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光りやまねこさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 418
性別 男性
自己紹介 1959年生まれの48歳。
神戸市近郊に在住の、映画をこよなく愛する
市井の人であります。
ま、コツコツとレビューしようと思ってます。

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61.  モスラ(1961)
本多猪四郎&円谷英二の手による単体怪獣映画。先輩格に当たる「ゴジラ(54)」「空の大怪獣 ラドン」と比べてみても着想、内容、特撮ともども決して遜色はなく邦画史上、トップクラスの特撮映画に仕上がっている。しかもファンタジックに彩られた異色作で、モスラは都市を破壊する恐ろしい怪獣としてではなくむしろ平和を愛する巨大な生き物として描かれている。やはり“モスラの歌”を歌う小美人ことザ・ピーナッツを抜きにして本作は語れず、彼女たちの存在とエキゾチックな歌声がこの独創的な空間作りに大きく貢献している。また成虫型だけではなく幼虫型も用意されている点も見逃せず、ザ・ピーナッツの幻想的なステージシーン、インファント島の原住民による踊りなど見どころは満載で、二人の監督を筆頭に当時のスタッフの特撮映画作りに対する真摯な姿勢と意気込みを十分に感じさせてくれた。イマジネーション豊かなファミリー向け映画の名作として高く評価したく思います。
9点(2004-12-10 15:24:47)(良:1票)
62.  首都消失
女性リポーターを軸にテレビ並のサムいメロドラマを絡めて展開させるわけだが、サスペンスフルなSFモノを期待する者にとってこれでは全くといってよいほど盛り上がらない。さらに追い討ちをかけるのが、関西弁で捲し立てるスキンヘッド姿のデスクの登場シーン。要所要所で現われては進行に水を差し頭痛のタネとなる始末。あの何とも言いしれぬダルダル感のみが全身を覆い尽くし、ありきたりな特撮と捻りのないクライマックスがSFファンを大きく萎えさせる。これが、この映画に対する偽ざる感想。辛辣レビューでゴメンチャイ。
2点(2004-12-10 11:19:49)
63.  コピーキャット
シガニー、逃げる逃げる。「エイリアン」のリプリーよろしく急転「ヘイ、カモーン!」で闘うヒロインになると思いきや・・・逃げの一手でした。オチに象徴されるようマズい脚本に役者頼みの演出。シガニー・ウィーバーにホリー・ハンター、二枚看板のおかげでかろうじて最後まで見れる凡作サスペンス。赤いドレスを着たシガニーの、トイレでの宙釣りシーン(2回見れるっ!)に5点。
5点(2004-12-10 11:07:38)
64.  疑惑(1982)
まーとにかく、桃井かおりに尽きます本作は。あたかも自然体で臨んだかのような演技はハマりにハマり過ぎており、作品を大いに盛り上げてくれた。あの極妻こと、志麻姐ごに対峙させても一歩も引けを取ってはいません。山田五十鈴の突然の登場シーンもインパクト大。桃井かおり演じる球磨子は本当に保険金殺人を犯したのか? それともあれは事故だったのか? 前科四犯の毒婦、状況からすると限りなくクロに近く、しかも警察やマスコミに痛烈な悪態をつき捲りとことん敵に回す。《ネタバレ》犯人に違いない、いや万が一犯人でなくともこんなヤツは有罪にすべきだとするマスコミとそれに同調する世論。秋谷記者(柄本明)が女性弁護士(岩下志麻)に言う、「あんな女、たとえシロであっても弁護する必要はない」はまさに世論を代弁している。この辺り、ただの娯楽サスペンスに終らせてはおらず、やはり松本清張&野村芳太郎らしい作品です。
8点(2004-12-06 22:36:14)
65.  野菊の墓(1981)
名匠木下恵介の手による55年度版「野菊の如き君なりき」は、ノスタルジックな気分に思う存分浸れる紛うことなき名画だった。さて本作は。うーん、聖子ちゃんの演技力はまずまずといったところで、澤井信一郎の演出も悪くはない。ただ、「裸足の季節」「青い珊瑚礁」に代表されるよう、ネアカでキャハハのイメージがまぶたに焼きつく聖子ちゃん。原作に漂う郷愁と物悲しさが今ひとつ感じられなかったですね。やっぱり本作は、聖子ちゃんファンのためだけに作られた映画だったのかもかも・・・。
5点(2004-12-06 16:29:15)
66.  王将(1948)
将棋だけに限らず芸術や音楽、一家の大黒柱がそんな芸ごとに仕事そっちのけでうつつをぬかすとその家族は悲惨である。ましてや子供が二人もいようものなら…。それはさて置いて、この映画は人情ドラマとして文句の付けようがないほど良く出来ています。まず演技力確かな役者陣が良い。ちょっとユーモラスな坂田三吉を演じた阪東妻三郎はもちろんのこと、生活感溢れる女房小春を演じた水戸光子、そして迫真の演技を披露した娘玉江役の三條美紀などなど。監督伊藤大輔のメリハリを効かした味わい深い演出が冴えに冴えており、思わず唸ってしまうシーンも枚挙にいとまがない。また手作り感に満ちたセット美術も素晴らしく、とくに通天閣を望む人情味溢れた長屋の風景もノスタルジック充分。やはり本作での圧巻は二五銀のくだりでしょう。ピーンと張り詰めた雰囲気から不吉な風が吹く。自陣は破られる寸前で負け将棋の様相を呈している三吉だが、ここで一発敵陣に思いもよらぬハッタリの一手をかます。泡を食った関根八段は逆転劇を許してしまう。勝利でいい気になっている三吉だったが、娘玉江に腹の底を見透かされなじられる。勝てば良いというものではなく、名人位をねらうに相応しい堂々たる将棋を指して欲しいと。三吉は激怒し玉江を追いかける。それに追いすがる女房小春。鏡に映った自分の顔を見て我にかえる三吉。そこにはくも助将棋の顔があった。玉江の言うとおりだった。三吉は名人位をねらうに相応しい将棋指しになることを誓う。この一連のシーンはただただ圧巻で、父を心の底から思う娘玉江の姿に涙なしではいられなかった。その他にも記憶に残るエピソードばかりで、ついレビューが長くなってしまいます。そしてラスト、三吉が病床の小春にお題目を唱える中、彼女がお守り代わりにしていた王将の駒(この駒にはこの物語のすべてが詰まっている)をアップでとらえるエンディングシーンなんかもヤラれてしまい、またもや目頭が熱くなった。まさに人情ドラマの名作、文句なしの10点満点。
10点(2004-12-06 11:09:06)(良:4票)
67.  プラトーン
見事というか、強烈なベトナム“反省”映画だった。監督のオリバー・ストーンは自ら志願兵となりベトナムを体験しているだけに描写がリアルで生々しい。この作品の主題ともいえる内部の対立を通じ、必然的に返り討ちとなる展開にも大いに説得力がある。しかもベトナム人への虐殺、略奪、強姦など米兵は現地で何をしたかをも生々しく描かれている。チャーリー・シーン演じるクリスの“敵は自分の中にあった”というように、動機付けの無い兵士というものは敵を倒す事よりも自分が死なない事を優先に考える。つまり、外敵と戦う以前の問題なのだ。この当時、最前線に送られるのは移民や貧民層ばかりで、彼等の本音を言えば任期まで“生き抜く”が絶対的なものなのであろう。当然ヒューマンなエリアス(ウィレム・デフォー)よりも、冷酷だが生き抜く術を知り尽くしているバーンズ(トム・ベレンジャー)の側に付いた方が得策なのだ。世間の常識など通用しない最前線では、彼みたいなリーダー像こそがカリスマ性を持ってしまうのであろうか…。見る者にいろいろと考えさせられる戦争映画の名作です。
9点(2004-12-06 10:45:31)(良:1票)
68.  原爆の子
広島、長崎の原爆投下をテーマとした映画は数多くあるが、進駐軍が睨みを利かす戦後間もない状況下、真っ先に取り上げた姿勢だけでも充分評価に値する。しかもこの映画は原爆投下から7年しか経っていないこともあり、つめ痕が残る被爆地広島の貴重な記録フィルムという側面も持っている。監督と脚本は新藤兼人。監督初作品である前作は小手ならし的な自伝的小品だったが、今作が巨匠新藤兼人の世に問う本格的なデビュー作と言っても良いのではないだろうか。その後も広島の原爆や核の恐怖を取り上げた新藤作品は多いが、それは監督自身が広島出身であると共に人間として許されざる行為であることに他ならない。この映画は原爆投下当事、広島の幼稚園で教師をしていた女性(乙羽信子)が7年後、かつての教え子たちに会いにゆく姿をセミ・ドキュメンタリータッチで描いている。作り手たちの情熱や意気込みが充分過ぎるほど感じられるし、なにより役者陣個々の確かな演技力に支えられており作品そのものの完成度は極めて高い。とりわけ戦争と原爆により我が子と家屋を失い、しかも視力までも奪われてしまった岩吉爺やを演じた滝沢修には文句の付けようがない。その痛々しい姿から放たれる演技は原爆の悲劇性を完璧なまでに具現しており、ただただ悲痛であり見る者は涙なしではいられないほどである。「なんぼでも生きるんじゃ。こないな姿顔を世間の人に見てもらうんじゃ。」など胸に突き刺さる台詞もいくつかあり、それらは原爆でなすすべなく虫けらのように死んでいった二十万人もの市民の声を代弁している。「8月6日は永遠に忘れてはならない」と訴えているこの傑作に、何らためらうことなく10点満点を付けさせて頂きます。
10点(2004-11-29 10:48:54)(良:3票)
69.  学校の怪談
この怪談映画は初めから小学生を対象にして作られているので、大人の視点から見てしまうと「つまらん」の一言で切り捨てられてしまう。ところがシリーズ化が証明しているように、子供達の目線に合わせた監督平山秀幸のオリジナリティ溢れる世界観が効を奏しており、製作サイドとしては見事成功を収めていることがわかる。たしかに、大人の視点から見た映画作品として評価すると高得点は付けづらい。しかし今回はもし自分が子供だった、あるいは父兄だったらという発想で点を付けてみました。
7点(2004-11-27 18:14:21)(良:2票)
70.  ゴジラ(1954)
日本特撮映画史上の最高傑作! しかも、この映画ほどイマジネーションを働かせてくれる作品はそうはなく、傑作としての説得力は十分過ぎるぐらい持っている。“ゴジラ”という希有なキャラクターが日本のみならず世界中にその名を轟かすというのは、その存在がいかに激烈であるかの一言でしょう。とにかく想像上の生き物である怪獣“ゴジラ”を生み出したことが凄いし、素晴らしい。その山の様にとてつもなく巨大な生き物が白熱光線を吐き散らし、都市を破壊し尽くす様は想像しただけでも恐ろしい光景だ。個人的にはあまり理屈っぽく考えず、ただただ“ゴジラ”という巨大な生き物に恐れおののけば良いと思う。
9点(2004-11-26 11:56:47)(良:1票)
71.  怪談 雪女郎
怪談モノといっても、四谷怪談や番町皿屋敷みたいな怨霊にとりつかれた人間の自滅する様を描くのではなく、むしろ怪奇民話に出てくる妖怪モノ(映画では雪の精といっているが)といったほうがよいのかもしれない。すると当然、鑑賞のポイントは作品が放つ民話的世界観と雪女の登場シーン。雪女を演じる藤村志保自身が色白の長身で、しかも手も冷たそうで(失礼! !)これがなかなかイメージに合っている。雪女の口から発する声といい、キーンと凍てついた雰囲気描写といい背筋をゾクゾクさせてくれた。とくに不気味な眼が良かった。少々中だるみはあるが郷愁を誘う夫婦物語にしたのが正解で、エンディングもたっぷりと余韻を残してくれた。
7点(2004-11-21 14:39:10)
72.  蜘蛛巣城
時は狂乱の戦国の世。武者の骸が野に山ほど積まれ、さながらその光景はこの世の地獄だったに違いなく想像しただけでもオゾマシイ。序盤、落雷に見舞われる森の中、三船敏郎演じる武時と義明(千秋実)が物の怪に遭遇するシーンがある。これが雰囲気満点で、妖婆の不気味な声と共にコントラストを効かした白黒映像が抜群の効果を収めており、何回見ても背筋がゾーとする。その他にも脳裡に焼き付くシーンは数多く、武時が雨あられの矢を受けるラストはもちろんのこと、薄気味悪い明かず間の雰囲気描写、ついに発狂する冷血な妻浅茅(山田五十鈴)、森厳なる森が城に押し寄せるというくだりもゾクゾクさせてくれた。本作は「マクベス」がベースになっているわけだが、やはり下克上という血で血を洗う狂気に満ちた時代設定だからこそオゾマシさが倍増するのであろう。しかも黒澤明監督独自の、存分にイマジネーションを掻き立ててくれる怪奇物語の傑作に仕上げる手腕もさすがだ。
9点(2004-11-21 14:05:14)
73.  張込み(1958)
刑事という職務上のひとつである“張込み”をドキュメンタリータッチで描いており、まるで刑事達の日々の仕事ぶりを見ているかのようである。捜査そのものは強盗殺人事件の共犯者を追っているわけだが、その張込みがリアリティ充分で、事実このような地道な仕事の積み重ねが犯人逮捕に繋がるのであろう。しかも犯人側にもちょっとした人間ドラマがあり、当然刑事側にも普通の人間と同様に考え事や悩みごとがある。またこの映画では、当時の庶民の生活模様をかなり意識してモノクロ映像に収めているものと思われる。戦後間もない夜行列車内での風景、昼下がりの地方の風物詩、人情味ある旅館の様子などなど…この辺りなかなかの雰囲気描写で懐かしい日本の盛夏を味わえる作風になっている。《ネタバレ》ラスト、大木実演じる刑事柚木が犯人石井(田村高廣)に向かって言う「今日からやり直すんだ」。 この言葉、fujicoさんの仰るとおり犯人だけにではなく、さだ子(高峰秀子)を通じて女心というものを知り結婚を決意した自分自身にも言い聞かせている。この佐賀での一週間は、犯人はもちろんのこと柚木にとっても人生のターニングポイントであり、東京へ向け折り返し出発する汽車がその事を力強く訴えている。監督野村芳太郎の演出が冴えるサスペンスドラマの名作です。
9点(2004-11-13 16:19:18)(良:1票)
74.  用心棒
三船敏郎演じる桑畑三十郎の炸裂するダンディズムにヒロイズム! エンターテイメント時代劇としては、もう文句の付けようがないほどオモシロく見応え充分な黒澤作品。三十郎の口から出るスパイスの効いた台詞がここかしこで決まり捲る。また、東野英二郎演じる居酒屋の親爺に不気味な短銃使い(仲代達矢)、加東大介演じるお馬鹿なヤクザにニセ用心棒(藤田進)、はたまた巨木のように馬鹿デカい用心棒(馬場さん似の人ネ)、人三化け七なお女郎さん達などなど脇を固めるユニークなキャラも大いに作品を盛り上げてくれた。ラスト、三十郎の放つ「あばよ! !」が心地良いほどに余韻を残す。
8点(2004-11-13 16:16:41)
75.  帝銀事件 死刑囚
帝銀事件とは終戦後間もない頃、帝国銀行の行員12名を毒殺し金品を奪うという冷酷極まりない殺人事件であり、その犯人として逮捕されたのが平沢貞通。やがて、本人の自白に基づき東京高裁で死刑判決を言い渡される。しかしその後、新たに見つけ出される事実の数々は平沢氏が犯人とは思えないものばかりであり、終戦直後GHQと深く関わりを持つ731部隊関係者が犯人像として大きく浮かび上がることになる。監督は熊井啓で、しかも本作が映画初作品。当時としては類稀なる社会的大事件であり、しかも冤罪(かもしれない)という難しい題材を取り上げた姿勢こそ高く評価しても良いのではないだろうか。この映画は新聞記者武井(内藤武敏)達の視点からドキュメンタリータッチで切り込んでゆく手法が取られており、作り手のこの作品にかける意気込みが充分過ぎるほど伝わってくる。昭和20年代の刑事や検事の人権を無視した取り調べ、マスコミ報道に恐ろしいほど左右される世論、犯人扱いされる残された家族の悲惨さなどなどかなり鋭く踏み込んで描いており作品そのものの完成度は極めて高い。そして何より、当時のGHQという圧倒的な権力の前ではジャーナリズムといえどもいかに無力であったか、さらに人が人を裁くということはいかに難しいかをも監督熊井啓は力強く訴えかけている。社会派ドラマの傑作です。
9点(2004-11-06 14:25:00)(良:1票)
76.  二十四の瞳(1954)
タイトルロールに流れる「仰げば尊し」を筆頭に、「故郷」「七つの子」「浜辺の歌」などなど数多くの唱歌が作品全体を包み込み、これが抜群の効果を収める。音楽担当は監督木下恵介の実弟に当たる木下忠司。この人、兄恵介と毎回息がピッタリだが今作ではそれを極めている。場面、場面に流れる馴染みの唱歌を彩りのあるメロディーで微妙にアレンジしており、この作品にかける意気込みが充分過ぎるほど伝わってくる。また、小豆島の美しい風景と島民の生活模様が楠田浩之のカメラに余すところなく収まっており、これもまた監督と息がピッタリ。忍び寄る軍国主義に召集令状、貧苦に喘ぐ島民の生活、敗戦という新たな時代への出発…切々と暦をめくるように綴っており木下調の演出が冴えに冴え渡る。戦時の戦意高揚作「陸軍」の製作がよほど悔しかったのか、今作では平和へのメッセージがビシビシと伝わってくる。そして言うまでもなく、主人公の大石先生を演じた高峰秀子が文句なしに素晴らしい。純朴な子供たちに向ける優しい眼差しに、情感のこもった台詞回し。洋服の似合う新人の先生から人生の辛酸を体験し尽くした初老の先生までごく自然体で演じており、女性教師として一人の母親としての弱さと強さ、哀しさと美しさを見事表現しきっている。情感に訴える見事な反戦映画としてはクレマン作「禁じられた遊び」と双璧をなしており、日本映画史上、燦然と輝く名画。文句なしに10点満点。
10点(2004-11-01 18:12:29)(良:2票)
77.  トト・ザ・ヒーロー
主人公のトマは向かいの裕福な同じ誕生日の息子のせいで大切なものを立て続けに奪われてしまい、間違った人生を送るハメになったと思い込む。人生で唯一楽しかった子供の頃の思い出だけを胸に生きてきたトマ。老境に差し掛かったある日、ピストルを手に一大決心をする。そんな悲しい男の生涯を、監督ジャコ・バン・ドルマルは軽妙なタッチで時にはミステリアスに、時にはノスタルジックに描いてゆく。とくにヒッチハイクをしている老人トマの横を、トラックが追い抜いて行くシーンが文句なしに素晴らしい。その荷台にはシャンソン“ブン”をピアノで弾いている父とトランペットを吹く姉アリスの姿があり、もうゾクゾクもの。人生のどたん場で今まで生きてきた意義を見い出し、子供の頃から抱いていた夢がついにかなうトマ。終り良ければすべて良し、と受け取りましょう。高らかな笑い声と共にシャンソン“ブン”が天空から愉快そうに降り注ぐ。名作です。
10点(2004-10-31 15:57:04)
78.  日本の悲劇(1953)
冒頭、激動する戦後の出来事をニュース風のカットで矢継ぎ早に映し出す。本作では監督木下恵介の持ち味ともいえる叙情性は一切廃止され、非情なリアリズムタッチで展開されてゆく。望月優子演じる戦争未亡人である主人公の母親は、二人の子供達を育て上げるためなりふりかまわず必死で働く。しかしある日、料理屋の仲居の仕事に付きものともいえる男性客へのサービス現場を、二人の幼い子供達に目撃されてしまう。子供心としては耐え難い程のショックを受け、その事が大人になっても尾を引いてしまう。やがて冷たく無機質な性格に育っていく二人だが、老後を頼るうっとうしい母親をあっさりと捨て去ってしまい、思いも寄らぬ悲劇が待ち受けることになる。親の心子知らずというか母親にしてみると、子供達の為に死にもの狂いで生活費を稼いできたのに…。そんな悲劇的な母親役を望月優子はハマり過ぎともいえる演技を披露しており、それは鳥肌が立つほどである。また、このような悲劇的な出来事は将来珍しくなくなるということを、監督木下恵介は予見して訴えているかのようでもある。ところでこの映画では、母親に対する三人三様の若者の姿が描かれている。主人公の二人の子供達に対し対照的な性格で母親思いの流しの歌手(佐田啓二)、気性が荒く傲慢だが情に厚い若い板前(高橋貞二)…本作ではこの二人の存在がせめてもの救いとなっている。木下作品としては寓話とも受け取れる異色作だが、邦画史上確かな位置付けにある傑作です。
10点(2004-10-29 21:32:22)(良:1票)
79.  姿三四郎(1943)
演じるというか、そのまんまの藤田進に尽きる! 真っ白な柔道着が似合う姿三四郎(藤田進)、純朴かつ誠実そのもので好感度大。対する月形龍之介演じるあのムカデみたいないやな奴、檜垣源之介との対比が姿三四郎のそれをより一層際立たせている。また、矢野正五郎(大河内傳次郎)の口から出る柔道家(柔の道を志す者)らしい、闘技と人の道を一致させた言葉も味わい深くいつまでも記憶に残る。実際この映画では派手な格闘シーンを披露するわけでもなく、主人公達の心理描写、雰囲気描写などで盛り上げ受け手の想像力にまかせるという独創性ある演出も、さすが黒澤明という感じがする。唯一残念なのは、古い作品なので画像が傷んでおり、しかもカット版ゆえに正しい評価が出来ないということです。
8点(2004-10-29 21:30:48)(良:1票)
80.  コレクター(1965)
男女の違いにより視点も受け取り方も異なる傑作、名作は数多くあるが、この作品ではそれが著しく表われるのではないだろうか。この映画でのテレンス・スタンプ演じる主人公の男、おそらく幼い頃からイジメられたり仲間はずれにされたりで、一人孤独な生活を送ってきたに違いない。美しい蝶の収集だけがすべてを忘れさせてくれる唯一の楽しみなわけだが、やがて一線を大きく越え狂気の世界へ入ってゆく。視線を斜めに反らしややうつむき加減に歩く姿は、男である私の心情からするとむしろ哀れみを誘い気の毒でもある。(もちろん監禁は許されぬ犯罪です) 監督は万人が認める名作かつ大作である「ローマの休日」「ベン・ハー」などで有名な名匠ウィリアム・ワイラー。しかし個人的には、本作を含め「必死の逃亡者」など社会の闇の部分を斬新な視点と切り口で格調高く描き切る作品こそ偉才振りを発揮していると思うし、また好きですね。それは、常人と常人ではない人間(常人と紙一重かもしれないが)とを対峙させることにより生み出される独特の緊張感、そして監督ワイラーならではの異色心理劇、とでも言えばよいかもしれない。本作に於いても、見る者を困惑させる意外なラストは当時斬新だったに違いなく、それはあたかも将来起こるべく犯罪を予見しているかのようである。ラング作「M」、ヒッチコック作「サイコ」などのお手本があったにしろ、サイコ・サスペンスの傑作であることに疑う余地はない。
9点(2004-10-22 15:50:11)(良:1票)
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