541. リトル・ヴォイス
「ブラス!」のマーク・ハーマンがオリジナルの舞台の配分を変えて、イヤな場面をメインにしたってのが興ざめの原因。ことさらネガティブな部分を強調してせっかくの素材を台なしにするのが好きな彼の音楽映画は、音楽好きな人よりもペシミスティックで苦い芝居が好きな人向きかも。単純もナンだけどヒネリすぎが深いなんて思わないし、少し考えすぎじゃないかな。ケインとブレッシンはいいですがユアンは役には目立ちすぎ? TVでは英国首相もやってしまったりするジェーン・ホロックスの歌まねライブは聴きどころ♪ [映画館(字幕)] 6点(2010-05-12 16:53:23) |
542. ライフ・イズ・ビューティフル
《ネタバレ》 映画でなく舞台劇であったなら、これほどの批判を受けたかどうか。題材によっては執拗にリアリティを求められる映画ならではの宿命。ベニーニのあまりにあっけない退場とラストの一人の男性のモノローグで、このにぎやかな物語は新たな寓話へと変貌を遂げる。良い意味でイタリア映画らしくなく、あの独特の自己憐憫や哀れっぽさが希薄なのがすがすがしく思える。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-05-12 13:35:59) |
543. ザ・エージェント
最初はヒロインのレニー・ゼルヴィガーの容貌がちょい地味に感じたのですが、温かく控えめで優しい役柄にぴったり。このレニーが一番好きかな。キャメロン・クロウは女性を魅力的に描くのが上手。トム&キューバのトイレでの大ゲンカも楽しい。SHOW ME THE MONEY! [CS・衛星(吹替)] 6点(2010-05-09 07:59:24) |
544. ザ・ローリング・ストーンズ/シャイン・ア・ライト
正直、ストーンズ・ファンとはいえない。(彼らが長持ちしているのはカントリーのように変わらないロックをやっているからだと思う) けれども若々しく張りつめたミック、一挙手一投足にカッコよさをチラつかせるキース、永年少年のようなロン、ひとりだけ髪も染めず自然体で年相応なチャーリー、そしてブルース界の大御所バディ・ガイとチャーミングなクリスティーナ・アギレラ。当然だがビルはいない。チョコマカと顔をのぞかせ必死に仕切るべくスコセッシが喋り続ける。腕利きのカメラマンを集めたにしては、すべてのショットが画になっているとはいえないが、ファンだけが愉しむにはもったいない音と映像の2時間。 [映画館(字幕)] 7点(2010-05-09 07:56:16) |
545. エース・ベンチュラ
いまいちマイナーなのはオゲレツでTVではあんまりやらないから? 若きジム・キャリーの上り調子+初主演の勢いが感じられる快&怪作。ひたすらお客さんを楽しませることにヨロコビを見出していたこの頃のジムには好感。アメコミの「マスク」とちがって彼のオリキャラだし、オバカワイイ髪型だけでも一見の価値あり(↓) ショーン・ヤングはホされた後はいい役やってないけど、これもスゴ~イ!(BRファンは見ない方が!) ワザの中でも「倍速巻戻し」がステキ♪ [レーザーディスク(字幕)] 6点(2010-05-09 06:00:07) |
546. ステラ
幸せとは誰が決めるものなのか。ステラの誇りは所詮自分の作品を完璧に仕上げた自己満足ではないのか。・・・という疑問もないではないが、母親の捨て身の愛とつまらぬ理屈を天秤にかけたところで答えは永遠に出ず、ステラとジェニーの20数年を凝縮した2時間につきあうことが時間の無駄になるとは思わない。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-05-08 12:52:35) |
547. ルパン
《ネタバレ》 海上にそびえる尖塔エーギュイユ・クルーズ。ルパンの館、奇岩城を目の当たりにできることは大きな喜び。モノクルもしてみせてくれる、個性的な貌をもつデュリス=ルパンの存在感は、崩れおちそうな華のまま生き続ける魔女マダム・カリオストロの妖美と同じく濃い。幾重にも絡み合った人間関係がいかにもフランス的。若き日の情熱たぎるルパン、そして時を経て諦念に満ちたルパン。見応えはありながら、どうしてもこの間に横たわる時間こそ見てみたくなる。陰のある美貌のエヴァ・グリーンはアジャーニやマルソーの後裔となるのか。マチュー・カリエールの公爵様は秘かな愉しみ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-05-08 12:49:16) |
548. ザ・グリード
《ネタバレ》 ソマーズは「ザ・デプス」や「リバイアサン」的な使い古された題材でもちょっとした工夫で面白く見せる。007では過激、X-メンではしっとりと女らしいファムケ・ヤンセンは中間のここらあたりがいい感じ。オコナーもハムナプトラよりこっちの方が可愛く、ノンビリした船長もよい。豪華客船の「アルゴノーティカ」って名前も怪物に襲われそうな感じムンムンで暗示的。ラストがアレでも、きっと生き延びてくれる気がする、彼らなら。 [地上波(吹替)] 6点(2010-05-08 12:43:45) |
549. サマーストーリー
ジョン・ゴールズワージー「林檎の樹」。森鴎外の「舞姫」にも通ずる内容で、原著の香気を湛えるまでには至らないがダートムーアの自然描写は美しく、すべてが解放的になるがゆえに悲劇も生まれやすい夏の一瞬の恋を描く。ジェームズ・ウィルビィは現実的なフランクに合っているが、イモジェン・スタッブス(「十二夜」)はミーガンにはどうだろうか。脚色された因果応報なラストは切ない。 [レーザーディスク(字幕)] 6点(2010-05-08 12:35:43) |
550. ヴァン・ヘルシング
ハムナプトラ以上に破天荒でスティーヴン・ソマーズの娯楽美学ここに極まれり。とにかく観客を楽しませたい!という映画人としての心意気は否定しがたい。派手な見せ場の連続よりもプリンセス・アナが口にする人造人間への感謝の言葉が印象的。「アンクル・トムの小屋」で令嬢エヴァが奴隷少年にしたように。人間扱いされたことのない者が初めてひとりの人格として扱ってもらえた、その驚きと嬉しさは何物にもかえがたいにちがいない。 [映画館(字幕)] 6点(2010-05-08 12:29:42) |
551. エクソシスト
《ネタバレ》 ロザリオで少女を陵辱してみせる不敬な悪魔に身を挺して立ち向かう二人の神父は、使命を帯びた賢者の如し。40代半ばのマックス・フォン・シドー扮する老境のファーザー・メリンの重厚さ、彼の絶命により自らの迷いを打ち砕くファーザー・カラスの気迫が圧巻。宗教色の強い映画は好まないがこれは例外といえ、現世では比喩的な意味しか持たぬであろう憑依という事物をかように具象化してみせた、これもまた芸術と呼ばねばなるまい。結尾のリーガンの接吻は彼らへ捧ぐ。 [地上波(吹替)] 8点(2010-05-08 06:00:04) |
552. ウォレスとグルミット/ペンギンに気をつけろ!
スピード感とは無縁だったクレイ・アニメーションに新しい地平を切り開いた作品☆★☆シリーズ最高傑作は次の「危機一髪!」だろうけれども、シリーズを代表する名場面となるとあのスペアレール連結シーンにとどめをさす。「チーズ・ホリデー」よりすっかりあかぬけ、お気楽なご主人さま思いのグルミットの忠犬・執事・親友ぶりがいじらしく、冤罪のタメがあるから最後スッキリ。 [CS・衛星(吹替)] 8点(2010-05-07 08:26:41) |
553. モンタナの風に抱かれて
陳腐なロマンスがせっかくの雰囲気を台なしにしている気はしますが、そういう原作なんでしょ? それによってサム・ニール演じる夫(一番好き!髪染めてるのでちょっとダミアンっぽいです)の聡明さも光るわけだし。プラトニック不倫でも罪悪感のようなものがあったらよかった。ロバート・レッドフォードは「リバー・ランズ・スルー・イット」でモンタナの自然の美しさに魅せられ、その中に自分も置いてみたくなったのでしょうか。クリスティン・スコット・トーマスはりっぱな母親でも人間としては未熟にも感じられます。10代のスカーレット・ヨハンソン(すぐ死んじゃうお友だちはケイト・ボスワース、美少女コンビ)は心と体に傷を負った少女をキツめに演じ、愛馬ピルグリムの演技とメイクも迫真。ダイアン・ウィーストはふっくらした田舎の主婦が似合い、クリス・クーパーは口数少ない気のいい牧童。そういった細かいところは丁寧で、映画より良質のテレビドラマの趣き。再生を呼びおこす穏やかな風が吹き抜けていく。 [DVD(字幕)] 6点(2010-05-05 06:00:02) |
554. ペーパー・ムーン
現実のオニール父娘よりイメージはずっとよく、ほどよく乾いた紙のお月さまはパリパリとした感触。ボグダノヴィッチの代表作2本ともモノクロなのはちょっとズルイぞって気もしますが。このマデリーン・カーンといい、ボグダノ監督はクセのある女優を好みますよね。オニール父娘がお好きな方は「ニッケルオデオン」もどうぞ。 [地上波(吹替)] 7点(2010-05-04 06:00:18) |
555. キッド(1921)
擬似父子人情モノとして別にいいんですけど、あんまりブチュブチュしないでほしいの。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-05-03 06:00:07)(良:1票) |
556. レオン(1994)
リュック・ベッソンの映画がヒットしたのは、アメリカナイズされたフランス人らしからぬ分かりやすい内容とハデな映像と情緒ベッタリの高カロリーのせいだと思っていますが、この映画もムズムズするくらいハズカシかったです。毛糸帽かぶったピュアな殺し屋と同じく毛糸帽のみなしご美少女とジャンキーの刑事なんて、コメディならいいけど。それでもジャン・レノ(役違っても顔同じだね!)×ナタリー(かわいいのはボブだから)×オールドマン(やっぱり上向いて「コキッ」でしょ)のトライアングルの磁場は強力。出来がよくないというより自分の好みではないということ。(ベタベタなのはAB型には合いません)スティングの曲の使い方も陳腐じゃあ? [映画館(字幕)] 6点(2010-05-02 11:07:58) |
557. ヒットマン(2007)
《ネタバレ》 「47」がいたスナイパー養成施設は少林寺みたい。(小坊主がいっぱい!)非道に育てられても人の心は残っているのを見せたいのね。銃撃シーンはスタイリッシュに撮ったって好きじゃないけど、電車の中の格闘シーンは面白。キュ~トなキュリレンコちゃんは007のような大作では脱がなくても売り出しの作品だとポロポロと肢体を見せますが、それが嫌味なくラブシーンもなしとサッパリ。幼く見える表情、スリムな体、ルーズなミニドレスがタコ・「47」と絵になる。ニカと心をかよわせた「47」は彼女のために足を洗うってことまではしないけど、短くボロがでないうちに「ちょっといい映画」と思わせてササッと撤収、残るは真昼の月。 [DVD(字幕)] 7点(2010-05-01 17:30:02) |
558. 不思議の国のアリス/アリス・イン・ワンダーランド<TVM>
アリス役のティナ・マジョリーノは美少女とはいえないけれど、アリスらしい凛とした雰囲気は持ちあわせていて、青でなく黄色のドレスはカラー版「子供部屋のアリス」を踏襲した正統派。巨顔加工されたマッドハッター(マーティン・ショート)や衣装が見事なハートの女王(ミランダ・リチャードソン)のエキセントリックぶりもよいですが、一番魅力あるのはジェイソン・フレミングの倦怠ムード漂うハートのジャックかな?最初と最後にワンダーランドの住人を演じたスターたちの素顔が見られるのもいいし、ジム・ヘンソン工房のアニマトロニクスによるクリーチャーもあたたかみがあります。 [DVD(字幕)] 8点(2010-04-22 17:00:59) |
559. 007/私を愛したスパイ
ロジャー・ボンド最高作はそれまでの総集編的な内容の濃さ。冒頭のスキー・スタント~オープニングの流れ、器械体操をモチーフにしたタイトルバックはそれ以前の濃厚なイメージより軽快で洗練されたもの。ジョン・バリーに代わって音楽を担当したマーヴィン・ハムリッシュのテーマ曲‘Nobody does it better’(カーリー・サイモン)は「貴男が最高」という歌だが、彼の「コーラスライン」の‘One’(彼女は№1)と対をなしており、エンディングではあの曲を思わせるミュージカル・アレンジが聴ける。シーンごとに5台が使われているロータス・エスプリはアストン・マーチンにはない優雅さ、黒がにあうバーバラ・バックはタキシードのロジャーと相性がよくベタつかない辛口の関係。リチャード「ジョーズ」キールは「鋼鉄の歯」で痛い思いをしたようだが、その甲斐あるユニークで強力な悪役。軽妙なユーモアをたたえるロジャー・ムーアは最もなじみあるボンド俳優かもしれない。 [映画館(字幕)] 8点(2010-04-19 07:19:57) |
560. メトロポリス(1926)
ドイツ映画は今と違って20世紀前半は独自の存在感。これも7年後のアメリカの「キング・コング」よりアーティスティックな雰囲気では上回っていると思います。二役のブリギッテ・ヘルムの演技はサイレントを反映して大仰ですが、マリアの姿形がアンドロイドと融合するシーンは幻想的で、ロボット・マリアは「禁断の惑星」のロビーやSWのC-3POなどと一緒に映画のロボット史には必ず顔をだす麗しき造形のフィメール・ロボット。女性色が強いのはフリッツ・ラング夫人のテア・フォン・ハルボウの原作だからでしょうか。BRにも影響を与えているといわれますが確かに俯瞰での高層ビルの形状は似ているようで、製作年代を感じさせるのは複葉機ぐらいのイマジネイティヴな2026年。(私はモロダー版ですが今は見られないんですよね) [映画館(字幕)] 8点(2010-04-18 06:02:46)(良:1票) |