→寸前でコックピットからズドーンと脱出!という稀にみる大脱出の演出は本当にすごかった。「1」の屋上ダイブではまだボヤく余裕のあったマクレーンですが、ここではシリーズ中もっともテンパった顔となっており、見ている私も一緒に手に汗握った名シーンでした。また、悪役の見せ方もなかなか良いです。ハンスのようなスマートな敵はもう作れないと判断したのか、今回の悪役は筋肉隆々の肉体派揃い(変な方向に行ってしまった「3」「4」を思うと、この判断は成功だったと言えます)。しかもボスクラスが3人とこちらも質より量で勝負していますが、フルチンで妙な空手を披露するボスの登場にはじまり、空港ホテルを隊列を組んで歩く私服テロリストのみなさんなど、物凄くヘンなんだけど訳のわからん威圧感や凄味をワンシーンで伝えることに成功しています。体どころか顔まで筋肉で出来ているかのようなウィリアム・サドラーが存在感をムンムンに放っていますが、他の作品の彼は全然パっとしないことを思うと、ハーリンがいかに効果的な見せ方をしていたかがわかります。以上、かなり良い出来の映画なのですが、奇跡的な完成度だった「1」があるので損をしている作品ではないでしょうか。
[DVD(字幕)] 7点(2008-06-29 17:58:35)
554.  ドッグヴィル
この監督、ものすごい天才だが精神年齢は幼稚園児並のような人ではないでしょうか。線が引かれているだけというセットとも言えないセットで、文学的なナレーションに沿って進むこの話。ここまで実験的な体裁をとった作品は他にありませんが、これを3時間退屈しない出来にしているのはやはりすごいことだと思います。また衝動的に作っているように見えて非常にはっきりとした起承転結を持っている話であり、クライマックスに至っては観客にカタルシスすら与えているだけに、やはり見る側の感覚や面白みもきちんと計算して作った作品だと言えます。村人の嫌らしさや憎たらしさもよく表現できており、なかなかうまいものだなと感心させられました。脚本・演出の腕前は本当に一流だと思います。その一方でこの監督の人間観は非常に幼稚だと言えます。過去の作品を見ても、この人は人間を善悪の二面で捉えている傾向があります。登場するのは良い人か悪い人で、良い人であっても何かをきっかけに突然悪意を向けてくる。絶望的とも言える人間観ですが、しかし実際のところ、人間は善悪そこそこでバランスをとりながら生きている存在であり、またお互いに影響を与え合いながら生きている存在ではないでしょうか。自分に対して悪意を向けられる場合においても、その根元には必ず相手と自分との関係性の変化があり、その原因は相手と自分の両方にあるのです。しかし監督はこの「お互い様」を理解できない人なのか、この人の作品の登場人物は毎度一方的に悪意を受け、傷つくような描写がなされます。この監督は本質的に人間というものが見えていない人なんだと思います。なぜ人は悪意を向けてくるのか、その原因がわからないからこそ病的なまでの人間不信なのでしょう。クラスにはたいていいじめられっこタイプがいます。その子に悪意はないものの空気の読めない言動で次第に周りから嫌われるのですが、悪意を向けられると途端に被害者モードに入ります。自分の何が悪かったのかを考えないまま周囲を悪者にして殻に閉じこもるというその性質が、この監督からは感じられます。そういった意味では、この監督の作品は空気の読めない人にとって世界がどう見えているのかを理解するよいサンプルだと言えます。
[DVD(吹替)] 7点(2007-09-08 21:06:23)
555.  ゴーストライダー
ものすごく偏差値の低い映画で最高でした。メラメラと燃えてるガイコツがバカ笑いしながら大好きなバイクで爆走。スーパーマン・リターンズやバットマン・ビギンズが描いていたような苦悩や葛藤、トラウマは一切なく、バカなヒーローがうれしげに腕力を振るうのみという素晴らしい内容でした。特に最初に変身した後の豪快な暴れっぷりは見もので、父親とのドラマや悪魔との契約や業というそれまでの話がコンマ1秒で飛んでいくほどのバカさ加減を披露していました。こんなバカのためにえらいもったいぶっていたメフィストもバカに見えました。また、こんなバカにあっけなく倒される敵もバカに見えました。同様に、こんなバカに振り回される警察もバカに見えました。何より、あれやこれやと気を揉み、将来を約束した恋人を捨てるほど悩んでいた姿がこれかいと、ニコラス・ケイジがすごいバカに見えました。頑張って苦悩の演技をすればするほど、「夜になればアレに変身するんでしょ」と本当にバカに見えます。とにかくバカに溢れた映画ですが、それがあまりに突き抜けており、かつ脚本のレベルの低さと反比例してビジュアルが丁寧に作りこまれているので嫌いになれません。メラメラと燃えるバイクがビルの壁を垂直に登る!水の上も走る!馬も燃える!怪力でヘリコプターを振り回す!こんなどうしようもない場面をきっちりと実写で見せてしまうわけです。技術スタッフの努力の賜物と言えますが、同時にこの監督のビジュアルイメージも実に達者だなと感心させられました。今回は敵が弱いこともあって「ゴーストライダー誕生篇」という感じでしたが、ぜひともシリーズ化して次回作は「死闘篇」として、もっとすごい戦いを見せてくれればなぁと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2007-09-08 20:11:56)
556.  ブラッド・ダイヤモンド
「ラスト・サムライ」では時代劇で日本人を感動させるというウルトラCをやってのけたエドワード・ズィックがまたしてもやりましたね。綿密な研究により極めてリアルにアフリカの問題を描いた良作です。ダイアモンド争奪戦を軸に、政府軍とゲリラ勢力の対立、虐殺、少年兵、先進国の無関心、貧困につけこむ大企業・傭兵とさまざまな要素をぶち込み、これを破綻させることなく上質なドラマにまとめ上げ、さらに娯楽作としても満足の仕上がりにしてみせる手腕は相変わらず見事としか言いようがありません。ロケーションにこだわった映像の説得力は抜群でアフリカの悲惨な現実を浮き彫りにするし、アクションも見ごたえ十分。少年兵のくだりなどは特に恐ろしかった。また、主人公3人がそれぞれの思惑を持ってダイアモンドを目指すあたりにも感心しました。なんだかよくわからない理由でアクションをやる主人公の映画が多い中、本作の登場人物たちはそれぞれにしっかりとした動機を持っているので、余計な疑問を持たずにドラマに集中できましたから。「アミスタッド」「グラディエーター」とアフリカ人役でおなじみジャイモン・フンスゥ、頭の良い美人をやらせたら天下一のジェニファー・コネリー、「ハムナプトラ」「24シーズンⅣ」など胡散臭いえらいさんにピッタリのアーノルド・ボスルー、各自よくハマっていました。ただし唯一残念だったのがディカプリオで、確かに彼はよく頑張っていました。超現実派のひねくれ者が次第に人間味を取り戻す過程を嫌みなく巧みに演じていたし、アクションも非常によかった。ただ、アフリカの内戦を戦い抜いた百戦錬磨の傭兵にはどうしても見えないという大きな弱点が。体の線が細いし、あの童顔ではヒゲを生やしてもあまり強そうには見えません。同世代の俳優であればマーク・ウォルバーグあたりの方がより傭兵らしく見えたと思います。こういうとこ、顔のいい俳優は損ですよね。本人がいくら頑張っても、ルックスのせいでできる役柄が相当限られてしまうので。トム・クルーズもブラッド・ピットも苦労しているところですが、ディカプリオは兄貴分のジョニー・デップのように演技とルックスを両立できる俳優になれるのか。とりあえず今は成長過程だと思います。
[映画館(字幕)] 7点(2007-04-13 01:41:28)(良:2票)
557.  トム・ヤム・クン!
さらわれた象を探して悪党を倒すという狂った話でありながら、これが実に当たり前のことのようにマジメに描かれている辺り、タイのみなさんの象への愛情と愛着が感じられました。象をいじめるやつは死ねばいいんだというネイチャーへの熱い思いが日本人の私にも十分伝わり、野生動物を食材としか思わない中国人を倒しまくる場面には大興奮。敵に対する容赦のなさではスティーブン・セガールを超えているトニー・ジャーの魅力がよく出ていました。こういった単刀直入な展開とカンフー(この映画ではムエタイですが)の相性は抜群にいいですね。Xスポーツ軍団にはじまり、カンフー、カポエイラ、剣術、プロレス、オカマというマンガのような異種格闘技バトルはもう最高。トニー・ジャーの圧倒的な身体能力に頼りきった「マッハ!」よりさらに進化し、夢のような対戦カードを準備。それぞれの敵が十分にキャラ立ちしているのがうまいところで、また各自の特性を活かしたアクション演出にも目を見張ります。スタントだけでなく撮影や編集も相当に高度でセンスがあり、格闘バトルをここまでうまく撮るのはハリウッドでもちょっと難しいレベル。絶賛された「007/カジノロワイヤル」冒頭の肉体アクションよりも、こちらの対Xスポーツ戦の方が良くできていたと思います。とまぁカンフー映画としては大満足なのですが、マッハで成功した監督が色気を出そうとしたために映画のバランスが悪くなっているのが残念。前述したようにカンフー映画はシンプルであればあるほど面白いのですが、本作では警察の汚職やマフィアの権力争いなどの不要な展開が盛り込まれてしまっています。またそれが面白ければいいのですが、あまりにもシナリオが下手くそすぎて意味がよくわからないのが致命的。タイ人警官やタイ人コールガールが味方として登場するものの(良い人はたいていタイ人)、結局何の役にも立たないのではいない方がマシ。特にコールガールなどは登場の仕方はいかにも重要なヒロインという感じだったのに、その後何の役割も果たさず、トニー・ジャーを含む主要登場人物との絡みもなく、画面にもほとんど登場しないという素敵な状態。あの女優さんに撮影の途中で何かあったのかなと、こちらが心配してしまうほどでした。
[DVD(字幕)] 7点(2007-03-31 17:41:53)(笑:1票) (良:2票)
558.  ロックアップ(1989)
中古レーザーディスクが100円で叩き売りされてたので、思わず里親になってしまいました。『待ってたぜ!スタローン」とデカデカと書かれ、帯には名作「大脱走」よろしく数百人の囚人が脱獄しているイラスト(本筋とはまったく無関係)が入っているという素晴らしいデザインのジャケットにまずしびれてしまいました。さらにジャケットの裏には、刑務所めがけてイナヅマが走り大爆発が起こっているという景気のいいイラスト(本筋とはまったく無関係)もあるのですが、一方本編は目立ったアクションシーンもない実に地味な仕上がり。くちびるひん曲げて「ウォー!」と叫びながらマシンガンを乱射していた当時のスタさん作品の中では異色なほど質素な仕上がりで、スタファンだった私も小学校の時に一度見たきりでほとんど印象に残っていませんでした。同時期の「デッドフォール」は子供心に大好きだったんですけどね。でもあらためて見ると、当時なんでもありが許されていたスタさん作品において、本作はきちんと起承転結もあって映画として成立しているように思います。ま、あくまで80年代のスタ作品中ではという評価ではありますが、コブラやオーバー・ザ・トップなどを思えばちゃんと出来てるなと。刑務所仲間と友情を育んだり、刑務所長へのイライラが極みに達していくあたりなど、きちんと感情移入して見ることができました。ダイ・ハードや逃亡者(ハリソン・フォード版)なども手掛けたジェブ・スチュアートが脚本で加わっている功績でしょうが、スタさんならではの人間味が本作の泥臭さにはよく合ってると思います。インディ・ジョーンズやトップガンがとっくに公開されていた80年代末なのに演出や編集のセンスがやたら古いようにも思いましたが、それはそれで現在の鑑賞においては味としても感じられるし。筋肉に支配されていた80年代末には、こういうのも大作として上映されてカップルも見に来てたんだなぁと思うと、なかなか素敵な時代じゃないかと先輩方をうらやましく思います。デートでスタさんの映画を堂々と見に行けた時代があったなんて奇跡じゃないですか。スネークフライトをひとりで見に行っている自分を思うにつけ、自分は生まれる時代を間違えたなと思います。
[ビデオ(字幕)] 7点(2007-03-25 04:03:36)(笑:1票)
559.  ホステル
日本以外では空前の大ブームとなっているスプラッタホラーの代表的な1作ということでブルーレイディスクを購入して鑑賞しましたが、あらすじから想像されるよりもスプラッタは少ないように感じました(もちろん、ホラーに免疫のない人が見ると卒倒する作品ではありますが)。顔を半分焼かれた女の子の特殊メイクがやたらチープ等、映像的に群を抜くほどショッキングというものでもないでしょう。むしろこの映画からは、イーライ・ロスという人物の素晴らしい才能が感じられました。見せない部分の怖さ、これから起こる惨劇への不気味な兆候の表現が実にうまく、復讐へとなだれこむ後半の盛り上がりも絶好調で、この人の脚本・演出は完璧に計算されているなと感心しました。ピーター・ジャクソン、サム・ライミと現在ハリウッドを引っ張っている監督がふたりともホラー映画出身ということからも、優秀なホラー映画を作ることは監督としてのポテンシャルのひとつの証明だと言えます。観客を怖がらせるには、どのようなバイオリズムで鑑賞されるかを先回りして脚本・演出を仕掛けていくという能力が必要となりますが、このイーライ・ロスという人物はそれに非常に長けているように感じました。この人はただ気持ち悪いものを見せるだけの人物ではないなと。今後の成長が非常に楽しみな監督さんだと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2007-03-22 00:25:03)(良:1票)
560.  スーパーマン リターンズ 《ネタバレ》 
9.11やアフガン・イラク攻撃などアメリカにとって波乱の21世紀においてなんでも解決してくれる無敵のヒーローは成立するのだろうかという難題に挑み、そこに突破口を作ってみせたブライアン・シンガーの手腕は相変わらず見事でした。かつての恋人に「スーパーマンはなぜ不要なのか?」という論文を書かれ、それがピュリッツァー賞まで受賞するほど変わってしまった世の中。町の人助けやちんけな犯罪者の成敗はやってくれても、テロや戦争など人類が抱える本当の困難には立ち会ってくれないじゃないかという大きな矛盾を前提としてこの作品は作られていますが、それに対する答案をきちんと準備しているのが立派なところ。スーパーマンは神のごとき力を持って世界を救うヒーローというよりも、目の前で困ってる人をほっておけない気の良い超人というスタンスを明確に出してきているのです。最初から最後まで基本的に彼は知り合いを助けるために戦っていることからも、彼の戦いの目的が個人的な方向へシフトしていることがよくわかります。また、スーパーマンに救われた人たちが感謝と尊敬を示すリアクションが丁寧に描いているあたりからも同様の意味が感じられます。墜落する飛行機を救う大スペクタクルの後に、スーパーマンの華々しい帰還を大歓声で迎える観衆が映し出される場面はまさに象徴的で、彼が観衆に支えられる市井のヒーローである(だから難しい世界情勢ではなく目の前の事件に立ち会うのみ)ことがよく描かれています。スーパーマンが病院に運ばれるというヒーローものとしてはありえない展開も、21世紀のスーパーマン像を確立する大博打だったと思います。徹底的なリアル路線にシフトしたバットマンよりも、ヒーローへのロマンと現実のうまい折衷をやってのけたスーパーマンの試みの方を私は評価します。そういえば劇中スーパーマンの活躍を報じるテレビの中から「ゴッサムでも目撃されており」という発言がチラっと聞こえるのですが(字幕では未訳)、バットマンの町にまで人助けに行っちゃダメでしょ。映画全体は恐ろしいまでに丁寧に作りこまれており、テンポも遅いのでやたら冗長に感じますが、それはスーパーマンに対する思い入れの違いだと思います。ガンダムが普通のアクション映画になっていたら日本人としては許せないのと同じ感覚で、アメリカ人にとってのスーパーマンはこのボリュームがふさわしいのでしょう。
[映画館(字幕)] 7点(2007-02-11 17:28:21)(良:1票)
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