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Cinecdockeさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 886
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自己紹介 ハリウッドのブロックバスター映画からヨーロッパのアート映画まで何でも見ています。
「完璧な映画は存在しない」と考えているので、10点はまずないと思いますが、思い入れの強い映画ほど10点付けるかも。
映画の完成度より自分の嗜好で高得点を付けるタイプです。
目指せ1000本!

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821.  ハウルの動く城 《ネタバレ》 
原作既読。"ハウル"と言ったら、宮崎アニメのことを思い出してしまうくらい、悪い意味で原作との剥離が激しい。後半からオリジナル展開でも面白いならまだしも、老人介護や疑似家族、戦争をクローズアップしながらも崇高だと煙に巻いて、無理矢理大団円にしてしまう無責任さだけが残った。躍動感あふれる演出と音楽の相乗効果が素晴らしいだけに大幅減点は避けられない。話題性だけで倍賞とキムタクを利用する意味はあったのか?
[DVD(邦画)] 4点(2015-06-30 19:18:49)
822.  ツリー・オブ・ライフ 《ネタバレ》 
冒頭のヨブ記の引用と「世俗に生きるか、神に委ねるか」という台詞が全てを物語っている。「物質主義的な父親が努力ではどうにもならない挫折を体験、改心して真の心の豊かさを手に入れる」という極めてシンプルな家族ドラマをわざと難解にしているだけ。それだけならまだしも、壮大すぎるイメージ映像の羅列を家族ドラマと結び付ける暴挙には失笑が漏れる始末でした。ルベツキによる映像の力は完全に否定できない、むしろ素晴らしいが、この映画の前ではどうしようもない。そもそもマリックの映画は自分には合わない。もっと普通の映画を撮ってください。一番の罪は、これを感動大作として偽って全国公開してしまった配給会社だろう。
[映画館(字幕)] 4点(2015-06-21 18:24:13)
823.  サクリファイス 《ネタバレ》 
『ノスタルジア』の延長線上にあたる作品なのかな、と思う。長いワンシーン・ワンカットの流麗なカメラワークと映像美は素晴らしく、核戦争を揺れだけで表現するあたりは鮮烈。行きすぎた文明社会が根底から覆される時代に突入する寸前、父親は全てを捨てる代わりに、神に救済を求める。家政婦マリアは聖母マリアの暗喩のように思えるし、陰陽魚太極図のロゴが彫られた黒いバスローブを身に纏い、尺八のBGMをバックに家を燃やし尽くすシーンは、東洋の僧の出家を想起させる。精神的な殉教という意味で前述した『ノスタルジア』に通じるものがあった。過去という虚栄を築き上げた自分勝手な大人を全て否定したことで、はじめて息子は言葉を発する。これからの世界はその時代の人間が作り上げるものであり、老醜を晒す前世代が口を出す権利はない、とタルコフスキーは次世代の子供たちにメッセージを発しているようだ。
[DVD(字幕)] 6点(2015-06-21 14:20:41)
824.  世界にひとつのプレイブック
精神疾患を抱えた男女のロマコメというキワモノ的な題材の割に、案外普通の映画で褒める部分が何もない。いや、キワモノを普通に描けたからこそ絶賛されたのかな、という感じです。これが主演女優賞だなんて信じられない。
[ブルーレイ(字幕)] 4点(2015-06-20 01:09:48)
825.  シン・レッド・ライン
ほぼ同年に作られ、時代背景もジャンルも似ている『プライベート・ライアン』と比較されるが、方向性が全く逆の"戦争アート映画"。美しく詩的な映像と熾烈な戦闘シーンのコントラストは印象に残るが、退屈なシーンはとにかく退屈で、目的を果たしたあとの最後の一時間は拷問のようだった。これだけの豪華キャストなのに下手すれば誰なのかも分からないチョイ役レベルの扱いは勿体ない。それなら別に無名の役者でも成立するんじゃ・・・仮に理解できて感じられても、「だから何だ?」としか感じられないな、自分は。
[DVD(字幕)] 3点(2015-06-19 23:57:32)
826.  FEAR X フィアー・エックス 《ネタバレ》 
これは自己破産しても仕方ないのではないか。妻殺しの犯人を探す警備員を描いたサスペンスのように見えて、後半は訳分からないデヴィット・リンチ的世界なんだもん。レフン監督のトレードマークである露骨な暴力描写を避け、自分のスタイルを模索している姿が垣間見える。出張していた警官が主人公の妻を巻き込んでしまったのが真相なのかもしれないが、後半はその警官に視点が置かれるため、主人公の影が薄くなって、追いていかれた感じが否めない。そもそも警官は主人公が作り出した妄想の産物なのだろうか? それとも警察が事実を隠蔽したのだろうか? どこが現実でどこが妄想か曖昧で余計分からなくなる。今まで撮りためてきた容疑者候補の写真を捨てた主人公は、わだかまりを抱えながら生きていくのだろう。エンドロールの冷徹なシンセサイザーが異様な赤い世界と打って変わって際立つ。
[DVD(字幕)] 5点(2015-06-09 19:48:29)
827.  オンリー・ゴッド 《ネタバレ》 
『ドライヴ』の熱狂と期待の反動もあるのだろう、賛否両論の極致とも言えるカルトムービーの怪作として再評価されるかも。過去の作品群を見れば一目瞭然で、レフンはタランティーノとは対照的なアート寄りの人間だからだ。『ドライヴ』にあった最低限で効率的な脚本を削ぎ落とし、スタイルだけで勝負するもその限界を露呈させてしまう。とは言え、凡作とは決めつけられない画の圧倒的な強度には目を見張る。何かおぞましいことが起きるのではないか、という異常なまでの威圧感と緊張感に心身ともやられてしまった。主人公より遥かに目立つ元警官のチャンは、独自の倫理感でギャングのゴッドマザーですら容赦なく裁き、『ノーカントリー』の殺し屋を彷彿とさせる一方で、優しい父親で民衆からも慕われている絶対的な存在。主人公は彼に挑むが完敗し、同時に父親殺しの罪悪感と強権的な母に苛まれて、裁かれたい、真人間として生まれ変わりたかったのだろう。チャンはそういう生き方しかできなかった人間達に対して裁き、そしてカラオケで弔う。憎かろうが死ねば仏で人として供養する侍に近いというか、物凄く仏教的。笑ってはいけない神聖な儀式だろうけど、あまりのヘンテコさに苦笑いするしかない。ただ、自分はこの世界観は嫌いではない。一度観るだけで十分だけど。
[映画館(字幕)] 6点(2015-06-09 19:45:23)
828.  ヴァルハラ・ライジング 《ネタバレ》 
低予算で作られた映画だろう。しかし、映像は力強く且つ平静を保っているようで安さを感じない。セットは最小限で荒涼な風景が隻眼の男の心象世界を映し出しているようだ。北欧神話がベースのため、その知識がないと厳しい作品であることには違いないが、一言も発しないマッツ・ミケルセンの存在感が、下手すれば破綻しかねない強靭で脆い作品スタイルを支えている。ヴァルハラは英雄の墓標を意味しているらしく、予知能力で見える血のように赤い未来に向かって、彼は心の平安を求めて死を欲しているのだと解釈した。
[DVD(字幕)] 6点(2015-06-09 19:42:55)
829.  ブロンソン 《ネタバレ》 
「有名になりたい」。漠然としたつまらない承認欲求のために、刑務所で暴れるだけの愚かな筋肉バカの話と言えばそれまでだが、レフンとハーディのタッグであるから普通で終わるはずがない。冷徹で的確な距離感を保ち、決めるところはキチンと決めるセンスが潔い。暴力でしか自分を表現できない不器用なブロンソンに対して、レフンは投影していると思うし、彼とは違う道を見つけたが故の客観性を持っている。それに応えるハーディは、一見筋肉バカのように見えて、知的でチャーミングに熱演。独り善がりと客観性、愚鈍と哲学、現実と映画(妄想)の"対比"はこの映画でも健在だ。イチモツの小ささがコンプレックスだとしたら、もっと別な方法で自分を磨くべきなのに、それしか見つけることができなかった悲しさ。身の丈に合った人生を受け入れられなければ、彼のような自己肥大化した人間になることを脳内劇場で学ぶべきなのだ。
[DVD(字幕)] 6点(2015-06-09 19:37:04)
830.  ドライヴ(2011) 《ネタバレ》 
一定のテクノビートを刻むミニマルミュージックから一気に引き込まれる。派手さとは無縁の、チェスの読み合いみたいなカーチェイスに新鮮味を覚える。それに続く、80年代テクノポップとピンクの筆記体クレジットで綴られる『ドライヴ』は、オーソドックスでありながら新しい風を呼び起こす。アメリカン・ハードボイルドとヨーロピアン・フィルムノワールが融合した文体は、不思議な浮遊感に満ち足り、かと思えば、静と動、ラブストーリーとバイオレンスの対比がアクセントとして効いている。過去も名前も不明なドライバーが、トラブルに巻き込まれた人妻と幼い子供のために、再び裏社会に舞い戻る、ありきたりな任侠映画のプロットでありながら、エレベーターのシーンで彼が歩んだ過去が凝縮されているように感じた。同時に彼女とは違う世界の人間であり、相容れられないことも。恩師を殺され、復讐するシーンでリズ・オルトラーニの"Oh My Love"を流すセンスが神がかっており、「映画に恋をする」というのは正にこうゆうことなのだろう。全てを終え、追われる身になったドライバーはもう戻らない。それでも人妻は彼を想い続けるだろうし、刺されたドライバーは彼女の温もりを乗せ、今頃生きているのかもしれないし死んだかもしれない。彼の人生を想像したとき、大きな余韻がふっと湧き上がる。
[映画館(字幕)] 8点(2015-06-09 19:34:30)
831.  コード・アンノウン 《ネタバレ》 
「コード・アンノウン」=「解読不能」というタイトルが示す通り、群像劇のスタイルを取りながらも一本の話に繋がらず、むしろほぐれてバラバラになっていく構造。冒頭と最後の子供たちの手話が象徴するように、コミュニケーションの不和により不幸に陥るか振り出しに戻る、ハネケらしい一本。最初の長回しで、乞食の女性にゴミを投げつける青年を見かねて、義憤で注意しようとする黒人も、偏見で話を聞いてもらえず、乞食の女性はルーマニアに強制送還される。地下鉄の件もそうで、中東系のチンピラが女優に唾を吐きかけ、同じ移民の老人が「恥を知れ」と止めるシーンでは、そうなる前に何故行動を起こさないのか。それは、善意でやったことが逆に状況を悪化させることを繰り返し経験していて、学習性無力感に陥っている、そんな移民問題も背景にあるのだろう。BGMもない映画で唯一、太鼓のセッションが疾走感溢れるビートを刻んで、一際印象に残る。グワングワンと鳴り響く終わりなき負のスパイラルに観客を放り込み問いかける。現在のイスラム系移民の対立や日本で検討される移民政策も他人事ではない。ハネケ入門編に最適。中級者にはちと物足りない。
[DVD(字幕)] 5点(2015-06-09 19:31:42)
832.  バーニー/みんなが愛した殺人者 《ネタバレ》 
ブラックコメディと銘打っているが、クスりとできるシーンは少なく、シニカルなシリアスドラマの側面が強い。インタビューされる住民が俳優ではない本人が演じているため、フィクションとドキュメンタリーの境界を行き来している不思議な感覚に陥る。その境目を突くように、人間は善悪では二分できない複雑な内面を持つ生き物であることを浮かび上がらせる。胡散臭い偽善者に見えるバーニーは最後まで裏表のない打算のない善人であり、確かに小心者で勇気がなかったが、すぐに自首していたら終身刑にならなかったかもしれない。では、彼をマスコット扱いし、事件をややこしくさせた住民の方が悪人に見えるが、悪意がないだけにタチの悪い結末だ。人を信じること、裁くことの難しさを改めて問いかける。判決前の画面に突き刺さるような視線が忘れられない。
[DVD(字幕)] 7点(2015-06-02 19:34:44)
833.  キック・アス
ヒットガールが何百人殺しまくろうが別に構わない。ただ、ヒットガールの立ち回りが鮮烈過ぎて、ドラマパートを担当するキックアスの影が薄くなってしまい、彼の成長物語にしては如何せん物足りない印象を残してしまった。確かに熱狂できるシーンは多く、名場面ばかりだけど、一気に醒めることが何度もあって、いつしか映画に集中できるようなムードではなかった。いろいろ言いつつも、この映画は面白い。しかし、キックアスとヒットガールがW主役であったとしてもバランスが取れてないし、リアリティとアメコミ的世界観が上手く融和せず、シーソーのように行ったり来たりするので疲れた。
[映画館(字幕)] 7点(2015-06-02 19:27:32)(良:1票)
834.  カフカの「城」 《ネタバレ》 
◆テレビ映画という制約もあるかもしれないが、今作はハネケらしさを封印し、フランツ・カフカの世界観を忠実に映像化しようとする姿勢が感じられる。非常にクセが強く、読みやすいとは言い難いカフカの小説は、当然、映画も多くの人に受け入れられる代物ではない。活字で読むよりはマシだろう。◆簡単に言えば、測量士Kが仕事で城を訪ねるが、一行に入れる気配もなく、右往左往に冬の城下町を彷徨うだけ。周りの対応にイライラするが、主人公の優柔不断さにもイライラする。ネガティヴな性格のカフカの人生を反映させているようである。そして滑稽。◆未完の小説を映画では如何してに完結させるか? 普通ならオリジナルの結末を付け加えるが、ハネケはそれを拒む。いきなり黒画面を背景に「草稿は途切れている」とテロップを叩きつけて、観客をそのまま放り出すのだ。それを含めての不条理劇として受け止めるか、何を描きたいのか分からない映画として唾棄するか。自分からすれば、その世界観に酔えるほどの感性はなかったということだ。
[DVD(字幕)] 4点(2015-06-02 19:25:48)
835.  スタンド・バイ・ミー 《ネタバレ》 
食わず嫌いだったがやっと見ることができた。見ている間より、見た後にジワジワくるタイプの映画。上映時間が89分というコンパクトさの中で濃密な人間模様が描かれる。冒険ものなのに目的が"死体探し"というあたり、ホラー作家のキングらしさが垣間見えるが、誰もが体験して二度と戻れないかけがえのない少年時代を見事に切り取った監督の手腕も大きい。鉄橋で機関車に追われるスリリングなシーン、キャンプで華を咲かせる下ネタ話、4人に影を落とす複雑な生活環境、初めて見る死体と手柄を横取りしようとするチンピラへの反抗……これらの経験がなければ、彼らは狭い世界の中で偏狭な大人達と同じ轍を踏んでいたかもしれない。弁護士になったクリスがある意味借りを返される末路に、リバー・フェニックスの死と重なり、皮肉にもこの映画を印象深くさせている。進学で疎遠になったかつての友人・クラスメイト達、現在彼らがどうしているのかと思いを馳せる。良くも悪くもあの瞬間はもう戻らないのだから。
[インターネット(字幕)] 8点(2015-05-19 00:35:54)
836.  71フラグメンツ 《ネタバレ》 
◆初期作にあたる"感情の氷河化"三部作の最後の割にレビューが全くない。前二作に比べるとかなり地味なため致し方ないのかもしれない。◆冒頭で「銀行銃撃事件により3人が死亡し犯人は自殺する」というテロップが流れる。如何にしてこの事件が起こったのか興味を惹かれる。しかし、この群像劇は盛り上がりの欠いたドキュメンタリーのように、実在のニュース映像と並行的に進められる。ハネケのインタビューによると、ここでカットすべきシーンを必要以上に伸ばしているそうで、下世話なワイドショーを即物的に求める大衆の心理を逆手に取っている。◆事件が発生するも撃った青年の動機は衝動的なもので、被害者は一切映されない。不可解な事件は出涸らし同然になり、マイケル・ジャクソンの猥褻事件といった新しいニュースが陳列される。誰かが重大な事件に遭おうが、我々視聴者は他人事のように更なる消費を求める。◆無関係で無関心だからこそ、世界の悲惨な紛争地帯を眺めても当たり前すぎて何も感じられないし何も出来ない。それでこの映画は何を言いたかったのだろう? 視聴者に対する余計なお節介は後の『ファニーゲーム』に続く。
[DVD(字幕)] 5点(2015-05-19 00:28:46)
837.  ベニーズ・ビデオ 《ネタバレ》 
豚の屠殺映像を一旦巻き戻し、繰り返し再生される冒頭。「これが現実だ」と言わんばかりの映像を編集できる"神の能力"に浸るベニーの危険性を暗示させる。映像というフレームの中でしか現実を実感できない彼は、衝動的に少女を殺しても、その行為は零したミルクをふき取る行為と同等にしか映らない。頭を丸めたり、両親にビデオを見せるのも、罪悪感や贖罪からではなく、第三者に見せることによって現実を実感したい渇望によるものだろう。そこに普通の人間とサイコパスの隔絶した溝を深める。両親もまた普段からベニーの接し方が分からず擦れ違うばかりで、殺人の隠蔽もエジプト旅行もベニーのためというより、事なかれ主義や自己保身の側面が強い。一線を超えてしまった両親に殺人を無かったことにされ、再び現実を実感できなくなったベニーが、今度は警察にビデオを突き出す顛末に、今日のメディアの情報を現実だと鵜呑みにしている大衆と重なるのは自分だけかな。『セブンス・コンチネント』同様、衝撃的で先見性のある題材だが、後半の尻すぼみは残念。原題が英語であり、主役が『ファニーゲーム』の青年と同じであることを考えると、現実と虚構の境目が曖昧になっていく世界にセットで警鐘を鳴らしているよう。
[DVD(字幕)] 5点(2015-05-19 00:22:11)
838.  セブンス・コンチネント 《ネタバレ》 
◆20年以上前の作品なのにも関わらず、全く色褪せない。今でこそ実感する文明社会の病理を題材にしたハネケの先見性には驚かされる。今と比べればまだ荒削りではあるが、既にスタイルが確立しており、実験的で挑発的だ。何せ冒頭10分まで家族の顔を一切見せないのだから。この地点で閉塞的でモノに支配されている家族の肖像が浮かび上がる。繋ぎ目に挟み込まれる居心地の悪い黒い間、効果的に登場する数字(=規則性の暗喩か)、モノや人付き合いのしがらみから解放されたい家族の渇望を表しているようだ。◆そして家族は決行する。顔を映さないまま、家具やレコードや衣服を黙々と破壊していく。紙幣を便器に捨てるシーンからしても我々が如何にモノに支配されているか分かるもの。虚栄とモノに満ち溢れた世界を破壊する背信的なカタルシスがここにある。水槽を破壊して娘が悲しんでいるところでハッとしていれば、まだやり直しができたはず。もう後戻りは出来ない。◆何も映らないテレビの砂嵐の先にあるのは、黄泉の世界なのか、"無"なのかは誰も分からない。自殺するだけならまだしもモノを破壊する理由も誰も分からない。文明社会は本当に人々を豊かにさせたのか? それでも虚無感を抱えながら、社会を維持し続けるために"奴隷"を演じ続けるしかないのだろう。
[DVD(字幕)] 7点(2015-05-05 21:38:55)
839.  かぐや姫の物語 《ネタバレ》 
◆水彩画の如く色彩豊かな四季のように、時には生き生きと、時には激しく、感情を揺さぶられた。建前と見栄で成り立った都の高官のエゴに笑いを誘われつつも、生の歓びと逞しさに満ち溢れた山間との落差を際立たせる。女を所有物とみなす都の男とかぐや姫を幸せにさせたいが余りその価値観に従った翁とは対照的に、金や権力に執着せず田畑に勤しむ媼とかつての素朴な生活に目を輝かせるかぐや姫との対比が、理想主義vs現実主義という、現代の男女の価値観の違いにも通じるものがある。◆都の苦悩も悲しみもない月で地球に憧れることは果てして罪なのか? ちょっとしたエゴで周りを傷付き狂わせたかぐや姫は存在するだけで罪なのか? 生きている以上、周囲との摩擦は避けられず、息苦しさと生き辛さを感じるのは、人の業であり罪そのものだろう。誰もが自分勝手だから悶え苦しむ。◆避けられない結末、空気を読まない極楽な曲調で連れて帰っていく月の一行。天の羽衣を着せられ、記憶(=地上での人生)をかき消されたかぐや姫は死んだように見えた。それでも残酷で醜悪な世界だとしても、己が無力だとしても、生きているだけでも結構悪くないもんさ、と諦めにも似た希望が感じられるのは80近い高畑勲の集大成そのものかもしれない。
[映画館(邦画)] 8点(2015-05-05 21:31:18)
840.  隠された記憶 《ネタバレ》 
◆「盗撮テープが送られてくる」という筋書きから引き込まれる。しかし、ハネケは犯人探しには興味なく、誰にでもある忘れ去りたい"疾しさ"を抉り出したいようだ。無意識に葬った罪の記憶。それを洗い出す過程で最後まで流れないBGM、盗撮映像と同化した長回し撮影によって、弛み切った辺りで挿入される中盤の自殺が最大限に発揮され、焼き付けられる死の瞬間と後悔を刻み付ける。背景には、かつての宗主国フランスとかつての植民地アルジェリアの関係が大きい。移民問題で露わになった憎悪が原因か? しかし、ギクシャクした親子関係も影が深く、それを象徴するのがあのラストシーン。息子同士の共謀なのか第三者による盗撮なのか分からないまま、正体不明の悪意が最後までひた歩く。観客の心にそっと囁くように……。◆当然だがフランスとアルジェリアの確執を持ち出しても日本にはピンと来ないだろう。もし発言が許されるのであれば、日本人と在住朝鮮人の関係に置き換えれば、結構分かりやすい映画かもしれない。どちらが真実かはこの映画同様、"隠された何か"(Caché)しかない。では、あなたの黒歴史は?
[DVD(字幕)] 5点(2015-04-28 22:56:32)
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