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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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881.  レッド・アフガン
ソ連の軍人として侵略行為を行っていた主人公が、祖国に裏切られたことで侵略される側につくという、ドルフ・ラングレン主演の『レッド・スコルピオン』とまったく同じお話です。はたまた、視点を拡大すると『ダンス・ウィズ・ウルブス』や『アバター』、『地獄の黙示録』とも共通する物語であり、ベトナム戦争に勝てなかったことへのコンプレックスの裏返しか、アメリカさんは野蛮の力強さを描いた映画が心底好きなんだなぁと実感させられます。。。 以上、基本的にはありふれたお話なのですが、本作の特徴となっているのは、戦車を大きくフィーチャーすることでモンスター退治の物語になぞらえているという点と(原題はストレートに”The Beast”)、異常な価値観を持つ戦車長の存在により、モラルを含めた物語としているという点です。戦車についてはソ連製の本物を使っているということで大変な説得力があり、さらには戦車の内部構造など通常の戦争映画では描かれないディティールを丁寧に扱うことで、作品自体のクォリティアップにつなげています。『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』よりも早い時期にこれだけの戦車映画を作っていたという点は賞賛に値します。。。 ただし、本作におけるモラルの取扱については、どうにも納得できないものがありました。戦車長の言動がただの狂人のものであり、その行動原理がサッパリ理解不能。これでは面白くありません。この手の悪役に必要なのは、合理的ではあるが人道に反する意思決定を平然と下せてしまうという鬼畜ぶりなのであって、支離滅裂な言動をとる悪人では作り物的すぎて冷めてしまいます。さらには、ソ連の軍人ならばどれだけ悪人に描いても構わないという当時のハリウッドの低俗な根性も透けて見えてしまい、物語にまったく乗れませんでした。
[DVD(字幕)] 5点(2013-12-28 01:48:04)
882.  セデック・バレ 第二部 虹の橋
ついに日本軍との大決戦がはじまる第2部ですが、アクションはとにかく凄いことになっています。物量で劣るセデック族は、地の利と持ち前の敏捷性を活かしたゲリラ戦で日本軍に対抗するのですが、彼らの流れるようなアクションの数々には圧倒されました。特に、断崖絶壁に日本軍を誘い込み、身動きがとれなくなったところで一網打尽にするという前半の見せ場は壮絶そのものであり、非常に危険な撮影を敢行したことが画面越しにも伝わってきます。また、クライマックスの白兵戦もハリウッドレベルの迫力であり、台湾映画史上最高額の製作費は画面にきっちりと反映されています。。。 ただし、話の整理がきちんとできていないので、映画としてはイマイチでした。反乱部族は2手に分かれ、彼らの妻子は別に移動。さらには体制側についたセデック族も現れ、複数の集団が入り乱れるややこしい話に突入するのですが、戦況の動きが丁寧に説明されないため、誰が何をやっているのかが分かりづらくなっています。感動的な音楽をバックにあるキャラクターが壮絶な死を遂げても、それが一体誰なのかが分からないということが何度もあり、ドラマが盛り上がるほどにこちらのテンションが下がるという悪循環が発生しています。台湾の人たちにとっては、今更個々のキャラクターを説明する必要もない程有名な事件なのかもしれませんが、外国人にとっては少々厳しい内容でした。
[DVD(字幕)] 5点(2013-11-26 01:20:19)
883.  エンド・オブ・ホワイトハウス 《ネタバレ》 
ローランド・エメリッヒの『ホワイトハウス・ダウン』と本作との競合が話題になりましたが、他に『GIジョー/バック2リベンジ』でもホワイトハウスが敵組織の手に落ちており、なぜか今年はホワイトハウスブームの1年でした。他の2作が大手スタジオによる製作だったのに対して、本作のみ独立系スタジオでの製作だったために製作費はもっとも控えめであり、異常なレベルでホワイトハウスを再現した『ホワイトハウス・ダウン』などと比較すると、セットやVFXが時に安っぽく感じられました。さらには、その欠点を隠したいのか画面がやたら暗くされており、何が起こっているのかが分かりづらいという問題もあって、視覚的には少々厳しい映画だったと言えます。。。 内容は、この手のアクション映画としては並レベルでした。序盤のガンシップによる大殺戮や、特殊部隊を積んだブラックホークが撃墜される場面など、記憶に残る見せ場をいくつか作り出せている点は評価できるのですが、それでも全体としては地味な場面が多く、さらには連続活劇にもなりえていないので、観客をハラハラドキドキさせるというレベルには至っていません。基本設定もバカバカしくて、国籍不明の軍用機がワシントン上空に易々と侵入してしまう序盤にはじまり、異常な人数のテロリストがホワイトハウスを取り囲んでいたり、北朝鮮の工作員が実戦配備前のアメリカ軍の最新兵器を持っていたり、防衛システム「ケルベロス」がバンカーでのみ操作可能で、ペンタゴンの介入すら受け付けないという理解不能な仕組みになっていたりと、ツッコミどころ満載。リアリティとか論理的整合性を求めるタイプの映画ではないものの、観客を2時間は騙しておける程度の方便は準備して欲しいと感じました。。。 基本設定以外の点でも、脚本は迷走気味。例えば、冒頭でファーストレディが事故死するので、これが本編に大きな影響を与えるのかと思いきや、メインのドラマにはまったく関与してきません。本作は万事がこの状態で、序盤にて、主人公と奥さんの間には何らかのわだかまりがあることが匂わされるものの、その伏線はスルーされたり、また、ファーストレディの死を巡って主人公と大統領の間に確執があるのかと思いきや、そういう展開も特になく、「何のためにその伏線を入れたのか?」と困惑させられる点が多くありました。演技力メインの激シブ出演陣も、この脚本では実力を発揮できません。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2013-11-24 02:25:56)(良:1票)
884.  マーシャル・ロー(1998) 《ネタバレ》 
劇場公開時には驚くほどヒットしなかったものの、911後にはその先見性に注目が集まった本作。確かに、その内容には凄まじいものがあります。軍隊による捕虜への拷問がひとつのトピックとされているし、アメリカが使い捨てにした地元工作員が後にテロリストになったという事実の指摘や、テロリストを生み出した国家に対してアメリカが戦争を仕掛けることにまで言及されており、1998年の時点でよくぞここまで考えていたものだと感心させられました。さらには、アメリカの入国管理がザルでテロリストが自由に入出国できる状態にあったという、911の元凶となった事項へのツッコミもあり、本作の先見性には本当に驚かされます。本作が製作された時期にはハリウッドは厭戦ムードに入っており、『ザ・ロック』や『ピースメーカー』といったアメリカの正義に対する疑念を出発点とした娯楽作が多く製作されましたが、テーマの捉え方という点において、本作は突出していたと思います。。。 問題は、映画としてまったく面白くなかったということでしょうか。映画は社会派ドラマと娯楽アクションの間で絶えず揺れ動き、結局、どっち付かずとなっているのです。前述の通り、時に鋭い指摘がなされるものの、同時に、ブルース・ウィリス率いる進駐軍がテロリストそっちのけでFBIと内輪揉めを始めたり、アラブ系住民に対する差別を糾弾する平和的デモ(いわば、テロリスト側にとっては味方)が爆弾テロの標的にされたりと、意味不明な展開が多くて参ってしまいます。「俺こそが法だ!」と叫ぶデヴロー将軍は堂々のズレっぷりですが、アネット・ベニング演じるCIAエージェントも地味にヘンです。潜入対象に情が移ってしまい、もっとも身近に爆弾魔がいたという事実に気付かないというバカっぷりを披露。CIAがこの体たらくではテロリストに勝てませんよ。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2013-10-23 00:49:34)(良:1票)
885.  愛、アムール
老老介護という平凡なテーマに、『アムール』という直球勝負のタイトルですが、そこはミヒャエル・ハネケ作品だけあって、一筋縄ではいきません。この映画、ラスト近くのワンシーンを除いては極めて単調。映画全体の密度が非常に薄く、かなりの眠気に襲われます。もちろんこれは監督の意図したところであり、テーマを煮詰めれば当然にこの構成に行き着くわけですが、この意図された退屈さをどう感じるかが、本作の評価の分かれ目だと思います。私は、この単調さに音を上げてしまったクチなので、本作への評価は低めになってしまいましたが、少なくとも一度は見る価値のある映画だと思います。テーマの掘り下げ方は素晴らしいし、俳優達の鬼気迫る演技や、ダリウス・コンジによる撮影など、見るべきものは非常に多いので。
[DVD(字幕)] 5点(2013-10-18 00:33:56)
886.  ゴーストライダー2
怪力でヘリを振り回したり、バイクが壁を垂直に登ったりといったバカバカしい見せ場のオンパレードにはグっとくるものがあって個人的に『1』は嫌いではないものの、一方であまりの世評の悪さに続編は諦めていた『ゴーストライダー』ですが、世界が『アベンジャーズ』や『ダークナイト・ライジング』に夢中になった2012年にしれっと復活。物語を無難にまとめる力はあるが、前作をそれ以上のものにはできなかったマーク・スティーブン・ジョンソンは降板し、代わって『アドレナリン』シリーズのバカコンビが監督に就任。さらには、アメコミ番長デヴィッド・S・ゴイヤーがメインライターを務めるなど、個人的にはなかなか熱いメンツで固められていて、「ひょっとしたら『ブレイド』以来の突き抜けたB級アクションが出来上がるのでは?」という密かな期待もあった本作ですが、出来はまぁまぁといったところでした。。。 007を思わせるオープニングから、アニメーションを用いたタイトルバック、ゴーストライダー再登場までの流れは完璧。優秀なクリエイター陣の手腕は序盤で一気に披露されるのですが、良かったのはここまで。本筋に入ると映画は一気につまらなくなります。世界の存亡を握る子供がいて、その子を追う巨悪がいて、悪と同等の力を持つ者が子供のボディガードになる。『ターミネーター2』以来、何度見たか分からないほど陳腐な物語が何の捻りもなく提示されるので、少なからずガッカリさせられます。さらには、子供が悪の手に渡ればどんなに恐ろしいことが起こるのかという煽りが不足しているし、追っかけに絡んでくるキリスト教勢力の背景の説明も不十分(耳なし芳一状態で出てきたクリストファー・ランバートの無意味ぶり)。敵が異常に弱くて、勝つか負けるかのスリルが味わえないという前作の欠点は本作においてもまるで改善されておらず、『ダークナイト』や『マン・オブ・スティール』の脚本家の作品とは思えないほどに話は隙だらけです。。。 コンビ監督はスリルとユーモアのバランスを整え、それなりに面白い見せ場を作っているものの、予算制約もあって前作のようなド派手な見せ場は見当たりません。インタビューではさんざん前作の悪口を言っていましたが、前作と比較して見違えるほど良くなった部分はなかったように思います。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2013-10-17 00:35:38)
887.  PARKER/パーカー
『悪党パーカー』シリーズは過去に何度も映画化されているものの、私が観たのは『ペイバック』のみ。そんなわけで、本作については必然的に『ペイバック』との比較となってしまうのですが、今回の映画化企画にはハードボイルドな空気が足りていないという印象を受けました。。。 この企画の骨子は「毒をもって毒を制す」という点にあり、仁義を守らない小ズルい悪党を、本物の悪党パーカーが度胸や腕っ節を武器に容赦なく追い詰めるところに面白さがあると思います。実際、『ペイバック』ではたったひとりでヤクザの事務所に乗り込み、大親分と対峙しても一歩も引かない主人公の姿が痛快だったのですが、一方で本作の主人公は身分を偽って隠密行動をとり、素行も控えめなので、犯罪者を主人公にしたことの意義が薄くなっています。探偵や元刑事を主人公にしても似たような映画が撮れてしまうのです。また、敵となる悪党たちの悪ぶりが足りていないし、彼らの後ろ盾となっているヤクザがいかにヤバい連中であるかも伝わってこないので、この内容に求められるスリルやカタルシスも不足しています。。。 さらには、主人公達の行動原理が不可解なので、彼らへの感情移入も困難です。南部の成金だと思っていたパーカーが、実は犯罪者であることを知った不動産営業のレスリー。普通ならマッハで警察に駆け込むところですが、彼女はパーカーの前に再度姿を現し、「土地勘のある私が仲間になるから、分け前をちょうだい」と言い出します。いくら金に困ってても、素人はそんなことしないって。そして、そんな怪しい提案を受け入れ、「よし、明日連絡する」と言ってアッサリと仲間にしてしまうパーカー。序盤では、周到な計画の下に動くプロの犯罪者というキャラ付けがなされていたはずなのですが、これでは考えの足らないバカです。そもそも、素人が数分調べただけでバレるような偽装をやってる時点で一流の犯罪者とは言えないわけで、この脚本は設定を煮詰めきれていません。。。 本作で褒められる点は、役者がしっかりとしていたことでしょうか。ステイサムはさすがのB級番長ぶりですが、意外だったのは、アラフォー・バツイチ女を演じるジェニロペのハマり具合です。10年前は女王様だったジェニロペが、ヒロインにすらしてもらえない世にもあんまりな中年女役を熱演。執拗に繰り返される尻ネタも悲しい笑いを誘っています。本作のジェニロペは必見です。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2013-10-04 01:23:42)
888.  もうひとりのシェイクスピア
ローランド・エメリッヒが『2012』と『ホワイトハウス・ダウン』の間に撮った時代劇と言われれば、どんなバカ映画が飛び出すことかと思うところですが、これが至極真っ当な出来だったので感心しました。撮影は繊細で美しく、役者の演技も上々。デジタルで蘇った17世紀ロンドンの完成度も非常に高く、さらにはリドリー・スコットあたりに任せれば1億ドル近くかけたであろう作品をわずか3,000万ドルの予算で作り上げたことも驚きであり(ハリウッドでエメリッヒが重宝される理由のひとつとして、比較的少ない予算で超大作を完成させるという点が挙げられます)、そのルックスは事前の予想をはるかに超えていました。。。 以上、映画の見てくれは非常に良いのですが、肝心の中身については少なからずガッカリさせられました。本作の脚本は90年代の時点ですでに完成していたものの、『恋におちたシェイクスピア』とのバッティングを避けるために製作を延期されて以来、10年もの間、ハリウッドを彷徨っていました。その間に脚本は肥大化していったようであり、シェイクスピア別人説を核として、天才作家との力量の差に圧倒される平凡な作家の物語や、宮廷内での人間ドラマ、王位継承を巡る陰謀劇に、老いた女王の苦悩など、構成要素がパンパンに詰め込まれた複雑極まりないドラマとなっていました。熟練監督が3時間超えの上映時間をもってしてようやく収まるかどうかというボリュームの脚本を、ドラマ演出の経験の浅いエメリッヒが2時間強でやっつけてしまったために、映画は終始駆け足で感動もへったくれもありません。ロクな紹介もなく登場人物がどんどんブチ込まれてくる不親切な序盤に始まり、3つの時代を行き来して何をやっているのかがイマイチ掴みづらい中盤を経て、計画の全貌がよく分からないままクライマックスへと突入。観客に何を感じて欲しいのかを考えずに各場面を撮っているために、ドラマもサスペンスもまるで盛り上がらないのです。脚本自体はよく出来ているだけに、もっとじっくりと仕上げて欲しいところでした。
[ブルーレイ(字幕)] 5点(2013-10-02 01:12:38)
889.  プッシャー(1997)
世界的にタランティーノ症候群が蔓延していた時期の作品だけあって、本作もモロにタランティーノの影響を受けています。延々と繰り広げられる本筋とは無関係な会話に、突発的な暴力。口数の多い主人公については現在のレフンの作風からすると意外に感じられたのですが、そんな主人公がどんどん追い込まれていき、後半になるとほぼ喋らなく様には、後のレフン作品の片鱗が垣間見えています。部屋にはブルース・リーとマッド・マックスのポスターが貼ってあり、少々手間のかかる彼女に対しても優しく接するという、子供っぽくも気の良い悪党だった主人公が、どんどん粗暴でイヤな奴になっていくという展開にもハリウッドとは一線を画すものがありました。「ピンチに陥った時に、本当に大切な愛を見つけた」なんてセンチな展開など皆無なのです。また、「レストランを開きたいなぁ」なんて笑顔で話していた用心棒が、次の場面ではとんでもない暴言と暴力を振るうという落差の付け方などは非常に効果的であり、本作はただの模倣に終わっていません。。。 ただし、クライムサスペンスに必要な、物語の求心力が不足していた点は気になりました。観客に対して主人公の一発逆転プランが提示され、そのプランがどう転ぶかでハラハラさせるのがこの手の映画の王道だと思うのですが、本作はそうした娯楽的な要素が著しく不足しています。ただただ焦る主人公の姿が映し出されるのみ。全体の空気は良いものの、「これは」という特別な場面に乏しく、少々間延びした映画に感じられました。
[DVD(字幕)] 5点(2013-07-08 22:35:15)
890.  オンディーヌ 海辺の恋人
現実の世界でファンタジーを語るというニール・ジョーダンの得意分野だけに、作品の内容は非常に安定しています。基本的には大人のラブストーリーなのですが、そこに子供の視点を介在させることでファンタジーを許容しうる幅を作っている辺りが実にお見事。また、クリストファー・ドイルによる撮影も美しく、小さな物語でありながら非常に丁寧な作りで好感が持てました。。。 問題は、オンディーヌの正体が判明して以降の物語があまりにつまらなかったということです。監督も後半パートでは題材に対する興味を失った様子で、それまでの丁寧な仕事から一転して、えらく雑で乱暴な映画になってしまいます。オンディーヌをどう受け入れるのかという主人公達の葛藤などもまったく描かれておらず、ドラマがぷっつりと切れた状態で安直なハッピーエンドを迎えます。。。 また、コリン・ファレルの演技は巧いものの、本作の主人公の人となりには合っていないように感じました。基本的に二枚目のファレルでは、街の人たちから道化者として扱われる人生の失敗者には見えないのです。オンディーヌを演じるアリシア・バックレーダはこの世のものとは思えない程の絶世の美女なのですが、そんな彼女と並んでもまったく見劣りしないファレルでは、物語の意義が半減してしまいます(ファレルとバックレーダは本作がきっかけで交際を開始し、二人の間には子供もいる模様)。
[DVD(字幕)] 5点(2013-07-08 22:32:00)
891.  ラストマン・スタンディング 《ネタバレ》 
主人公が何の目的で戦っているのかがよくわからないし、悪党のワルぶりも足りていません。さらにはキャラクターの戦力描写も不適切であり、銃を持たせた時の主人公が最強すぎて、彼が二つの組織の間をコソコソと動き回ることが無意味に感じられてしまいます。実際、クライマックスではたった一人でヤクザの拠点に殴り込んで、全員を射殺してしまうわけだし。だったら最初からそうしろよと思ったのは私だけではないはず。そもそものミスとして、謎の男であるはずの主人公に映画のナレーションをさせてはいけないでしょう。彼は、どこで何をしてきたのか分からない、何を考えているのかも分からない男でないといけないのに、ナレーションでその心境がご丁寧に説明されてしまうのでは、ダークヒーローに必要な神秘性というものが失われてしまいます。。。 ウォルター・ヒルは黒澤明やセルジオ・レオーネに対して敬意を払いすぎるあまり、本作では完全に調子を狂わせてしまったようです。オリジナルにあった要素を自作にも反映させようとしたために、作品全体のバランスが崩れてしまったのです。彼はオリジナル脚本でこそ光るタイプのクリエイターであり、他人のふんどしで相撲をとることは出来なかったようです。とはいえすべてがダメというわけではなく、ヤクザの女が耳を削がれたり、主人公が半殺しのリンチを受けたりする中盤のバイオレンスはなかなかショッキングだったし、そこからペースを上げてクライマックスへと突入していくテンポの作り方も良く、バイオレンスの巨匠の面目はある程度保たれています。また、『フェイス/オフ』が世に出る前年において、二丁拳銃によるアクションをかなりの完成度で披露した辺りのセンスの良さも評価すべきであり、本作は決してダメな映画ではありません。。 ただし、この映画で6,700万ドルは使いすぎですが。同年公開の『インデペンデンス・デイ』『ザ・ロック』の製作費が7,500万ドル、『セブン』に至っては3,300万ドルで作られている中で、狭い舞台で登場人物の数も限られている本作の製作費の割高感は突出しています。どこに大金が使われたのかを推測しながら本作を見れば、意外と楽しめるかもしれません。
[ブルーレイ(字幕)] 5点(2013-06-25 01:34:54)
892.  ミルク(アメリカ映画) 《ネタバレ》 
日本においても同性愛者への差別はありますが、キリスト教社会における差別は、その比ではないようです。世界は神の創造物だとするキリスト教徒にとって、自然の摂理に反したセクシャリティを持つ同性愛者とは、その存在を否定せねばならない対象。『ブロークバック・マウンテン』では同性愛者がリンチを受けて殺されましたが、それほどの過酷な差別があの社会には存在しているのです。そんな中、同性愛を公言する者として初の政治家となり、そして暗殺されたハーヴィ・ミルクは米国内において伝説的な存在であり、米国史上の偉人を選ぶ企画があれば、必ずその名がエントリーされる程の高い人気と知名度を誇っています。。。 そんな人物の伝記に挑んだ本作ですが、時代の再現度については凄まじいレベルに達しており、「これは何か賞を与えねば」という気にさせられます。ただし、個々の場面を完璧に作り上げるということにこだわりすぎた余り、物語としての山場を作り損ねているという印象も受けました。ハーヴィ・ミルクという人物に思い入れのあるアメリカ人ならともかく、本作ではじめてこの人物を知ることとなる日本人にとっては、少々パンチに欠ける映画だったと言わざるをえません。。。 また、ミルクの殺害犯であるダン・ホワイトについて本作の脚本家は大胆な仮説を立てているのですが、この仮説がかえってドラマの完成度を引き下げる原因となっています。ホワイトは隠れゲイであり、政治家としての対立のみならず、ミルクに寄せる個人的な好意を裏切られたという私怨が、ミルク殺害の動機につながったというのが本作の仮説。このような仮説を立てたはいいものの、脚本家も監督もオリバー・ストーンのように振り切ることができず、あくまでこの動機を仄めかす程度にとどめてしまったために、ホワイト側の描写が致命的に不足するという結果がもたらされています。そして、このためにミルクとホワイトの対立という主要な軸がブレブレになってドラマの求心力が大きく削がれているし、さらにはホワイトがミルクを殺した理由を感情的に理解することが難しくなっています。伝説的な政治家の生涯に勝手な解釈を加えるということに躊躇があったのかもしれませんが、それにしても、ドラマとして一本筋を通すことを怠った点は評価できません。
[DVD(吹替)] 5点(2013-06-21 01:27:21)
893.  リバー・ランズ・スルー・イット
家庭内での長男・長女の立ち位置は悲惨なものです。家族のアイドルでいられるのは生後数年間のみであり、弟・妹の誕生とともにスポットライトを奪われ、以後は良い子であることを強要され続けます。ならばと両親の期待に少しでも近づけるよう努力を重ねると、今度は「真面目なのはいいが、感情を表に出さないから接しづらい」などと言われる始末。一方下の子はというと、家庭のアイドル状態は成人するまで継続し、ありのままに生きることが許容され続けます。欠点までもが両親からの愛情の対象となり、「たまに問題は起こすが、素直でかわいい子」ポジションを確立するというわけです。問題を起こさず真面目に生きても、そのことを褒められもしない長男・長女からすれば、永遠に越えられない壁が弟・妹なのです。。。 本作で描かれるのは、兄の目を通した弟の物語。兄は、自分とは正反対の人種である弟のことをまったく理解できません。だから、弟がどんどん破滅へ向かっても、その原因は兄にも観客にもサッパリわからないし、兄は堕ちていく弟をただ傍観するのみで、彼を止めようともしません。このドラマ展開はかなり斬新なものですが、同時にこれは現実世界の一側面を的確に描写したものだとも感じました。私にも妹がいて、兄妹仲も悪くないのですが、妹の考えが分からない時がしばしばあります。同じ家で育ったとはいえ、まるで違う育てられ方をしたためにモノの捉え方や感じ方がまるっきり異なるのです。。。 この映画のテーマはとてつもなく興味深いものです。それは家族愛とか家庭の断裂といったありがちなテーマではなく、家族内にも理解できないことはいっぱいあるよねという、物凄く深い部分の話をしているからです。レッドフォードは家庭を扱った映画をいくつか手がけていますが、本作はその決定版とも言える内容だと思います。。。 以上、企画の志には大いに賛同できるのですが、如何せん単調で起伏に欠ける映画なので、見入ってしまうほどの面白さはありませんでした。美しい映像で全てを語ろうとするレッドフォードの演出も上品過ぎて肌に合わず、「一度見ればもう充分」というのが率直な感想です。
[DVD(吹替)] 5点(2013-06-18 01:33:40)
894.  ゲーム(1997) 《ネタバレ》 
本格サスペンスではなくダークな寓話なので細部にツッコミを入れても仕方のない映画ではあるのですが、それにしてもご都合主義の多い展開には参ってしまいました。事前に肉体と精神の綿密なチェックを行ったとはいえ、主人公を車ごと海に転落させて死なない保証など何処にもないし、仕掛人が手を回しきれなかった第三者が介入してくるリスクもあります。観客を騙したいのであれば、ウソに説得力を持たせる努力ぐらいはして欲しいところでした。論理的整合性を無視して突っ走った時点で、オチの衝撃度も薄れてしまうのです。フィンチャーの演出力や豪華な俳優陣によって映画全体は救われてはいるものの、脚本はイマイチですね。。。 ここからはオチを踏まえての感想となりますが、これは本当にハッピーエンドだったのかという点が引っかかりました。評論家の宮崎哲弥氏は本作を「自己啓発セミナーの映像化」と考えているようですが、私も宮崎氏の意見に賛成します。日本ではX JAPANのTOSHIやオセロの中島知子がその被害に遭っていますが、徹底的に個人の人格を破壊し、完全に真っ白になったところで「おめでとう、君は生まれ変わったね」と祝福して、コントロール可能な新たな人格を上書きするのが自己啓発セミナーの手口です。他人から本音をぶつけられる機会が少なく、財産を巡って身内に対してすら猜疑心を持っている富豪や有名人は、この手の心理的揺さぶりに弱いと言われます。相談できる相手がなく常に孤独であるため、揺るぎないと思っていた自分の価値観に自信を持てなくなると、人格が一気に崩壊してしまうのです。そう思って本作のラストを見ると、あまりのバッドエンドぶりに背筋が凍ります。高額なサービス料を自分も負担すると言い出す兄。これが弟とCRS社が仕組んだマインドコントロールの成果であって、今後も何かにつけて金銭的な負担を要求され、そのうちに身ぐるみ剥がされる運命だとしたら?一方的にクビを言い渡され、主人公を死ぬほど憎んでいるはずの出版社社長が笑顔で主人公を迎えていた点など、バッドエンドを匂わせる描写がいくつか仕込まれている点に注目なのです。ちなみに、世界最大の自己啓発セミナー組織であるランドマークエデュケーションは、本作の舞台であるサンフランシスコに所在しています。
[DVD(吹替)] 5点(2013-06-03 22:17:34)
895.  フック
スピルバーグの映画なのでちゃんと面白いものの、他のスピ作品と比較すると落ちる出来だと言わざるをえません。後の『A.I.』でも同じ失敗をするのですが、この人はリドリー・スコットやティム・バートンのように世界観を一から作り上げる能力がないために、ファンタジー映画を撮らせると途端にボロが出てしまいます。7,000万ドル(2013年現在の貨幣価値で1億3,000万ドル)という途方もない金額を投じて巨大セットを作りながら、そのビジュアルはどこかからの借り物感全開で世界観には面白みがありません。さらには、クライマックスのアクションが完全な子供騙しだったことも、映画の評価を落とす原因となっています。あそこで描かれるべきは大人と子供の真剣勝負だったはずなのに、観客から拒絶されるような刺激があってはマズイと気の抜けたチャンバラでお茶を濁してしまったために、娯楽映画としてまったく締りのない内容になっているのです。。。 ただし、本作製作の背景を見ると、この不出来はスピルバーグ一人の責任ではないこともまた事実。1989年にコロンビア映画はバブル絶頂期のソニーに買収され、ソニー・ピクチャーズが発足します。本作はソニー経営下で製作された初の大作であり、世界最高の映画監督であるスピルバーグを雇い、史上最高クラスの予算が投じられた作品ということで、経営陣は本作に対して並々ならぬ期待を寄せていました。さらには、どこまで本気だったのかは定かではないものの、当時のソニー経営陣は映画のテーマパーク化構想(その名も『ソニーランド』)を持っており、本作をソニーランドの中心コンテンツに仕立てあげたいという思惑もあったようで、スピはまさに雁字搦めの状態にあったわけです。件の気の抜けたチャンバラなどは、スピの手落ちというよりも会社側の戦略ミスだったように思います。実際、ソニーは同時期に『ハドソン・ホーク』や『ラスト・アクション・ヒーロー』といった本作と同傾向の大作を数本製作し、そのどれもが「内容があまりに子供騙し過ぎて、子供も騙されてくれなかった」という状況に陥っていましたから。。。 ともかく本作はスピの大きなターニングポイントとなり、以降の作品では残酷描写に手を抜かなくなりました。さらには、雇われ仕事の限界を感じたことから、独自のスタジオであるドリームワークス設立にまで繋がったわけですから、本作の歴史的意義は小さくないと思います。
[DVD(吹替)] 5点(2013-05-06 02:26:42)
896.  実験室KR-13 《ネタバレ》 
ベースとなる設定はハリウッドで多く製作されているソリッド・シチュエーション・スリラーと同様のものなのですが、これを被害者の側ではなく、仕掛人の側から描いている点が本作の特色。視点を移動させただけで映画の印象には大きな変化がもたらされており、なかなか面白い切り口の映画だと思いました。科学者達が被験者を淡々と追い込んでいく様には、なかなか空恐ろしいものがあったのです。ただし、この切り口には大きな副作用もありました。厳しい状況からどうやって突破口を見つけ出すのかというサスペンスや、黒幕は一体誰なのかというミステリーが失われてしまうために、類似作とはまったく違う見せ場を準備しなければならなかったのです。。。 本作の監督を務めたジョナサン・リーベスマンは、『テキサス・チェーンソー/ビギニング』を、リメイク版第一作はおろか、トビー・フーパーのオリジナルをも凌駕する鬼畜ホラーの傑作に仕立て上げた人物。思えば『ビギニング』もまた、被害者が誰ひとり助からないことが明らかになっているという設定上の大きな制約条件を抱えていた作品であり、その点を考えると、彼は本作の監督についても最適任者であったと言えます。果たして彼は本作をどう料理するのかに注目していたのですが、残念ながら本作では『ビギニング』ほどの仕事を見ることはできませんでした。監督がスポットライトを当てたのはクロエ・セヴィニー演じる新人科学者であり、非人道的な実験を傍観する彼女の心境がどう変化するのかを映画のハイライトとしたのですが、この点がどうにも弱かったために、作品全体が締まらない結果に終わっています。彼女が抱えるジレンマを、もう少しわかりやすい形で観客に提示すべきだったと思います。。。 さらに本作を残念な結果に終わらせているのは、公開時期を完全に逃してしまったという点です。情報機関による米国民の盗聴や、グアンタナモやアブグレイブでの異教徒に対する拷問など、対テロ戦争に勝利するためには手段を選ばなかったブッシュ政権に対する批判が本作の根幹にはあると思うのですが、本作が公開された2009年にはすでに民主党のオバマ政権に代替わりしており、今さら感が出まくっています。
[DVD(吹替)] 5点(2013-04-24 00:51:26)
897.  クロエ(2009) 《ネタバレ》 
2004年のフランス映画『恍惚』のリメイクですが、オリジナルは未見。本数は多いものの傑作の少ないエロサスペンスというジャンルなので大した期待もなく鑑賞しはじめたのですが、そこはアトム・エゴヤン。繊細な描写や美しい撮影によって、類似作とは違った深みや高級感を出すことに成功しています。主演を務めるジュリアン・ムーアの演技も上々であり、些細な出来事に一喜一憂する彼女の姿には思わず見入ってしまう説得力がありました。さらには、50歳を過ぎても脱ぎ惜しみなし。24歳のアマンダ・セイフライド以上に濡れ場を頑張っている女優魂にも感服しました。出番は少ないながら(私生活での奥様の死と本作の撮影が重なったため、脚本を変更して出演場面を大幅に減らしたのだとか)、リーアム・ニーソンも相変わらずの存在感を示しており、監督・俳優によるレベルの高いパフォーマンスを楽しむことができました。。。 ただし、楽しめたのも前半まで。後半に入り物語が核心部分に到達すると、映画は一気に陳腐になってしまいます。勢いで関係を結んだ相手がキ○ガイだったという、エロサスペンスとしてはありがちな話に落ち着いてしまうのです。特殊な設定を設けた割に落とし所はここなのかと、少々拍子抜けしてしまいました。さらには、クロエがキャサリンに執着した背景の描写も甘いためにドラマも燃え上がらず、非常に中途半端な終わり方をしてしまいます。もう少しで良作になりえた作品だっただけに、詰めの甘さが悔やまれます。
[DVD(吹替)] 5点(2013-04-24 00:45:25)(良:1票)
898.  トールマン 《ネタバレ》 
【注意!激しくネタバレしています】 企画の概要は極めて優れていると感じました。善悪が二転も三転もする展開は面白かったし、『トールマン』というタイトル、果てはホラーというカテゴライズ自体がミスディレクションだったという大胆な仕掛けには唸らされました。ジェシカ・ビールが本企画を非常に気に入り、製作費が底をついた際には自腹まで切ったという入れ込み方にも、素人ながら納得がいきました。これはホラーの歴史に名を残す傑作になる可能性もあった作品だったからです。。。 ただし、企画は魅力的であっても脚本力や演出力はそれに追いついておらず、かなり残念な仕上がりとなっています。まず、ホラー映画としての作り込みが甘いので、大して怖くありません。着地点はホラーでなくとも、少なくとも企画がその本性を現すまでは、全力でホラーをやりきる必要はありました。しかし、ホラーパートは驚くほど簡単に処理されてしまうので、映画としての見所がありません。。。 さらには、ネタが明かされた後のドラマにも魅力がなく、「言いたいことは分かるんだけど、ねぇ」という、何とも残念な状況となっています。ベン・アフレックが『ゴーン・ベイビー・ゴーン』でやったことを3倍くらいに薄めたような内容で、深みがないのです。実の親の元で貧困と虐待にさらされながら生きることと、偽りの家族と共に物質的に恵まれた生活を送ることと、どちらが子供にとって幸せなのか?このテーマを語るのであれば、さらわれる前の子供達がどれほど過酷な環境にいたのかを観客に理解させる必要があるのですが、この映画はそうした描写を怠っており、観客が脳内補完してやらねばならないという状況が発生しています。これではドラマとしては不十分です。
[DVD(字幕)] 5点(2013-03-31 03:49:07)
899.  ツォツィ
子供との触れ合いによって悪党が人間性を取り戻すというベタ中のベタとも言える内容なのですが、変な小細工に走らず王道を通した点は良かったと思います。さらには、チンピラと赤ちゃんの接点の持ち方も非常に現実的で好感を持ちました。赤ちゃんの世話は基本的に近所のシングルマザーに任せっきりで、ツォツィは最後まで赤ちゃんに馴染まないのです。ご存知の通り赤ちゃんの世話は本当に大変で、何も知らないチンピラが見よう見まねで出来るものではありません。そういう現実を踏まえた本作の構成には、「なるほどな」と感心させられました。ツォツィはこの赤ちゃんに愛着を覚えたのではなく、赤ちゃんという異質な存在に触れたことで物事の見方が変わり、そのことが彼の人間性に影響を与えたに過ぎません。この映画はそういう微妙な温度感をうまく表現できており、全体としてはベタな構造をとりながらも独自性を打ち出すことに成功しています。。。 ただし、問題もあります。多くの方が指摘されていますが、そもそもツォツィが赤ん坊を連れ帰った動機が不明確だし、彼を援助することとなるシングルマザーの心境も不自然です。彼女も母親なのだから、我が子を誘拐された母親の辛さは痛いほどわかるはず。ならば一刻も早く赤ん坊を母親の元に返そうと考えるはずなのですが、彼女は数日にも渡って赤ん坊を手元に置いてしまいます。さらには、ツォツィとギャング仲間の関係も意外なほどサラっと流されていましたが、過去の自分と決別することが本作のテーマなのだから、かつての社会とどう折り合いをつけるのかという点も本作の重要なファクターだったはず。その他、赤ん坊を奪われた夫婦のドラマや、ツォツィに迫る警察の捜査網など、多くの要素が省略されています。ドラマの視点を分散させないようムダを省いた構成とした監督の意図は理解できるのですが、全体としては描写が不足しているように感じます。枝葉の部分にこだわることで核となるドラマが引き立つということもあるわけで、この点について本作はバッサリやりすぎたように思います。
[DVD(吹替)] 5点(2013-03-18 00:52:10)(良:1票)
900.  処刑人
個人的に好きなジャンルの映画なのですが、本作は楽しむことができませんでした。街のウジ虫を退治して回る兄弟の物語でありながら、その出発点が社会正義なのか私怨なのかが不明確だったことがまず良くないし、暴力の深みにハマっていくことへの躊躇もないため、ドラマがまったく広がっていません。さらには、悪役となるマフィアたちの悪行の描写が決定的に不足しているために、全体としてエモーショナルな盛り上がりに欠けています。。。 兄弟の戦力設定もいい加減で、武器の扱いについては素人同然の彼らが、コテコテのマフィアとの撃ち合いで偶然勝ってしまうなど、都合の良い見せ場が多すぎました。派手なドンパチも少なく、見せ場は基本的にダイジェスト処理なのでアクション映画としての盛り上がりにも欠けます。。。 ただし、気のいいあんちゃんといった風情の兄弟の人となりには好感が持てたし、見せ場についてはボリュームに不満があったものの、個々の作りにはセンスの良さを感じました。映画ファンから愛されるに足る「色気」も存在しており、可愛げのあるB級映画だと思います。
[DVD(吹替)] 5点(2013-03-10 02:11:47)(良:1票)
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