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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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781.  グリーン・デスティニー
登場人物や舞台設定の紹介が一通り終わると、「待ってました!」とばかりに登場するワイヤーアクション。前年に公開された「マトリックス」などは比較にもならない程の本家の素晴らしい技には度肝を抜かれます。演じる俳優及びスタントマンの身体能力の高さ、ワイヤーを扱うスタッフの熟練ぶり、カメラワークの的確さ、どれをとっても超一流です。アン・リー監督のフィルモグラフィーを振り返ると、英国貴族の恋愛物語に、郊外の家庭が崩壊するドラマに、南北戦争ものに、アメコミに、エロティックサスペンスにと、東洋のキューブリックと言えるほど幅広いものです。この恐るべき守備範囲の広さは、未知の題材を徹底的に研究して自分のものとする監督の勤勉さ、主題を丁寧に扱う生真面目さがあってこそのものだと思うのですが、本作についてもその資質は大きく貢献しています。監督にとってカンフーを扱うのは初めての経験でありながら、本作の最初の格闘シーンは香港映画が積み上げてきた実績が見事に吐き出された名場面となっているのです。公開当時本作は極めて高く評価されましたが、最初の格闘シーンを見れば、この映画には何か賞をやらねばと思わされてしまいます。それほどの名場面なのです。一方でこの監督は娯楽には不向きな傾向があり、残念ながら本作も娯楽アクションとしてもう一歩踏み込み切れていない部分があります。クレジット上はチョウ・ユンファがトップではあるものの、本作はチャン・ツィイー演じるイェンの成長物語であることは間違いありません。だとすると主人公イェンの心情を観客は理解する必要があるのですが、彼女が現状から逃げ出したいと思う物語の発端部分が描かれていないため、わがままなお嬢様が好き放題暴れているだけにしか見えません(幸い、チャン・ツィイーの魅力によってイェンは救われましたが)。このため、観客は感情的な部分で物語とシンクロすることができなくなっています。またカンフー映画のラスボスは強敵であるべきなのですが、本作の敵はリー・ムーバイどころかイェンにすら実力で負けてしまっているという設定。残念ながら、これでは盛り上がりません。本作の悪役はチョウ・ユンファ、ミシェル・ヨーというカリスマ俳優を二人も相手にせねばならないのですから、相応の設定を練り上げるべきでした。
[DVD(吹替)] 6点(2010-08-21 00:22:27)(良:3票)
782.  恐怖のメロディ 《ネタバレ》 
「ストーカー」という言葉もなかった時代に、ヒステリックで危ない女性像をここまで作り込んでいることには驚きです。登場場面では「ちょっと良い女かな」と思わせておいて、除々に異常なところが出てくるという細かい演出は見事なものでした。バーテン役として出演もしているドン・シーゲル師匠の手助けもあったのでしょうが、監督デビュー作としてはかなり上出来だったと思います。ムダに長いラブシーンや音楽フェスなど、物語においてはまったく不要な場面もいくつかありますが、好きなものを入れたかったんだなぁという監督の個性が感じられて、こちらも好意的に見ることができました。ただし残念だったのがラストで、暴力で決着がついてしまうのではハラハラドキドキしません。男と女ではどちらが勝つかが明確なので、これではサスペンスは盛り上がらないのです。しかも相手がイーストウッドですからね。ストーカー女に勝ち目などありません。また、人質にされていた主人公の恋人は、もっと酷い目に遭わないといけないでしょう。髪型を変えられただけですからね(笑)。最後の最後で、ストーカー女の怖さが半減してしまいました。主人公の恋人は殺されるか、顔をズタズタにされるか、それぐらい絶望的で後味の悪い結末でもよかったと思います。
[地上波(吹替)] 6点(2010-06-30 20:22:32)
783.  ガープの世界 《ネタバレ》 
前半を見る限りでは「フォレスト・ガンプ」のような社会性ある寓話なのかなと思ったのですが、後半になるとかなり現実的でシリアスなドラマへと変貌していきます。てっきり「フォレスト・ガンプ」だと思って鑑賞していた私は、この変貌にビックリ。純粋無垢で人を恨まず育ち、大人になっても大きな子供だったガープが、夫婦生活に疲れ、妻の裏切りに激怒し、挙句に二人の子供のうち可愛がっていた方を失って怒りと悲しみに打ちのめされる様はかなりの衝撃でした。とはいえ、私たちが生きている人生とはこんなものです。子供の頃は夢と希望に溢れていても、大人になればツライ現実に直面しなければならない。本作における前半と後半の落差は、この真理を実に巧く表現したものでした。そして、現実とはツライものだけど、それでも前向きに生きていこうじゃないかというガープの姿勢は感動的でもあります。。。と、ここまでなら「よく出来た映画」でした。しかし、本作のもうひとつのテーマである「女性」の描き方が非常に特殊なもので、これが本作の評価を難しくしています。まずガープの母親ですが、旦那はいらないけど子供は欲しいといういかにもなフェミニストで、幼い頃からわが子の行動(性生活まで)をすべて管理し、挙句には成人した息子にくっついて上京してしまうほどの異常ぶりを発揮。結婚したガープが手元を離れてからは、自分の周りを女性のみで固めようとします。そんな彼女の周りに集まる女性達は、男への反発を生き甲斐にしているような人たちばかり。ガープの母はとっくに看護師ではなくなったにも関わらず白衣を着続けますが、これは彼女が尼僧に等しい存在であることの比喩であり、極端なフェミニズムは宗教に等しいと言っているものと解釈できます。ガープの妻は彼女達のような積極的なフェミニストではありませんが、生活がつまらないからという勝手な理由で浮気をし、その浮気が原因で子供を一人死なせてもロクに謝罪や反省もなく、「私だってツライのよ!」と開き直る始末。本作に登場する女性にはロクな者がいません。一方で、本作中もっとも女らしく、人格的にも優れているのは性転換をした元オトコであり、「女らしさ」とはそれを求める男の中にのみあるもので、女性というのはそれほど崇高な存在ではないと言っているかのようでした。
[DVD(字幕)] 6点(2010-06-26 14:20:24)
784.  おくりびと 《ネタバレ》 
最近の邦画にありがちなこと、①何でもセリフで説明し、表現の工夫を怠ってしまう、②結末ありきで物語が進行し、現実的にありえない極端な展開へのフォローもない、③とりあえず泣きに走れば何とかなると思っている。。。うれしいことに、本作はこのような邦画病に陥ることなく、映画らしい映画になっていました。「死」という重いテーマを丁寧に扱っているし、かと言って重苦しくなりすぎないよう笑いの要素も適度なバランスで入れてきており、監督や脚本家が映画人としての仕事をきっちりやってるなぁと感心しました。話の落とし所は予想通りでしたが、極端な泣きに走ることなく、説明過多でもなく、客を信用して作っていることが心地よかったです。象徴的なのが大悟と父親のエピソードで、普通の映画であれば、ラストのあのシーンでは父親の手紙か何かを登場させるでしょ。そして私を含め、観客は涙を絞り取られるわけです。しかし本作は、峰岸徹という役者と石ころという小道具のみで、それをやってしまった。安易に言葉には頼らなかったのです。こうした作り手の姿勢は大いに評価できます。さらに、アイドル演技の抜けない広末涼子を除いて役者も全員良かったし、本作は間違いなく「良作」の部類に入る作品だと思います。。。ここで、私の評価はあくまで「良作」止まりであり、「傑作」と呼ぶにはちょっと足りないかなという感じです。私達の死生観にも影響を与えるような鋭い視点がなかったし、結末も予定調和で、観客が思う以上のものがありませんでした。本作は映画として精巧に作られているためマイナス要素をほとんど持っていませんが、かと言って目立った加点要素も少ないかなぁという印象です。世界的な評価の高さはちょっと身の丈に合っていないような気がするのですが、外人さんにとっては、彼らが見たい美しい日本の風景が山ほど出てきたし、宗教色の薄い日本人独特の死生観を垣間見たことが面白かったのではないでしょうか。
[地上波(邦画)] 6点(2010-06-05 17:35:53)(良:1票)
785.  リーサル・ウェポン2/炎の約束
まず、娯楽作としての面白さは認めます。巧い監督、巧い役者が揃っているので、娯楽作としての質は保証されたようなもの。パンパンに詰まったアクションで目を楽しませてくれるし、リッグスとマータフの掛け合いも安定感抜群です。。。ただし、暗く尖っていた前作と比較すると、妙に明るくハイテンションになった本作は映画としての質は落ちています。まず、リッグスのキャラクターが原型を留めていません。「特殊部隊の経験によって人間としての重要な何かが欠落した男」「妻を亡くしたことで社会とつながる最後の糸が切れてしまった刑事」という設定がほとんど形骸化しており、一方で作品中の死体の数は一気に増加し、ある意味で第一作よりもアブナイ人になっています(メル・ギブソンが器用だったおかげで、まるで別人になったリッグスにさほど違和感がないのは幸運でした)。アクションについても、前作では当時最新だったピストルやサブマシンガンを登場させたり、ホリオン・グレイシーを格闘シーンのアドバイザーとして迎えリアルな関節技を決めさせたり、アクションにおける「それらしさ」を徹底的に追及していました。劇中における人の死も当たり前のことではなく、「街中で人が死ねばおおごとになる」という当然の描写が加えられていて、かなり丁寧に考えられていました。一方で続編の本作は、アクションはひたすら大味に、死体の数は劇的に増加、一方でアクションをフォローする理屈の部分が大幅に失われ、「リーサルウェポン」の持っていた魅力がほとんどなくなっています。捜査も行き当たりばったりで、「以前たまたま見かけた船」や「気になってたまたま入った屋敷」等によって物語が進んでいきます。前作はキチっと捜査していたんですけどね。あとは製作された時代の問題でもあるのですが、南アフリカ共和国という実在の国が一方的に悪とされていることも、今になって見ると気になります。当時はアパルトヘイトで非難されていたとはいえ、ここまで一方的なのはちょっと。大使の部屋などは、ナチスかショッカーかと言わんばかりの悪趣味さ。「じゃ、アメリカはそんなに良い国なのかよ」と嫌味のひとつも言いたくなってしまいます。そんな南アフリカも現在ではワールドカップを開催するまでになり、この風潮に従って、本作は将来的に封印作品になっていくのでしょう。ファンの方は手に入るうちに購入されておくことをお勧めします。
[DVD(字幕)] 6点(2010-06-01 16:18:18)
786.  ストレンジ・デイズ/1999年12月31日 《ネタバレ》 
今年の賞レースを盛り上げているジェームズ・キャメロンとキャスリン・ビグローが夫婦の頃に製作した作品ですが、このネタで145分はちょっと長すぎ。もっとコンパクトにまとめるべきでした。トム・サイズモアが犯人でしたという最後のドンデンなどはまったくの不要で、ドンデンに対する驚きよりも、「そんなバカな」という落胆が先に来ました。あの一歩手前で止めておけば、物語にムリは少なくなったし、上映時間もよりスッキリしたはずです。また、元警官とは思えないほど弱々しかったレイフ・ファインズがクライマックスで突然強くなったり、殺人の揉み消しをしようと主人公達を追ってるはずの警官が群衆に向けて発砲をはじめたりと、それまで丁寧に作り上げてきた物語がクライマックスで一気に引っ繰り返されていく辺りも理解に苦しみました。そして本作最大の問題はジュリエット・ルイス演じるフェイスのキャラクターで、彼女の行動原理がまったく理解不能。キャメロンもビグローもこのキャラクターに感情移入して作っていないのが丸出しで、かなり適当な描写がなされています。救いはこの役柄を引き受けたのがジュリエット・ルイスだったことで、カリスマ女優だった彼女の魅力と演技力で何とか持ち堪えています。「ナチュラル・ボーン・キラーズ」ですらヌードを披露しなかった彼女が本作では脱ぎまくって大熱演。ありがたい熱演ではありますが、同時にもったいない熱演でした。脱ぎどころを完全に間違えています。。。と、アラの目立つ作品なのですが、才能あるクリエイターの作品だけあって良い部分も多くあります。ありがちな未来像ながら社会・風俗はよく作り込まれているし、ビグローのアクション演出は相変わらずキレと美しさがあります。アンジェラ・バセットがいよいよ追い込まれるクライマックスのアクションなどはキャメロンらしい興奮の展開を見せてくれます。本来、ポテンシャルはかなり高い作品なのです。だからこそ、前述の欠点が悔やまれるところです。
[DVD(吹替)] 6点(2010-02-21 19:57:42)
787.  ジュラシック・パーク
さすがはスペクタクルの巨匠だけあって、単なる最新技術の発表会に終わらせず、ちゃんとした演出が施されています。例えばブラキオサウルスをはじめて見た時、私達はグラント博士と同様の驚きと感動を味わいます。あのタイミング、盛り上がる音楽、「えらいもん見てしまった」という俳優たちのリアクション。CGの恐竜がノシノシ歩くだけではこの映画は成立しなかった、優秀なスタッフと優秀な監督あってのジュラシック・パークなんだなぁと感じるわけです。T-REXが暴れ出す場面でも、不気味な兆候を積み重ねていよいよ千両役者登場という演出の巧さには唸ります。映画としてやるべきことがちゃんとなされているのです。。。現在になってあらためて見返すと、むしろ技術がこの映画の制約となっているような気さえします。当時の技術水準ではさすがに恐竜を出ずっぱりにすることは不可能であり、またCG恐竜に演じさせられるアクションにも限界があったため、主役でありながら恐竜の出番は抑え気味。「ジョーズ」でも効果を発揮したスピルバーグの「見せない演出」と、恐竜をなるべく出さないで済むように工夫されたシナリオの存在を感じます。こうした制約のため特に中盤はほとんど見せ場がなく、はっきり言って中だるみしており、ひとつひとつの場面を取り出すと印象的である一方で、映画全体としては他のスピルバーグ作品よりは下の出来だと言わざるをえません。また娯楽に徹するためか、物語から難しい部分を意図的に取り去っていることも残念なところ。「ジョーズ」では大人のドラマをやったのに、本作はすっかりファミリー向けになったのは70年代と90年代の違いでしょうか?科学技術と生命倫理のバランス、娯楽のためにどこまで危険を冒していいのかという問いかけ、経営者ハモンドと、それについていけない部下達との関係等々、掘り下げると面白いネタは山ほど転がっていたのに、知的好奇心に訴える部分のほとんどが切られています。その割を食ったのがマルコム博士で、「何が起こるかわからんから新しいことはやるな」と言ってるだけの、頭が固くて空気の読めない人間にしか見えません。しかしクライトンは、心配性の母親みたいな主張をさせるためにカオス理論を出してきたのではないはず。自分達の力を過信しすぎるなという本作の核となる主張をカオス理論に託していたのに、映画版ではその主張がなくなっています。
[映画館(字幕)] 6点(2009-12-29 20:19:16)
788.  プレデター
「コマンドー」でアクション映画のひとつの最終形を提示した後は、「レッドソニア」「ゴリラ」「バトルランナー」と箸にも棒にもかからない映画に出演していた州知事。アクション俳優としての適性がありすぎるためキャラが立ちすぎてしまい、彼が暴れるに足る敵がいなかったのです。共産主義国と戦っていたスタローンとは違い、東欧出身で激しい訛りのある州知事ではソ連を相手にするにも違和感があることも大きなネックでした。そんな中、「1000人の敵もひとりで倒してしまうコマンドーと、宇宙から来た凶悪エイリアンが戦ったら?」という中学生レベルの企画を持ってきたジョエル・シルバーは、アクション映画のプロデューサーとしてまたしても百点満点すぎる仕事をしています。カレーライスにトンカツをのせてみよう、ハンバーグに目玉焼きをのせてみよう、単純だがその豪快なサービス精神に惚れてしまう、そんなナイスな企画です。以上、着想の段階では冗談のような趣旨の本作なのですが、一方で映画の作りは意外なまでに丁寧なもので、このサジ加減、プロとしての誠実な仕事ぶりは大変評価できます。。。まず脚本。州知事のみならずひとりひとりのキャラが立ちまくった特殊部隊の面々はよく作り込まれています。序盤にて彼らの圧倒的な強さを見せつけ、そんな彼らが得体の知れない敵に狙われていることを認識し、やがて壊滅へと追い込まれていくという展開はバランスの良い配分となっています。プレデターがなかなか姿を現さないという焦らし、そしていよいよ全貌を現すタイミングも良く、アクション映画の脚本としてはかなり完成度の高いものと言えるでしょう。次にプレデターのデザインですが、これは全盛期のスタン・ウィンストンが担当し、さらにジェームズ・キャメロンがスケッチに手を加えたという贅沢な過程で生み出されただけあって、そのインパクトは強烈なものがあります。ハイテクを使いこなし、一方で屈強な体力も有する野獣というありそうでなかった特性のエイリアンなのですが、ハイテクと野性味のバランス、見た目の異様さ、そして他に似たもののない斬新さが同居した、非常に秀逸なデザインとなっています。。。唯一残念なのはマクティアナンの演出が一本調子なことで、プレデター発見→特殊部隊が銃を乱射という同じようなアクションを何度も見せるだけなので、画にメリハリがありません。もう少し工夫が必要だったでしょう。
[地上波(吹替)] 6点(2009-10-12 00:41:05)
789.  ハンテッド(2003)
要するにランボーを追うトラウトマン大佐の物語なのですが、贅肉を極力落とし、男と男の対決という荒削りな話にしていることには好感を持ちました。また、殺人マシーン・デルトロが「俺の父親」とまで尊敬するトミー・リーが、実践経験がなく軍に籍も置いていない非正規職員だったという設定も興味深く、この手の作品としてはなかなか良い脚本だったと思います。ただし、30年も前に全盛期を終えたフリードキンの手腕がところどころサビついており、21世紀のアクション作品においてこの程度の演出ではツライなという印象です。冒頭の戦闘シーンからして残念な仕上がりで、「プライベート・ライアン」も「ブラックホーク・ダウン」も存在していた2003年においてこんな古臭い戦闘シーンを見せられてもという感じでした。また、デルトロを連行する軍の管理体制や、FBIの捜査態勢が甘く、デルトロの強さよりも彼らの無能さの方が目立っていました。一方、70年代の監督だけあってトミー・リーとデルトロの対決はよく出来ています。彼らの執念とも言える追っかけは見ごたえがありました。市街地でのアクションなど入れず、「アポカリプト」のように90分間ひたすら密林での追っかけをやった方がよかったのではと思います。
[DVD(字幕)] 6点(2009-07-26 18:46:05)
790.  ザ・セル 《ネタバレ》 
映像美は圧巻でした。グロいんだけど独特の美しさがあり、斬新なアイデアに満ちた精神世界はもちろんのこと、SWATが出動し、ヘリが飛び回る現実世界の描写もリドリー・スコット作品のようで非常にかっこよかったです。ジェニファー・ロペスもかつてないほど美しく撮られており、この監督のビジュアルセンスはスコットやフィンチャーをも超えているように思います。ただし脚本のツメが甘く、作品全体としてはもうひとつ及ばぬ出来なのが残念。本作は「羊たちの沈黙」と「マトリックス」を比較対照とすると弱点がよくわかるのですが、事件に対する登場人物たちの思いや姿勢があまり描かれていないこと、また「煽り」が不足していたことが問題だったと思います。他人の精神世界にダイブするという非現実的な仕事を観客に受け入れさせるには、それに従事する人々がどのような覚悟や姿勢を持ってこれにのぞんでいるかを掘り下げる必要がありますが、まずこれをやっていません。また、生死の危険を冒してまで被害者を救おうとするキャサリンの、事件に対する思いや覚悟も描き方が甘かったように思います。同時に、彼女が行おうとする「リバース」と呼ばれる処置がいかに危険であるかの煽りが不足していたため(「それは危険だ」と同僚の研究者が警告するのみ)、これを断行する際の緊張感や、「いよいよ最後の禁じ手を使うか」という高揚感が出ていませんでした。また精神世界へのダイブにおいて、彼女の個性のどんな面が強みとなっているのかが明確に説明されていないため、スターガーの悪の面と対決する際の彼女の武器が観客に伝わっておらず、戦いにメリハリがありませんでした。さらに、タイトルにもなっている「セル」によるタイムリミットも作品の面白さにはほとんど貢献しておらず、せっかくの設定を一刻を争うような緊張感につなげていなかったのは残念でした。
[DVD(吹替)] 6点(2009-07-26 18:25:42)
791.  ファーゴ
監督が何を言いたかったのかよくわからない映画でした。もしかしたら、ド壷にハマる人間を眺めるブラックコメディをやりたかっただけなのかもしれませんが、コーエン兄弟の映画にはコメディとは思えない度の過ぎた毒があり、最後に明確なオチやネタバラシもないため、「これは一体どういう映画だったのか」と自分の中で消化しきれない部分が残ります。脚本や演出の技術は非常に高いため、「よくわからなかったが、何か良いものを見たのだろう」という錯覚すら抱かせます。。。以上、全体の総括ができなかったため高い得点は付けませんでしたが、本作を構成するパーツは魅力的です。失態を重ねる無能な犯罪者と、さほど苦労もなく彼らを追い詰める田舎の妊婦所長(体を張って犯罪に立ち向かう一般的な警察像へのアンチテーゼ?)という構図からしてよく出来ています。一般の映画に出てくる犯罪者は頭のキレるプロフェッショナル揃いですが、現実的に考えると、頭の良い人間は犯罪に手を染めません。マトモな頭があれば、犯罪はリスクが高すぎることがわかるのです。よって、場当たり的に行動し、ちょっと考えればわかるようなミスを山ほど残していく本作の犯罪者は、ある意味で真を突いています。他方これに対する妊婦所長は、この手の映画にありがちなウルトラC級の推理などは披露しません。現場の状況から常識的に推測できることをつなぎ合わせ、それを辿ることで難なく犯人へと行きついてしまいます。殺人の現場に立っていてもランチやおやつの心配をしたり、捜査の過程でよその街に寄ることがあれば昔の友達に会ったりと、決して執念の捜査というわけではなく、また平気で人を殺す犯罪者への怒りを口にすることもなく、田舎のお役所仕事という側面が強いことにも独特のリアリティがあります。他にも、ガラスの外に現れた覆面の男を見ても状況が掴めず、誘拐犯が家に侵入する様子をボーっと眺める被害者のリアクションなど、映画としては掟破りだが確かにリアルだという描写が多く、監督達の鋭さには舌を巻きます。
[DVD(吹替)] 6点(2009-07-21 19:05:49)
792.  ディセント 《ネタバレ》 
最近は聞かなくなった表現ですが、昔のニュースでは雪山で遭難などが起こると「○○大学のパーティーが行方不明になりました」と言っていました。それを聞いて「そんなとこでパーティーなんかするからだよ」と思ってた子供の頃の私。この映画を見ると、その頃の気持ちが甦りました。金と時間にそこそこ余裕があって気力・体力も自信のある女性方が、入っちゃいけない洞窟に入ってえらい目に遭うというお話。「そりゃ入ったあんたらが悪いよ」と、若者のやんちゃを戒める町内会の年寄りのような冷めた目で見てしまいました。この映画、演出・演技・視覚効果はどれもなかなかのレベルです。飛び上りそうなショックシーンがいくつもあるし、最初は自信まんまんのみなさんが「あ、ヤバイかも」「これは本格的にマズイ」「あ~~~助けて~~~!」と追い込まれていく心理的圧迫感も表現できていたし、洞窟も本物にしか見えません。地底人だって本当にそういう生き物がいるかのようなデザイン、質感だったし、天井にぶら下がる場面などではいかにも「吊ってます」とは見えない絶妙なサジ加減で身体能力が表現されていました。以上なかなかよく出来ているのですが、どうしても「入ったあんたらが悪い」に邪魔されて乗り切れなかったのが残念です。一方、職業探検家がスポンサーからの指示を受けて洞窟に入り、地底人に襲われる「地獄の変異」は好感を持って見られたことを思うと、やはり登場人物に憐れを感じられなかったのは大きいようです。こちらではむしろ地底人のことをいろいろ心配してしまいました。長年誰からも気付かれずひっそり生きてきたのに、突然の侵入者が大騒ぎして仲間が大勢殺されてしまう地底人のみなさん。女性地底人も登場しますが、地底人にも性別があって若いうちは恋愛とかしてるんでしょうね。あのルックスでもモテるモテないの差があったりして。なのに、それをブチ壊してしまうパーティー達。目が見えるやつとの勝負なんて卑怯じゃねぇか!という地底人のみなさんの焦りと憤りが画面から伝わってきました。ラストはパーティーによる大殺戮。そして誕生日会の場面で映画は終わります。以上、パーティーにはじまりパーティーに終わる映画でした。
[DVD(字幕)] 6点(2009-01-11 21:28:16)(笑:1票) (良:1票)
793.  ラスト・ボーイスカウト
メンツの時点で中身は推して測るべしな90年代アクションですが、あらためて見返してみると、冒頭15分のみ完璧な仕上がり。「フットボールはお祭りですよ!」とバカバカしいまでの盛り上がりの音楽でスタートしたかと思いきや、本編最初のカットは一転して重々しい雨のスタジアム。何やら電話を受けた選手が深刻な顔をすると、試合の真っただ中に突如銃を取り出し、相手チームの選手を射殺するという空前絶後の掴みで物語が開始されます。次に来るのは登場人物の紹介場面。真っ昼間から酔い潰れるいかにもしがないブルース・ウィリスですが、そんな彼が部屋のわずかな変化を察知し、クローゼットにいるであろう妻の浮気相手に対して鋭い脅しをかけるたった数分の描写で、人物像をほぼ完璧に見せ切っています。妻の浮気相手がよりにもよって主人公の親友であることも、本来は敏腕であろう彼が、家族からも友達からも尊重されない人間になり下がっている現状を見事に表現。また、奥さんは郊外に似つかわしくない美人なのですが(梅宮アンナ似)、恐らくは主人公が輝いていた頃に結婚し、その後何かのきっかけで落ちぶれていったために家族からも見放されることになったことを想像させます。本筋となるアクションも主人公達のドラマも非常にエッジの立ったものを期待させ、「ただのアクション映画じゃないぜ!」というオーラをムンムンに放っているのです。しかし、そんな秀逸な冒頭15分を過ぎると映画の質は一気に低下します。シリアスな雰囲気からはじまった作品が、リーサル・ウェポンのようにベラベラとしゃべりまくるただのバディアクションに早変わり。あれほど家庭が荒れていたはずなのに、いきなり「お父さんを探しにきた」と言ってアクションに加わる娘などは、物語前半と後半ではまるで別人となっています。丁寧に陰謀を説明してくれる敵ボスのカックンぶりや、安物のニコラス・ケイジのような中ボスの壮絶な印象の薄さも見逃せません。取ってつけたような大団円を迎えるラストも最悪で、無精ヒゲを剃り、髪型もバッチリ決めたブルース・ウィリスのわかりやすすぎる変化ぶりに笑ってしまいました。本来はよくできた脚本だったのに、一般客向けに角をとってしまった結果、どうにももったいない出来になってしまったようです。トータルではあまり評価できない映画なのですが、作品中の荒れた部分は物凄く魅力的なので部分評価で6点とします。
[DVD(字幕)] 6点(2008-09-01 02:51:38)(良:1票)
794.  父親たちの星条旗
イーストウッドとスピルバーグのコンビだけに相当な期待をしましたが、残念ながら私はイマイチに感じました。もちろん戦闘シーンは完璧。さすがは軍事おたくのスピルバーグがついているだけあって、ビジュアルのインパクトだけでなく艦砲射撃や爆撃などの現実的な作戦もきっちり見せ、かつ当時の兵器も続々登場して戦争映画の醍醐味を味わわせます。残酷シーンも手抜きがなく、硫黄島の場面はスピルバーグが演出したのではないかと思うほど良くわかってる仕上がりです。一方で問題なのが脚本の構造で、戦争映画において時間軸を解体するという前代未聞の試みが完全に裏目に出ています。読書家のイーストウッドは、かねてから原作の改変をせずほぼ忠実に映画化する監督さんですので、今回の原作の膨大な要素を切り捨てることなく2時間強に収める苦肉の策として時間軸の解体を行ったのだと思います。複雑な要素をすっきり整理するにはエピソードのコラージュは確かに効果的ですが、それが機能するのはパルプ・フィクションのようにエピソードによって演出の色合いを変えることで観客の頭を混乱させないという手続きが取れる場合のみです。「兵士ひとりひとりの区別がつきにくい」という弱点を元々持っている戦争映画でそれをやってしまうと、「さっき死んだのは誰だったっけ?」という混乱が当然生じるのです。また、本作は戦場における死が大きなテーマですが、それを描く上でも時間軸の解体はまずかったと思います。死を悼む気持ちには2種類あります。他人だろうが何だろうがとにかく人が死ぬことは悲しいという倫理的なものと、親しい友達や家族が死ぬことが辛いという個人的な感情とです。そこに来て「仲間が死に行く中で偶然英雄にされた男達の苦悩」を扱った本作においては後者が強調されるべきだと考えられますが、時間軸の解体をやってしまうと各キャラクターへの感情移入ができていないまま「さっき登場したあの人が死にましたよ」みたいな描き方となってしまうので、戦場で多くの人が続々と死んでいくことのやるせなさは伝わりますが、かけがえのない仲間が死ぬことの悲しみは伝わりません。上映時間が3時間を越えてもいいから、戦場での友情ドラマをまずやって、そうやって観客達も好きになった戦友たちがどんどん死んでいき、にも関わらず本国へ帰ると英雄扱いされて戸惑うという正攻法な流れで描くべきだったと思います。 【2016/11/7追記】 ブルーレイで見直しましたが初見時と同じ感想でした。この内容ならば戦場場面と戦後パートは不要であり、戦時国債発行ツアーに焦点を絞ってもよかったような気がします。戦場の描写がほぼ皆無でもちゃんとしたベトナム戦争映画になっていた『ランボー』第一作みたいな作りにすればよかったわけですから(ただし、そうすると『硫黄島からの手紙』という副産物ができなかったのですが)。 また、ライアン・フィリップ演じる主人公ジョン・ブラッドリーの個性が薄くて観客にとっての感情移入の依り代になれていない点にも問題があったと思います。実際の戦場では使えなかった奴なのに英雄扱いにノリノリだったレイニー・ギャグノンとか、戦友達に対する敬意が大きすぎて英雄扱いに耐えられず精神を病んだアイラ・ヘイズとか、言うことを聞かない広告塔達をなだめながら国債ツアーを進めるキース・ビーチとか、キャラ立ちした登場人物が大勢いる中で、なぜジョン・ブラッドリーを中心にしたのだろうかと思いました。特にレイニー・ギャグノンとその婚約者の低俗さは最高で、この人物が国家と大衆に消費された後に落ちぶれていく様を描くだけでも、一本の映画として十分に成立したのではないかと思います。
[映画館(字幕)] 6点(2006-11-26 02:41:07)(良:1票)
795.  ティアーズ・オブ・ザ・サン
アントワン・フークアという人物は良い監督なんだか悪い監督なんだかよくわからない人です。この人はマイケル・ベイやサイモン・ウェストらと同じプロパガンダ・フィルムズの出身で映像は確かにMTV風なんですが、ベイのような軽さやバカっぽさがなく、意外とどっしりとした映画を作ってみせます。そういった意味では本作に適任と言える人物で、火薬大量消費のアクションパートと重苦しいドラマパートの色合いを違和感なくまとめられたのは彼の手腕あってこそだと言えますが、一方でストーリーテリングに無頓着なところが見られます。困難な作戦に挑む特殊部隊の物語なのに、人数もさほど多くない隊員ひとりひとりの名前すらよく確認できないという見せ方はさすがにないと思います。せっかく個性的なメンバーが揃っているのに、彼らが誰だかよくわからないまま死んでいくというのは実にもったいない。また難民の描き方も中途半端で、最初から最後まで彼らはお荷物でしかないのでは感情移入できません。特殊部隊にはない土地勘を活かして協力関係が築かれるという話にすれば、彼らの存在感や見せ場のバリエーションも増えたはずです。そしてなんといっても最悪なのがケンドリックス医師の扱いで、せっかく助けに来てくれた特殊部隊に文句しか言わないバカ女にしか見えません。ウォーターズ大尉の行動にはケチをつける一方で、敵に追われてるのに休憩させてくれなどと危機意識ゼロのことを言い出したりで、本当にイライラしました。確かに、彼女の連れている難民は子供や病人が多数いて、彼女は自分のためではなく彼らを気遣って無理を言ってるのですが、そういった面が伝わる描写がまったくないのでバカ女にしか見えないのです。そんな感じでツメの部分で失敗しているのがもったいない限り。基本的にはそれほど悪い映画だとは思いませんでしたから。また、多くの方が指摘されているようにアメリカ万歳的な部分もありましたが、あれは製作側が意図したものではなくアメリカ人の地が出たものだと思います。私が一番不自然に感じたのは越境に成功した難民が「自由だ!」と叫ぶところで、自由を絶対の価値観とするアメリカ人ならではの発想だなと。また、大統領の息子が「私の父は民主主義の普及に努めていまして」なんて語るシーンもやはりアメリカ的。アメリカ人は自由や民主主義が世界的な価値観だと信じ込んでるんだなというのがよくわかります。
[DVD(吹替)] 6点(2006-11-23 19:12:30)
796.  太陽の帝国(1987) 《ネタバレ》 
スピルバーグ作品中でも注目度や知名度の低い作品ですが、今になって見るとスピルバーグ本人の中ではけっこう重要な作品なのではないかと思います。スピルバーグの感傷的な演出がこの映画ではほぼなくなっているのがまずひとつ。死人から靴を奪う、他人の食器を盗んで2人分の食料にありつくなど倫理的にいかがなことを平気で出来るようになることが主人公の成長として描かれてる上に人間関係もきわめてドライで、収容所内ではみんなで助け合って生きているように見えても、少し目を離しただけで自分の物を盗まれるなど結局は自分のことしか考えていない様子。保護者役をやっていたベイリーも慕ってくるジムに愛情をかけているとは言いがたいものがあります。キジ獲りの罠を仕掛けるエピソードでは、地雷が埋まっている可能性のある鉄条網の外へジムを行かせ、彼が生きて帰るかどうかを賭けるなんてことをやっているし、結局はジムに黙って収容所を脱走して姿を消してしまいます。損得関係なく唯一心を通わせていた日本人の男の子もベイリーに殺され、4年の間で作ってきた人間関係は完全に消滅。ひとりになったジムはようやく両親に再会しますが彼は両親の顔を忘れており、再会の感動もないまま死人のような無表情で話が終わるという絶望的なラスト。最近のスピルバーグならともかく、20年も前にここまでの映画を撮っていたというのは驚きです。また、死への執着というもうひとつの特徴がこの映画では見えはじめています。スピルバーグを語る上で死は不可欠な要素であるもののその性質が判明したのはシンドラーのリスト以降なのですが、この映画にはその後の彼を思わせる描写が見受けられます。冒頭からして揚子江に浮かぶ棺からはじまり、主人公は少年でありながら多くの死に直面します。しかも死に行く者がのたうち回ったり何か言い残して死ぬという映画にありがちな劇的な描写ではなく、何の言葉も発することなく気がつけば死んでいたという突き放したような死。死は刹那的に訪れるというのがスピルバーグの認識のようですが、それを映画の中ではっきりとやったのはこれがはじめてではないでしょうか。後にシンドラーのリストやプライベート・ライアンでやる演出のプロトタイプみたいなシーンもあるし、作品自体は少々間延びして退屈ではあるものの、スピルバーグのその後を思わせる描写がいくつもあるので見る価値のある映画だとは思います。
[DVD(字幕)] 6点(2006-11-10 00:52:42)(良:3票)
797.  荒鷲の要塞
こういう映画を見ると、映画の技術というものは確実に進化しているのだなと実感させられます。主人公には弾が当たらないのにドイツ兵はバタバタと死ぬ、ドイツ兵はバカみたいに主人公の罠に引っ掛り続ける等、この時代の映画の見せ方は現在のアクション映画とは比較にならないほど稚拙だと言えます。また脚本の練り方も現在の水準からすればつっこみが非常に浅く、味方の中に3人も二重スパイがいながら主人公達や観客が翻弄されるという展開がない(彼らを巧く使えば前半の山場になったはずなのに)、いち早く潜入に気付いたゲシュタポ隊長をすぐに殺してしまう(彼を好敵手にすれば盛り上がったはずなのに)、救出したカーナビー将軍は一言もしゃべらず主人公達のうしろにくっついてるだけで存在感ゼロ(あのチームではただひとりの異色な存在だったんだから、彼にも見せ場を与えれば話の幅がもっと広がったのに)、スパイいぶり出し工作という最高のアイデアがセリフだけで説明される(話の展開とともに少しずつ全容が明らかになれば最高に面白かったはずなのに)等、おいしくなりそうなところを相当素通りしています。とにかく主人公達が圧倒的に強く、彼らの計画が式次第通りに進んでいくだけなんですね。相当困難なミッションをやってるわけですから、一筋縄ではいかない展開の方がおもしろいのに。警戒厳重な拠点に潜入しながら、周りが敵に囲まれているという緊張感もないし。そんなわけで現在の水準と冷静に比較すればレベルの高い作品とは到底言えませんが、だからと言って現在では評価に値しない作品だというわけでもありません。年代ものの映画特有の雰囲気とでも言いますか、現在では到底出せない絶妙な空気を映画全体が放っているのです。困難なミッションを与えられた主人公達が超人的な活躍をして当然のように成功を収めて帰還する。戦争ファンタジーとも言えるこのような話をお笑いにすることなく真っ当な映画として成立させるのは、現在ではちょっと無理だと思います。この時代の映画だからこそこのような設定でも素直に成立しているのであり、古風な脚本、レトロな撮影、往年の俳優の存在感など映画全体が放つ昔ながらの空気に馴染むと、「今だったらこう作ってるのにな」なんてことを考えるのは野暮。そういった意味では十分に評価すべき作品であると思います。
[DVD(字幕)] 6点(2006-11-07 23:44:45)(良:1票)
798.  アンダーワールド/エボリューション
前作と本作を見た感想は、面白くなりそうな駒を揃えているのに、いまいち不発なのはなぜだろうということです。ブレイドやマトリックスの露骨な後発作品ではあるものの、ヴァンパイア族とライカン族の抗争という新機軸を持ってきた前作にはバカバカしくもはじけた映画になることを期待していたのに、どうにも不発。予算が拡大した続編も前作と作品の質は同等で、いまいち盛り上がりに欠ける印象です。レン・ワイズマンという人物はプロデューサー向きの人物であって監督には不向きなような気がします。このシリーズ、面白くなりそうな駒は揃ってるんですよ。ヴァンパイアとライカンというふたつの種族を登場させることで、ヴァンパイア単品で勝負している他の作品よりもアクションやキャラクターのバリエーションは確実に広がっています。さらに続編の本作は「最強の始祖vs新世代の混血」という燃える構図を準備しており、そこにヴァンパイアの特殊部隊なんかも絡んできて良い意味でマンガ的。撮影は美しいし、出演者も良くハマってるし、アクションやSFXも頑張ってるので普通にやってれば間違いなく面白くなりそうな映画なんです。これだけの駒を揃えてきたレン・ワイズマンはなかなかのもんだと思います。ただし肝心の演出が平板で、作品全体でのテンションの配分が全然できていません。見せ場の連続なのにどこか退屈。ラストのバトルなんて、最強のヴァンパイア&ライカンにパワーアップしたヒロインがぶつかるという最高に盛り上がるべきパートなのに、「さぁいよいよ決戦だ!」みたいな高揚感のないまま戦いがはじまり、それぞれの力量を十分に見せ切らないまま終わります。マンガ的な話なのにマンガ的な盛り上げをしないのがいけないんだと思います。その辺の描き方が抜群にうまいドラゴンボールでも見て勉強すべきですね。決戦をはじめる時の盛り上げやヒーローを登場させるタイミング、各キャラの力量の描き分けなど、ハリウッド映画ができないことを日本のマンガは余裕でやってますから。
[DVD(吹替)] 6点(2006-10-29 21:02:51)(良:2票)
799.  ブルース・オールマイティ
自分の人生は最悪だと思ってた主人公が「素晴らしき哉、人生」に気づくまでという、超オーソドックスな物語です。日本人には神様を恨むなんて感覚はありませんが、自分はなんて運が悪いんだと運命を呪いたくなることはよくありますよね。そういう時にこれを見ると、少なからずポジティブになれる映画です。主人公もジェームズ・ステュアートのように清廉潔白そのものって感じの人物ではなく、私達のようにいやらしい欲望を持った人物ですから、自分の日常を投影して見ることができます。神様の力を得て欲望を実現するというのも、現実逃避のためによくやる妄想。それを映像化したということで、前半はとっても楽しい仕上がりでした。何かデカイことをするわけでもなく、あくまで日常のゲスい欲望を満たすために神の力を使うってのがいいですね。ジム・キャリーの顔芸も光ります。しかし一転、後半は一気にトーンダウンし、物語の結論もあまりに月並みなものとなってしまいます。「神通力をもっても人の心は変えられない」「傲慢さが愛する人を遠ざける」「あるがままの自分を受け入れよう」「何気ない日常こそ幸せ」・・・新味のない上に説教くさい話ばかりで、まるで道徳の授業のような居心地の悪さを感じました。神様のセリフも陳腐なものばかりで、モーガン・フリーマンでなければ目も当てられなかったことでしょう。テーマの時点でコメディタッチの感動作を狙った映画であることはわかりますが、もっと独自の結論を準備して欲しかったですね。あの主人公が最後には真っ白な人物になってめでたしめでたしではなく、人を食ったようなところを少しは残していてくれればまだよかったのですが。
[DVD(吹替)] 6点(2006-03-05 22:54:14)
800.  バットマン ビギンズ
いやぁ、なんだか惜しい映画でしたね。アメコミ番長デイビッド・S・ゴイヤーの書いた脚本は非常に秀逸。ブルース・ウェインがなぜバットマンになったのかが素晴らしいドラマとして描かれており、きれいに伏線まで張っていくという丁寧なお仕事には参りました。ドラマパートがメインとなる前半では、「これは史上空前の傑作になるのでは?」と期待しましたよ。続々と登場する豪華俳優陣にも唸りっぱなし。マイケル・ケインを見れば英国人の執事が世界最高であることがよくわかるし、やっぱりリーアム・ニーソンはかっこいいです。クリスチャン・ベールも期待以上によかった。当初ブルース・ウェインをオファーされていたキアヌ・リーブスとも、こうして見ればなんだか似てるし。しかし問題は、ブルース・ウェインがバットマンになってからです。バットマンが・・・ダサイ・・・。それはデザインがティム・バートン版を超えていないのもそうですが、見せ方がうまくないんですね。ヒーローに必要なケレンとか色気が完全に欠けていて、普通のアクションになってしまってるんです。コミックヒーローのアクションが他と大きく違うのは、動きではなく画にこだわらねばならないことです。例えば「スパイダーマン」の場合、サム・ライミは実際のコミックのカットをそのままアクションの画の中に取り込んだと言います。バートン版バットマンも同様で、両者共にポーズにこだわりがありました。しかし今回のバットマンはやたらカットを細かく切っているため、もう何がなんだかわかりません。バットマンの全身像がほとんど写らないことからも、そのあたりの感覚が決定的に欠けていたことがわかります。クリストファー・ノーランは才能のある監督だとは思うのですが、コミックをやるには演出が硬すぎましたね。もっと自分のセンスに自信があり、躊躇することなく遊び心を出せる監督が必要でした。つまり悪ふざけが出来るというのが、すれすれの過剰演出が要求されるアメコミ映画の監督に必要な条件なんです。バートン、ライミともに悪ノリが得意な監督だったでしょ。あともうひとつ。ヒーローには「バットマン参上!」って感じの特徴的なテーマ曲が必要なのですが、音楽もいまいちでした。H・ジマーとJ・N・ハワードの共作だというのに、あまりよくありませんでしたね。やっぱりアメコミはダニー・エルフマンじゃないとダメなんですね。
[映画館(字幕)] 6点(2005-06-24 00:50:36)(良:2票)
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