941. 喝采(1929)
《ネタバレ》 トーキー初期の親子ドラマ。場末キャバレーでのラインダンスにおける脚だけショットは、小学生時分の口喧嘩「・・・大根足・・・」を思い起こさせるもので萎える。ヘレン・モーガン演ずる花形スターであるキティも微妙な美しさで興に乗れず。しかし、キティと娘エイプリルが互いに愛情を注ぐ姿が、憎まれ役ヒッチのスパイスが効いていて見応え充分。覚悟の服毒シーンの長回しは圧巻。切なさと明日への希望が入り混じる結末が余韻を残す良作。 [DVD(字幕)] 7点(2019-05-15 19:05:46) |
942. 上海特急
「待つわ」2番の歌詞そのままの上海リリーを演ずるディートリッヒの魅せる事に拘りぬいた美しさに目を瞠る。監督はそれ以外の事に使うエネルギーが残っていなかったのか他愛のない物語及び雑な演出に心満たされなかった。 [DVD(字幕)] 7点(2019-04-30 02:07:26) |
943. 陽気なドン・カミロ
《ネタバレ》 イタリア田舎町を舞台に幼馴染である共産主義者の町長と反共の神父の喧嘩するほど仲がいい関係を軸に、保守VS共産、地主VS小作といった当時のイタリア世相を映し出しています。神父にあるまじき言いたい放題で腕力に物を言わせる豪快さにあっけにとられ、キリスト像と交わす会話に笑わされ(審判買収の件は大笑い)、持ち合わせている熱い人情に胸熱にさせられ、ドン・カミロ神父は忘れ難いキャラクター。対する町長も劣らぬ味わい深いキャラクター。保守・共産それぞれに見送られるラストは監督らしい演出で余韻が残ります。 [DVD(字幕)] 7点(2019-04-29 01:32:26) |
944. 巴里の女性
冒頭での自身が出演していない断り書きに、そんな作品があるのにビックリ。金に恋したマリーとひ弱いジャンの悲恋が描かれています。上流階級面々の髪型・メイク・顔つきが卑しさ全開で、乱痴気騒ぎは観るに堪えない下品さ。チャップリンの冷ややかな視線を感じます。その極めつけがマリーがネックレスを取り戻すシーン。建設的に生きて行こうとするラストはチャップリンならではのもの。 自らが立ち上げに参加して存分に腕を揮える自由を得たユナイテッド・アーティスツでの第一作は見応え有る力作でした。 [DVD(字幕)] 7点(2019-04-21 01:49:31) |
945. つばさ
《ネタバレ》 戦闘模様は空も陸も迫力満点だけど冗長さで飽きてしまう。男女4人とも深みの無い人物像で惹き込まれず。戦闘機強奪シーンは無理筋を感じるもので、そうなるんじゃないかと思った通りの展開に盛り上がれなかった。ジャックが悔恨を乗り越えて力強く生きてゆく姿が全く想像できないラストが何だかなぁ・・・ 戦争への痛切な思いを無言で示すデヴィッド父の姿は鑑賞した甲斐のあった名場面。第1回アカデミー作品賞受賞の力作。 [DVD(字幕)] 7点(2019-04-20 00:08:44) |
946. マッドボンバー
《ネタバレ》 爆弾魔を捕まえる為に強姦魔を捕まえる展開がユニーク。「魔」男は共に物凄い狂いっぷりで顔つきからして尋常でない。彼等を相手にする刑事は顔は普通だけど行動原理はダーティハリー並みの狂いっぷり。3人のギャラで一杯一杯になったのか知らないが、女優陣がね、年寄が言うのもなんだけど、お顔も全裸のお姿も今一つ。彼女等の雑で悲惨な扱われ方が、もう、ね、哀れでね。「魔」が「魔」に天誅を下される、もんの凄いシーンに彼女等も浮かばれるってもんですね。こじんまりした結末が物足りないものの、記憶から消えないであろう強烈な印象を残す、掘り出し物の怪作。 [DVD(字幕)] 7点(2019-04-14 21:01:39) |
947. 田舎司祭の日記
《ネタバレ》 絵日記ならぬ映像日記が監督らしい愚直さで綴られる。若き司祭の住民と折り合えない苦悩が重くのしかかってくる。彼の姿に「愛してやるから愛し返せ」は言い過ぎとしても、愛されなくても愛しますという大らかさが足りなく見えた。彼の遺言「それがどうした、全ては神の思し召しだ」に神には感謝するものであって縋るものではないと思わされる。ほんの一瞬の若者らしい笑顔の瑞々しさが強烈な印象を残す。 [DVD(字幕)] 7点(2019-03-31 20:55:40) |
948. スターリンの葬送狂騒曲
演奏会のエピソードでの開いた口が塞がらない無茶苦茶さも当事者にとってはまさに命懸けであるところにスターリンの人柄が表れている。死後の権力闘争が描かれていて、語られる一言一言のきっつい皮肉に苦笑させられるも、コメディ要素は感じられなかった。踏み潰される害虫の如く奪われる人の命、自国の黒歴史をロシアは直視できなかったのか上映禁止と相成ったようで。フルシチョフ役は似ていると思ったブシェミその人で健在ぶりがちょっぴり嬉しかった。存在感があったオルガ・キュリレンコも印象的。 [DVD(字幕)] 7点(2019-03-31 20:35:50) |
949. スルース(2007)
不覚にも間違えてリメイク版をレンタル。ジュード・ロウのふてぶてしい間男ぶりもなかなかのものだけど、マイケル・ケインの百面相に真意が那辺にあるのか惹き込まれる。ローレンス・オリヴィエが演じたアンドリュー・ワイクを35年の時を経て演ずるのは役者冥利に尽きるのでは。オリジナル版に興味が募る作品。 [DVD(字幕)] 7点(2019-03-31 19:31:19) |
950. ルンバ
俳優になる以前大物ギャングに可愛がられてその社会と親交を結んでおり、更にジゴロでショーダンサーだったというジョージ・ラフト。「ボレロ」に続いての本作でも経歴そのままの水も滴る男っぷりでのダンスを魅せてくれます。圧巻のキャロル・ロンバードとのデュエットは、その官能美にメロメロでストーリーの他愛なさ、気を揉ませておきながら何じゃそりゃの結末も吹っ飛んでしまいます。ジョージ・ラフト又はキャロル・ロンバードを観たい方にお勧めの作品。 [DVD(字幕)] 7点(2019-03-18 12:57:15) |
951. グリーンブック
《ネタバレ》 3日前に鑑賞した「マンディンゴ」の滅茶苦茶な黒人奴隷牧場の記憶が残る中での本作。121年が経っても隔離は差別ではないという理屈で合法とされたジム・クロウ法によって黒人分離政策がとられている実態を描いている。ピアノ演奏に対して温かい拍手を送ってくれても、自分には黒人区別の扱いを受ける。一方、車の故障時に白人が修理し黒人が車中で待つ姿を眺める黒人農民の冷たい目線を受ける。心許せる者がいないドン・シャーリーを演ずるマハーシャラ・アリはオスカー受賞も納得の好演。役作りに10㎏以上増量したヴィゴ・モーテンセンとの会話に滲むユーモアが上がった血圧を下げてくれた。洒落たラストが心地良い。良作。 [映画館(字幕)] 7点(2019-03-07 03:35:16) |
952. 我れ暁に死す
《ネタバレ》 ジェームズ・キャグニー、ジョージ・ラフト共演でこの邦題という事で鑑賞前から既に身悶え。無実の罪を着せられる新聞記者キャグニーと極悪人ラフトの刑務所内に於ける友情物語という意外な設定と痺れる所が無い展開に興奮は治まりましたが、善人役でもビシッ!!と決めるキャグニー、ニヒルなラフト、両名の個性溢れる好演に満足させてもらった作品。 [DVD(字幕)] 7点(2019-03-03 23:16:09) |
953. 十字砲火
原作では同性愛を描いていたのが当時のヘイズコードに抵触するのでヘイトクライムものにしたという本作。フィンレイが人種差別について語るシーンありきで作られたかのようで、他のシーンに見どころ無し。オスカー5部門ノミネートも3ヶ月で上映禁止にされ、監督がハリウッドテン入りしてしまう(後に転向)という、フィンレイが語る事が図らずも現実のものとなったアメリカの黒歴史を浮き彫りにさせる記憶に残る作品。三人のロバートの印象度はライアン>ヤング>ミッチャム。お目当てロバート・ライアンは殺人者役が定着してしまった本作出演を後悔しているという歪んだ人格を好演。 [DVD(字幕)] 7点(2019-02-28 16:41:04) |
954. 殿方ご免遊ばせ
能天気でキュート、お人形さんのようなキャラがピッタリのブリジット・バルドーは華があって画面に映えます。開始38分でご登場「待ってました~っ、会いたかったよ~ん」のシャルル・ボワイエ。雲の上の高貴な人物且つ女たらしのキャラで彼の右に出る者無し。見事な小悪魔さばきを魅せて去ってゆく姿をウットリと眺めておりました。中途半端なアクションシーンはご愛嬌。全編軽いタッチで綴られるラブコメの良作。 [DVD(字幕)] 7点(2019-02-25 15:45:32) |
955. 黒い牡牛
《ネタバレ》 ヒターノが烙印を捺される姿にアカ狩りで反米の烙印を捺されたダルトン・トランボが重なります。大人の事情など知らないひたむきな少年レオナルドが一見主役のようですが、主役はヒターノ。私的に人間がよってたかって牛をなぶり殺しにするイメージを持つ闘牛において、不屈の闘いぶりで生を勝ち取った姿に感動。牛にひれ伏す事となった秀作。 [DVD(字幕)] 7点(2019-01-26 23:51:06) |
956. 薔薇のスタビスキー
「ファニー」から13年が過ぎたシャルル・ボワイエは立居振舞・台詞回しにいささかの衰え無く、気品と包容力が溢れるお姿に見惚れるばかり。このような齢の重ね方に憧れ、同じ(じゃないか)人間の端くれの端くれとしてあやかりたいものであります。余談ながらこの4年後、44年間連れ添った奥様が病死なさった2日後に睡眠薬自殺を遂げられた事実に胸が詰まってしまいます。 ジャン・ポール・ベルモンドとアニー・デュプレーの目の覚めるような着こなしや、室内装飾の重厚さにため息が止まりません。 この見た目で騙したのか稀代のペテン師によるフランス史上最大の疑獄事件は興味深いのですが、時系列をいじくったり、トロツキーのエピソード挿入など展開が分かり辛く消化不良な作品でした。ただ、金はあくまでも只のカネに過ぎない事を掌返しの人々が見せてくれます。そんな中で最後まで友情を育んだシャルル・ボワイエがやっぱり心に残ります。 2022.9.11追記 シャルル・ボワイエ スクリーン初体験にただただ感激。 [映画館(字幕)] 7点(2019-01-14 19:17:14) |
957. 犯罪河岸
「恐怖の報酬」の監督&ルイ・ジューヴェ出演という事で映画館のはしごをして鑑賞。ジェニィの華のあるパフォーマンスに見惚れ、モーリスのどことなしの屈折感に見入る。お待ちかねのルイ・ジューヴェ演ずる警部は、先に観たマクラウド刑事のような、コロンボ警部のような強烈なキャラクターで存在感ありまくり。追い詰められた3人の運命や如何に! 手に汗握った身にとって、「ヘッ?」椅子からずり落ちそうな結末に、これでいいのかよくないのか考えさせられました。 [映画館(字幕)] 7点(2019-01-13 23:15:50) |
958. 氷壁の女
《ネタバレ》 興行的に失敗し酷評を受けフレッド・ジンネマンの遺作となった本作を念願叶っての鑑賞。気骨の監督による、何があっても、どんな結果が待ち受けようとも、信念を貫き通す数々の人物にひれ伏してきた身にとっては、不倫且つ近親相姦のカップルの物語に「監督は枯れてしまったのか?」「酷評も止む無しか」とガックリ。しかし、クレパスから40年ぶりに回収された遺体の許嫁だった老婆に、スケールは小さくなったものの監督の持ち味健在を感じられました。抜群のロケーションでの峻烈な映像美も監督ならではのもの。鑑賞した値打ちある秀作。 [映画館(字幕)] 7点(2019-01-13 22:56:09) |
959. バリー・シール/アメリカをはめた男
《ネタバレ》 CIAとメデジンカルテルの二股をかける人が実在したというのに仰天。ノンポリで金に執着無くスリルを求めるキャラなので手に汗握る事無く歯を食いしばる事無く気楽に眺められます。加えてトム・クルーズの持ち味でカラリとした味わいが。なので、ご都合主義の正義で「アメリカに捨てられた男」の結末の後味悪さが一層際立ちました。良作です。 [インターネット(字幕)] 7点(2018-12-30 21:56:46) |
960. 踊る海賊
セラフィンは鬱陶しいキャラだけど、演ずるジーン・ケリーのアクロバティックなダンスには魅了されました。凄い! 初体験のジュディ・ガーランド。美しい容姿に歌って踊れる華のある存在感に見惚れます。 本作のリプレイタイムとなった絶品の「道化師になろう」 もっと二人のダンスシーンが観たかったなぁ。 [DVD(字幕)] 7点(2018-12-28 17:21:18)(良:1票) |