Menu
 > レビュワー
 > ザ・チャンバラ さんの口コミ一覧。36ページ目
ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
4142434445464748495051525354555657585960
61626364
投稿日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
4142434445464748495051525354555657585960
61626364
変更日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
4142434445464748495051525354555657585960
61626364
>> カレンダー表示
>> 通常表示
701.  ゾンビ/ダリオ・アルジェント監修版 《ネタバレ》 
ダリオ・アルジェントとジョージ・A・ロメロというホラー界の2大巨匠がタッグを組んだ作品にして、泣く子も黙る世紀のマスターピース。映画史上の最重要作品のひとつであり、100年経っても見続けられるタイプの映画だと思います。。。 前作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の時点では曖昧だったゾンビの設定を明確化し、以降に製作されるすべてのゾンビ映画の基礎をこれ一本で確立してしまったという大きな功績を残した作品なのですが、そのレベルで終わっていないことがこの映画の本当に凄いところ。ホラー映画と言えば、主題となるモンスターや現象をどれだけ恐ろしく描くかという点に心血が注がれるものなのですが、驚いたことに、本作はそのベクトルで作られていないのです。ゾンビは弱く、ある程度の注意を払っていればその脅威から逃れることができるし、運と知恵次第では安全な居住スペースの確保も可能。文明崩壊の恐怖と同時に、文明に縛られず奔放に生きられる世界の居心地の良さをも描いている点が、非常に先進的だと言えます。さらに、主人公達が築き上げた均衡を破壊しに来るのはゾンビではなく人間だというオチの付け方も秀逸であり、生者と死者の対比とも相まって、「人間とは何か?」という哲学的なレベルにまでテーマを敷衍させています。ここまで多くのテーマを盛り込みながら、娯楽作としての面白さもきちんとキープできている映画は非常に稀であり、ロメロの構成力には舌を巻きます。。。 問題点を挙げるならば、登場人物が一様に魅力を欠いていたことでしょうか。美男美女はまったく出てこないし、特にかっこいい見せ場もない。いかにも70年代らしい映画作りなのですが、これが映画に地味さをもたらしています。また、尺の関係からか、登場人物達が過去に何をやってきた人間なのかについても触れられておらず、このことが観客との間の共感の接点を狭める結果をもたらしています。キャラの弱さについてはロメロも自覚的だったようで、本作の続編では、ローズ大尉やカウフマンといった強烈なキャラを配置するようになりました。。。 また、本アルジェント版については全体の描写が軽めになっており、さらには頻繁な音楽の使用も映画全体の雰囲気に悪影響を与えています。出来の悪い映画ならともかく、そもそもよく出来た映画に監督以外が手を加えちゃいけないなぁという好例となっています。
[DVD(字幕)] 6点(2013-09-01 04:15:07)
702.  ホワイトハウス・ダウン
『ダイ・ハード』『エアフォース・ワン』『ザ・ロック』『沈黙の戦艦』等の90年代アクションを豪快になぞった、良くも悪くも時代遅れなアクション大作。90年代アクションの落ち穂拾い的な映画に仕上がっているので、各場面の元ネタは何かを考えながら見れば、より楽しめるのではないでしょうか。。。 監督を務めるローランド・エメリッヒは92年に『ユニバーサル・ソルジャー』を撮って90年代筋肉アクションの一翼を担った人物であり、それと同時に、数々のディザスター大作で世界中の名所を破壊してきた人物。本作の企画にはうってつけの人材だったわけですが、確かにエメリッヒの演出はノリにノっています。スリルとユーモアのバランスは絶妙だし、どんどんエスカレートしていくアクションもカタルシスに溢れています。見せ場を詰め込むだけで他の要素がまったくなかった『ダイ・ハード』の最新作などと比較すると、本作には適度な遊びがあってより映画らしく仕上がっています。また、ホワイトハウスやエアフォース・ワンの再現度も素晴らしいレベルに達しており、どうやっても本物にしか見えないほどに作り込まれています。空想の産物でしかないロボットやエイリアンとは違い、現実に存在し、誰もが知っているホワイトハウスをCGやミニチュアで再現することは大変に難しい作業なのですが、エメリッヒはこれを完璧にやり遂げているのです。。。 以上、アクション映画としては水準を超える仕上がりではあるのですが、90年代のような熱気で鑑賞できないという観客側の問題をクリアするだけのレベルには達していませんでした。「あんなバカ集団がホワイトハウスを占領できるわけがない」「黒幕の陰謀、複雑すぎて絶対に実現ムリ」「なんで主人公には弾が当たらないんだ」、鑑賞中にとめどなく湧き上がってくる疑問の数々。思えば『ザ・ロック』だって『エアフォース・ワン』だって基本設定は無茶苦茶で、あの時代にはその程度の作り込みでも許されていただけのこと。設定なんてオマケみたいなもので、いろんなものが景気よく爆発して、最後に主人公が笑顔で帰還すれば、それでみんな満足だったのです。しかし、現在にその映画作りを持ち込むと、観客は映画について来られなくなるようです。私が観た劇場では観客の大半が中高年だったという事実とも相まって、爆破アクションは死にゆくジャンルであることを痛感させられました。
[映画館(字幕)] 6点(2013-09-01 04:12:02)
703.  リンカーン
英国版ブルーレイにて鑑賞。 1999年から企画がスタートし、何度も脚本をボツにしながらもようやく日の目を見たスピルバーグ渾身の時代劇! なのですが、出来上がった映画はかなり微妙。南北戦争開戦や、ゲティスバーグでの有名な演説、劇場での暗殺など、誰もが知っている有名な場面は映画から意図的に外されており、憲法改正のためにダーティーな手段に打って出るという知られざるリンカーン像に迫る脚本となっています。その試み自体は良いのですが、問題は、これをスピルバーグがやるべきだったのかということです。こういう方向性は歴史物や社会派作品の扱いに秀でたロバート・レッドフォード辺りにでもやらせとけばいいのであって、スペクタクルの巨匠・スピルバーグがやるべき仕事は、前述した誰もが知る有名な場面を、徹底したディティールの積み重ねと迫力で再現し、観客を圧倒することではなかったのでしょうか。実際、本作には要となるような優れた場面がまったくなく、150分という長尺が何の起伏もなく流れていきます。『ミュンヘン』のトニー・クシュナーによる脚本の出来が悪くなかったおかげで失敗作にはなっていないものの、スピルバーグ作品に期待される水準には達していないと思います。。。 一方で、俳優陣の熱演には目を見張るものがありました。従来、スピルバーグ作品では出演俳優が評価されないというジンクスがありましたが、スピらしい演出が成りを潜めた本作では逆転現象が起こっており、俳優達の演技が立ちまくっています。ダニエル・デイ・ルイスの度を越した成り切り具合はオスカーに相応しいものだったし、すべての観客の神経を逆撫でしたサリー・フィールドのメアリー・トッド具合も素晴らしいものでした。近年では安っぽい仕事が目立つトミー・リー・ジョーンズも、本作では「俺はオスカー受賞者なんだぜ!」と言わんばかりの抜群の安定感を披露。まさか、宇宙人・ジョーンズの演技に唸らされる日が来るとは思いませんでした。。。 なお、本作は吹替版での鑑賞をオススメします。演技が評価された作品だけに、俳優の生声で鑑賞したいという方が多いと思いますが、本作のセリフの量と、その内容の複雑さは常軌を逸したレベルに達しており(二人以上の人物が同時に喋る場面も頻繁にあります)、この膨大な情報量を字幕で追うことは、せっかくの熱演を見逃すことにつながります。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2013-08-25 02:19:29)(良:1票)
704.  ワイルド・スピード/EURO MISSION
アクション映画史上に残る傑作だった前作を越えるべく本作も特盛状態なのですが、老舗アクションシリーズの宿命か、本作は盛りすぎの域に達しており、お話も見せ場もインフレ状態となっています。。。 前作からのヴィン・ディーゼル、ドウェイン・ジョンソンに加え、ミシェル・ロドリゲスの復活に、女性格闘家ジーナ・カラーノ、『ザ・レイド』のジョー・タスリムの新規参戦と、本作ではアクションの出来る人間が随所に配置されているのですが、まずこれがマズかった。いろんな人がいろんな場所で戦っていて、話が分散しているのです。このことがアクション映画に必要な求心力を奪う原因となっているし、さらには物語をムダにややこしくしています。本作の観客は頭空っぽにして楽しめるアクション映画を観に来ているのだから、ムダに頭を使わせる話にすべきではありませんでした。。。 さらに、アクションも懲り過ぎ、やりすぎです。確かに前作もやりすぎではありましたが、あちらはシンプルなカーチェイスをやたらド派手にやったもので、第一作から続く『ワイルド・スピード』のDNAは確かに継承されていました。一方本作は、戦車を走らせたり輸送機を落としたりと、カーチェイスに付随する破壊ではなく、破壊そのものが見せ場となっており、前作までとはかなり毛色の違うアクションとなっています。もはや『ワイルド・スピード』の新作ではなく『トリプルX3』だと考えた方がしっくり来るほどであり、『ダイ・ハード』や『リーサル・ウェポン』同様、シリーズを重ねる毎にアイデンティティを失っていくというアクション映画の典型的な衰退サイクルに入ったように見受けられます。また、カーチェイス以外の要素が加わったことで見せ場は複雑になり、さらにはカット割の異常な速さとも相まって、目の前で何が起こっているのかよく分からないという状況にも陥っています。本作の方向性は、今一度見直すべきだと思います。。。 以上、本編には少なからず不満があったのですが、それでもラスト1分には大興奮させられました。『ワイルド・スピード』シリーズは我々の想像を越えた領域を目指しているのではないかという、そんな熱い期待感を抱かせるほどのインパクト。今回は不十分な出来でしたが、これはこれ。次回も絶対観ます!
[映画館(字幕)] 6点(2013-07-06 23:20:18)(良:3票)
705.  アウトロー(2012)
『ユージュアル・サスペクツ』のクリストファー・マッカリーが脚色したとは思えないほど平凡なお話には少なからずガッカリさせられたのですが、それでも作品を貫くハードボイルドな雰囲気には魅了されたし、スリルとユーモアのバランスも絶妙なものでした。かつて『誘拐犯』を撮ったマッカリーだけあってラストの銃撃戦には見応えがあったし、全体としては、程よくまとめられた低脂肪の娯楽映画と評価できます。。。 ただし、ジャック・リーチャー役をトム・クルーズが演じたことについては、やはり賛成できません。トムは相変わらず頑張っています。カースタントは自らこなし、銃の扱いや格闘技も一通りマスターしており、必要な努力はすべてしてきているのですが、それでもジャック・リーチャーに必要な“凄み”や“神秘性”というものが致命的に欠けているために、彼がしばしば口にする「俺を怒らせると死ぬぞ」という脅し文句が空回りしています。これは20年前のスティーブン・セガール、現在ならジェイソン・ステイサム辺りのゴリゴリの強面が演じるべき役柄だったように思います。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2013-06-30 02:00:42)
706.  ロード・トゥ・パーディション
二人の息子のうち可愛がっている方を殺され、気難しい方との逃避行を余儀なくされた父親の物語。基本的にはヤクザ映画なのですが、そこに普遍的な父と子の関係性を持ち込んだ脚本は非常によく練られています。本作を構成する二つの要素が、何の違和感もなく見事に融合しているのです。また、キャスト・スタッフともに一流のメンバーが顔を揃えているだけに、映画としての安定感も抜群。最初から最後まで充分に楽しめる作品に仕上がっています。。。 ただし、その安定感が時としてアダにもなっています。トム・ハンクスの演技は相変わらず素晴らしいものの、街のチンピラが怖気づくほどの武闘派ヤクザにはどうやっても見えません。本作の重要な要素のひとつとして、父親の二面性という点が挙げられます。世の父親は誰しもが、家庭では見せない戦う男としての顔を持っています。そんなたくましい男の姿を垣間見ることで息子は成長するわけですが、パブリック・イメージが固定され過ぎているハンクスでは、この二面性を表現しきれないのです。また、演出が上品すぎる点も気になりました。このテーマであれば、父親はあらゆる殺人スキルを行使して息子を守るという内容にすべきだったのですが、バイオレンスについてはかなり腰が引けています。バイオレンスの絶対量が不足している上に、様式美で誤魔化して本当に惨い部分は隠してしまうというヘタレぶり。身内に対する愛情の深さと、外敵に対する容赦のなさ。この二つを描いてこそ本作のテーマが引き立つはずなのに、後者がお留守になっているのでは不完全だと言わざるをえません。
[DVD(吹替)] 6点(2013-06-22 01:46:47)
707.  スカイ・ハイ(2005) 《ネタバレ》 
みなさんご指摘の通り、『ハリー・ポッター』と『X-MEN』を『Mr.インクレディブル』風に料理した映画なのですが、ディズニーらしい丁寧な脚本が光っており、90分間充分に楽しめる娯楽作となっています。適度に笑わせ、適度に感動させ、適度に燃えさせる。合間に挿入される「ヒーローあるある」も楽しくて、誰もが見入ってしまうほど面白い映画ではないでしょうか。。。 と、娯楽作としては文句なしに面白いのですが、構成には首を傾げざるをえない部分が多々ありました。【目隠シスト】さんがご指摘の通り、主人公が能力を発現させるタイミングがあまりに早すぎるのです。この映画はヒーローもののパロディという体裁をとりながらも、その内容は現実の高校生の実態を描いたものです。優秀な両親の息子として周囲からの期待を集めながらも、それに見合った器に成長できない主人公の葛藤がドラマの骨子であったはずなのに、中盤で早々と学園最強クラスの能力を開花させてしまったのでは、この映画がやろうとしたことが見えなくなってしまいます。また、本作はスクールカーストを描いた映画でもあります。子供達は大人によって「ヒーロークラス」と「サイドキッククラス」に分けられ、そうした大人による選別がスクールカーストという形となって子供達の人間関係にも深刻な影響を与えています。少なくとも前半では、その問題をかなり真面目に扱った映画だったように見受けたのですが、やはり主人公が強くなりすぎたことで、この点も中途半端になってしまいます。このテーマであれば、「ヒーローかサイドキックかという選別に何の意味があるのか?落ちこぼれが役に立つ時だってあるのだ」という展開とすべきだったのに、主人公がスーパーサイヤ人化してしまったことで、物語に意味付けができなくなってしまいます。主人公は最初から最後までダメな奴だが、苦しんだ挙句に両親とは違うヒーロー像を確立するという物語にすべきだったのです。また、かつてヒーローになる道を断念したバス運転手が、最終的にヒーロー化するというオチなどは最悪で、結局は「みんなヒーローになりましょう」という、作品全体の方向性とは正反対の結論を導き出すに至っています。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2013-06-17 01:34:42)(良:1票)
708.  デイズ・オブ・サンダー
『俺たちに明日はない』『チャイナタウン』などで知られる巨匠・ロバート・タウンが脚本を書いたとは思えないほど安っぽい話で驚いてしまいました。天才的な才能を持つ青年の挫折と再生を描いた物語はまんま『トップガン』だし、かつてのライバルと友情を結び、新たなライバルとの対決に向かうというクライマックスは少年ジャンプのノリ。他の映画と差別化できるような新基軸も打ち出せておらず、この脚本では批判を受けて当然だと思います。さらには、『トップガン』『ハスラー2』に続いて横柄な天才役を演じるトム・クルーズはいい加減ハナについてきたし、この頃のニコール・キッドマンは演技がイマイチ。当時、「トム・クルーズの嫁」という以外に売りがなかったことにも妙に納得がいきました。この二人が演じるラブシーンはまさに悪夢であり、ラブシーンの演出を不得意とするトニー・スコットの不手際とも相まって、見ているこっちが気恥ずかしくなる代物となっています。。。 とまぁ内容的にはまったくダメなのですが、レースシーンが突出してかっこよかった点は素直に評価できます。この辺りはマシーンの描写を得意とするトニー・スコットの独壇場だったし、クリス・レベンゾンによるドライブ感溢れる編集も作品に大きく貢献しています。さらに、本作はハンス・ジマーが関与した初のアクション大作となるのですが、やはりこの人の音楽は最高にかっこいいのです。クライマックスのレースでは燃えまくりました。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2013-06-17 00:50:55)
709.  ア・フュー・グッドメン 《ネタバレ》 
ブラッド・ピットやキアヌ・リーブスが世界的な人気を獲得する以前、ハリウッドはトム・クルーズのものでした。90年代前半のトムはまさに絶頂期にあり、派手な見せ場のない本作も、アメリカ国内だけで1億3千万ドル(2013年現在の貨幣価値に換算して2億5千万ドル)という規格外の大ヒットとなりました。さらには、アカデミー作品賞ノミネートというオマケまでくっつき、このジャンルの映画としてはかつてない大成功を収めた作品となったのです。。。 上記の通りビジネス面では大ホームランだった本作ですが、トム様の全盛期も今は昔、現在の目で見ると、それほど高評価を受けるような映画ではないというのが率直な印象です。頭は良いがグータラな男と、地味だが真面目一直線の女、そして家庭を愛する地味な男がチームを組んで巨悪に立ち向かうという構図は面白いものの、重要な場面は必ずと言っていいほどトム様の独壇場で、チーム戦としての面白さがまったく追求されていません。劇中、やたらと野球の話が出てくるのでチームワークを描いた映画になるのだろうと思っていたのですが、それは私の思い過ごしだったようです。さらには、彼らに対する悪人達のキャラ造形は非常に薄っぺら。ジャック・ニコルソンとキーファー・サザーランドというカリスマ的な俳優の力によって何とか帳尻は合っているものの、ここまで単純な悪人にはあまり面白みを感じませんでした。。。 本作の原作と脚本を書いたのは、後に『ソーシャル・ネットワーク』を手がけるアーロン・ソーキンです。ソーキン印の勢いある会話劇としてはよく出来ているのですが、証拠を追いかけながら真実に達するという法廷ものの醍醐味はほとんど追求されていません。事実や論理の積み重ねなどはなく、相手の手落ちを誘導する法廷での舌戦のみで話が進んでいき、知的興奮を求めると少なからず裏切られます。ジェセップ大佐が若造の仕掛けた罠にまんまと引っかかって罪を白状するクライマックスなんて、あまりに単純すぎて白けてしまいました。。。 とまぁ悪口を多く書きましたが、スタッフも役者も一流の映画なので、2時間はきっちり楽しめる娯楽作には仕上がっています。全盛期のトム・クルーズは本当にキラキラで、彼を見ているだけでもテンション上がるし。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2013-06-12 02:05:00)
710.  レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い 《ネタバレ》 
鑑賞前には「『果てしなき想い』って何だよ。日本の配給会社は相変わらずセンスのない邦題を付けるなぁ」などと思っていたのですが、実際に本編を見ると、このダサイ邦題に負けず劣らずの安っぽい内容にガッカリしました。まるで昼ドラです。物語を進めるために人が死にまくる安直なストーリー展開に、「私が私が」ばかりで感情移入の余地のない登場人物達。3兄弟を渡り歩くスザンヌは自己憐憫に浸る身勝手女に見えてしまうし、本能のままに生き、家族や社会に対する一切の責任を放棄して自分探しの旅に出るトリスタンも無責任男でしかありません。ラドロー大佐も、ただの偏屈なオヤジだし。必死に頑張って社会的地位を築き上げた長男・アルフレッドを邪険に扱い続けるラドロー一家には、なかなか感情移入しがたいものがありました。。。 さらには、シチュエーションの作り方も巧くなくて、妻を殺されたトリスタンが泣き寝入りせざるをえなかった理由がよく伝わらなかったために(目撃者が大勢いた上に、犠牲者は下院議員の親戚。常識的に考えれば汚職警官もヤクザも一巻の終わりでしょう)、ラストの復讐劇に感情がうまく乗っかりませんでした。さらには、戦場で弟を殺された際には悪鬼の如く暴れ回ったトリスタンが、妻を殺された際には意外と大人しく振舞っていた点にも納得がいかず、作品内での整合性の点でも問題を感じました。。。 以上の通り、決して出来の良い映画ではないのですが、オスカー受賞の素晴らしい撮影に、ジェームズ・ホーナーによる壮大な音楽、スター俳優の共演によって見られる映画にはなっています。さらには、エドワード・ズウィックの演出は映画の肝どころをきちんと押さえており、2時間はきっちりと楽しめる作品となっています。
[DVD(吹替)] 6点(2013-06-11 01:41:31)
711.  ハード・ソルジャー 炎の奪還
今回のヴァンダムは、元傭兵で奪還のプロ。「なにが『今回の』だよ、いつものヴァンダムじゃねぇか」とも思うのですが、本作の設定はもう一歩踏み込んでいます。一人を救うために大勢を犠牲にすることが問題視され、引退にまで追い込まれた老兵役なのです。とにかく派手だった90年代アクションの後始末とも言える設定、ヴァンダムのキャリアを総括するような物語となっています。そのような内容を反映してか今回のヴァンダムは老いを隠さないのですが(今やヴァンダムも52歳、ショーン・ペンやジュリアン・ムーア、黒木瞳と同い年です)、この人は基本的に演技が下手ではないので、時代から取り残された殺人マシーン役を実に哀愁たっぷりに演じています。時代や社会からのけ者にされた彼が再び銃を取るまでのドラマには、なかなか熱いものがありました。。。 一方、アクションの方はかなり控えめです。上述した作品内容とのバランスをとるためにドンパチは最小限にとどめられているのですが、ヴァンダムのアクションを見に来た者としては、少なからず物足りなさを覚える配分でした。さらには、今回のヴァンダムは回し蹴りも封印。これも作品内容を考えれば致し方ないのですが、それにしてもヴァンダムの回し蹴りはジャイアント馬場の十六文キックや森光子のでんぐり返しに相当する名物であり、これを見られないのはファンとしてとても寂しいことでした。。。 全体としては力作であるとは思うのですが、90年代アクションの破壊と同時に新たなスタイルのアクションを提示してみせた傑作『ユニバーサル・ソルジャー/殺戮の黙示録』などと比較すると、アクション映画としての着地点を見出せていない点が映画の勢いにブレーキをかけているように感じました。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2013-05-27 01:59:40)(良:1票)
712.  アイアンクラッド
ジョン王といえば、英国史上でもぶっちぎりのバカとして名を残す人物。そんなジョン王がマグナカルタを覆すために北欧人の傭兵を雇い、自分に楯突いた諸侯を殺して回るという事件が発生。その王に対抗するは、十字軍への従軍経験を持つ騎士を筆頭とした7人の戦士達。なぜ7人なのか?それは黒澤明が決めたから。戦局は南イングランド制圧の拠点となるロチェスター城へと絞られ、7人の戦士が1,000人の傭兵に立ち向かうという熱い構図が用意されます。タイトルの『アイアンクラッド』とは鉄壁の防御のことであり、主人公達が籠城するロチェスター城の守りを意味していると思われます。同時に、アイアンクラッドには【破ることのできない規律】という意味もあり、こちらはマグナカルタや宗教上の掟のことを指していると思われます。。。 この映画、アクション映画としてはなかなか手堅くまとめられています。リドリー・スコットの『キングダム・オブ・ヘブン』を意識したと思われる戦闘シーンは予算以上の迫力を見せているし、過剰なほどの残酷描写も映画の雰囲気に合っています。クライマックスに向けてどんどん盛り上がっていくというペース配分もよく、娯楽策としては十分に楽しめる内容となっているのです。。。 ただし問題もあります。まず、戦闘シーンでは寄りの画が多すぎる上にカットも割りすぎで、見ていてストレスを感じました。また、主人公の扱いが非常に悪く、肝心な場面に限って気絶しているという扱いはいただけませんでした。「よし、やってやるぞ!」とフルアーマーで敵の大軍相手に討って出るも、ロクな見せ場もなくすぐにボコられるという無様な展開などは必要だったでしょうか?さらには、愛のない結婚生活を送る城主の妻と、禁欲の誓いを立てた主人公との禁断の愛にも感動的なものがなく、このサブプロットは丸ごと不要だったと思います。。。 もうひとつの大問題は、英国史についての知識がないと何が何だかわからないということです。ジョン王とは一体何者なのか、マグナカルタとは一体何なのかという知識が最低限必要だし、ノルマン・コンクエストを知らなければ、なぜフランス人やデンマーク人がイギリスの内乱に干渉してきているのかも分かりません。英国人にとっては常識であっても外国人にとってはよくわからない部分が丁寧に説明されていないため、予習が必要な映画となっています。
[DVD(字幕)] 6点(2013-05-02 01:02:57)
713.  デス・レース2<OV>
OVだし役者やスタッフの格も下がっているものの、前作と同等のものを作ってきた監督の頑張りには感心しました。なかなか丁寧に作られた良作です。ただし、前作における武装トラックのような、バカバカしくもオリジナリティに溢れた仕掛けを作り損ねている点は残念でした。ひとつでもいいから前作を上回るものを作ってくればなお良かったのですが、そういったものがないので、本作独自の印象は薄くなっています。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2013-04-21 01:29:04)
714.  インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア
アン・ライスは5歳の娘を病気で亡くしたことの絶望から『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の執筆を開始しましたが、その際には、生きる目的を失い、死人同然となった当時の自分の姿をルイに、厳しい運命を受け入れた上で自由奔放な生き方を選択するという、自分にとっての憧れの姿をレスタトに反映させたと言います。この点に注目して本作のキャスティングを見ると、なかなか意義深いものを感じます。ルイを演じるブラッド・ピットはレスタト役のトム・クルーズとたった1歳差であるにも関わらず、キャリア的には10年の遅れをとっていました。仕事がない時期にはストリッパーの運転手までして食い扶持を得ていた苦労人であり、厳しい下積みを経てようやくキャリアに日の目を見はじめたのが本作製作当時のピットの状況だったのです。対するクルーズはデビュー直後からヒット作に恵まれ、さらにはオスカー受賞作への出演も多いという正真正銘のスターでした。当時の状況を比較すると、両者はまさに陰と陽。ルイとレスタトを演じさせるには最高の組み合わせだったと言えます。クルーズが企画に参加する以前にはダニエル・デイ・ルイスやルトガー・ハウアーがレスタト役の候補として上がっていましたが、彼らではクルーズとピットのような微妙な関係性を見せることは出来なかったはずです。。。 以上、本作はキャスティング面では成功を納めているのですが、残念ながら肝心の内容はイマイチでした。美青年ヴァンパイア達の美しいお姿と、彼らのホモっぽい日常を見せることに全力を投入しているために、ホラーとしてもドラマとしても突っ込みが甘いのです。前半においてルイは、自分が生きるためには他人を殺さねばならないという宿命に心を痛めていましたが、後半部分ではその話題は映画から完全に姿を消します。数百年間、彼は人を殺しながら生き続けてきたわけですが、そのことに対する後悔や反省というものがまったく描かれないのでは、前半と後半でドラマが断絶していると言わざるを得ません。また、数百年を生きるヴァンパイアのドラマでありながら、時代の変化を目で見せる工夫がなされていないために、設定の美味しい部分が死んでしまっています。基本的な演技も演出もしっかりしていただけに、設定を煮詰めきれなかった脚本の不出来が悔やまれます。
[DVD(吹替)] 6点(2013-04-19 22:30:48)
715.  ゾンビ大陸 アフリカン
ゾンビ映画としては初のアフリカが舞台となりますが、どこまでも広がる大自然をノロノロと歩くゾンビの姿はかなり印象的でした。具体的な国名は明示されないものの、アメリカ軍が平和維持活動に従事していたり、現地人にやたら軍人が多いという辺りから察するに、シエラレオネ辺りの紛争国が舞台だろうと思います。紛争国が舞台ならば死体が多く転がっているためゾンビの人数には事欠かないし、入手可能な場所に武器があるため、生存者達に必要なアイテムも整っている。論理的によく考えられた舞台設定だったと言えます。さらに、この設定はドラマパートにも有効活用されています。主人公と旅をするダニエルや、彼らが旅の途中で出会う軍人達は反政府軍に所属していたことがセリフの上で説明されるのですが、シオラレオネの反政府軍といえば、ディカプリオ主演の『ブラッド・ダイアモンド』で暴虐の限りを尽くしていた悪党たちです。かつて悪魔の所業をやっていた連中が、世界の終わりを垣間見たことで家族愛や郷土愛を取り戻し、そのサバイバル技術を人々のために行使しているのです。なかなか泣かせる筋書きではありませんか。。。 フザけたパチモンを連想させる邦題とは裏腹に、内容はかなり禁欲的です。派手な見せ場や劇的な展開は意図的に排除されており、主人公達の地獄巡りが淡々と描かれるのみ。娯楽作としての面白みには欠けるものの、硬派な語り口は終末感の醸成につながっており、ロメロの血統を受け継ぐ極めて真っ当なゾンビ映画となっています。さらに、イベントを減らしたおかげで飢えや乾きといった大自然の脅威を描くことにも成功しており、主人公の旅の過酷さがきちんと表現されています。。。 以上、全体としての出来は悪くないのですが、大きな問題だったのが主人公の個性が極めて薄かったという点です。決して悪い人ではないのですが、積極的に好感を持てる要素も少なく、さらには彼と家族との関係性の描写も希薄であるため、観ている私たちは過酷な旅の目的を見失いがちになってしまいます。
[DVD(吹替)] 6点(2013-04-11 00:53:14)(良:2票)
716.  ロックアウト(2012) 《ネタバレ》 
中学生が考えたようなお話を素直に映像化し続けているヨーロッパコープによる、相変わらずのB級アクションです。映画の内容はDVDジャケットから連想される通りであり、B級アクションへの理解のある方であれば程々に楽しむことができる内容だし、一方でこの手のジャンルを苦手とする方であれば、本作を見逃したところで何の損もしません。。。 宇宙の『ニューヨーク1997』、この一言で片付いてしまう内容なのですが、アクションについては10年以上に渡るノウハウを持っている製作会社だけあって、アイデアの貧困さを見せ場のクォリティで補うことに成功しています。個々の見せ場については手を抜いている様子がなく、極めて真面目に撮られているのです。さらには、強すぎず弱すぎずという主人公の戦力設定や、その主人公の戦力と拮抗するように組まれた敵組織の構成なども絶妙なもので、B級アクションとしては至極真っ当な仕上がりとなっています。また、宇宙ステーションのデザインやメカ描写等には意外と気合いが入っていて、なかなか目を楽しませてくれます。後半の大規模な空中戦やラストの大気圏突入などは、なかなかイケていましたよ。。。 問題は、評価されたいと思って監督や脚本家が欲を掻いてしまった部分が、ことごとく蛇足だったという点です。シンプルな人質奪還ものに徹していれば良かったものを、その戦いに意義や主人公の成長を加えようとしたために、中盤がもたつく原因となっています。さらには、CIAの陰謀というサブプロットが物語に混乱をもたらしており、これは完全に不要でした。「主人公が実は善人だった」というオチも興ざめであり、「毒を以て毒を制す」という内容の方がアクション映画としては正解だったように思います。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2013-04-01 02:04:43)
717.  インシディアス 《ネタバレ》 
『ソウ』のチームが手掛けた作品なのですが、露骨な暴力や残酷描写は皆無に等しく(バイオレンスに厳しいアメリカ国内においてもR指定を免れている)、「見えてはならないものが見えてしまった」という雰囲気もののホラー映画です。『ソウ』とは正反対の方向性に挑んだ作品だったわけですが、これが実によく出来ており、この監督は意外と引き出しの多い人なんだなぁと感心しました。ショックシーンのタイミングや見せ方はほぼ完璧だし、ドラマパートの演出も実に丁寧で好感が持てます。謎の引っ張り方や伏線の織り込み方は『ソウ』で披露した通りの手腕であり、全編に渡ってほぼ欠点が見当たりません。本作はアメリカにおいてかなりのヒットとなり、最終的には製作費の60倍を超える興行成績をあげるに至った作品なのですが、確かに客を引っ張ることのできるクォリティに達していると思いました。。。 ただし、日本人にとってはわかりづらい恐怖であったこともまた事実。『エンゼルハート』を観た時にも感じたのですが、「敵が悪魔でした」というオチは、日本人にはなかなかピンときません。霊能者のおばさんが謎の核心に触れ始めた辺りから、急激に冷めてしまいました。映画としての完成度は評価しつつも、感覚的に理解できない部分が多かったので6点が妥当かなと思います。
[DVD(吹替)] 6点(2013-03-04 01:09:04)(良:1票)
718.  96時間 リベンジ 《ネタバレ》 
映画館に行き損なったので、英国版ブルーレイにて鑑賞。。。 前作『96時間』は稀に見るアクションの傑作でした。アクションなどやらなさそうな演技派俳優をヒーローに仕立て上げることで、使い古されたプロットに新たな魅力を与える。その試みでは奇跡的な化学反応が起こり、製作費の10倍以上も稼ぐ大ヒットとなりました(DVD売上を含めると、収益はその倍以上に!)。。。 一方続編の本作には、前作の偶然を必然に変えなければならないという難題がありました。果たしてベッソンはこの難題をどう乗り越えるのかが最大の注目点だったわけですが、その結果は“可もなく不可もなく”といったところでした。『エイリアン2』以降、アクション映画の続編は「とにかく派手に、豪勢に」が定石となっており、『ダイ・ハード』も『リーサル・ウェポン』もその方向でどんどん個性を失っていきましたが、嬉しいことに本作では見せ場のインフレが避けられており、前作の長所はきちんと引き継がれています。前作を楽しんだ観客は、ある程度は本作も楽しめるような仕上がりとなっているのです。ニーソンが敵をバッタバッタとなぎ倒す様には相変わらず見応えがあるし、車での移動距離と環境音から敵の拠点を割り出すという頭脳プレーには感心させられました。街中で手榴弾を爆発させることでおおよその距離を計測するという荒技には笑うしかありませんでしたが(破壊されるのは犯罪者と無関係な一般の建物や車両)、こういう真っ直ぐな部分こそがまさにブライアン・ミルズ。前作とお変わりなくて何よりです。。。 ただし、エモーショナルな面では前作に及んでいません。若い女性をさらう人身売買組織という問答無用の悪党たちと比較すると、本作の悪役には直感的な嫌悪感が薄いのです。さらには、前作では観客が悪人に対する嫌悪感を忘れないよう、随所に残虐な描写が盛り込まれていましたが、本作ではその手の演出も手薄となっています。また、悪党による復讐劇である手前、“「マズイ相手を怒らせた」と吠え面かく悪人たち”という構図も失われており、全体として痛快さに欠けます。ラスト、ニーソンが敵の親玉に説教するくだりなんて必要ないでしょ。自分の家族に手をかけようとした者には容赦なく鉄槌を下す、言い訳は一切聞かない。我々が見たいのはそういう男の姿なのです。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2013-02-25 00:28:54)(良:1票)
719.  THE GREY 凍える太陽 《ネタバレ》 
ジョー・カーナハンは本質的な構成力や演出力は高いものの、直近2作(『スモーキン・エース』『特攻野郎Aチーム』)においては練りすぎ、余計な要素を加えすぎという印象がありました。サービス精神に溢れた娯楽作を作りたいという思いを持った監督さんのようなのですが、残念ながらその路線には向いてないように見受けます。。。 そこにきての本作ですが、”文明から切り離された人間vs狼の群れ”という、徹底的にムダを削ぎ落とした内容としており、『NARC/ナーク』で見せた荒削りのドラマがここに復活しています。自殺願望のあった男が重大な危機に直面して生存本能を剥き出しにするという物語には燃えさせられるし、登場人物の過不足ない配置にはカーナハンの構成力の高さを実感させられました。大自然の容赦のなさを充分に描ききった演出力にも脱帽であり(これが出来ていない映画は意外と多いのです)、『NARC/ナーク』以降の作品の中では、間違いなく最高の出来だと思います。少なくとも、前半部分は。。。 後半部分では、作品が叙情的になりすぎます。90分で一気に描くべき内容を120分に引き伸ばしているため、クライマックスに向けて畳み掛けるべき部分が妙にチンタラしているのです。しかも、クライマックスをぼやかすという構成にも首を傾げます。この映画の骨子は伝統的なマンハントものであり(『プレデター』とまったく同じ構成をとっている)、ならばクライマックスの直接対決にアクションとドラマのすべてが集約されるはず。そこをぼやかしてしまったのでは、映画全体がまったく締まりません。素材は良かったのに、またしても味付けで失敗したようです。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2013-02-14 22:03:39)
720.  こわれゆく世界の中で 《ネタバレ》 
終末SFを連想させる邦題は意味不明ですが、原題の”Breaking & Entering”は作品の内容を端的に示しています。「相手の心に入り込むためには、まず目の前の壁をぶち壊せ」、本作はコミュニケーション不全に陥ったカップルの再生の物語です。。。 美男美女であり、富にも名声にも恵まれたウィルとリヴは、表面的には完璧なカップルです。しかし、リヴの連れ子であり、軽度の精神疾患を患う少女・ビーの存在が、二人の関係を難しくしています。ウィルはリヴとビーを愛しているものの、血縁がないためビーとの関係に遠慮があって、家族に入っていけないもどかしさを抱えています。一方リヴは、自分とビーから一定の距離を置き、ひたすら仕事に打ち込むウィルの態度に不満を持っています。両者とも互いを思いやり、幸せな家庭を築きたいという共通の目的を持っているものの、表面的な均衡を重視して本音を言わないために関係が破綻寸前となっているのです。そこに降りかかったのがウィルの不倫騒動。これが、関係の危うくなったカップルを崩壊させるダメ押しの一手になるかと思いきや、普段は完璧なウィルがみっともない姿を晒して平謝り&「不倫相手の力になってやって欲しい」と図々しいお願い事をするという展開が、煮詰まったカップルにとっての代謝の役割を果たします。互いに気持ちをぶつけあって、最後はめでたし、めでたし。変わった切り口の話ですが、一定の真理を突く鋭さも持ち合わせています。。。 ミンゲラは、この物語に社会性もトッピングします。同じ移民であっても、北欧出身のリヴや日系人のルビーは裕福な身分であるのに対して、ボスニア出身のアミラは貧しい生活を余儀なくされているし、アフリカ出身のエリカは掃除婦にしかなれません。ウィルが任されているのは下町の再開発プロジェクトですが、それには中産階級が安心して暮らせるよう、治安の悪い貧民街から犯罪の元(=貧民街の住人)を追い出すことが伴います。ロンドンが抱える人種的混沌を、個人レベルの物語にまで落とし込んだミンゲラの構成力は驚異的なレベルに達しています。。。 ただし、良くも悪くも綺麗に整いすぎているのがミンゲラの欠点であり、言いたいことは理解できるものの、心に染み入るものがなかったのも、また事実。特に、ウィルがリヴに不倫を白状する場面なんて、もっと激しい言い合いがあってもよかったように思います。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2013-02-06 18:32:37)
070.55%
1171.33%
2272.12%
3564.40%
417513.74%
517713.89%
619715.46%
730924.25%
822217.43%
9685.34%
10191.49%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS