701. リピーテッド
《ネタバレ》 ベースになっている身体状況等は様々ではあるものの、主人公が前日までの記憶を失ってしまうという設定の作品は、これまでにも複数ありました。本作もその1本ですが、事件発生時から後の記憶が消失しているのではなく、更に遡ってある年代から後の記憶が消失するという設定のためか、事件の発端やそれに至る経緯が省略されてしまっていて、話が進めば進むほど何となくご都合主義的に思えてしまいました。 朝目覚めると記憶がない。目の前に居る男性が誰なのか判らない。主治医を名乗る男性から突然の電話がある。デジタルカメラの動画記録を頼りに少しずつ記憶を積み重ねていく。それと同時に断片的に蘇る事件の記憶。夫、主治医、親友…一体誰を信じたらいいのか?あの日、一体何があったのか? こうやってプロットを書き連ねていくと非常に魅力的なサスペンス作品に思えるのですが、主演の二人、いや三人の演技に惹き込まれながらも、随所に見受けられる矛盾や不合理によって観ている側としてはトーンダウンするばかりです。 記憶障害と言いながらも殆どタイムループみたいな世界。かと言ってタイムループものにしてしまうと、ありきたり感が高まってしまいそう。スタッフ、キャスト、しっかり固めても、肝心のストーリーが弱い。惜しい作品だな、というのが第一印象でした。甘めに6点献上します。 ちなみに、題名は原題の方がお気に入り。邦題はストレート過ぎるような。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-10-19 23:19:43) |
702. サークル(2015)
《ネタバレ》 所謂「不条理系シチュエーションスリラー」のようでいて、人間の内面に光をあてながらその本質について問うような社会派サスペンスでもあります。 何が何やら解らないうちに、ランダムに集められた50人もの老若男女が順番に殺されていく。殺されるにあたっては参加者相互が投票して対象を決めるようなシステムらしい。もしかしたら最後の一人は脱出出来るのかも知れないが、それは約束されたものでも何でもない。何故なら、主催者?は全く姿も声も現わさないから。 設定としては興味深いものがあります。物語が進んでいく過程では、利己的な主張をし続け他人の命を軽んずる者もいれば、集められた者たちが助け合うことで窮地を脱しようとする者もいる。それぞれの主張の背景には、社会的な問題が見え隠れする。 サークル上の人々には何らそこにいる必然性も蓋然性もなく、かといって偶然性のみによるものかと言えば明らかに第三者の意図が感じられる。そんな理不尽な状況にあって、分け隔てなく死が迫る中、人は何を考えどのように行動するのか?ただそれだけが繰り返される会話劇。漠然としたテーマを示しつつ決して結論には至らない。消化不良と言えば消化不良ですが、本来は舞台劇かと思わせるような淡々かつ延々と繰り返される会話からは、そこはかとない緊迫感や恐怖が感じられます。 ラスト、唯一の生存者が外界に戻された時に見たものは、同じく解放されたであろう人々と上空に浮かぶ強大なUFO。エイリアンに拉致されて何らかの心理実験?選抜試験?に強制参加させられていたということをほのめかしているのでしょうが、正直言ってこれは要らないカットではないかと思いました。ここまで観客に考えさせておいて、最後の最後に説明的(それもある意味陳腐な)になる必要があったでしょうか? ポジティブに捉えれば先鋭的で意欲的な作品。楽しめましたし意気込みも感じられますが、ラストのカットに失望したので6点献上に留めます。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-10-16 11:02:59) |
703. Smile スマイル(2022)
《ネタバレ》 邦画「リング」を思わせる死の連鎖。怨霊?悪霊?それとも死神?その姿は邦画「デスノート」風のようでいて動きは「伽揶子」っぽさがあったり。更には、肝心要の死に際の笑顔は「喪黒福造」のそれに見えないこともない。この監督さん、きっとジャパニーズホラーとか日本文化が好きで堪らないのかなぁ、と思ったりして…。 さて、「ホラーですが決して恐くはないです。」といったテイスト。可愛いお姉さんに目の前で満面の笑みを湛えられたら最早笑い返すしかないです。これってホラー的には結構ハードル高めですね。つまり、「笑顔」の連投で今ひとつ緊張感に欠けてしまい、折角演出している恐さが半減しているように思えます。確かに不気味な貼り付いたような笑顔ではあるのですが…。 そもそも何で「笑顔」なの?何で自殺目撃で連鎖?何で自殺しないで殺人しても生き残る?いろいろと疑問は残りますが、思いっきりの「笑顔」を犠牲者に重ね合わせるという一発もののアイディアに免じて甘めの6点献上です。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-10-15 23:32:54) |
704. トゥ・ヘル
《ネタバレ》 ニコラスさん、またしてもやっちまったな!といったテイストの作品。最近の彼の出演作はこういう傾向なのだ、と予め思っていれば意外にすんなり楽しめる作品とも言えます。言い換えれば、ニコラス・ファンもしくはニコラス出演作品ファンのための映画といったところでしょうか。 特殊能力のある女性が自らの命を危険に晒してまで愛娘のためにあっちの世界に行って娘の魂を連れ帰る、というのは斬新なアイディアということではありませんが、結果として別人、それも主人公の亡き妻の魂を連れ帰ってしまうというストーリー自体には少なからず惹かれました。 ただ、展開がスピーディなのは好ましいのですが(この作品を主人公の苦悩がどうのこうのと矢鱈と重く仕上げなかったのは正解かと)、シチュエーションを考えるにジョーとジュリーがいくら何でもいきなりセックスに走るのはどんなもんでしょう?それと、妻の魂が乗り移ったビリーが、こちらもいきなりジョーの身体ばかり求めて来るのもどうでしょう? なんだかニコラスさんばかりが良い思いをしているように思えないこともなかったりします。悲しみに打ちひしがれて酒浸りになって救いようのない状況だったジョーは何処に行ったのやら?その後の彼の行動も、一体何をしたいのか、これからどうやって生きていきたいのか?ラストの彼の決心を見るまで良く分からないままに進行して行きます。 結局、独りにしないで欲しかった妻の怨念が彼を地獄に道連れにしようと誘っていて、妻が娘に何をしたのかを知った彼はそんな妻の怨念に抗うのを諦め、全ては自らが招いたこととして地獄へと向かっていくということなのですね。 そう考えれば、必ずしもニコラスファンだけのための作品ではないヒューマンストーリーとも受け取れます。が、やっぱり続出するセックスシーンはどうなんでしょうかね? それと、冒頭のジュリーの幽体離脱カット、ラストの若かりし頃のジョーの地獄行き決定のカット。これは必要だったのかどうか。微妙です。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-10-06 10:10:38) |
705. イコライザー2
《ネタバレ》 前作は「一体何者?」という状況で物語が進みながら、やがて正体を現すというスタイルに上手く纏まっていましたが、本作は明確に続編なので素性が明らかになった上での物語。どうやって主人公を見せるかはかなり難しい選択だったと思います。結果は…残念ながら微妙なところですね。聞けば、デンゼルさんは「続編」モノに初出演だったとか。確かにそんな気がします。なので、少々残念な初続編出演になってしまったように思えます。 冒頭のアクションシーンが必要だったかどうか微妙。女を薬漬けにする一見エリート若者風の男たちへの制裁と、画家志望の青年に救いの手を差し伸べギャングのアジトに踏み込んだ際の行動のバランス感が微妙。敵役は腕利きの元CIAエージェントたちのはずなのにアッサリ殺られる手応えのなさ。前作のロシアンマフィアに比べて小粒過ぎな感は否めない。そもそも雇い主のラスボスは出て来ないし。などなど、全編通じて微妙な展開の連続です。 相変わらずの無敵ぶりや有事に備えた自宅の危機管理ぶりとか、「一度しか殺せないのが残念」の言葉通り仮令元同僚であろうと容赦なく痛めつけ苦しめながら始末していくところはなかなか爽快でしたが、前述のとおりの微妙さのオンパレードが面白さを半減させてしまっているのが残念でなりません。 近く「3」がファイナルとして封切られますが、是非観に行きたいと思います。どうか失望させないでいただきたいものです。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-10-01 12:22:18) |
706. X エックス(2022)
《ネタバレ》 世に出回っている本作のあらすじは一言多いような気がします。殆どに「農場の老夫婦は殺人鬼だった」みたいなことが書かれてしまっています。 もし、そのことが予備知識として入っていなかったら、サービスカットの連続で尺の半分程度まで進んでいく本作は、状況が急変するエロティックサスペンスとして、もう少しハラハラドキドキ出来ていたような気がします。ところが、予め老夫婦が殺人鬼ということがインプットされているため、まだかまだかとの思いが重ねられ、本当にホラーなの?とさえ感じてしまうのが残念でなりません。 70年代の雰囲気がしっかりと表現され、意外な程に真面目にポルノ(当時風に言えば「ブルーフィルム」でしょうか)を撮影するヒロインたちのキャラクターには少なからず好感さえ持てます。(単なる言い訳ましくは詭弁とも取れますが) 特段捻りもなく意外な展開もない本作ですが、ヒロインのミア・ゴスさんの二役熱演を始め、純粋に一昔前のスプラッターホラー(の再現)としての見応えはあります。それだけに、事前情報の出し方に疑問を感じずにいられない1本でした。 ちなみに、ラストに保安官が呟く製作者の自虐的な一言にちょっと笑。 (追記) もし本作が「高齢者の性」をメインテーマに据えているのだとしたら(殺人に至る動機という枠を超えた意味で)、捉え方が短絡的過ぎて問題ありと思います。そうじゃないのだろうなという視点での6点献上です。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-09-17 23:18:12) |
707. PLANET OF THE SHARKS 鮫の惑星(TVM)
《ネタバレ》 一見すると(既視感は脇に置いておくとして)ビジュアル的にはかなり頑張って作られていると思います。 海水温の上昇でプランクトンが死滅し、捕食する魚類が激減、結果海の食物連鎖の頂点に立つサメはエサ不足から人間を襲うようになる。氷河が全て融けて地球上の98%が海水に覆われるのかどうかは諸説ありそうですが、一応理に適っているかのように感じさせてくれます。サメたちのビジュアルも過去のサメ映画と比較して遜色はないと思います。使い回し感も然程感じることなく鑑賞できます。 つまりお膳立てはまずまずということです。が、そこはやはり低予算作品ならではの弱みと言いますか、じっくり見て行くといろいろ思い至ってしまいます。 深い海の上を泳いでいるはずなのに、どう見ても浅瀬で四つん這いになって泳ぐふりしているのがマル分かりだったり、カットの始まり部分で台詞の語り出しに微妙な間があったり、要は演出上の粗と言いましょうか。それでOK出すなよ、みたいな。 他にも脚本の問題なのかそもそものプロットの問題なのか、リーダーの博士が自己主張が強烈で人の話に全然耳を貸さない独裁者で感情移入出来なかったりとか、ロケットでCO2の削減装置?を打ち上げてたった半年で完全に水没してた自由の女神が上半身出すほど海面が下がるか?とか、そもそも世界観が狭過ぎて、いくら地球全体が水で覆われてるとは言えアメリカ以外の研究施設だって残ってるだろうに他との調整なしにたった1基しかないロケット打ち上げるか?しかもサメ電源で、とか。気になる点は多々あります。 そして、サメ映画としてのメインであるところの母ザメの正体がイマイチ不明瞭です。突然変異なんでしょうけれど、そこは「ありき」で話が進んで行きます。いきなり進化はないだろうに。 予想外の設定で驚かせてくれるある意味見応えのある作品ですが、あまりに緊張感が薄くシリアスなのかコメディなのかどういうスタンスをもって臨むべきか迷ってしまう作品。でも、結構好きなので甘めの6点献上です。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-09-11 11:23:49) |
708. グリーンランド -地球最後の2日間-
《ネタバレ》 問題を抱えた夫婦。愛くるしく賢く、しかし病弱な一人息子。突如襲い来る天変地異。必死に生き延びようとする家族に次々と襲い来る試練。そんな中、深まる家族愛。そして奇跡的に窮地を脱しハッピーエンドへ。デザスター作品の王道を行くような流れですね。 とは言え、一部の特権階級が生き延びようとし一般市民は置き去りにされる中、数々の苦難を奇跡的に乗り越え尊い犠牲を払いながらも主人公たちが生き延びる、みたいな単純に主人公ありき、何でもありの展開ではなく、本人が意図することなく政府に選抜された、いわば選ばれし人々である主人公家族が、思いもよらずふるい落とされ、それでも諦めず這い上がり生き延びるという展開に、地味ながら若干の目新しさを感じました。 ただし、基本はやはり王道の流れ。ハッピーエンドに持って行くには当然ですね。主人公は多少痛い目に遭おうと死んじゃあいけません。最悪でも妻子だけは助からなきゃ。こんな大災害を現実的に描き切ったら人類絶滅、地球壊滅、主人公家族どころか誰一人生き残れません。それじゃあエンタメ作品にはならないわけで、悲観的になるばかりで面白くも何ともないです。だから、これで良いのです。 敢えて不満を言わせていただければ、ラストシーンは不要な気がします。たった9ヶ月で太陽の恵みが大地に降り注ぎ、生き残った鳥たちが空で囀る?そりゃやり過ぎでしょう。だいたいからして、本当の苦難はこれから。復興には何世紀もかかるでしょうし、結局は復興ならず次の数ヶ月で人類絶滅、の可能性の方が大きいかも知れない。シェルターの扉が閉まり、地響きと轟音の中で場面が暗転し、静かなBGMを背景にエンドロールが流れる。後はご想像にお任せします。そんな終わり方の方が良かったような気がしてなりません。 全体的には見応え十分な作品だとは思いますが、ラストシーンで1点マイナスです。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-08-09 23:19:58) |
709. ゲット・アウト
《ネタバレ》 人種差別の問題を直接的に提示した上で裏返して再提示するというシニカルなダークコメディ感には新鮮さを感じました。納得の伏線回収と出演者の強烈な演技、さり気ない中に瞬間的な恐怖を盛り込むという演出の数々など、各賞にノミネートされた理由も理解出来ます。 がしかし、何故かのめりこめなかった作品。全編通してのバランス感とでも言いましょうか、前半から中盤まで不気味さと緊張感を絶やすことはないのですが、何か冗長な印象を受けてしまう。私の集中力が低いだけなのかも知れませんが、正直言って退屈な展開でした。それが、終盤になって脳移植の話が明らかになってからは、さながらノンストップムービーとでも言わんばかりに一気に突っ走る。このスピード間の差が何とも居心地が悪かったです。 白人側の目的や手段が明示されれば後は無駄に溜を作るまでもない。一気にクライマックス!という流れは解るのですが、伏線回収が種蒔きよりもスピーディ過ぎて、観終わってから反芻しないと理解出来ない。それはそれで一つの手法なのかも知れませんし、これまた私の個人的な理解力の問題なのかも知れませんが、前半から中盤までのウェイトと終盤のウェイトのバランスが、今ひとつしっくり来ませんでした。 脳移植を一人秘密裏に執刀するマッドサイエンティストや、とんでもない力量の催眠術師、穏やかなようでいて狂暴に豹変して殺人を厭わない主人公、セックス依存症とも思われる多重人格的キャラの主人公の恋人、アホなのか鋭いのか最後まで判らない主人公の親友、脳を入れ替えても本来の人格が残存する魂論的解釈、等々、気になることは多々ありますが、展開と言うか流れと言うか、その辺りが一番受け入れ難く6点献上に留めます。 ちなみに、ハッピーエンドじゃないですよね?ちょっと殺し過ぎました。とどめを刺したりして。無罪放免は難しそうです。ダークと言えどもコメディだからスルー? [インターネット(字幕)] 6点(2023-08-03 12:42:41)(良:1票) |
710. テイキング・オブ・デボラ・ローガン
《ネタバレ》 認知症の母親と介護する娘の二人世帯。症状の進行が介護者にも影響していくことを実証するようなドキュメント映画を撮影する医大生たち。という設定で物語はPOVで進みます。序盤は一体これから何が起きるのか、みたいな期待感も湧く雰囲気。 しかし、どうもアルツハイマーの症状にしては激し過ぎるんじゃない?みたいな状況になっていく。このあたりも必要以上にじらさないスピーディな展開に好感が持てます。 そして母親が隠していた秘密。ここで異常事態の発端となった事件が明かされます。そして一気に物語はオカルトの世界へ。オカルト風味になると最早何でもありの世界。本作では待っているのはヘビ地獄でした。 そうなんです、いつも思うのですけれど、悪魔モノとかオカルトものは結局何でもありになってしまう。だからこそ作り手はあの手この手でアイディアを出してくるわけですけれど、序盤の流れを生かしてサイコサスペンスにして欲しかったなぁというのが個人的な願望でした。 ただし、本作についてはストーリー的には成功だったと思います。過去の隠された事件。今や認知症となった母親が隠していた事件との関わり。連続殺人事件の犯人であった小児科医の野望は実は悪霊の野望であって、おそらくは悪霊は小児科医を利用していただけだったと思われ、事件を遮ったデボラが代わりに悪霊に乗っ取られてしまったこと。そして、悪霊の狙いは最後の犠牲者は生かしておいて憑依し、未来永劫世にはびこることだったのかもしれません。なかなかに恐ろしいストーリーです。 しかしながら、アルツハイマーを題材にする必要があったのかは疑問です。製作者は、シンプルにオカルトもの、悪霊モノにせず、更に一枚仕掛けを施したかったでしょうか?今の時代、あまりに身近になってしまった深刻な疾病を、しかも、最も課題となっている家族との関係を入り口に置いたことは、個人的には好ましくないと思っています。 もうひとつ、ドキュメンタリー映画の作成というシチュエーションだからといって、POVにする必要があったのでしょうか?ありがちな「いい加減にカメラ止めろよ!」と突っ込みたくなるような出来栄えではないものの、何故正面から描かずPOVに頼ったのか?そこもどうにも腑に落ちず、結果6点献上に留めておきます。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-07-31 21:44:19) |
711. Melanie Martinez: K-12
《ネタバレ》 ヒロインは、個性を受け入れることなく画一的に行われる学校教育に不満を持ち、そんな学校は破壊してしまえとばかりに画策する訳ですけれど、画面全体を彩るパステルカラーの世界には不思議な浮遊感があって、独特の哲学的とも思える詞が綴られる楽曲の数々や子どもとも大人とも思えてしまう様な不安定感たっぷりのヒロインの雰囲気とも相まって、作品全体に独特の世界観が醸し出されています。 決して理屈ではなく、あくまでも感覚的なものとして、ミュージシャンならではのメッセージが伝わって来る印象です。 ヒロインが物語の展開とともに次第に大人っぽくなっていくあたり(表情から子どもっぽさが抜けたり、衣装の露出度が増したり)から、彼女が一歩ずつ成長していく過程が感じられ、それ故ラストシーンで目の前のドア(学校システムから抜け出る)をくぐることを躊躇う彼女の表情からは、実はまだ子どもの世界に留まっていたいという悔しさのようなものが感じられました。 一風変わったミュージカルですが、映画というよりステージで繰り広げられる音楽ライブを鑑賞しているかのような感覚で楽しめました。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-07-05 22:27:37) |
712. 15キリングス
《ネタバレ》 この作品で語られて行く物語は、70~80年代にロンドンで起きた事件と酷似しているように思われるのですが、ネットで検索する限りでは「実話」という記載は確認できませんでした。同事件をベースにした映画・TVドラマは他にあるのですが本作はそのラインにはないような? さて前置きはそこまでとして、本作では一貫してシンプルかつリアル、半ばドキュメンタリ―的に連続殺人犯の行動が語られて行きます。基本的には、面会している脳科学者の医科学的解説をなぞるように彼の行動が語られて行くという構成で、それ故にサスペンスドラマでありながらもドキュメンタリー風に感じさせられるのだと思います。 主役のスティーヴ・ボンジョルノという方は他作で拝見したことはないのですが、かなり恐ろしい雰囲気を醸し出していて、脳科学者を演じるマリア・オルセンさんも只管訥々とサイコパスの脳について解説していて恰も本物の科学者のようであり、そのあたりもドキュメンタリー風味を強くしている要因と思います。 個人的に残念だったのは、150人に1人がサイコパスというところで纏めてしまったあたりで、サイコパス=殺人者のように受け取られかねないのでは?という部分です。ドキュメンタリーのようでありながらあくまでもフィクションという作品であることが、医科学的な深掘りを必要としなかったといったところでしょうか? [インターネット(字幕)] 6点(2023-06-28 12:57:11) |
713. ナイト・チェイサー
《ネタバレ》 主人公は意志弱過ぎな上に基本身勝手過ぎ。親友(悪友)もどうしようもない人物に描かれ過ぎていてどちらにも感情移入は出来ませんでした。更にはヒロインもイマイチと言うかどうでもいい感じ。 そんな訳で、本来は得体の知れないタクシードライバーからの逃避行をハラハラドキドキしながら観ていたいところですが、逆にタクシードライバーの方に声援を送りたくなるぐらいでした。 とりわけ面白くない訳ではない作品、と言うかツッコミどころも非常に多く(そもそもいくらスマホの位置情報があるからってタクシーが神出鬼没的に主人公を追跡出来過ぎ)、ある意味楽しめる作品なのですが、作り手は観客がタクシードライバー側に付くと言う想定では作っていないだろうと思うと、何だかボタンの掛け違いのような気がしてなりません。結果オーライとも言えるかも知れませんが。 そして極めつけはまさかの仕置人誕生物語。想像だに出来ない展開とは将にこのことですね。あっけにとられてしまいました。ルーツは日本にまで遡ると言う飛躍。しかも、後継者には最低ヤローを選ぶという極悪人更生プログラムだったとは。ラストのタクシー(仕置人)大発生には声も出ませんでした。衝撃の展開にあまりにビックリしたので+1点です。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-04-26 23:54:13) |
714. 映画「湯道」アナザーストーリー 湯道への道
《ネタバレ》 AmazonPrimeで本編の映画「湯道」に先んじて配信公開された作品。小山薫堂氏がラジオで「湯道」を先に観てから観るべしと言っていたのを聞いていたので本編を観てから鑑賞しました。 なるほど、そう繋がるのですね。本編に出演する俳優さんたちが本人役で登場。所謂スピンオフとはちょっと趣を変えた感じ。そこに至るまでは全く別ストーリーで、こちらは寧ろ映画人のノスタルジーを描いた作品かと思いそうでした。 そして、本編と比べると、こちらの作品はよりベタな邦画コメディ。しかしながら、「湯」の存在を核に置いて描かれる人間模様は、本編同様そっと心を癒してくれます。 この作品を本編を見ずにして単独で鑑賞したのであれば、もしかしたら4点程度かなと思えますが、両方観たことによる相乗効果とも相まって6点献上とします。 それにしても皆さん、良い脱ぎっぷりですね~! [インターネット(邦画)] 6点(2023-04-10 23:17:15) |
715. ノック 終末の訪問者
《ネタバレ》 キリスト教に関しても聖書に関しても知識に乏しい私にとっては、この作品を本質的に理解することは難しいのかも知れません。 迫り来る終末。人類を、そして世界を救うべく神によって遣わされた4人。世界の存亡の鍵となった3人の家族。 唐突に「世界の存亡は君たちの選択にかかっている」と言われても、現実世界に生きる者としては「出鱈目を言うな。そんなトリックには騙されない。」というのは極めて常識的な反応。 更には、暴力的な侵入者であれば「言うことを聞け。聞かなければ1人ずつ殺す。」と言いそうなところを「犠牲者を選べ。選ばなければ仲間を1人ずつ殺していく。」という想定外と言うか、常軌を逸した要求。 シャマラン監督らしい大ドンデン返しはないものの、全てに少しずつボタンの掛け違いがあるような展開。キリスト教的な理解が出来ずとも、想定外の状況に見舞われ究極の選択を迫られた時、人はどのように決断し、或いは決断出来ずとも、どのように行動し生きていくのかという命題を、極めてシンプルに描き切った佳作として受け止めました。 とは言え、万人受けする傑作かと問われれば、子役を含む出演者たちの熱演に支えられながらも、やはり宗教的な色彩が強過ぎることと、そのことに関して少々説明不足と言うか今ひとつ物足りなさを感じたこともあり、6点献上に留めます。 (追記) 長くなってしまったので書くのを躊躇ったのですが、どうにも気になるので腑に落ちない点を追記です。 ・何故主人公家族はゲイのカップル+アジア系少女なのでしょう?結末を原作と大きく変えたことに関係があるのでしょうか?男が二人であればどちらが犠牲になっても問題ないというある意味シンプルな選択なのでしょうか? ・何故養女に口蓋裂の手術跡がある設定なのでしょうか?劇中サラっと触れますがその会話に何か意味を持たせているのでしょうか? いずれも本作の宗教性に関係があるのでしょうか?解りませんでした。 [映画館(字幕)] 6点(2023-04-10 00:43:22) |
716. プラットフォーム
《ネタバレ》 ストレートに受け取れば、この作品は社会の構造的欠陥や資本主義とそこに生きる人間の堕落、歪んだ宗教観等々、いろいろと暗喩しつつ批判的或いは教訓的な色彩を加えているのかなと思いますし、恐らくは作り手はそのような趣旨をもって製作したのでしょう。 肝心の構造物については、登場人物の精神世界を具現化したと思えなくもないのですが(単に禁煙道場でマインドコントロールされている主人公の幻覚とか)、やはり単純に矛盾点をSF的に何でもありにしている実体としての構造物なのだと思います。 必要以上にグロく演出しているように思えて好感度は低いのですが、不条理系SF作品としては大きく破綻してはいないかと思いました。 ただ、邦題は「台座」で原題は「穴」というのは少々気になるところ。配給元としては生きるための糧を載せて各階層を上下する「台座」こそがこの作品を象徴していると解したのでしょうけれど、製作者はあくまでも各階層を良くも悪くも繋いでいるルートとして「台座」よりも「穴」をタイトルに選んだのではないかなと思いました。二者は似て非なるもの。邦題には違和感があります。 それからラストシーン。文字通りのどん底で見出した希望の象徴である幼児を、ゼロ階層に届けることが果たしてメッセージなのか。だとしたら、そこに至るまでのプロセスを考えれば随分と綺麗事過ぎるメッセージであり、恐らくは伝わらないでしょう。少なくとも理不尽な構造を改革するきっかけにはなり得ないメッセージではないかと。 そして、最下層で闇に消えた二人は何処に行くのか。地獄なのでしょうね。であれば、待っていたのは希望のフリをした絶望。救いようのない結末と思えました。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-04-09 12:08:54) |
717. シェルター 狂気の秘密
《ネタバレ》 ※思いっ切りネタバレです! 何のひねりもない原題(直訳すると「危険な場所」かな?)だと内容がまるで分かりませんが、観終わってみると邦題のサブタイトル「狂気の秘密」には二つ意味がありそうです。 ひとつはビーの「狂気の秘密」。逃げて来た女性への仕打ちですね。一定期間監禁し、おそらくはその後殺害してコヨーテの餌にしてしまう。ただ、詳しく語られることはないので彼女が何故そんな行動に走るのかは想像するしかありません。それはそれで短い尺の作品としては良いのかも知れませんが、ここは多少尺を延ばしてでもビーの心理や背景を描いて欲しかったです。 もうひとつは母娘の「狂気の秘密」。暴力夫殺害後の後始末は描かれているものの殺害シーンはエンディングまで登場しません。登場してなるほど納得でした。 逃亡中の車中もシェルター生活開始後も、二人の間には微妙な距離感というかズレを感じていましたが無理もないことですね。ダーリーンは夫の存在から逃れた後もビクトリアに新たな恐怖或いは不安を抱いていたということでしょう。 一方ビクトリアも、肉切り包丁や果物ナイフを寝床に忍ばせていないと安眠すら出来ない。父が母に暴行を加える家庭内で身に付いた自己防衛手段なのでしょう。なるほどPG12ですね。 短めの尺の中でシンプルに纏め上げられた作品。上に書いたようにもう少しビーの秘密や心理、その背景を描いて欲しかったと思いやや低めの6点献上です。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-04-04 10:43:05) |
718. 健太郎さん
《ネタバレ》 短編作品だけに物語は非常にシンプル。ある家族の日常が、ひとつの悲しい出来事によって音を立てて崩れていく。そして、その鍵を握る男「健太郎さん」。 単純にそのまま受け取れば、ひき逃げ事故の被害者である健太郎さんが、加害者の自宅を突き止めじわじわと苦しめていく物語かと。そして、ある日を境に最期の復讐に走る、といった物語なのかなと思えます。健太郎さんは即座に強硬策に走るのか?はたまた、これから先もじっくりと加害者を苦しめるのか? それはそれで結構ベタな展開ながら物語として十分成立はするでしょう。しかし、その解釈で正しいのか自信が持てません。なので、もうひとつ考えてみました。 事故を契機に半ば心神喪失状態にある母親。平和な家庭生活に没頭することで真実から目を逸らしている。しかし、ある日ついに感情の抑圧はピークに達し精神は崩壊してしまう。玄関を訪ねて来た誰かを被害者(健太郎さん)に置き換えてしまい、実体を伴わない健太郎さんを受け入れることに。全ては彼女の妄念。 いろいろと考えを巡らしながら楽しめる作品でした。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-03-10 21:40:04) |
719. パラドクス
《ネタバレ》 難解ですね。作り手が予め抱いていたひとつながりのイメージに肉付けしていった感じ。 ラスト近くで一気に種明かしをするわけですけれど、一種の運命論なのか?それとも変種のパラレルワールド論なのか?正直今もって見出せません。 非常階段の9フロア行ったり来たりや田舎道行ったり来たりという小さなループが、35年間というもう少し大きなループに包含され、更には一人の、と言うより人間誰しものと言った方が良いのかも知れませんが、若い頃の幸福が年とともに不幸へと遷移していく流れへと繋がっていく?この監督さんの脳内イメージには置いてけぼりにされてしまいそうです。 正気と狂気の境界を行ったり来たりの難解なループ。この監督さんの次なる作品「ダークレイン」も併せて観ることをお勧めします。イカレタ世界観にハマるかどうかはアナタ次第。私は今のところ片足ハマって藻掻いてます。なので今のところ6点献上に止まります。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-03-05 23:52:09) |
720. ダークレイン
《ネタバレ》 如何にも低予算な雰囲気。アイディア勝負のユニークなホラー。殆どモノクロのような色褪せた色調と、登場人物のオーバーアクションな演技がレトロ感を醸し出しています。 冒頭の30分ぐらいは何だか訳が解らない展開。予備知識なしで観始めたので、コメディなのか生真面目なのか先の読めない展開に呆然。ところが中盤から矢鱈アクティブでスピーディに物語が進んで行き、髭面大発生という果たして笑っていいのかどうか良く分からないカオスな展開に。正直なところ苦笑から大笑いに転じてしまいました。特に人面犬には意表を突かれましたね。 そして終盤にかけての種明かし的展開。まさかの悪魔系だったとは。そうなると何でもありですね。あれよあれよという間に主役に転じた病弱少年の、文字通り悪魔的な微笑みで締めてくれました。 製作者が意図しているのかどうかは分かりませんが、何気にパロディ的な要素も含んだ本作品。最後まで観てみれば、思いのほか楽しめるB級娯楽作品でした。ただし、悪魔的な存在を持ち込んだことで何でもありになってしまった部分は減点要素かな?髭面大発生というオリジナリティ溢れる笑劇の作品だけに、もう少し奇抜な種明かしだったらな、と若干残念な気持ちが残ってしまいました。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-02-25 23:13:35) |