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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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641.  沈黙 ーサイレンスー(2016) 《ネタバレ》 
原作未読。 人を救いたくて信仰を守っているのに、その信仰を捨てなければ信徒を殺すと脅された宣教師のジレンマ。なかなか面白くなりそうなお話なのですが、「神よ!なぜ沈黙なさるのです」的な発言を何度も何度も繰り返すアンドリュー・ガーフィールドの姿を眺めるのに160分という上映時間は長すぎました。また、最後の最後で神が主人公に語り掛けてくる場面にも感動がなく、さらには神と主人公の間で出された結論が一体何だったのかもよく分かりませんでした。 他方、本作の面白かった点は、信仰を理解しない人たちの意見もちゃんと反映されていることであり、宗教映画でこのような体裁をとっているものはかつてなかったと思います。キリシタンを取り締る役人達は「まぁどうでもいいから、さっさと踏み絵を踏んでよ」という姿勢なのです。取り締りの先頭に立っている筑後守(イッセー尾形が素晴らしい演技)すらキリスト教の価値観そのものを否定しておらず、キリスト教に乗っかって入ってきた西欧諸国の悪影響こそが問題であったとの発言をします。 また、キリシタン弾圧に屈したフェレイラ神父による比較文化論にも興味深いものがありました。日本人は一神教の価値観を持っていないから、俺らがどうこう言ったって変わらないよと言うのです。さらには、隠れキリシタン達ですら我々と同じ感覚で神を捉えておらず、日本式に曲解した形での理解になっていると。そんな社会で犠牲者を出してまで信仰を守る意味はないから、さっさと折れなさい。そして日本社会が望む形で貢献してあげなさいと言うのです。こちらの主張も面白いと感じました。 宗教映画としてはまったくピンときませんでしたが、文化を描いた映画としてはなかなかよくできています。もっと上映時間が短く、かつ、もっと鋭利な描写があれば、面白い映画になっただろうと思います。
[映画館(字幕)] 6点(2017-01-21 16:23:05)(良:1票)
642.  ロスト・バケーション
B級映画界の職人さんジャウマ・コレット=セラによる、平均点のB級映画でした。美女と鮫の攻防戦のみを90分未満の上映時間で一気に見せるという潔さ。ひとつひとつの見せ場の瞬発力は高く、危ないぞ危ないぞという煽りや、ギリギリで危険を回避する場面のスリルはなかなかのものです。いよいよ鮫が全体像を表すタイミングも素晴らしく、観客に対して最大限のインパクトを与えられるように見せ場が配置されています。 ただしB級監督の限界か、そもそもの設定のバカさ加減までは隠しきれていません。ストーカーの如くブレイク・ライブリーを付け狙い、数日にわたって浅瀬から離れようとしない鮫。魚がここまで明確な意図をもって行動するなんてことはさすがに不自然であり、数日ではなく数時間の攻防戦にするか、地元の人が寄り付かないビーチに入ったらそこは巨大鮫のテリトリーだった等の設定が欲しいところでした。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2017-01-16 00:03:21)
643.  殿、利息でござる! 《ネタバレ》 
良い人だけが出てくる良い映画であり、たまにクスっと笑わせるという、いかにも松竹らしい人情コメディとなっています。とにかく全員が公共のために尽くそうという思いを持っており、このプロジェクトの障害になると思われていた藩の出入司や、財政難の元凶となっていた殿様すら話してみれば良い人。事情を知るや主人公たちへの協力姿勢を示し始めるという、安心して見られる作品となっています。 主人公たち出資者は「町が滅びれば自分たちの商売も立ち行かなくなるから、何とか町に活気を取り戻さなければ」という目的で資金の供出を開始します。この点は合理的で納得がいったのですが、他方で店を潰してまで資金を捻出しようとした妻夫木聡演じる浅野屋の行動原理だけは不明であり、この点が作品のアキレス腱となっています。彼のドラマをもっと合理的に見せてくれれば作品全体がより腹に落ちたのですが、もはや徳の高い人でしかないという見せ方は良くありませんでした。
[ブルーレイ(邦画)] 6点(2017-01-14 15:47:15)
644.  レジェンド 狂気の美学 《ネタバレ》 
良くも悪くもトム・ハーディのアイドル映画。トムハは出ずっぱりの上に、一人二役なのでボリューム2倍。しかも彼が得意とするエキセントリックなキャラクターと、珍しい二枚目キャラを同時に見せてくれるのでお得感倍増です。男前で芸達者なトムハを見るだけで2時間強の上映時間はもっており、旬な俳優の持つオーラや勢いってやっぱり凄いのだなということを再認識させられました。 ただし、ヤクザ映画としてはパンチ不足で物足りない内容でした。クラブの店内をカメラが流れるように移動しながら主要登場人物を順番に見せていく冒頭や、BGMの選曲センスにはモロに『グッドフェローズ』の影響が見られてちょっと期待させられたものの、スコセッシ映画ほどのドギツさはなし。ヤクザ映画の醍醐味って、「よくそんな怖いことを平気でできるな」というえげつない描写を垣間見ることだと思うのですが、本作はとにかく大人しいのです。しかも監督のブライアン・ヘルゲランドといえば、主人公が奥さんの死体と一晩添い寝したり、足の指を金づちで一本ずつ潰される拷問を受けたりと荒れた描写が目白押しだった『ペイバック』を撮った立派な方。そんな監督がマックス・ロカタンスキーと組んだヤクザ映画となれば物凄いバイオレンスを見られるものだと期待するところですが、とんだ肩透かしでした。 さらには、一貫して男性映画のみを作ってきたヘルゲランドが、女性の描写を不得意としていた点も作品の弱点となっています。本作の語り手はレジーの奥さんであるにも関わらず、とにかくこの奥さんの存在感が薄いのです。夫婦関係の破綻には唐突感があったし、このキャラの最期も「え、自殺するほど悩んでたっけ?」という印象しか受けず、どこか重要な場面を見落としたのだろうかと思ってしまったほどでした。
[DVD(吹替)] 6点(2017-01-13 00:16:31)
645.  サウスポー
『ナイトクローラー』ではヒョロヒョロに減量していたジェイク・ギレンホールが、今度は筋肉モリモリマッチョマンになっていました。ギレンホールの役者魂もさることながら、最近のハリウッドの肉体改造技術は本当にすごいことになっています。監督もギレンホールの肉体こそが最大の見せ場であることをちゃんとわかっており、冒頭から出し惜しみなし。また、MTV出身の監督だけあって画作りはお手のものであり、もしテレビで放送されていたら本当のボクシング中継かと勘違いしてしまいそうな見せ場を作り上げています。こちらも見事でした。 物語はスポーツ映画の王道通り「栄光→没落→再起」のフローで推移し、ほとんど変化球なし。ロートルトレーナーとの出会いや、周囲の人々とのドラマなどテンプレートから1mmも離れることがなく、だからこそきっちり感動させられるものの、残念ながら水準作以上にはなっていません。 さらには、作りが粗い部分も目立っています。あれだけ人目が多い場での発砲事件だったにも関わらず、奥さんを誤射した犯人が逮捕されないという点はさすがに不自然。また、対戦相手となるボクサーは「ビ○チはもうお前を助けてくれないぜ」とか言って傷心の主人公を煽ってきますが、いくらヒールであってもここまで言ってくる奴はいないでしょ。さすがにイジれないネタというか。しかも、あんたの子分が誤射したことへの罪悪感はないのかと。急に娘が反発し始めたことも不自然であり、何か重要なエピソードを見落としたかと思ってしまいました。 もうひとつの問題点は、前述した通り現実のボクシング中継に極めて近いルックスを作りながらも、オーディエンスの存在が描かれていないことです。主人公は一度没落しますが、彼はアルコールやドラッグで自滅したのではなく奥さんの急死という同情すべき背景があったのだから、世論は彼に味方するはず。あれほど急激な没落は不自然に感じました。また、主人公が金づるではなくなった途端に相手ボクサーに寝返ったプロモーターやトレーナーはバッシングを受けるはずなのに、そうしたオーディエンスの反応がまるで描かれていません。こうしたディティールの面で失敗しているため、本作のドラマには乗りきれませんでした。
[DVD(吹替)] 6点(2017-01-10 18:59:35)(良:2票)
646.  ハイネケン誘拐の代償
『ドラゴン/怒りの鉄拳』みたいなタイトルですが、ハイネケンは個人名。しかも犯罪被害者の名前であり、なんだかハイネケンさんが中心になって悪いことをしたかのような邦題はどうかと思いました。また、作品紹介を見ると誘拐されたアンソニー・ホプキンスが未熟な誘拐犯達へ心理攻撃を仕掛け、徐々に形成を逆転させるような内容を連想させられたのですが、こちらも映画の内容とは全然違いました。日本の配給会社によるおかしな売り方は、ちょっと問題だと思います。 本作は金がなくてバカをやってしまった若者達のドラマであり、犯罪サスペンスという要素はかなり薄くなっています。誘拐計画は驚くほどうまくいっているものの、何がきっかけとなって捕まるか分からないというプレッシャーと、素人集団ゆえに「自分以外の誰かがミスを犯しているのではないか」という不安から全員が徐々に精神をやられていき、人間関係が崩壊する様がなかなかリアルでした。主犯を除く全員が「金なんて要らないから元の生活に戻してくれよ」と思っているものの、一度しでかした過ちから逃れることはできないのです。捜査当局や被害者側のドラマはすべて捨て去り、加害者の視点のみで構成されていることからドラマは非常に分かりやすく、また、捜査当局にどの程度追い込まれているのかが分からないという点がスリルを高めていました。この構成は正解だったと思います。 ただし、会社をクビにされたにも関わらずハイネケンを慕い続けている父親や、妊娠した奥さん絡みのエピソードまでが落とされているという点はいただけませんでした。これらは、主人公の背景を理解するためには必要なパートだったと思います。
[インターネット(字幕)] 6点(2017-01-09 19:22:50)(良:1票)
647.  
良い評価も悪い評価も与えられる作品であり、鑑賞の度に評価が変動しそうで点数をつけづらいのですが、今のところはどっちつかずの6点とさせていただきます。 古典を原作としていることの弱みがドバっと出た作品であり、現在の目で見ると突飛な展開、薄っぺらな人物描写が気になりました。特に次郎の動きは理解や共感が困難であり、兄嫁に簡単に篭絡させられ、その操り人形となって今の妻を殺そうとする展開などはもう少し説明が欲しいと感じました。そもそも『リア王』を知っていて物語を脳内保管することが可能であり、「うまく換骨奪胎したものだ」という目で見ることができる客層からしか支持されない内容であり、シェイクスピアに馴染みのある欧米で高評価を受け、逆に日本では不評だったという現象にも納得がいきます。 なお、映像の迫力や美しさには素晴らしいものがあり、芸術作品としてはハイレベルです。色分けされた軍勢が織りなすマスゲームの美しさ、本物志向で建てられたオープンセットの説得力、そしてそのオープンセットを豪快に燃やしてしまうという気前の良さなど、画面で起こることすべてに見ごたえがありました。ハリウッドならば中規模作品に分類される予算でここまでの映画を撮りあげた黒澤明の手腕には圧倒的なものがあり、うまくお金を使うことも映画監督の才能のひとつなのだということがよく分かります。
[インターネット(字幕)] 6点(2016-11-09 13:11:20)
648.  ヘイトフル・エイト
「こんな映画の楽しみ方も分かってる俺ってどうよ」というB級映画マニアの悪いところがドバっと出た『キル・ビル』『グラインドハウス』では愛想尽かせかけたものの、その後の『イングロリアス・バスターズ』『ジャンゴ』で王道を踏まえた堂々たるエンターテイメントを見せられて「タランティーノって意外と引出しの多い監督なのね」と感心していたところに本作です。しかも本作は50年ぶりにウルトラパナビジョン70を使用し、『グラインドハウス』とは打って変わって往年のハリウッド大作のスタイル復活を目論んだものであり、『イングロリアス・バスターズ』以降の王道路線の決定版とも言える企画。どれだけ素晴らしいものが出来上がるのかという高い期待があったのですが、残念ながら期待値ほどの作品には仕上がっていませんでした。 雪にまみれたキリスト像のアップから駅馬車の登場までは最高であり、ウルトラパナビジョン70の広い画角が有効に活かされています。ただし、その後の本編ではこの冒頭のように目を楽しませるような場面がほとんどなく、タランティーノがウルトラパナビジョン70の使用に固執した理由がよく分かりませんでした。これは『キル・ビル』『グラインドハウス』でやったのと同じ過ちであり、スタイルの模倣に意識を傾けすぎていて、なぜそれが必要なのかというそもそも論が置いていかれているような印象を受けました。マニアの悪いところがまた出てしまいましたね。 本編は密室における会話劇であり、『レザボア・ドッグス』では100分で収めた内容を本作では168分かけて見せられているという印象を受けました。ミスディレクションの仕方や張り巡らされた伏線など相変わらずタランティーノ脚本のクォリティは高いものの、アベレージが異常に高いタランティーノ作品中では凡作に入る方かなという印象です。少なくとも、90年代の3作品やジャンゴよりも劣っている作品だと思います。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2016-11-07 00:08:34)
649.  フルートベール駅で 《ネタバレ》 
これはなかなか評価の難しい映画です。 声高に主義主張を叫ぶ映画ではないため表面上は中立を装っているものの、主人公が愛すべき家庭人として描かれ、「俺も真面目に働かなきゃ」と改心したまさにその日に射殺されたというドラマチックな内容としている点で、やはり表現にはバイアスがかかっていると思います。交通事故に遭った犬を抱きしめる場面とか、ハッパを海に捨てる場面とか、故人が一人で行ったはずの善行を一体誰が見てたんだよとツッコミを入れたくなりました。 そもそも主人公は前科持ちで出所後にも売人を続けており、社会との信頼関係を自ら破壊してきた人物なのです。そんな人物が公共交通機関で敵対グループと喧嘩をしたとなれば、警察官達が「相手は危険人物である」との予断を持って事に当たり、「新年で混み合う公共交通機関で一般市民に被害が出ないよう対処せねばならない。何かあれば即撃て」との姿勢でいたことにも、一定の合理性はあります。また、舞台となったフルートベール駅周辺は治安が悪く、その地では警察官達は緊張感を持って職務に当たっているという点も考慮に含めねばなりません。そうした警察官側の論理を扱っていない点でも、やはりアンフェアな内容だったと言わざるをえません。 ただし、さすがはライアン・クーグラー監督作品とだけあって映画としては抜群に面白く、その構成力には舌を巻きます。冒頭に射殺場面を持ってくることで「この人物は殺されます」という結末を観客に対して突き付け、当日の彼の些細な行動にも高いドラマ性と緊張感を与えています。主人公が非常に魅力的であることもドラマへの没入感を高めており、上記の通りの社会啓蒙的な側面を度外視すれば、これがとても良い映画となっているのです。
[インターネット(字幕)] 6点(2016-11-02 19:06:22)(良:1票)
650.  レッドクリフ Part I
お恥ずかしいことに三国志の知識は皆無に近く、国名と主要登場人物の名前を知っている程度での鑑賞です。物語の基礎知識を持たない状況での鑑賞には不安があったのですが、その点、国内での配給を担当したエイベックスは懇切丁寧な説明を冒頭にくっつけたり、場面転換の度に登場人物の名前と役職名をテロップ表示してくれたりといった親切設計で対応しており、一見さんにも問題ない鑑賞環境が整えられていたことは有難かったです。本作が劇場公開されたのは洋画に観客が入らなくなり始めた時期でしたが、そんな中で一般客をどうやって呼び込むかという点に配給会社が気を配り、結果として興行的に大成功を収めたのだから見事なものです。 有名な歴史ものには後世での自由奔放な脚色が含まれていることが常であり、これを素直に実写化すると「ありえねぇ」の連続となり(例『300/スリーハンドレッド』)、かといって説明可能な形にまとめようとすると「古典の面白さを台無しにした」とケチをつけられ(例『トロイ』『エクソダス』)、なかなかサジ加減が難しい素材だと言えます。そんな中で本作は基本的に”素直に実写化”路線に向いているのですが、かといって完全な歴史ファンタジーの領域に足を踏み込むこともなく、「昔、こういう戦争がありました」という歴史活劇として一定のルックスを作り上げることに成功しています。劉備軍の将軍たちはまさに一騎当千の活躍を見せるものの、物理的にまったくありえないというレベルに突入する手前のギリギリの描写で踏みとどまっており、生身の人間が戦っているという感覚を残せているのです。この辺りの演出は素晴らしかったと思います。 また、配役も絶妙なものでした。劉備軍の将軍たちの個性豊かすぎるルックスの再現度は高いし、超人的な頭脳を持つ諸葛孔明役にキャスティングされた金城武は、その浮世離れした個性により役柄に説得力を与えています。また、絶世の美女とされる小喬のキャスティングにも困難性が伴ったと考えられますが(見る人によって美醜の基準は異なるため、「誰の目にも絶世の美女として映る人」というキャスティングはかなり難しい)、そこに女優経験のないモデルのリン・チーリンを持ってきた判断も神がかっています。こちらもまた、国を動かすほどの超絶美女にきちんと見えているのです。また、彼女については難しい演技を要求される場面がなく、経験の少なさゆえのボロを出さずに済むよう脚本や演出レベルでも調整がとれています。 以上、本作のルックスは素晴らしいのですが、肝心のお話には面白みが感じられない点は残念でした。ジリ貧の劉備軍が、まだ戦禍に巻き込まれていない呉をどうやって同盟に引き入れるかが本作のスポットだと思うのですが、この交渉の困難な部分はどこにあって、どうやって呉を説得するのかという観客に対する情報の整理ができておらず、孔明と周瑜が弦楽器のセッションで意気投合したことで交渉が進み始めるという、なんとも面白みに欠ける展開となっています。弦楽器の件以外にも、馬の出産・虎狩り・牛泥棒などの面白みのないサイドストーリーの積み重ねにより本筋が進められていくため、中盤が本当に面白くありません。こうした中盤のグダグダの割を食ったのが孫権であり、これは優柔不断な孫権が為政者としての本分を発揮するまでの物語でもあったはずなのに、そこにあるべき感動が見事に失われています。熱い男を描かせれば天下一品だったジョン・ウーが男の成長ドラマでコケたことは意外でした。
[映画館(字幕)] 6点(2016-09-21 20:05:48)(良:1票)
651.  スーサイド・スクワッド 《ネタバレ》 
IMAX 3Dにて鑑賞。3D効果を実感できる見せ場はほとんどなく、2Dで見ても大差ないと思います。 『マン・オブ・スティール』『バットマンvsスーパーマン』とシリアス路線で来ていたDCエクステンデッドユニバースですが、本作よりクリストファー・ノーランがプロデュースから外れたことの影響からか前2作品のような暗さはなくなり、けばけばしい原色系の色彩をベースとしたユーモラスな世界観が構築されています。タスクフォースXの面々が紹介される序盤の出来は素晴らしく、彼らがいかに優れた悪者であるかを手短に披露すると同時に、観客に対して各キャラクターへの愛着を抱かせるよう、彼らにも同情すべき背景があるという点もきっちりと描かれており(あくまで重くなりすぎない程度にですが)、本作の監督はなかなか有能だなと大いに期待させられます。序盤からバットマンの出し惜しみをしないというサービス精神にも嬉しくなりました。タスクフォースXが編成された理由についても、「スーパーマンを失った今、超常的な脅威に立ち向かう手段がなくなったから、それらしい連中で代用するしかない」と『バットマンvsスーパーマン』の展開を踏まえた上でのある程度合理的な説明がなされるので、変な疑問を抱かせられたりしません。なかなかよく出来ているのです。 ただし、面白いのは前半まで。いよいよミッションがスタートすると、「そういうことじゃなくて…」と首を傾げたくなるような方向へと進んでいきます。スーパーヴィランというわけでもなく一芸に秀でた犯罪者の集まりでしかないタスクフォースXと、大都市を余裕で破壊できる魔女・エンチャントレスでは戦力がまるで拮抗しておらず、どう見ても勝負になるレベルの敵ではないためかえってハラハラドキドキさせられないし、そもそもエンチャントレスの目的がなんだかよくわからないことも作品の温度感を下げています。また、中盤の居酒屋場面で人情話をしてしまったこともマイナスであり、この展開を挟んだことからタスクフォースXは不敵な犯罪者集団から情で動く仲良しグループに変質してしまいます。そのため、毒を以て毒を制すというそもそものコンセプトが失われてしまい、悪人ならではのダーティな戦いを見られなくなるため、これでは仮にジャスティスリーグが事にあたってもほぼ同じ顛末を迎えたのではないかと思います。 ジャレット・レト扮するジョーカーは、単体で見るとものすごく良いのですが、本編への絡ませ方が中途半端なので作品の面白さには貢献していません。ま、ジョーカーというキャラ自体が善でも悪でもなく秩序を乱す者という位置づけであるため、エンチャントレスによって無秩序状態にされた街に彼が登場したところで、何もやることはないわけです。だったらジョーカーなんぞ登場させなければよかったわけですが、『バットマンvsスーパーマン』同様に製作陣が欲張ってしまったがために、本来は不要な要素が加わってしまっているのです。
[映画館(字幕)] 6点(2016-09-10 23:12:43)(良:2票)
652.  スティーブ・ジョブズ(2015)
私は新規事業立ち上げに当事者の一人として携わった経験があるのですが、人の話を聞いていると事業はまったく前に進みません。特に、今まで世になかった商品やサービスを開発し、供給により需要を生み出すというタイプのビジネスではあらゆる人からリスクばかりを指摘され、できない理由を朝から晩まで聞かされることとなるため、人の意見は聞かない、聞いても自分に都合よく解釈し、「成功するはずだ」と信じて一度決めた道をひた走るという資質が経営者には求められます。 本作で描かれるスティーブ・ジョブズは完璧なクソ野郎です。脚本を書いたアーロン・ソーキンは『ソーシャル・ネットワーク』と同様にカリスマ経営者の悪しき一面を描くことに関心を持っており、間違いなくジョブズに対する悪意をもった作品であると言えます。そのクソ野郎ぶりを眺めることが本作の一義的な楽しみ方だと思うのですが、それと同時に、ビジネスの世界で成功するためにはこれくらい極端な人格を持つ必要があるという勉強にもなります。自身のビジョンに絶対の自信を持ち他人の意見に左右されないこと、部下の事情など考えずにビジョンの実現のみにこだわること。凡人にとってここまで自分を貫き通すことは難しく、どこかで心が折れたり、目標や方法がブレたりするのですが、ベンチャーを成功させる経営者はメンタル面での圧倒的な強靭さを持っています。そして、経営者を間近で見ていると、そのような人物像は一種の才能であるかのように感じられます。 英語では才能をgiftと言い、神からの贈り物という含みがあります。劇中で相棒のウォズニアックから指摘される通り、ジョブズにはハードウェアを作る技術も、プログラムを書く技術もなく、後天的な努力をしてスキルを磨いてきた人物ではないのですが、他方で自身のビジョンを信じて突き進むという人格面での強靭さと、10年先20年先の社会を読んだ上で当たる商品コンセプトを思いつくという先天的な能力には恵まれており、まさに神からの授かりもので生きてきた人物だと言えます。人格面では最悪で多くの人から嫌われているものの、凡人がどれだけ努力しても身につけることができない才能を持っていることから、部下達は彼の元を離れることができません。努力で自分の価値を高めている秀才にとって天才とはズルくて憎たらしい存在なのですが、ジョブズとウォズニアックの関係はまさにそれを象徴しています。 作品は3部構成であり、それぞれ重要なプレゼン前のバックステージを舞台としており、膨大な量のセリフのみによって物語は進められていきます。そのような特殊な構成をとっているために視覚的にはやや単調なのですが、ジョブズという人物像がそもそも強烈である上にマイケル・ファスベンダーの熱演もあって、彼の最悪な発言を聞いているだけで2時間はもってしまいます。ただし、状況や人物に係る説明的な描写はなく、ジョブズの人生を知っていることが鑑賞の前提条件となることから、間口の狭い作品となっていることは残念でした。また、天才を突き放した視点で眺めた作品であるためか、鑑賞後に特に心に残るものがありませんでした。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2016-08-18 18:21:36)(良:1票)
653.  ドローン・オブ・ウォー 《ネタバレ》 
『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』において、スパイ衛星で捕捉した敵を、常時航行しているヘリキャリアーからの攻撃により自動排除するというインサイト計画なるものが登場しましたが、「そんなもんはファシストのやり口じゃねぇか!」と激怒したキャップにより当該計画は豪快にぶっ潰されるのでした。 本作で主人公が従事するミッションは、まさにインサイト計画と同様のもの。テロリストであるとタレこみがあった人物の居場所にまでドローンを飛ばし、ミサイルで始末するだけの簡単なお仕事です。そして、キャプテン・アメリカの怒りを買ったインサイト計画と同様に、このミッションにも正義はありません。農夫にしか見えないアフガン人をテロ関係者として殺したり、ドローン攻撃で死亡した人物の葬儀に集まった人たちにもミサイルを撃ち込んだりと、もはや歯止めが利いていないのです。少しでも疑いをかけられた人物はクロと見做して殺す。たった一人のテロリストを殺すために無関係な一般市民を巻き添えにする。被害者と加害者の国籍が逆であればどれだけの非難を受けているだろうかということをアメリカはやっているのです。 そもそも戦争とは命の奪い合いであり、そこに良い殺し”Good Kill”などはないのですが、それでも従来の戦場には一定の掟や美学というものが存在していました。戦闘行為は兵士のみが行い一般市民は巻き込まないこと、相手の命を奪いに行く以上は自分も殺される覚悟をしておくこと。しかし、ドローンによる殺戮は絶対安全な場所でボタンを押すだけで片がつき、そこには最低限のモラルすらありません。主人公はF-16のパイロットに戻して欲しいと何度も上司に懇願しますが、それは一人の戦士として今やっていることに耐えられなかったためでしょうか。 昼間は遠隔操作での殺戮に手を染めながら、夜には帰宅して家族との時間を過ごす。そんな生活を送る中で兵士たちは次第に精神を蝕まれていきます。ある者は麻薬に走り、ある者は任務から離れていく。主人公もまた、大儀のない殺戮に順応するため他者への共感を絶たねばならなかったことから、家族との間で溝ができていきます。若い女性部下と何となく良い感じになっても不倫に走らず家へ帰るあたりからは、彼の中でも行動を制御しようとする意志が見られるのですが、それでも人格そのものが崩壊していくことは止められなくなっているのです。 以上、なかなか意欲的な姿勢で作られた作品ではあるのですが、物語はどこか牧歌的。主人公がウジウジと悩む様はある意味呑気であり、ミサイルを撃ち込まれる側からすれば、「発射ボタンを押す人だって苦しんでるんですよ」と言われたところで「それがどうした!」としかなりません。本作はより被害者目線に立った作品であるべきだと感じたのですが、これがアメリカ映画の限界なのでしょうか。
[DVD(吹替)] 6点(2016-08-12 18:49:24)
654.  コードネーム U.N.C.L.E.
ナポレオン・ソロ役には当初トム・クルーズが予定されていたものの自前の企画『ミッション:インポッシブル/ローグネイション』を優先して降板し、代わってジェームズ・ボンド役の最終候補にまで残った経験のあるヘンリー・カヴィルが登板ということで、スパイ映画って意外と少ない人数で回してるのねということが印象的だったのですが、カヴィルのハマり具合は素晴らしく、次期ボンド役は彼でいいんじゃないかと本気で思ってしまいました。高級スーツがよく似合うし、スーパーマンも演じる肉体派だけあってアクションをやる時の身のこなしには説得力があります。さらにはユーモアのあるセリフをサラっと言えるため、どんな時にも涼しい顔をしていられる超人的な役柄にピタりとハマっているのです。 また、相手役のアーミー・ハマーは190cm超の巨体を活かしてソ連の堅物役になりきっているし、アリシア・ヴィキャンデルは『黄金の七人』のロッサナ・ポデスタのような魅力があって、60年代のおしゃれなアクションコメディの雰囲気を身に纏っているかのようです。『オースティン・パワーズ』や『オーシャンズ11』など60年代の娯楽作の復活を目指した作品はいくつかありますが、時代の雰囲気の再現度という点では、本作がベストではないでしょうか。 時代の再現度、それが本作の問題でもあります。いま時のスパイ映画に慣れてしまった身としては、結局事態は解決するのだろうという予定調和な雰囲気の中でいつでもヘラヘラと笑っていられる安心感により、スパイアクションに期待される緊張感を奪われている点が残念でした。主演二人は自らスタントをこなしており見せ場のクォリティは高いものの、それが見る側の高揚感には繋がっていません。ダウニーJr版『シャーロック・ホームズ』でも感じたのですが、ガイ・リッチーの作品は雰囲気ものの領域を出ないように感じます。他方、リッチーの元パートナーにして、元祖ナポレオン・ソロを演じたロバート・ヴォーンの息子だと言われていた(後にDNA鑑定で否定されましたが)マシュー・ボーンは、『X-MEN/ファーストジェネレーション』や『キングスマン』にてレトロな様式美と現代風アクションの折衷に見事成功しており、本作もその領域にまで達して欲しいところでした。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2016-08-12 18:48:16)
655.  ザ・ガンマン 《ネタバレ》 
これまで娯楽作への出演を避けてきたショーン・ペンが、突如ジョエル・シルヴァー製作、ピエール・モレル監督というコッテコテのアクション映画に主演。しかも自分で脚本を書くほどの熱の入れようということで、事前にはどんな映画になっているのか見当もつかなかったのですが、雰囲気だけはメチャクチャによくできています。『ブラッド・ダイヤモンド』や『ザ・バンク』のような重い社会性を帯びた娯楽作であり、本編はB級アクションらしからぬ重苦しい雰囲気に覆われています。また、ひとつひとつの仕草にまでこだわり抜いたと思われるほどアクションシーンにおける主人公の行動は洗練されており、きちんとプロの傭兵に見えるだけの説得力があります。それを演じるショーン・ペンの肉体改造は凄まじく、体脂肪率の低そうなバッキバキの肉体を披露。『エクスペンダブルズ』の面々ですらここまで体を作ってきている者はおらず、御歳55歳にしてアクション俳優としてのキャリアが開花しそうな勢いなのです。 ただし、お話しの方がまるで面白くありません。主人公は8年前の暗殺事件を発端とした国際的な陰謀に巻き込まれて命を狙われ、その黒幕を探し始めるのですが、イマイチ観客の興味を引くような流れを作り出せていません。怪しい奴を捕えると、こちらが聞きもしていないことまでベラベラと話してくれる。本編はこれを何度か繰り返すのみなので、面白いわけがありませんね。ラストの展開などは噴飯もので、主人公が持つ証拠動画と、敵に囚われたヒロインを交換しようという取引がなされるのですが、いくらでもコピーできる動画ファイルをわざわざ受け取りに現れる敵一味が間抜けにしか見えません。また、犯罪を首謀した行為の隠蔽がそもそもの目的だったにも関わらず、追い込まれたラスボスは公衆の面前で銃を振り回して女性を追い駆け回すというアホな行動をとり始める始末であり、仮に過去の犯罪行為を隠蔽できたとしても、新たな罪状で逮捕されるだろと呆れてしまいました。 主人公とヒロインの悲しい恋愛や悪人との三角関係、主人公の重病設定も本筋のサスペンスを盛り上げることには貢献しておらず、無駄な枝葉になってしまっています。ショーン・ペンを含めてオスカー受賞者が3人もいるにも関わらず高いレベルでの演技合戦を楽しむことはできず、専ら不自然な展開を誤魔化すために彼らの演技力が費消されているという点も残念でした。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2016-08-10 20:36:34)
656.  評決のとき 《ネタバレ》 
長期に渡る廃盤により国内での視聴が困難な作品のひとつですが、Netflixにしれっとアップされていたので、1999年の地上波放送以来の鑑賞となりました。 公開当時にはここまで豪華俳優陣という印象は持たなかったのですが、現在の目で見ると凄い俳優が名を連ねているなと驚かされます。つまり、この20年間で主要キャスト達が大成したということであり、将来性のある若手や知名度の低い実力派を起用した本作のキャスティングは神がかっていたと言えます。上映時間の使い方もうまいもので、膨大な要素を扱いながらも混乱なく話を進めていき、これを2時間半程度にまとめてみせた語り口には感心させられました。90年代にはハリウッド有数の職人監督として重宝されていたジョエル・シュマッカーの本領発揮といったところでしょうか。 また、オチのつけ方も素晴らしいと感じました。ほぼ有罪に傾いていた陪審員達を動かした最終弁論の最後の一言「被害者少女がもし白人だったら」、これは非常に重い問いかけだったと思います。主人公ジェイクは必死で差別と戦い、黒人だからという理由で被告が不利益な扱いを受けないよう奔走してきましたが、最後の最後で彼は差別が存在することを明確に認めた上で、「もし白人が同じことをすれば、みなさんは容疑者を無罪放免にしますよね」と説得して無罪判決を引き出すのです。最終弁論の後半でジェイクは涙を流しますが、それは差別という大きな影に勝てず、差別に屈服しなければ容疑者を守れなかった自分自身の不甲斐なさを嘆いた涙だったのでしょうか。勧善懲悪の結末を予想していた私は、この展開には本当に驚かされました。同時に、差別問題の難しさや根深さを見事に言い当てた一幕だと感心しました。 ただし、本作にはハリウッド製作ならではの欠点もあります。「万人にとって分かりやすく」を信条として作られたためか、この裁判が抱える複雑な問題点がどんどん放棄されていくのです。この裁判の論点とは「やむにやまれぬ事情がある場合でも復讐は許容されないのか?」というものですが、この議論は本編からスッパリと落とされています。これは残念でした。また、前述の通り最終弁論でビターな結末を迎えたにも関わらず、その後の無罪判決を受けて勝利を祝福するかのような派手な音楽が流れる一幕は、完全に演出を間違えています。ここで一気に興を削がれました。その他、法廷外ではKKKが暴れ回って爆弾騒ぎや誘拐、暗殺未遂までを起こして州兵が出動するほどの事態となりますが、そうした場外乱闘が法廷内での審理にまったく影響を及ぼさない点も残念でした。法廷内と法廷外のイベントが有機的に影響しあい、事態がどんどんエスカレートしていけば、映画全体がより面白くなったと思うのですが。
[インターネット(字幕)] 6点(2016-05-17 18:18:57)
657.  バットマン vs スーパーマン/ジャスティスの誕生
IMAX3Dにて鑑賞。 世間的に評判の悪い『マン・オブ・スティール』の大ファンである私としては、ザック・スナイダーが続投する本作も期待いっぱいで鑑賞したのですが、本作は「期待を上回る大傑作!」というわけにはいきませんでした。ザック・スナイダーの手腕をもってしても、あまりにポテンシャルの違いすぎるスーパーマンとバットマンを無理なく共演させることは難しかった様子であり、各々のヒーローの良い部分を出せないまま終わってしまったという印象です。 スーパーマン対バットマンとくれば、盆対正月のやけくそみたいな大バトルを期待するところですが、中盤はチンタラと腹の探り合いをして、あまり見せ場がありません。ようやく見せ場が始まったかと思っても、実は夢でしたというオチがついたりと、この企画に期待されるだけの熱量がありません。 そもそも、両者は活躍の場が異なります。大空を自由に飛び回るスーパーマンに対して、暗闇を駆け回るバットマン。本作では主人公であるバットマンに合わせて舞台となるのはもっぱら夜であり、スーパーマンは完全に割を食っています。爽快感が皆無なのです。人助けをする場面はあるものの、これがまさかのダイジェスト処理。スーパーマンの雄姿については『マン・オブ・スティール』を参照してねという姿勢で作られているようです。また、クラークがうじうじと悩む様は『スーパーマン・リターンズ』以来の定番ですが、望まぬ能力とどう向き合うかというテーマが明確だった前作と比較すると、今回は一体何に悩んでいるのかがよく分からないので困ったものです。彼のドラマのハイライトは公聴会に出席したところだと思うのですが、何らの意見も表明しないままこれが中断したため、彼の考えは分からず仕舞いです。 バットマンはバットマンで、なぜあそこまでスーパーマンに執着するのかがイマイチ伝わってきません。ゾッド将軍戦で破壊されるメトロポリスに居合わせたことで(なんと、ゴッサムシティとメトロポリスは隣町であることが判明)スーパーマンのパワーの危険性を身をもって知ったとはいえ、まともにやりあえば到底勝てるはずのないスーパーマン打倒に命をかけようとした理由がよく分からないのです。さらには、スーパーマンとの和解にも唐突感があり、総じてドラマがうまく回っていません。クリストファー・ノーランが脚本から外れてしまうと、作品の質がここまで落ちるものかと驚かされました。 そんな中で良いところを持って行ったのが、ワンダーウーマンでした。登場場面の絶妙なタイミング、それまで重苦しかったBGMが突如民族音楽風の派手な音楽に切り替わり、千両役者登場!という空気を盛り上げます。彼女が思いの外強かったことも爽快感に繋がっており、これぞヒーロー映画という醍醐味を味わわせてくれます。彼女が出るのであればジャスティスリーグは安泰ではないか、そう思わせるほどの存在感でした。
[映画館(字幕)] 6点(2016-03-26 01:05:24)(良:2票)
658.  トランセンデンス(2014) 《ネタバレ》 
生命倫理の問題や、テクノロジーが神の領域にまで達しようとすることの是非、環境問題など、この映画にはとにかくいろんなトピックが盛られています。監督と脚本家は恐らくこれら全部を語りたかったんでしょうけど、キャリアの少ない彼らではこれを扱いきれず、ただのひとつも観客の興味を引くことなく終わっています。難解な題材を華麗に調理するクリストファー・ノーランという天才の下でしばらく働いてきた撮影監督が、「ノーランほどではなくても、それに近いものは自分にも撮れるのではないか」と考えてしまったことは致し方ないところですが、もっと地に足のついた、まずはワンイシューで勝負するところから始めていれば、映画としてはきちんとまとまったのではないかと思います。 監督はあまりに多い構成要素を捌くことにいっぱいいっぱいで、血の通った物語にしきれていません。元は人質として囚われていたポール・ベタニーにどんな心変わりがあってエコテロリストの参謀を務めているのかが不明だったり、一貫して自己中の悪人にしか見えないエコテロリストのケイト・マーラが途中から正義の扱いになることの違和感、モーガン・フリーマンの存在意義など、キャラクターの動かし方が総じておかしいのです。何より問題なのは、誰がどう見ても怪しさ全開の行動をとるAIウィルが、実は良い人でしたというオチに納得感が薄いこと。超越的な知能を持ち、文明社会の森羅万象を動かす力を持っているのだから、人類から猜疑心を抱かれないよう、もっとうまくやれよと思ってしまいました。これと併せて、遠隔操作可能な改造人間を作り始めるに至って、ようやく「最近のウィルって何だか気持ち悪いわ」と感じるようになったエブリンの異常な鈍さにも付いていけず、バカ夫婦の起こした珍騒動という印象が強くなっています。 そんな感じでトピックの扱いでも、人間ドラマでも失敗している本作ですが、救いはビジュアルの美しさで観客の目を楽しませることには成功していること。ノーランの映像美を最前線で支えてきた監督は、ここではきっちりと仕事をしています。 また、脚本レベルでは中盤以降、FBI、民間セキュリティ会社、エコテロリストの連合軍がウィルの要塞に攻めてくるという何とも燃える展開を準備してきますが、この下世話な部分が面白かったので、本作は憎めない作品となっています。人類側は「ハイテク兵器ではウィルに乗っ取られるから、旧式の銃火器で乗り込むぜ!」とやってくる。対して、ウィル側は障害者を改造して作り上げた不死身の強化人間軍団で陣地防衛。前半の真面目な雰囲気をぶち壊すこのバカさ加減には、私の中のB級魂が騒ぎました。また、結構真剣にテクノロジーを扱ってきた作品なのに、このパートではナノマシーンがほぼ魔法の道具扱いになっていて、このヤケクソ加減も私のツボでした。キューブリックの脚本をマイケル・ベイが監督したかのような歪さを楽しめるかどうかが、本作の評価を分ける点なのでしょう。私は嫌いじゃありません。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2016-01-28 19:24:07)(良:1票)
659.  ラースと、その彼女 《ネタバレ》 
かなり深刻な題材を扱いながらも、たまに笑いを入れて重くなりすぎないよう微妙な温度感まで調節された脚本と演出が素晴らしく、高評価にも納得の作品となっています。 ただし、面白かったかと言われると微妙。ラースの抱える心の闇がほとんど描かれておらず、また、ラースの異常行動に対する住民たちのリアクションも行儀が良すぎて、もうひと山を作れていないような印象を受けるのです。ドロドロの葛藤を描くべきとは言いませんが、たまにラースを傷つける人が現れて、順調に進んでいた治療が逆戻りするかもしれないというハラハラ感を出してもよかったのではないかと思います。 また、ラースの心境にフォーカスしても、マーゴとの距離が近づいた途端にビアンカを葬るという解決方法には違和感を覚えました。彼にとってラブドールのビアンカは現実の女性と同等の存在。都合が変わったからと言って、ビアンカを殺してしまうという選択肢はモラルに反しているように思いました。ビアンカはラブドールであることをラースに認識させた上で、次のステップに進ませるという解決にした方が、個人的にはスッキリしたと思います。
[DVD(吹替)] 6点(2016-01-26 16:20:03)
660.  イングリッシュ・ペイシェント 《ネタバレ》 
文芸作品としての上品な風格とハリウッド映画らしい大作感を両立した作品であり、そのルックスはほぼ完璧。「これは何か賞をやらなければ」と思わせるだけの仕上がりだし、一方で同年には他に突出した作品がなかったこともあって、作品賞を始めとするオスカー大量受賞には納得がいきます。アカデミー会員が求めるものを、ほぼパーフェクトに充たした作品なのですから。ただし「面白いか?」と聞かれると、これはちょっと微妙と言わざるをえません。 ざっくり言うと不倫で身を持ち崩した男の話なのですが、その舞台が第二次大戦前夜というキナ臭い時代だった上に、登場人物達の背景に国際的な諜報戦も絡んできたことから悲劇は雪だるま式に折り重なっていき、最終的には大勢の人の死に繋がっていくという劇的な展開を迎えます。そのまま映画化すればさぞや面白かろうという内容なのですが、厄介なことに、監督とプロデューサーは恐らく意図的に娯楽性の高くなりそうなポイントを外してきています。本作の評価はこの点をどう受け止めるかにかかっており、この手の文芸作品が好きな人にとってはストーリーテリングにおけるこの独特な取捨選択がハマったのかもしれませんが、それ以外の観客にとっては、盛り上がりそうで盛り上がらない中途半端な展開にフラストレーションが溜まる結果となっています。 具体的には、足を負傷したキャサリンを砂漠の洞窟に残して救助を求めに出て行ったアルマシーが、その国籍ゆえにスパイ容疑をかけられてキャサリンを助けに戻れなくなるというくだり。タイムリミットサスペンスの要素とも相まって、詳細に描けばかなり面白くなったであろう展開なのですが、監督は驚くほどアッサリとこのパートを流してしまいます。その過程において売国行為にまで手を染めるという、アルマシーにとって分岐点となったイベントも簡単なナレーションのみで片付けられており、その意思決定の時点でアルマシーが抱えていたジレンマはほとんど描かれません。監督によるこの取捨選択には大きな疑問を持ちました。 他方、無駄に感じたのが看護師ハナの物語全般です。映画は現在パート(1944年)と回想パート(1938年)を行き来しながら進行するのですが、現在パートにおけるハナと爆弾処理兵キップとの恋愛が本筋にうまく絡んでいない上に、この物語がさして面白くもありません。ハナとキップは登場させず、間接的に加害者となってしまったアルマシーと、アルマシーの売国行為によって重大な損害を受けたカラヴァッジョの対話を現在パートの基礎とした方が全体的な話の通りは良くなったような気がします。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2016-01-18 19:18:00)
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