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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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641.  ハンター(2011) 《ネタバレ》 
絶滅種タスマニア・タイガーを仕留めろと命じられたあるハンターの物語と聞かされた時には「え?そんなものが映画になるの?」と不安に感じたのですが、それは無用な心配であり、意外にも本作は真っ当な映画として成立しています。父親のいない家庭があって、その家庭は好戦的な他の住民とのトラブルを抱えていて、そこにやってきた流れ者が用心棒兼父親として家を守るという筋書きは、まさに王道のウェスタン。観ていて「なるほど、これがやりたかったのか」と納得がいきました。ハンターと一家の交流は丁寧に描写されているし、対する他の住民達の悪辣ぶりもなかなかのもので、このドラマにはかなり引き込まれました。同時に、両者の対立構造は一面的ではなく、開発と環境保護という大きなテーマを観客に投げかけている点でも見応えがあります。さらには失踪した父親の謎の絡め方も良く、非常に端正なシナリオだと感じました。また、これを支える演技も素晴らしく、ウィレム・デフォーは生涯最大の当たり役ではないかという程ハンター役にハマっています。彼の相手となる子ども達の演技も非常にナチュラルで、子役特有のわざとらしさやイヤらしさをまったく感じさせられませんでした。。。 と、前半パートは良い感じに進行していたのですが、後半になると映画は突如として方向転換をします。前半の問題が何らの解決もしないまま一家は退場させられ、同時に憎まれ役だった住民達も映画から姿を消してしまいます。代わって、会社から送り込まれた他のハンターとの戦いや、タスマニア・タイガーとの出会いが描かれるのですが、前半のドラマを断ち切る形で後半パートが開始されるので、この構成には大きな違和感を覚えました。ラストに主人公がとった行動も分かったような分からんような微妙なものだったし、後半パートはまるで楽しめませんでした。前半のドラマを貫徹すればウェスタンの傑作になっていた可能性もあっただけに、謎の方向転換が悔やまれます。
[DVD(吹替)] 6点(2012-09-15 14:33:51)
642.  デビル(2010) 《ネタバレ》 
本作は、シャマランが書き溜めてきたアイデアを若手クリエイターが映像化する「ザ・ナイト・クロニクルズ」の第一弾。これまでシャマランは自分のオリジナル脚本を他人に委ねることがなかっただけに、本作の出来がどうなるのかは気になっていたのですが、幸いなことにこの試みは成功しています。。。 内容は「お天道様は見ていますよ」といういつものシャマラン映画なのですが、若手クリエイターの力によって、これまでとは一味も二味も違う作品に仕上がっています。従来シャマランが不得意としてきた悪人の描写が充実し、サスペンスホラーとしての奥行きがしっかり出来ているのです。シャマランは悪人よりも善人の描写に力を入れる監督なのですが、一方、本作の監督を担当したジョン・エリック・ドゥードルは善人にほとんど関心を示していません(ラストでは善人に救いがもたらされるのですが、その救いをほとんど描かずにさっさと映画を切り上げてしまうという有様)。それに代わって「正常に見えていた人間が、実は悪人だった」という点の描写に力を入れたため、サスペンス映画としてちゃんと面白くなっています。。。 本作の構成は独特で、オカルトと犯罪ミステリーという相反するはずの二つの要素が食い合うことなくうまく共存しています。犯人は悪魔であることがはっきりしているのに(そもそも、タイトルが『デビル』だし)、その前提でもなお犯人探しのミステリーを成立させてしまった脚本力・演出力には脱帽なのです。抜群の発想力・構成力を持っているものの、監督としての引き出しの少ないシャマランと、勢いのある演出はできるものの、ともすれば緻密さに欠ける若手クリエイターが、お互いの短所を補完しあうことで作品を完璧なものとしたようです。本作は興行的にも成功した様子なので、「ザ・ナイト・クロニクルズ」の第2弾にも期待です。
[DVD(吹替)] 7点(2012-09-14 15:09:50)
643.  アニマル・キングダム 《ネタバレ》 
何やら野蛮で騒々しそうなタイトルからは『デビルズ・リジェクト』な一家が暴れ回る犯罪アクションを想像したのですが、実際の内容は静かな実録ドラマでした(本作は、1988年に発生した警官射殺事件をベースとしている)。ギラついたバイオレンス描写はほとんどなく、代わりにあるのはジリジリとした圧迫感。監督は本作がデビュー作ということで、間延びしすぎた描写や、逆に説明不足の場面も散見されるのですが、それでも締めるべき部分はガッチリ作り込まれているし、悪い余韻を残すラストもテーマと合致しており、本国で絶賛されたことにも納得がいきます。。。 アニマル・キングダムを仕切っているママと長男、とにかくこの二人の造型が素晴らしすぎます。全身にタトゥの入りまくった次男、完全にDQN顔の三男と比較すると、長男のルックスはかなり地味。犯罪者というよりも普通の中年男性なのですが、その狂いっぷりは次男・三男を怯えさせるレベル。彼は精神疾患を患っているために世界が歪んで見えているようで、極端な被害妄想を抱いたり、異常な攻撃性を示したりします。『グッドフェローズ』のジョー・ペシもそうでしたが、あからさまな狂人よりも、基本的には一般人と変わりないのだが、いくつかの点で異常性が見受けられるキ○ガイの方が遥かに恐ろしく感じます。一方、アニマル・キングダムを内助の功で支えるママは、キ○ガイに見えて実は頭脳プレーを得意とするという、長男とは正反対のキャラクター。息子達への溺愛ぶりには『デビルズ・リジェクト』のママにも通じる狂気が感じられるのですが、いざ一家が危機に陥れば、巧みな戦術や人脈を駆使した裏工作で生存の道を模索します。その思考は至って冷静。一時は警察側についていた孫のジョシュが一家の側に寝返った時点で、ジョシュは長男ポープに復讐する腹だということを彼女は見抜いています。ポープは愛する息子であり、母としての心情ではその生存を望むのですが、その一方で凶暴性に歯止めの利かなくなったポープは一家存続のために切らざるを得ない存在。そこで彼女は、三男の救出を最優先として長男ポープの殺害を容認し、情よりも利を取るという決断を下すのです。一家の愛憎が入り乱れるこのラストは非常に素晴らしく感じました。
[DVD(吹替)] 8点(2012-09-09 14:18:06)(良:1票)
644.  顔のないスパイ 《ネタバレ》 
『ウォンテッド』や『3時10分、決断の時』の脚本家、マイケル・ブラントの監督デビュー作。これまで優れた脚本を書いてきたブラントが、自分の手で監督したいと思った渾身の作品だけあって、本作の脚本はかなり魅力的です。ポールの正体を早々に暴いて観客の視線をポールに集中させておいて、第2のトリックを密かに仕込んでおくという周到な構成には恐れ入りました。また、男性映画の傑作『3時10分、決断の時』の脚本家だけあって、男の友情物語としても非常に優れた物語です。残念なのは、監督としての腕前がまだまだ不十分で、脚本の魅力を十分に引き出せていないこと。プロの監督に委ねていれば目の覚めるような傑作になる可能性もあっただけに、結果としてB級アクションに終わってしまった点は惜しいと感じました。
[DVD(字幕)] 6点(2012-09-09 14:15:08)
645.  セットアップ 《ネタバレ》 
どうやら監督は『ヒート』や『ザ・タウン』レベルの犯罪ドラマを目指していたようなのですが、その試みは完全に失敗に終わっています。裏切りにより敵同士となった元親友というドラマティックな構図をとってはいるものの、役者のパワー不足によってこのドラマは本来持つべき熱を持っていません。主人公が裏切り者を追い掛けるうちに3つの犯罪組織が入り乱れるという厄介な事態へとエスカレートしていくものの、これについても監督が意図したような面白さには至っておらず、すべてが不完全燃焼。また、この手の映画を見慣れている人であれば、マフィア同士を撃ち合わせているうちに主人公が脱出を図るという展開を予想しますが、本当にその通りになってしまうという捻りのない脚本には落胆させられました。さらには、高尚な作品に仕上げるべく見せ場は最小限にとどめられており、ドラマはつまらない、アクションは少ないと、いいとこなしの映画に。全米では劇場公開が見送られDVDスルーとなったようなのですが、そんな扱いにも納得の一本でした。
[DVD(吹替)] 3点(2012-09-09 13:58:52)
646.  恋の罪 《ネタバレ》 
公開時には3人の女性の物語と宣伝されていましたが、実質的な主人公は神楽坂恵演じるいずみ。夫から女性扱いされず人生の目的を見失っていたいずみが、生の実感を求めて新たな行動を起こしたことから地獄を垣間見る前半部分はなかなか楽しめたのですが、完全にイっちゃった後半は何がなんだかでした。自分の女房を主演にしてここまで激しいことをさせるのだから、この監督は特殊な感性をお持ちなのだと思います。凡人の私では付いていけない部分が多々あって、2時間半という長尺はちょいと厳しく感じました。。。 と、全体としてはイマイチだったのですが、才気あふれる監督による作品だけあって、部分的には魅力的なものもありました。特に興味深く感じたのは美津子といずみの関係性。いずみと初めて対面した時、美津子は「この世界に足を踏み入れるな」と言っていずみを突き放すのですが、いずみから旦那の名前を聞かされると、それまでの態度を翻して彼女はいずみを受け入れました。このやりとりの意味がわかるのはクライマックス近く。いずみの旦那も愛欲の世界にどっぷりと浸かっており、美津子はいずみに”戻る場所”がないことを悟ったからこそ、彼女は地獄の案内人役を引き受けたのです。登場人物達の運命を分けたのは、この”戻る場所”の存在でした。美津子は母親から憎まれており、彼女にとって家は戻る場所ではありませんでした。美津子の母親は、表面的には「血筋が悪い」と言って美津子を疎んでいるのですが、実のところは愛する夫を娘である美津子に奪われたために、殺したいほど娘を憎んでいます。大方斐紗子による怪演も手伝って、老いてなお燃え上がる女の情念には圧倒されました。一方、”戻る場所”の存在によって何とか踏みとどまったのが、水野美紀演じる和子。ラストは曖昧なようですが、よくよく考えれば監督の言いたいことははっきりとしています。一心不乱に走っているうちに家から遠く離れてしまった和子が、「どこにいるのか?」と聞かれて「わからん」と答えるラスト。「わからん」とはその場所に違和感を覚えていることを表しており、この後彼女は愛する夫と娘の待つ家庭に戻ることが推測されます。。。 この映画はドロドロでグロテスクなのですが、込められたメッセージは意外とポジティブ。愛とは厄介なものだが、愛する人との関係性を間違えていなければ、意外と何とかなるもんだと言っているようです。
[DVD(邦画)] 6点(2012-09-08 19:00:23)(良:2票)
647.  サンダーハート 《ネタバレ》 
午後のロードショーにて鑑賞。いかにも午後ローらしい可もなく不可もなくな内容で、なかなかの豪華メンバーが顔を揃えながらも日本では劇場公開されなかったことにも納得がいきました。。。 ネイティブ・アメリカンの霊媒を捜査に活用するという斬新すぎる試みは空回りしているし、ヴァル・キルマー扮するレイ捜査官が己のアイデンティティを辿るドラマとしても感動が不足しています。根本的な問題として、ミステリー映画であるにも関わらず序盤から悪い奴がモロバレになっているのはどうかと思います。「ネイティブ・アメリカン=被害者、白人=加害者」というありがちな図式を避けるために、ネイティブ・アメリカンの社会内にも対立があるという構図を持ち込んだアイデアは評価できるのですが、映画後半になるとその構図がすっかり忘れ去られ、白人の悪事を糾弾するいつものネイティブ・アメリカン映画に落ち着いてしまった点にはガッカリでした。。。 コーエン兄弟作品でお馴染みのロジャー・ディーキンスによる撮影は美しく、ヴァル・キルマーは精悍でカッコいい、ハリウッド映画としての体裁はしっかりと整っているので、2時間を飽きさせない出来となっていたのが救いでした。
[地上波(吹替)] 5点(2012-09-07 22:10:37)
648.  スネーク・アイズ(1998) 《ネタバレ》 
『ミッション:インポッシブル』の大成功によってやりたい放題を許されていた当時のデ・パルマが、本当にやりたい放題をやってしまった怪作。6,900万ドルという巨額の予算を投じて大舞台を準備しながら、その実5~6名の登場人物がうろうろするだけの内容に終始するというムダさ加減。その顔を一目見ただけで犯人だとわかってしまうシニーズ。まったく合理性のない暗殺計画(国防長官に接触する前の時点で女を殺していれば済んだ話では?)。暗殺直前に国防長官と接触し、本来ならば超重要参考人であるはずの女が、なぜか中盤まで捜査線上に上がってこないといういい加減な捜査。そしてラスト、絶体絶命の主人公の前に”偶然”突っ込んできて、都合よく事態を収拾してしまう警察車両。サスペンス映画としては完全に破綻しています。これはデ・パルマの技見せ映画だと納得して観るべきなのでしょうが、視覚的なサプライズも思ったほどではありません。壁をすり抜けるカメラやスプリットスクリーン、延々と続く長回しなどは20年以上も前からデ・パルマが使い古してきたテクニックであり、今さらそれを大々的に披露されても感動は薄いのです。。。 以上のように映画全体としては不満だった一方で、主人公リック・サントーロのキャラは非常に素晴らしいと感じました。彼は、ヤクザみたいな派手なシャツを着て街のチンピラから金をむしり取り、妻子持ちであるにも関わらず堂々と愛人を囲っているバリバリの汚職警官。エリート軍人に出世した親友ダンからはその差を見せつけられるものの、「俺はこの街じゃ顔が利くんだぜ!」と虚勢を張り続けます。それは、スピルバーグやルーカスら昔の仲間たちが各々独自の帝国を築いていく中で、いまだ雇われ仕事に甘んじているデ・パルマが、自身の境遇を重ね合わせたキャラクターであるように感じました。そんなサントーロですが、国防長官暗殺事件にあたっては人が変わったかのように真剣に捜査に取り組みます。それは正義や真実のためではなく、手の届かない存在となっていた親友ダンを助けてやれる(=自分がプライドを取り戻す)チャンスが来たことを素直に喜んでいるためです。事件の真相を聞かされた際に「そんな話は聞きたくなかった。親友を救って、自分もヒーローになって、それで終わりたかった」と嘆く様には切実なものがありました。ニコラス・ケイジの演技も良く、この主人公で映画は救われています。
[DVD(吹替)] 6点(2012-09-07 22:08:41)
649.  追いつめられて(1987) 《ネタバレ》 
自分の中ではミステリー映画の最高峰に君臨している作品。多感な時期に観て心底驚いたという思い出補正も込みでの10点ではありますが、本サイトにおいて9点と10点とを分けるラインとは”個人的な思い入れ”にあると思っているので、この依怙贔屓はご容赦ください。。。 この映画、一見すると力技のようであっても実際には緻密に組み立てられていて、職人技ともいえる完成度には惚れ惚れとさせられます。まず感心するのは、隠蔽作戦の首謀者となるスコット・プリチャードをゲイとすることによって、基本設定の不自然さを緩和している点。国防長官の犯した殺人を受けて、スコットはありえないほど過激な対応策をとるのですが、彼の国防長官に対する恋心をその背景としたことで、観客は余計な疑問を持たずに済む形となっています。ウィル・パットンの粘着質な演技もピタリとハマっており、ドラマの牽引役として十分なキャラに仕上がっています。配役の妙で言えばケビン・コスナーも同様。清廉潔白なイメージのあった当時のコスナーがトム・ファレルを演じているため、観客はファレルの誠実性を全く疑わないわけですが、このことが強烈なオチをより引き立たせることに貢献しています。話題のオチも強烈ではあるが、強引ではありません。初見ではトムがスーザンに一目惚れしたかのように錯覚しますが、オチを踏まえて冒頭を振り返れば、スーザンが国防長官の愛人であることをわかった上で、ターゲットとして彼女に接近していることは明確です。この脚本にはウソやズルが一切なく、オチと整合するよう丁寧に本編が組み立てられています。例えばナレーションの使い方。本作はトムの回想なので、通常であればトムによるナレーションが入るのですが、本編にはナレーションが入っていません。なぜなら、ナレーションを入れればトムが観客に対してウソを言わざるをえなくなるから。『ユージュアル・サスペクツ』がやったように、”信頼できない語り手”を用いてサプライズを作るという方法もあるのですが、本作はそういうズルをせずにサプライズを作り上げています。。。 ロジャー・ドナルドソンによる簡潔な演出も、本作においては吉と出ています。スローペースの序盤から徐々にテンポを上げていくという正攻法の演出は脚本の良さを最大限に引き出しているし、情報の整理がうまいので、集中して見なくても観客は容易にストーリーを追うことができます。
[DVD(字幕)] 10点(2012-09-07 22:06:37)
650.  ヒア アフター
イーストウッドの映画は冗長である、そんなことを思い出させられた一作でした。『クィーン』『フロスト×ニクソン』でアカデミー賞にノミネートされた経験を持つピーター・モーガンによる脚本は悪くないのですが、なんせ演出が冗長で眠くなります。『ミスティック・リバー』から『グラン・トリノ』までの6作がいかに奇跡的な完成度だったかを思い知らされました。
[DVD(吹替)] 5点(2012-09-05 23:31:34)
651.  パンドラム 《ネタバレ》 
ポール・W・S・アンダーソン(通称:ダメな方のポール・アンダーソン)率いるインパクト・ピクチャーズ製作なので『イベント・ホライゾン』のやり直しかと思ったのですが、微妙な出来だった『イベント~』とは比較にならないほどの素晴らしいSF映画でした。とにかく脚本が良すぎます。『エイリアン』から『猿の惑星』、果ては『宇宙空母ギャラクティカ』まで、既存のSF映画のアイデアを総動員した内容ではあるのですが、それらの元ネタを思いもよらぬ形で料理しており、二転三転どころか五転も六転もするストーリーには驚かされました。『パンドラム(原題も同じ)』というタイトルのチョイスも素晴らしく、このタイトルによって脳内オチ系の物語と勘違いさせておいて、誰も予測しない意外な結末へと導いていくという見事な動線を作り上げています。ここまで見事にやられた映画は久しぶりでした。お見事。。。 これだけ盛りだくさんの内容をコンパクトにまとめ上げた監督の手腕も光っています。観客に与える情報量のコントロールや、ネタを明かすタイミングなどはほぼ完璧。同時にカッコいいメカ描写や音を使ったショック演出などポール・W・S・アンダーソンの得意技はうまく吸収しており、なかなかやってくれます。監督を担当したクリスティアン・アルヴァルドはサイコサスペンスの佳作『アンチボディ/死への駆け引き』を手掛けた人物なのですが、この人のアレンジ力は非常に高く、要注目の監督さんだと思います。
[DVD(吹替)] 8点(2012-09-05 23:29:43)(笑:1票)
652.  D-TOX
同時期に製作されたレニー・ハーリンの『マインドハンター(公開は2005年だが、撮影されたのは2002年)』と似通った内容にして、『マインドハンター』を優に超える駄作ぶり。90分程度に絞られた上映時間にも関わらず観ているのが苦痛となる仕上がりであり、サスペンスアクションとしては最下層の完成度だと思います。。。 とにかくスタローンがミスキャスト。婚約者を惨殺されたFBI捜査官という役回りなのですが、撮影当時55歳のスタさんが目を輝かせながら婚約指輪を選ぶ場面や、彼女役のディナ・メイヤー(スタさんよりも22歳年下)とイチャイチャする場面の違和感は相当なものでした。これって30代の俳優が演じるべき役ですよね。婚約者を失って悲しみに暮れる場面ではスタさんの演技力不足がはっきりと表れており、憐みよりも笑いを誘ってしまっています。そもそもの問題として、これまで「うぉーっ!!」と叫びながら数百人の敵をなぎ倒してきたスタさんが、たった一人のシリアルキラーに翻弄される役を演じても説得力がないわけです。集客力の低下によって大規模アクションに出演できなくなり、代わって中・小規模のサスペンスアクションに活動の場を移さざるをえなくなった当時のスタさんの苦境が垣間見えています。。。 また、脚本・演出もかなり杜撰です。犯人がスタさんを逆恨みする背景の描写が致命的に不足しているし、その能力の高さやイカレっぷりもイマイチ伝わってきません。その結果、この程度の犯人に翻弄される警察側の無能ぶりばかりが際立つという事態に陥っています。警察側には個性派俳優を配置しているものの、描き分けができていないために「誰が」「何をやっているのか」の把握が極めて困難という有様。クリス・クリストファーソン、トム・ベレンジャー、ロバート・パトリック、スティーブン・ラング、一週間煮込んだ豚骨スープのような俳優をズラっと並べながらこの体たらくは、さすがに問題だと思います。
[DVD(吹替)] 2点(2012-09-05 23:28:02)
653.  ケース39 《ネタバレ》 
2006年に製作されながらも、エクストリームな児童虐待描写に難色を示したパラマウントによって長らく公開が延期されていたという問題作。その間に、本作よりも後に製作されたはずの『エスター』が公開されてしまい、事実に反して二番煎じ扱いとなってしまった不運な作品でもあります。実際、内容は『エスター』によく似ているため、先に『エスター』を鑑賞していると驚きはかなり薄れます。脚本・演出・演技はどれもしっかりしているだけに、後出しとなってしまったことが大変悔やまれます。。。 『オーメン』も『エスター』もそうでしたが、邪悪な子供を扱った作品には特有の怖さがあります。「この子は邪悪だから、なんとか手を打たねば」と叫んだ途端に主人公はキ◯ガイ扱いされ、社会的に孤立してしまうのです。本作でもその恐怖は存分に描かれていて、主人公が頼れるのは医療刑務所に収監されている実父のみという絶望的な状況にまで追い込まれます。前半では敵対関係にあった両者が共闘するという捻じれた構図が独特であり、この構図が子供の邪悪さを引き立てることにも貢献しています。なかなか計算された脚本ではないでしょうか。
[DVD(吹替)] 6点(2012-09-05 23:25:24)(良:1票)
654.  狼たちの処刑台
「怒らせた相手が軍隊上がりの殺人マシーンだった」、これまでに何十回観たかわからないアクション映画の定番ですが、今回はついに後期高齢者が怒ります。老人でもバイオレンスをやれることを証明した『グラン・トリノ』にモロに触発された内容ではあるのですが、米国人イーストウッドと比較すると英国人マイケル・ケインはかなりマイルド。街の浄化に立ち上がるまでに1時間近くもかけてしまうし、いよいよ行動を起こしてもかなりトロい。肺気腫を患い、わずかな運動で倒れてしまうという映画史上最弱のパニッシャーだけに、アクション映画としての見応えはイマイチです。体力面での弱さを戦略でカバーするという援護描写もなく、おじいさんがゼェゼェ言ってる姿が延々映し出されるという作りとしたのは監督の工夫不足。さらに、この手の映画はただ悪党を倒すだけではなく、「マズイ相手を怒らせた」と吠え面かかせるくだりも重要となるのですが、本作にはそれが不足しているために復讐映画としての面白みにも欠けています。重要そうに見えて、その実何の活躍もしない女刑事の存在も余分だったし、マシュー・ボーンが参加した企画でありながらアクション映画としては赤点です。。。 とはいえ、これがダメな映画かと言われれば、そうでもありません。アクション以外の部分は充実しており、ドラマ作品としては見応えがあるのです。かなり昔に娘を亡くし、妻は病院で寝たきり。たった一人家に残された主人公の日常が映し出される冒頭からしんみりさせられます。彼の唯一の親友もまた、妻に先立たれた独居老人なのですが、その葬儀に出席するのは主人公一人だけ。独居老人の切実な現実が映し出されるのですが、これが深夜にやってるドキュメンタリーでも観ているかのようなリアリティ。監督は新人らしいのですが、よくぞここまで老人目線のドラマを作れたものだと感心しました。終始不安げな目をしているマイケル・ケインの演技も秀逸であり、老人映画としては素晴らしい出来だと思います。
[DVD(吹替)] 6点(2012-09-05 21:43:53)
655.  ジョン・カーター
3D版ブルーレイにて鑑賞。2億5千万ドルというタダ事ではない製作費がかけられているだけのことはあって、映像の迫力は圧巻でした。家庭での鑑賞ながら3D効果も十分に味わうことができ、イベント映画としての体裁はきっちりと整っています。ただし、ファンタジー映画としての出来はかなり悲惨なものです。世界観に魅力がないので火星文明に対する興味を掻き立てられず、”ヘリウム”だの”ゾダンガ”だのという用語の飛び交うセリフがバカバカしく聞こえてしまいます。そもそもの問題として、登場するマシーンやクリーチャーのデザインがあまりにアニメ寄りでカッコ悪すぎます。この手の映画で”カッコ悪い”は致命傷ですよ。おまけに、火星におけるジョン・カーターの戦力描写も一定のものとなっていません。数百人の敵を一人で相手にしたり、巨大な岩を振り回したりというとんでもない力技を披露したかと思えば、数人の火星人によって簡単に拘束されたりもする。主人公の力量が不明確では、観客は戦いに手に汗握ることはできません。 本作の映画化企画はなんと1931年から存在しており、それ以来、映画化を試みては挫折するという展開を何度も繰り返してきたハリウッド念願の作品。それがこの程度の出来では寂しすぎます。前述した巨額の製作費に加えて、宣伝広告費や上映用フィルムのプリント代を考慮すると、本作の赤字は2億ドルにものぼるとか。当初は三部作を予定されていたようですが、続編が作られることはまずなさそうです。
[ブルーレイ(吹替)] 3点(2012-09-03 01:25:47)(良:1票)
656.  天国の日々
評判通り、映像美には引き込まれました。役者も美しく、テレンス・マリック監督作品中でも最高の評価を受けているだけの風格は十分に放っています。また、『シン・レッド・ライン』以降のような押しつけがましさがなく、意外なほどさくさくと物語が進行していく点も好印象です。テレンス・マリックは登場人物の心情描写を徹底的に排除しており、起こったことを淡々と描写することに専念しています。。。 ただし、映像とドラマがうまくシンクロしていた前作『地獄の逃避行』と比較すると、本作は映像が立ちすぎていて全体のバランスがやや崩れ気味のような気がしました。印象に残るのは映像ばかりで、肝心のドラマの存在感が薄いのです。鑑賞直後には「良い映画を見たなぁ」という気分を味わえたものの、レビューを書くにあたって内容を振り返ってみると、ストーリーの面で印象的な部分がほとんどなかったことに気付きました。深いようで深くない、いわゆる”雰囲気もの”に終わっている映画だと思います。
[DVD(字幕)] 6点(2012-09-03 00:42:20)
657.  地獄の逃避行 《ネタバレ》 
突如挿入される自然の描写や詩的なモノローグといったテレンス・マリックの手法がすべてぶち込まれており、デビュー作の時点でスタイルを確立してしまっている点には恐れ入りました。『天国の日々』以降20年も監督業から遠ざかっていたのも、「これ以上監督業を続けても同じことの繰り返しだろう」と考えた結果なのだろうと思います。。。 『俺たちに明日はない』の二番煎じのようなあらすじですが、その実態は当時流行していたアメリカン・ニューシネマへのアンチテーゼ。負の感情をぶちまけまくっていたアメリカン・ニューシネマに対して、本作はいかなる感情をも排して光景のみを切り取るという作業に専念しています。1958年に発生したスタークウェザー=フューゲート事件をモチーフとし、無軌道な若者による連続殺人というショッキングな題材を扱いながらも、主人公を義賊とも悪人とも扱っていない点がなかなかユニークです。この主人公には何の目的意識もなく、行く先々でただ人を殺しているのみ。しばらくは決死の逃避行を繰り広げていたものの、飽きがくると自ら車のタイヤをパンクさせて警察に投降。逮捕後にも悪びれもせず、それどころか全米を騒がせた有名人として無邪気にはしゃぐという有様。なかなか斬新なアプローチではあるのですが、このレベルの無茶な犯罪に手を染める人間の心理って、案外こんなものではないかと思います。当初は殺人を犯す意図はないものの、目の前で発生した問題を解決するもっとも簡単な手段として殺人を選び続けた結果、死体の山が築かれるという。こうした本作の切り口にはなかなか惹かれるものがありました。。。 また、『シン・レッド・ライン』以降のような冗長さがない点でも、本作を良いと感じました。なんせ上映時間は94分ですからね。無意味に長い環境映像や、周りクドくて訳の分からんポエムは一切なし。物語をサクサクと進めていく簡潔な演出には感心しました。やれば出来るじゃないか、テレンスさん。
[DVD(字幕)] 7点(2012-09-02 03:47:35)(良:2票)
658.  プロメテウス 《ネタバレ》 
IMAX3Dにて鑑賞。初挑戦ながらリドリー・スコットは見事に3D技術を使いこなしており、3D料金を払う価値のある映像に仕上がっています。この辺りの柔軟性、技術に対する積極性は、さすが巨匠といったところです。。。 本編もまた、良くも悪くもリドリー・スコットの映画でした。とにかく映像美は完璧で、VFXの使い方も完璧。『アベンジャーズ』でコテコテのCGを観た直後だっただけに(あれはあれで楽しいのですが)、ロケーションとVFXが違和感なく融合し、あたかもそこに存在するかのような映像のリアリティには驚かされました。『ブレードランナー』以来30年ぶりのSF映画ですが、この監督のセンスはまったく衰えていません。その一方で、脚本はかなり適当。『エイリアン』の登場人物が7人だったのに対して本作の登場人物は17人に増やされているのですが、不要な人間が何人もいます。特に要らないのが科学者グループで、専門性を発揮することもなくただワァワァ騒いでいるだけ。肝心の研究・調査は同行したロボットがたった一人で進めているという有様であり、これならば科学者グループを丸ごと切ってしまい、代わりにプロメテウス号の操縦クルーを主人公にしてしまった方が映画全体のまとまりが良かったように思います。創造主に会えば寿命を延ばしてもらえると思ったウェイランド社長や、せっかく育てた人類文明を滅ぼそうと考えたエンジニアの行動原理は理解不能であり、これらについてはより突っ込んだ説明が必要だったように思います。製作スケジュールに余裕がなかったためか、スコットは映像表現に全精力を注いで物語は二の次・三の次としているようです。ジェームズ・キャメロンのような完璧主義者とは違い、ある程度のところで割り切ってしまう適当さがスコットらしいと言えます。。。 人類の起源とエイリアンを結び付けようとするそもそものアプローチが、個人的には好きではありません。「出会ってはならない二つの種族が出会ってしまったことによる悲劇」というオリジナルシリーズのアプローチの方がしっくりきます。
[映画館(字幕)] 7点(2012-08-26 01:28:24)(良:2票)
659.  キルショット
これだけの豪華スタッフ・キャストが名を連ねた作品ながら、なぜ日本では劇場公開されなかったのだろうかと不思議に思っていたのですが、内容を観て納得しました。。。 運悪く組織から追われる羽目になり、おまけに逃走資金もないので無鉄砲なチンピラと組まざるをえなくなった老練のヒットマンという基本設定は面白く、いぶし銀の存在感を放つミッキー・ロークはこの役にピタリとハマっているのですが、なんせ脚本がメチャクチャ。この主人公のやることなすことすべてが行き当たりばったりであり、深く考えているようで実は何も考えていないという何ともカッコ悪い主人公になり下がっています。序盤のかっこいいナレーションでは大いに期待しただけに、この落差にはガッカリさせられました。また、物語の横糸である夫婦の再生というテーマもメインパートとうまく絡んでおらず、ドラマとしても赤点。演技の質は総じて高く、特にチンピラ役を演じたジョゼフ・ゴードン=レビットはベテラン俳優に囲まれながらも突出した存在感を披露しているのですが、脚本がこれではせっかくの努力が報われなかったようです。
[DVD(吹替)] 4点(2012-08-25 02:44:34)
660.  アベンジャーズ(2012)
IMAX3Dにて鑑賞。この映画の3D効果は非常に素晴らしく、IMAX料金に3D料金も加算されて二人で4,400円というえらい入場料を取られたものの、それだけの価値のある体験はできたと思います。。。 単独主演作のなかったキャラクター達にまず見せ場を持たせ、続いて主役格のヒーロー達に各々ド派手な再登場シーンを与える。この序盤の構成だけでワクワクさせられました。オタクの神様ジョス・ウェドンは多くのキャラが入り乱れるこの物語を愛をもって丁寧にまとめ上げており、その仕事は驚異的と言えます。また、各キャラに対して均一に見せ場を与えるというサジ加減も絶妙。雷神ソーやハルクと比べると、凡人をムキムキにしただけのキャプテン・アメリカなんてのは圧倒的に見劣りするヒーローなのですが、そんなキャップにもかっこいい見せ場がちゃんと与えられているのです。ドラゴンボールで言えば、サイヤ人達が入り乱れる中でヤムチャや天津飯にも活躍の場が与えられているという状態であり、それを思えば、この映画の脚本がいかに優れているかがわかります。。。 と、キャラクターものとしては素晴らしい作品ではあるのですが、キャラクターの交通整理に終始して映画全体としてはイマイチだったように思います。原作がそうだから仕方ないとは言え、ヒーロー達の仲間割れが延々と続く中盤の展開はめんどくさかったし、クライマックスの大バトルはパラマウントが昨年製作した『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』を下敷きにしていることがモロバレとなっています。世紀の超大作を謳う割にはサプライズが少なく、やや拍子抜けさせられました。。。 この映画が不幸だったのは、日本公開が全世界同時公開から3か月も遅れてしまったこと。もちろん世界最遅公開。このタイムラグで自分の中では熱が冷めてしまい、お祭り騒ぎに参加するという心境で鑑賞することができませんでした。もし熱狂の中で観ていれば、前述した欠点も「見過ごすべき小さな問題」として捉えられていたかもしれないと思うと、この手のイベント映画には鮮度が重要であるということを再認識させられました。2015年の公開が予定されている『アベンジャーズ2』ではそこんとこよろしくお願いしますよ、配給会社のみなさん。
[映画館(字幕)] 7点(2012-08-25 02:18:50)(良:1票)
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